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※解答の引用:第60回理学療法士国家試験及び第60回作業療法士国家試験の合格発表について(厚生労働省HPより)
1 Danielsらの徒手筋力テストの段階5及び4の検査を図に示す。
検査者が抵抗を加える位置で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.肩甲骨挙上
2.肘屈曲
3.母指内転
4.股関節屈曲、外転、外旋と膝屈曲
5.股関節内転
解答3・4
解説
1.× 肩甲骨挙上の抵抗を加える位置は、両肩の上にその輪郭に沿うように置く。図は、上腕からかけている。
2.× 肘屈曲の抵抗を加える位置は、前腕遠位(手関節より近位)である。図は、手掌からかけている。
3.〇 正しい。母指内転の抵抗を加える位置は、母指の基節骨の内側で外側方向に抵抗を加える。
4.〇 正しい。股関節屈曲、外転、外旋と膝屈曲の抵抗を加える位置は、①片手で膝外側、②反対の手を下腿内側である。
5.× 股関節内転の抵抗を加える位置は、大腿遠位部である。図は、下腿近位からかけている。
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2 36歳の男性。手にバスケットボールが当たって受傷した。来院時の手指の写真と単純エックス線写真を下に示す。
考えられるのはどれか。
1.Bennett骨折
2.Heberden結節
3.槌指
4.ばね指
5.ボクサー骨折
解答3
解説
1.× Bennett骨折(ベネット骨折)より考えられるものが他にある。なぜなら、本症例の受傷部位は左手の示指であるため。Bennett骨折(ベネット骨折)とは、第一中手骨基部の関節内骨折で、第一中手骨の脱臼を伴いやすい。母指先端にボールが当たったり喧嘩やボクシングで母指の先端に力が加わった際に起こりやすい。骨棘は、骨折や関節の摩耗により関節周囲の骨が増殖する現象である。
2.× Heberden結節より考えられるものが他にある。なぜなら、本症例は、急性で手にバスケットボールが当たって受傷しているため。Heberden結節とは、変形性関節症による遠位指節間関節(DIP関節)の変形である。主に中高年の女性に多く見られ、指先の関節が太く変形し、痛みや可動域制限を伴うことがある。
・Heberden結節(へバーデン結節):DIP関節に生じる。
・Bouchard結節(ブシャール結節):PIP関節に生じる。
3.〇 正しい。槌指が最も考えられる。槌指とは、DIP関節の過屈曲によりDIP関節の伸筋腱の断裂で起こる。DIP関節が曲がったままで痛みや腫れがあり、自動伸展は不能で、自分で伸ばそうと思っても伸びない。しかし、他動伸展は可能である。原因として、鋭利な刃物などによる直接的な腱の切断、バレーボール、バスケットボール、野球などの球技による外力での腱断裂があげられる。
4.× ばね指より考えられるものが他にある。なぜなら、本症例は、急性で手にバスケットボールが当たって受傷しているため。弾発指(ばね指)とは、指を曲げて伸ばそうとしたときに、弾くようなバネに似た動きをする状態のことである。ばね指は、指を曲げるのに必要な腱や腱鞘に炎症が起こり、腱鞘炎が悪化することで発症する。特に手指を使いすぎていたり、スポーツをしたりしているとかかりやすいといわれている。
5.× ボクサー骨折より考えられるものが他にある。なぜなら、本症例の受傷部位は左手の示指であるため。ボクサー骨折とは、第5中手骨頸部骨折ともいい、拳の形成時に衝撃を受けることで発生することが多い骨折である。
3 67歳の男性。右利き。灯油による引火で右前腕以遠にⅢ度の熱傷を受傷した。救命救急センターに搬送され、壊死組織のデブリドマンを施行され、植皮術が行われた。術後3日目にベッドサイドで作業療法を開始した。
この時点での受傷手への対応で正しいのはどれか。
1.抵抗運動
2.安静時の挙上
3.動的スプリント製作
4.他動関節可動域訓練
5.弾性包帯による圧迫療法
解答2
解説
・67歳の男性(右利き)。
・右前腕以遠:Ⅲ度の熱傷。
・壊死組織のデブリドマンを施行(植皮術施行)。
・術後3日目:ベッドサイドで作業療法を開始。
→熱傷のリハビリプログラムは、主に①急性期と②慢性期に分けることができる。一般的に、熱傷のリハビリでは急性期においてより、慢性期に比重がおかれるが、リハビリプログラムは熱傷の受傷直後より開始されなければならない。
①急性期:熱傷の程度、部位と範囲が予後に重大な影響を及ぼす。重度熱傷では、ショックに陥るため、蘇生術や心肺機能、腎機能の維持と電解質、体液のバランスが急務となる。また、熱風の吸引などによる気管の損傷は呼吸不全をきたすため、時には気管切開も必要となる。
②慢性期:全身状態が落ち着き、この時期の課題は、疼痛、感染、植皮術、ケロイド、拘縮、ADL、心理的な問題となる。ケロイドとは、皮膚の深いところにある真皮という部分で炎症が続いてしまうことにより生じる疾患である。(参考:「総合リハビリテーション 7巻4号 (1979年4月発行)熱傷のリハビリテーション」著 千野 直一より)
【熱傷のリハビリ】
①変形拘縮の予防
②瘢痕形成予防
③浮腫の軽減
④筋力維持改善
⑤全身体力の維持など。
1.3.4.× 抵抗運動/動的スプリント製作/他動関節可動域訓練といった関節を動かすのは、十分に皮膚が生着してから実施する。本症例は、術後3日目であり、皮膚の生着が見込める1週間程度までは、積極的な作業療法の開始は困難である。
2.〇 正しい。安静時の挙上は、受傷手への対応である。なぜなら、浮腫の予防に寄与するため。挙上によって血液やリンパ液のうっ滞を軽減できる。各関節に生じやすい拘縮があるので考慮が必要である。また、スプリントや装具を活用しながらポジショニングを行う。植皮を行っている場合には5日~2週間程度、患部に伸張刺激が加わる運動は避ける。
5.× 弾性包帯による圧迫療法は、十分に皮膚が生着してから実施する。なぜなら、術後すぐに圧迫をかけると移植片に剪断力がかかり、定着に影響を及ぼす可能性があるため。弾性包帯を用いた圧迫療法は、熱傷が治癒した後に生じる肥厚性瘢痕(ケロイド)や浮腫を予防・軽減する目的で行われる。熱傷後の治癒過程で皮膚が厚く盛り上がるのを防ぐため、適切な圧迫を加えることで瘢痕の形成を抑えることが期待できる。
・Ⅰ度:【深さ】表皮【症状】発赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛、水泡形成(ー)【治癒】数日間、瘢痕とはならない。
・Ⅱ度:【深さ】真皮浅層(SDB)【症状】強い疼痛、腫脹、水泡形成(水泡底は赤色)【治癒】1~2週間、瘢痕再生する。
・Ⅱ度:【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行。
・Ⅲ度:【深さ】皮下組織【症状】疼痛(ー)、白く乾燥、炭化水泡形成はない【治癒】一か月以上、小さいものは瘢痕治癒、植皮が必要。
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4.21歳の女性。先天性の右上肢欠損。上肢の写真を下に示す。
起こり得る2次性の障害で最もみられるのはどれか。
1.幻肢痛
2.神経腫
3.側弯症
4.断端浮腫
5.骨断端の過成長
解答3
解説
・21歳の女性(先天性の右上肢欠損)。
→本症例は、先天性である。先天性と後天性の特徴をおさえておこう。
①先天性とは、生まれつきのこと。
②後天性とは、生まれつきではなく経過で起こった場合。
1.× 幻肢痛は、後天的切断で起こりやすい。幻肢痛のメカニズム(発生の機序)は解明されていないが、もともと存在していた四肢が切断されることで脳内のボディイメージと現実の不一致が生じている結果とされている。幻肢・幻肢痛とは、腕や足の切断後、失ったはずの感覚があり、かつそこに痛みを感じる状態である。一般的に、切断の手術後1週間以内に発症し、6か月~2年で消失することが多い(※詳しくは下参照)。
2.× 神経腫は、後天的切断で起こりやすい。なぜなら、神経腫は、神経が損傷した際に再生過程で神経線維が不規則に増殖することで形成されるため。ちなみに、神経腫とは、神経の損傷や手術後の再生過程で、神経線維が異常に増殖して生じる良性の腫瘍である。痛みやしこりを伴うことがあり、特に外傷後に発生するケースが多く見られる。治療法は症状や場所により異なり、症状の程度や部位によっては、神経痛を引き起こすこともある。
3.〇 正しい。側弯症が起こり得る2次性の障害で最もみられる。なぜなら、先天性の上肢欠損では、身体の左右差による代償や姿勢のアンバランスが長期間続くため。特に、成長期における左右差や代償動作が原因となる。したがって、脊柱への負担が蓄積しやすく、結果として側弯症が最も生じやすい。
4.× 断端浮腫は、後天的切断で起こりやすい。なぜなら、先天性の場合、必ずしも「切断面」という形ではなく、もともと欠損しているため。ちなみに、断端浮腫とは、手術や外傷で切断された部位の断端に、血液やリンパ液の循環不全から液体が蓄積しむくみが発生する現象です。この状態は痛みや不快感を伴い、傷の治癒やリハビリに悪影響を及ぼす。
5.× 骨断端の過成長は、後天的切断で起こりやすい。なぜなら、成長過程にある子どもが手術で骨を切断すると、切断面の骨端線(成長板)が刺激を受け、過度に成長してしまうため。ちなみに、骨断端の過成長とは、外傷や手術で切断された部位の骨端が、治癒過程で刺激を受け通常より過度に伸長する現象である。特に、小児期に外科的に切断した場合、切断面の骨端線(成長板)が刺激を受け、過度に成長してしまうことがある。制御不能な骨成長は、義肢装着の妨げや、痛み・変形を引き起こす原因となる。
幻肢・幻肢痛とは、腕や足の切断後、失ったはずの感覚があり、かつそこに痛みを感じる状態である。切断をした人の約7割で生じるが、強い痛みは5~10%とまれである。幻肢痛のメカニズム(発生の機序)は解明されていない。下肢より上肢、近位部より遠位部に多く、電撃痛や、捻られるような痛み、ズキズキするような痛みなど様々である。一般的に、切断の手術後1週間以内に発症し、6か月~2年で消失することが多いが、それ以上長引くこともある。幻肢の大きさは健肢とほぼ同様で、幻肢痛が発生するのは、失った手や指、足などが多い。一方、肘や膝に感じることはまれで、4~6歳以下の小児切断例では出現しないことが多い。幻肢痛への一般的な治療方法として、薬物療法と非薬物療法に分けられる。幻肢痛は天候や精神的ストレスに左右されるため、薬物療法は、鎮痛剤(アセトアミノフェン、イブプロフェン)、三環系抗うつ薬抗痙攣薬、プレガバリン(リリカ)などの抗てんかん薬が、神経痛の治療に使われる。非薬物療法としては、ミラーセラピーである。幻肢は断端の運動につれて移動し、断場の状態(神経や癒着など)に関連を持つ場合がある。
※幻視痛は、心因性の要素が関係するため薬物療法以外の治療法 (バイオフィードバック、リラクセーション訓練、認知行動療法、経皮的電気神経刺激法【TENS】 など)も用いられる。ちなみに、ミラーセラピー(mirror therapy)とは、鏡を使用して運動の視覚フィードバックを与える治療法である。矢状面で両肢間に鏡を設置し、鏡に映された一側肢が鏡に隠れた反対側肢の位置と重なるようにする。切断や麻痺などの患側肢の遠位部に健側肢の映った鏡像がつながって見えることで、患側肢が健常な実像であるかのように感じさせながら運動を行う。
(※参考:「幻肢痛」慢性通治療の専門医による痛みと身体のQ&A様HPより)
5 69歳の女性。関節リウマチ。45歳で診断を受けて投薬治療が開始された。SteinbrockerのステージⅢ、クラス2。両手指は軽度尺側偏位で動揺性を認めるが痛みはない。右小指にはスワンネック変形を認める。評価時には「日常生活でしっかり手を使うようにしないと関節の変形が進む」と認識していた。
作業療法で最も優先順位が高いのはどれか。
1.関節保護指導
2.上肢等張性筋力訓練
3.午前中の家事実施を指導
4.柔らかいマットレスの導入
5.右小指のリングスプリン卜の製作
解答1
解説
・69歳の女性(45歳:関節リウマチ、投薬治療)。
・SteinbrockerのステージⅢ、クラス2。
・両手指:軽度尺側偏位、動揺性あり(痛みなし)。
・右小指:スワンネック変形。
・評価時「日常生活でしっかり手を使うようにしないと関節の変形が進む」と。
→本症例は、「日常生活でしっかり手を使うようにしないと関節の変形が進む」と誤認している可能性が示唆される。過度な負担や不適切な使い方で変形が進行するリスクが高い。関節リウマチ患者に対する日常生活の指導は、関節保護の原則に基づき行う。関節保護の原則とは、疼痛を増強するものは避けること、安静と活動のバランスを考慮すること、人的・物的な環境を整備することがあげられる。変形の進みやすい向きでの荷重がかからないように手を使う諸動作において、手関節や手指への負担が小さくなるように工夫された自助具が求められる。
1.〇 正しい。関節保護指導は、作業療法で最も優先順位が高い。なぜなら、本症例は、「日常生活でしっかり手を使うようにしないと関節の変形が進む」と誤認している可能性が示唆されるため。過度な負担や不適切な使い方で変形が進行するリスクが高い。関節リウマチ患者に対する日常生活の指導は、関節保護の原則に基づき行う。例えば、①重いものを持つときは手指だけでなく前腕全体を使う。②開けにくい瓶はオープナーを利用する。③指先より手掌や前腕に荷重を分散させるなどである。
2.× 上肢等張性筋力訓練の優先度は低い。なぜなら、等張性筋力訓練は関節運動を伴うため。過度の負荷は、疼痛や変形を助長する恐れがある。
3.× 午前中の家事実施を指導の優先度は低い。なぜなら、関節リウマチの特徴の一つに、「朝のこわばり」があるため。したがって、午前より午後のほうが、関節に負担をかけず、動きやすいことが多い。
4.× 柔らかいマットレスの導入の優先度は低い。なぜなら、柔らかいマットレスは、体幹の沈み込み、頸部だけでなくその他の関節に負担がかかるため。
5.× 右小指のリングスプリン卜の製作の優先度は低い。なぜなら、本症例の「日常生活でしっかり手を使うようにしないと関節の変形が進む」と誤認に対するアプローチが不十分であるため。ちなみに、リングスプリン卜とは、「母指・手指では主に作業療法士が作製するスプリントが中心となります。スワンネック変形・ボタン穴変形に対して、リングスプリントを装着します。変形予防や拘縮の除去を目的に日中または夜間装着します」と記載されている(※引用:「関節リウマチの基礎 P50」日本リウマチ学会様HPより)。
関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。
(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)
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