第51回(H28) 作業療法士国家試験 解説【午後問題46~50】

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46 転換性障害のため歩行障害がみられる患者への作業療法で優先すべきなのはどれか。

1. 住宅環境の整備を進める。
2. 廃用性機能障害を予防する。
3. 無意識の葛藤についての洞察を促す。
4. 難易度の高い作業への挑戦を勧める。
5. 器質的な原因との矛盾点に直面させる。

解答2

解説

 転換性障害は、欲求不満が身体症状に転換された病気のことである。症状として、①運動症状(失立失歩、失声、痙攣、チック)、②感覚症状(らせん状視野狭窄、知覚障害)、③嘔吐などがみられる。また、転換性障害として歩行障害(失立失歩)がみられることは多いが、転倒や怪我をすることはまれである。しかし、そのまま歩行せず足を使わなければ、廃用性機能障害になってしまうため、作業療法ではその予防が重要となる。したがって、選択肢2.廃用性機能障害を予防するのが正しい。歩行練習に付き添ったり、促すなどして予防をする。

1.× 住宅環境の整備を進める必要はない。なぜなら、転倒や怪我をすることはまれであるため。
3.× 無意識の葛藤についての洞察を促すのは時期尚早である。まずは、身体的対応(選択肢2.廃用性機能障害を予防する)を行うが、徐々に自分の感情を症状で表す(これが「転換である」)のではなく、言語化できるように促していくことである。治療の最終目標として、精神分析療法により葛藤と症状との関係を洞察させる。
4.× 難易度の高い作業への挑戦を勧めるのは時期尚早である。なぜなら、転換性障害により歩行障害がみられているため。自信消失しないよう難易度の低い作業から挑戦していく。
5.× 器質的な原因との矛盾点に直面させる必要はない。器質的とは、ある障害や病変の原因などについて、身体の器官のどこかが物質的・物理的に特定できる状態にあるということである。器質的な原因との矛盾点に直面させるのではなく、自分の気持ちや直面している困難を意識化し、言語的に表現できるよう促していく。

かかわりのポイント
  1. 病気でなくても、人は自分と関わりを持ってくれるという体験をさせる。
  2. 自分の気持ちや直面している困難を意識化し、言語的に表現できるよう促していく。
  3. 患者の訴えには真剣に耳を傾ける。
  4. 大げさな訴えに対してもごく普通に対応する。

 

 

 

 

 

 

47 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に基づく入院で正しいのはどれか。

1. 任意入院は本人の同意が必要ない。
2. 措置入院は精神科病院管理者の判断による入院である。
3. 緊急措置入院では作業療法を行ってはならない。
4. 医療保護入院は家族等の同意による入院である。
5. 応急入院は身体合併症の治療が目的である。

解答4

解説

  • 任意入院:本人の同意に基づく入院形態である。
  • 医療保護入院:本人の同意がなくても、精神保健指定医の診断と家族等のいずれかの者の同意をもって入院が可能である。
  • 「措置」とつく入院:精神保健指定医の診断が必要であり、それぞれ人数の違いがある。例えば、措置入院や緊急措置入院などである。
  • 応急入院:本人の同意も家族等のいずれかの者の同意もとれず、自傷他害のおそれがないため措置入院もできないが、急を要する場合に時間制限を設け、入院を可能にするものである。

1.× 任意入院は、本人の同意が必要である。本人の同意が必要ないのは、「措置」とつく入院である。例えば、措置入院や緊急措置入院などである。
2.× 措置入院は、「精神科病院管理者」ではなく、2名の精神保健指定医の判断による入院である。措置入院は、自傷他害のおそれがある患者に対して、2名の精神保健指定医が入院の必要性を認める必要がある。
3.× 緊急措置入院でも、医師の指示があれば作業療法の対象とある。
4.〇 正しい。医療保護入院は、家族等の同意による入院である。医療保護入院とは、本人の同意がなくても、1名の精神保健指定医が入院の必要性を認めれば、家族等のいずれかの者の同意で入院できる。
5.× 応急入院の目的は、「身体合併症の治療」ではなく、精神障害者の治療が目的である。応急入院は精神障害者に対し、急を要するが家族等からも本人からも同意が得られない場合に、72時間以内に限り、入院させることができる制度である。

 

 

 

 

 

 

48 リエゾン精神医学について正しいのはどれか。

1. 地域が主な活動領域である。
2. ストレングスモデルに基づく。
3. 産業精神保健活動の1つである。
4. 長期入院患者の退院支援を行う。
5. 身体的疾患に伴う精神症状に対応する。

解答5

解説

 リエゾン精神医学の概念とは、身体疾患で入院中の患者に対して、患者の精神的・心理的トラブルの改善を図り、身体的疾患の回復を促すことを目的とした医学である。他科の医師およびスタッフの要請に応じてその協力のもと、身体・心理・社会・倫理的な全人的医療を行う。したがって、選択肢5.身体的疾患に伴う精神症状に対応するが正しい。

1.× 主な活動領域は、「地域」ではなく病棟内である。なぜなら、入院中の患者を対象とするため。
2.× ストレングスモデルには基づかない。ストレングスモデルとは、その人本来の「強さ」に重点を置く考え方である。通常の医療モデルがいわば患者の弱さに着目しているのと対照的に、ストレングスモデルでは患者の性格・技能・環境・関心など患者がもつ良い点、すなわち「強み(ストレングス)」に注目してそれを伸ばし、回復に向かわせるような取り組みを行う。
3.× 産業精神保健活動ではない。産業精神保健活動とは、職場におけるメンタルヘルスのことである。したがって、活動の場は職場となる。
4.× 「長期入院患者の退院支援」ではなく、身体疾患で入院中の患者の精神的な面にアプローチするものである。

 

 

 

 

 

 

49 家族心理教育について正しいのはどれか。

1. 病気に関する知識を増やす。
2. 患者の育て方の振り返りを行う。
3. 通常は個人プログラムとして行う。
4. 患者は診断名を知らないことが前提となる。
5. EE<Expressed Emotion>を高める指導を行う。

解答1

解説

 家族心理教育とは、家族が病気を正しく理解し、適切な対応や望ましい接し方を身につけることを目的とする。病気による行動特性を理解し、症状に対する適切な対応と接し方を学ぶことができ、治療効果の増進・再発防止にもつながる。したがって、選択肢1.病気に関する知識を増やすが正しい。

 

2.× 患者の育て方の振り返りは行わない。なぜなら、育て方の振り返りを行うと、より家族を責めてしまうことがあるため。患者本人と同様に、家族も疾患への絶望感と周囲の偏見からくる孤立感、将来に対する著しい不安感を抱えているため、特に精神疾患における家族心理教育では、「精神疾患は育て方が原因ではない」という立場をとることが多い。
3.× 通常は、「個人プログラム」ではなく、集団として行う。家族心理教育は、家族同士で共通する悩みを話し合うなどの場になる。
4.× 患者は、診断名を「知らない」ではなく、知っていることが前提となる。なぜなら、病名告知は通常行われるため。また、病名を告知されることで患者本人だけでなく家族も疾病を受け入れ、それに対し話し合ったり、理解を深めることができる。立ち向かっていこうとする姿勢が生まれる。
5.× EE<Expressed Emotion>は、「高める」のではなく抑える(コントロール)指導を行う。なぜなら、感情表出の強い家族のもとでは、患者の症状は悪化しやすいため。EE<Expressed Emotion>とは、感情表出のことである。患者と接するときに、家族に生じた主に否定的な感情を家族が、ありのままに表すことをいう。

 

 

 

 

 

 

50 精神障害者の就労支援について正しいのはどれか。

1. 就労継続支援B 型事業所では最低賃金が保障されていない。
2. 障害者就業・生活支援センターでは職場実習を斡旋しない。
3. ジョブコーチは事業主への支援を行うことはできない。
4. 精神障害者は障害者雇用率に算定できない。
5. 精神障害者は障害者職業能力開発校の支援対象ではない。

解答1

解説
1.〇 正しい。就労継続支援B 型事業所では、最低賃金が保障されていない。なぜなら、労働者ではなく「訓練生」の扱いとなるため。一般的な雇用形態とは異なる福祉的就労であり、労働基準法や最低賃金法などのような各種労働関係法規は適用されない。ちなみに、就労継続支援B型(非雇用型)とは、通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労も困難である者が対象である。期限の設定はない。
2.× 障害者就業・生活支援センターでは、職場実習を斡旋している。斡旋とは、「①交渉や商売などで、間にはいって、両方の者がうまくゆくように取りはからうこと。③また、物事を紹介し世話すること。」である。障害者就業・生活支援センターは、就業およびそれに伴う日常生活上の支援を必要とする障害者に対し、センター窓ロでの相談業務や職場・家庭訪問などを実践している。
3.× ジョブコーチは、事業主への支援を行う。ジョブコーチは、障害者と企業(事業主)に就労支援を行う専門職である。事業主への支援として、①障害特性を分かりやすく説明、②障害者との関わり方について助言、③作業指導、職務設計に関する提案などである。
4.× 精神障害者は、障害者雇用率に算定できる。障害者雇用促進法では、事業主に対して同法に定められた「法定雇用率」以上の割合で、身体障害者、知的障害者、精神障害者を雇用することを義務付けている。
5.× 精神障害者は、障害者職業能力開発校の支援対象である。基本的に障害者手帳を持っている人が対象であるため、精神障害者も支援対象である。障害者職業能力開発校とは、職業能力開発促進法に基づき、障害者が就職に必要な知識や技能、技術を習得して職業的に自立し、生活の安定と地位向上を図ることを目的として、国が設置し各自治体が運営する施設である。

障害者総合支援法に基づく障碍者の就労支援事業

①就労移行支援事業
 就業が可能と思われる65歳未満の障害者に対して、就業のために必要な知識や技能を身に付けてもらう。2年(特例で3年)が限度である。

②就労継続支援A型(雇用型)
 通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が可能である者が対象である。期限の設定はない。

③就労継続支援B型(非雇用型)
 通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労も困難である者が対象である。期限の設定はない。

 

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