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16 16歳の男子。高校に進学したが友人関係のトラブルが続き不登校となった。校医に相談し精神科を受診したところ、対人関係技能の低さ、こだわりの強さ、感覚過敏などを指摘され、作業療法に参加することとなった。
この患者でみられる行動の特徴として正しいのはどれか。
1. 相手に気を遣い過ぎる。
2. 本音と建前を区別できない。
3. 葛藤に満ちた対人関係を結ぶ。
4. 他者の関心を集めようとする。
5. 否定的評価を受ける状況を避けようとする。
解答2
解説
・16歳の男子。
・高校進学:友人関係のトラブルが続き不登校。
・対人関係技能の低さ、こだわりの強さ、感覚過敏などあり。
→本症例は、広汎性発達障害(自閉スペクトラム障害)と考えられる。広汎性発達障害(自閉スペクトラム障害)とは、相互的な社会関係とコミュニケーションのパターンの障害、および限局・常同・反復的な行動パターンがあげられる。生後5年以内に明らかとなる一群の障害である。通常は精神遅滞を伴う。広汎性発達障害、およびその下位分類である自閉症、アスペルガー症候群、高機能自閉症は、「自閉スペクトラム症」とまとめられた。
【診断基準の要点】
①「社会及び感情の相互性の障害」「社会的相互作用で用いられる非言語的コミュニケーションの障害」「発達レベル相応の関係を築き維持することの障害」の3つがすべて込められること。
②行動、興味活動の、限局的で反復的な様式が認められること。
1.× 相手に気を「遣い過ぎる」のではなく理解することが困難である。設問文からも「友人関係のトラブルが続き不登校で、対人関係技能の低さ」を指摘されていることが読み取れる。相互的な社会関係とコミュニケーションのパターンの障害は、主に相手に気を使うことが困難であることが多い。
2.〇 正しい。本音と建前を区別できない。広汎性発達障害者は、比喩的な表現を理解できず、字義通りに受け取ってしまう傾向が強い。例えば、「顔が広い」は、知り合いが多いという意味だが、自分の顔の面積が広いと受け取ってしまう。したがって、広汎性発達障害(自閉スペクトラム障害)には、抽象的な表現は避け、具体的な表現を心がける。
3.× 葛藤に満ちた対人関係を「結ぶ」のではなく結ぶことはしない。広汎性発達障害(自閉スペクトラム障害)は、葛藤というあいまいな状況を作ることはなく、対人関係においては、好きか嫌いかを明確に定めてその通りに行動する傾向がある。
4.× 他者の関心を集めようとする「行動はしない」。なぜなら、広汎性発達障害(自閉スペクトラム障害)は、自分の関心があることは他者も関心があると思い込む傾向があるため。したがって、一方的に話す。
5.× 否定的評価を受ける状況を「避けようとする」こともしない。なぜなら、広汎性発達障害(自閉スペクトラム障害)は、他人の気持ちを考えることが困難であるため。したがって、否定的評価を受けていても、それを実感することはなく、自分の興味・関心に従い行動する傾向がある。
17 40歳の男性。20歳から飲酒を始め、就職後はストレスを解消するために自宅で習慣的に飲酒していた。その後、毎晩の飲酒量が増え、遅刻や無断欠勤をし、休みの日は朝から飲酒するようになった。連続飲酒状態になり、リビングで泥酔し尿便を失禁していた。心配した妻に連れられて精神科を受診し、そのまま入院となった。離脱症状が治まり、体調が比較的安定したところで主治医から作業療法の指示が出された。初回面接時には「自分は病気ではない」と話した。
初期の対応で適切なのはどれか。
1. 飲酒しないように繰り返し指導する。
2. 心理教育により依存症の理解を促す。
3. AA< Alcoholics Anonymous >を紹介する。
4. 10 METs の運動で身体機能の回復を促す。
5. 飲酒による問題の存在を受け入れるよう促す。
解答2
解説
・40歳の男性。
・20歳から:飲酒を始め、毎晩の飲酒量が増え、遅刻や無断欠勤をするようになった。
・連続飲酒状態になり、リビングで泥酔し尿便を失禁し入院。
・現在:離脱症状が治まり、体調が比較的安定したところで主治医から作業療法の指示が出された。
・初回面接時には「自分は病気ではない」と話した。
→本症例はアルコール依存症の導入期~解毒期である。アルコール依存症における作業療法の導入期の目的は、動機づけや病気の認識の他、生活リズムの確立と体力の回復が大切である。精神的に負荷のかかる作業や集団で行う作業は尚早である。また、アルコール依存症の作業療法の導入期以降の課題は、生活リズムの維持と心理教育、退院の前には、生活設計や自助グループへの参加が目標となる。
1.× 飲酒しないように繰り返し指導するのは効果は薄い。なぜなら、アルコール依存症とは、少量の飲酒でも、自分の意志では止めることができず、連続飲酒状態のことであるため。また、本症例は「自分は病気ではない」と病識のないことが分かる。病識がないの断酒を指導しても「いつでも辞められる」という意識が芽生えてしまう。
2.〇 正しい。心理教育により依存症の理解を促す。初期の作業療法では、心理教育を行って、本人がアルコール依存症であることを理解してもらう必要がある。心理教育とは、症状の理解や服薬の必要性の理解など、病識の獲得と治療方法への理解が中心に行われる。
3.× AA(Alcoholics Anonymous:アルコール依存症者匿名の会)は現時点では時期尚早である。自助グループ(セルフヘルプグループ、当事者グループ)に、同じ問題や悩みを抱える者同士が集まり、自分の苦しみを訴えたり、仲間の体験談を聞いたりすることで問題を乗り越える力を養っていくものである。退院が近くなったら、断酒自助グループを紹介し、退院後の断酒継続のために参加することをすすめる。
4.× 10METsの運動で身体機能の回復を促す必要はない。なぜなら、10METSの運動(例えば分速161mのランニングや柔道などの格闘技、ラグビー、水泳の平泳ぎなどを6分間行う)は、体調が安定したばかりのこの時期には負荷が大きいため。ただし、アルコール依存症患者に軽めの運動は有効である。
5.× 飲酒による問題の存在を受け入れるよう促しても効果は薄い。なぜなら、本症例は、アルコール依存症者であるがそれを否認している状態であるため。ただし、依存症に対する理解ができれば飲酒による問題を自覚できるようになる。
18 22歳の女性。幼少期から聞き分けの良い子だと両親に評価されてきた。完全主義であり、社交的ではないものの仲の良い友人はいた。中学生の時に自己主張をして仲間はずれにされ、一時的に保健室登校になったことがある。その後は優秀な成績で高校、大学を卒業したが、就職してからは過剰適応によるストレスで過食傾向になった。体重増加を同僚に指摘されてから食事を制限し、身長は170cm だが体重を45kg未満に抑えることにこだわるようになった。
この患者への外来での作業療法士の関わりとして最も適切なのはどれか。
1. 幼少期の母子体験に触れる。
2. 作業療法の目的は半年間かけて伝える。
3. 体重測定の結果をグラフ化するのを手伝う。
4. 作業に失敗しても大丈夫であることを伝える。
5. 本人の作業療法での作品の背景にあるものを分析して伝える。
解答4
解説
・22歳の女性(完全主義、社交的ではない)。
・幼少期:聞き分け良く両親に評価。
・中学生:自己主張をして仲間はずれ、保健室登校を経験。
・高校、大学:優秀な成績で卒業。
・就職:過剰適応によるストレスで過食傾向になった。
・体重増加を同僚に指摘されてから食事を制限。
・現在:身長170cm、体重45kg未満。
→本症例は、摂食障害の①神経性無食症、②神経性大食症が疑われる。摂食障害には、①神経性無食症、②神経性大食症がある。共通して肥満恐怖、自己誘発性嘔吐、下剤・利尿剤の使用抑うつの症状がみられる。作業療法場面での特徴として、過活動、強迫的なこだわり、抑うつ、対人交流の希薄さ、表面的な対応がみられる。患者の性格として、細かい数値へのこだわり(①体重のグラム単位での増減、②この食べ物はあの食べ物より〇カロリー多いなど)がみられる。
【摂食障害の作業療法のポイント】
①ストレス解消、②食べ物以外へ関心を向ける、③自信の回復(自己表出、他者からの共感、自己管理)、④過度の活動をさせない、⑤身体症状、行動化に注意する。
【性格的特徴】
①強情、②負けず嫌い、③執着心が強い、③極端な行動に及びやすい。
1.× 作業療法士が、あえて幼少期の母子体験に触れる必要はない。これを中心的に扱うのであれば、作業療法士よりも心理士との心理面接が適切である。ちなみに、摂食障害の患者は生育歴で様々な問題を抱えていることが多く、母親との心理的葛藤がみられることも多いが、幼少期の母子体験に触れるのは患者との信頼関係ができた後に行うべきである。
2.× 作業療法の目的は、「半年間かけて伝える」のではなく、導入時に明確にしておく。なぜなら、特に摂食障害者はあいまいな設定が苦手(数字へのこだわりがある)であるため。作業療法導入にあたって、時間や場所、目的は明確にする。
3.× 体重測定の結果をグラフ化するのを手伝う必要はない。むりろ、体重増減へのこだわりが増強されてしまうため体重測定の結果をグラフ化するのは避けた方が良い。患者の性格として、細かい数値へのこだわり(①体重のグラム単位での増減、②この食べ物はあの食べ物より〇カロリー多いなど)がみられる。
4.〇 正しい。作業に失敗しても大丈夫であることを伝える。なぜなら、本症例の性格的特徴として、知的レベルが高く完璧主義である一方で、自己評価の低さがベースにあるため。したがって、作業に失敗すると自信を失い自責的になりやすいと考えられる。
5.× 本人の作業療法での作品の背景にあるものを分析して伝える(洞察指向の精神療法)のは時期尚早である。洞察型精神療法とは、無意識の葛藤をとり、自我の強さを欠くところに焦点を当てる技法で、深層心理の分析などを含む。摂食障害の作業療法では、「痩せることへのこだわり」が増強されるような作業内容を避け、こだわりを忘れさせるような作業内容が望ましい。
【支持的精神療法】 患者の精神構造は未分化であるという前提から、患者の自我機能を支えつつ、健康なレベルに戻すことを目的とする。
【洞察型精神療法】 無意識の葛藤をとり、自我の強さを欠くところに焦点を当てる技法で、深層心理の分析などを含む。
19 66歳の女性。歌が好きでカラオケをよく楽しんでいたが、1年前から言葉数が少なくなり夫が心配して精神科を初めて受診した。MMSEは正常範囲内であった。MRIでは前頭葉優位の限局性脳萎縮があり、SPECTでは両側の前頭葉から側頭葉に血流低下が認められた。現在は定年退職した夫と2人暮らしをしており、家事は夫が行っている。デイケアに週1回通所しており、好きだった塗り絵や和紙工芸などの作業活動に参加するが、落ち着きがなく途中で立ち去ろうとする行動が頻回にみられる。
作業活動の持続を促す対応として最も適切なのはどれか。
1. 注意がそれたら道具や材料を見せながら声をかける。
2. 顔見知りのメンバーが多いフロアに移動する。
3. 立ち去ってはいけないとはっきり伝える。
4. 初めて体験する手工芸を取り入れる。
5. セラピストを変更する。
解答1
解説
・66歳の女性(歌好き)
・1年前:言葉数が少なくなり受診した。
・MMSE:正常範囲内。
・MRI:前頭葉優位の限局性脳萎縮、SPECT:両側の前頭葉から側頭葉に血流低下。
・現在:定年退職した夫と2人暮らし(家事:夫)
・デイケアに週1回通所、好きだった塗り絵や和紙工芸などの作業活動に参加するが、落ち着きがなく途中で立ち去ろう(脱抑制)とする行動が頻回にみられる。
→本症例は、前頭側頭型認知症と考えられる。症状として、①発語の減少、②自発性の低下、③行動異常、④前頭葉優位の萎縮、⑤前頭葉・側頭葉の血流低下がみられる。他の特徴は、記憶や日常生活動作の障害はあまり目立たないが、落ち着きのなさや脱抑制(本症例の場合は「立ち去り」)などの性格変化が目立つ。対応としては、気が散らない環境で、慣れている作業を続けてもらうのが良い。
1.〇 正しい。注意がそれたら道具や材料を見せながら声をかける。本症例は、設問から「好きだった塗り絵や和紙工芸などの作業活動に参加するが、落ち着きがなく途中で立ち去ろうとする行動が頻回にみられる」。注意がそれやすい環境を調整することの他にも、注意がそれたら道具や材料を見せながら声をかけることも作業活動の持続を促す対応である。
2.× 顔見知りのメンバーが「多いフロア」ではなく少ないフロアに移動する。なぜなら、顔見知りが多いと注意がそれやすいため。雑音がなく個別に行える環境に調整する。
3.× 「立ち去ってはいけない」とはっきり伝える必要はない。なぜなら、行動面での問題を口頭で指摘しても、そのタイミングでは有効かもしれないが、その場限りの対応かつ禁止・命令口調であるため怒られていると受け取られやすく自身の喪失にもつながりやすいため。本症例は、前頭側頭型認知症による脱抑制が起こっていると考え、治療は、症状を改善したり、進行を防いだりする有効な治療方法はなく、抗精神病薬を処方する対症療法が主に行われている。
4.× 初めて体験する手工芸を取り入れる必要はない。なぜなら、初めて体験する手工芸は慣れるのに時間がかかり、途中で飽きてしまうことが多いため。したがって、本人の趣味を取り入れるなど馴染みのある作業の方がよい。
5.× セラピストを変更する必要はない。なぜなら、スタッフを含めた治療環境の変化は患者の混乱を招くため。
病理所見として、前頭葉と側頭葉が特異的に萎縮する特徴を持つ認知症である。脳血流量の低下や脳萎縮により人格変化、精神荒廃が生じ、植物状態におちいることがあり、2~8年で衰弱して死亡することが多い。発症年齢が50~60代と比較的若く、初発症状は人格障害・情緒障害などがみられるが、病期前半でも記憶障害・見当識障害はほとんどみられない。働き盛りの年代で発症することが多いことで、患者さんご本人が「自分は病気である」という自覚がないことが多い。その後、症状が進行するにつれ、性的逸脱行為(見知らぬ異性に道で抱きつくなどの抑制のきかない反社会的な行動)、滞続言語(何を聞いても自分の名前や生年月日など同じ語句を答える)、食行動の異常(毎日同じものを食べ続ける常同行動)などがみられる。治療は、症状を改善したり、進行を防いだりする有効な治療方法はなく、抗精神病薬を処方する対症療法が主に行われている。
(参考:「前頭側頭型認知症」健康長寿ネット様HPより)
20 32歳の女性。8歳の娘が担任の先生の勧めで1週前に精神科を受診し、注意欠如・多動性障害と診断を受けた。放課後等デイサービスを利用することになり、作業療法士がこの女性と面接したところ「集中力が続かないし、物忘れもひどかったけど、まさか自分の子どもが障害児なんて思っておらずいつも叱っていた。お友達ともうまくいっていない状況が続いており、とても心配していた。これからどうしたら良いでしょうか」と話す。
この時の作業療法士の対応で最も適切なのはどれか。
1. 娘への不適切な対応を指摘する。
2. 障害の特徴について解説する。
3. 他の障害児の親に会わせる。
4. 障害は改善すると伝える。
5. 不安を受け止める。
解答5
解説
・32歳の女性(注意欠如・多動性障害)
・放課後等デイサービスを利用
・作業療法士がこの女性と面接したところ「集中力が続かないし、物忘れもひどかったけど、まさか自分の子どもが障害児なんて思っておらずいつも叱っていた。お友達ともうまくいっていない状況が続いており、とても心配していた。これからどうしたら良いでしょうか」と話す。
→注意欠如・多動性障害(ADHD)の特徴として、①注意欠如、②多動性、③衝動性である。対人関係面で周囲との軋轢を生じやすく、大人からの叱責や子どもからのいじめにあうことがある。このため、二次障害として、自信喪失、自己嫌悪、自己評価の低下がみられることがある。そのため、患児の行動特徴を周囲が理解し、適切に支援をしていくことが重要である。 サポートが良ければ、成長とともに過半数は改善していく。放置すると、思春期に感情障害、行為障害、精神病様状態に陥りやすい。
1.× 娘への不適切な対応を指摘するのは時期尚早である。なぜなら、母親は娘が障害児であることがわかってショックを受けている段階であるため。これまでの娘への対応の悪さを指摘されることでさらにショックが増す可能性が高いため、娘への不適切な対応を指摘するのはある程度受容ができてから行う。
2.× 障害の特徴について解説するのは時期尚早である。なぜなら、母親のショック・不安が強い状態であるため。ただし、障害の理解は重要であるため、ある程度受容ができたら行う。
3.× 他の障害児の親に会わせるのは時期尚早である。なぜなら、母親のショック・不安が強い状態であるため。ただし、同じ患児をもつ母親同士の情報交換は重要であるため、ある程度受容ができたら行う。
4.× 障害は改善すると伝えてはならない。サポートが良ければ、成長とともに過半数は改善していくが、安易に楽観的な見通しを述べてはいけない。
5.〇 正しい。不安を受け止める。まずは母親の言葉に耳を傾け、不安な気持ちを受け止めることがこの時の作業療法士の対応で最も適切である。受容の段階は、「ショック→否認→混乱→再起→受容」にみられ、その過程で様々な感情が起こる。
障害受容の過程は、「ショック期→否認期→混乱期→解決への努力期(再起)→受容期」の順に現れる。5段階のプロセスは順序通りに進むわけはなく、また障害受容に至らない障害者も存在する。
①ショック期:感情が鈍磨した状態
②否認期:現実に起こった障害を否認する
③混乱期:攻撃的あるいは自責的な時期
④解決への努力期(再起):自己の努力を始める時期
⑤受容期:新しい価値観や生きがいを感じる時期