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36 口すぼめ呼吸の指導で正しいのはどれか。
1.吸気を延長させる。
2.呼吸数を増加させる。
3.COPD患者に適用する。
4.機能的残気量を増加させる。
5.頬を膨らませるように指導する。
解答3
解説
口すぼめ呼吸とは、呼気時に口をすぼめて抵抗を与えることにより気道内圧を高め、これにより末梢気管支の閉塞を防いで肺胞中の空気を出しやすくする方法である。鼻から息を吸い、呼気は吸気時の2倍以上の時間をかけて口をすぼめてゆっくりと息を吐く。
1.× 「呼気」ではなく吸気を延長させる。口すぼめ呼吸は、鼻から息を吸い、呼気は吸気時の2倍以上の時間をかけて口をすぼめてゆっくりと息を吐く。
2.× 呼吸数を「増加」ではなく低下させる。なぜなら、口すぼめ呼吸は、呼気をゆっくり行うことで全体の呼吸数を減少するため。ゆっくりと深い呼吸を促すために用いられる。
3.〇 正しい。COPD患者に適用する。なぜなら、慢性閉塞性肺疾患の症状の一つに、1秒率が低下するため。1秒率とは、息を努力して吐き出したときに呼出される空気量のうち最初の一秒間に吐き出された量の割合である。したがって、気道の虚脱を防ぎ、呼気時の陽圧を維持する効果があるため、口すぼめ呼吸を行いリハビリすることが多い。
4.× 口すぼめ呼吸により、機能的残気量は「変化させるものではない」。口すぼめ呼吸は、呼気時に気道内圧を高め、気道虚脱を防ぐことで呼吸効率を改善し、動的な肺過膨張を抑える。これにより、機能的残気量の増加を防ぐ補助的効果があるが、直接大幅な減少をもたらすものでもない。ちなみに、機能的残気量とは、安静時呼気位の後に残っている空気量のことをいう。機能的残気量は、胸郭の弾性収縮力の障害が大きい疾患(肺線維症、胸郭変形、胸膜肥厚)で減少する。
5.× 「頬を膨らませる」ではなく唇をすぼめるように指導する。なぜなら、「唇をすぼめる」ことで気道抵抗を作り出し、呼気をゆっくり行うことができるため。一方、頬を膨らませると、呼気の圧力が分散し、効果が減少する可能性がある。
(※図引用:「呼吸機能検査 フロー・ボリューム曲線」医學事始様HPより)
慢性閉塞性肺疾患とは、以前には慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称である。最大の原因は喫煙であり、喫煙者の約20%が慢性閉塞性肺疾患を発症する。他の特徴として、肺の過膨張、両側肺野の透過性亢進、横隔膜低位、横隔膜の平低化、滴状心などの特徴が認められる。進行性・不可逆性の閉塞性換気障害による症状が現れる。
増加:残気量・残気率・肺コンプライアンス・全肺気量・PaCO2
減少:一秒率・一秒量・肺活量・肺拡散能・PaO2
37 MRC sum scoreで評価できるのはどれか。
1.ICU-AW
2.意識障害
3.嚥下障害
4.入院関連能力低下[HADK〈Hospitalization Associated Disability〉]
5.抑うつ
解答1
解説
MRCスケール(MRC sumスコア)とは、6関節(上肢:肩関節外転、肘関節屈曲、手関節背屈、下肢:股関節屈曲、膝関節伸展、足関節背屈)の合計点から筋力状態を評価するスコアである。
徒手筋力テストで行うため、点数は同じ。
Grade0:視診あるいは触診において収縮がない。
Grade1:視診あるいは触診によりわすかな収縮が認められるが、四肢の動きはみられない。
Grade2:重力を除いた状態でほほ全可動域関節を動かせる。
Grade3:重力に抗してほぼ全可動域を動かせる。
Grade4:中程度の抵抗に抗してほぼ全稼働範囲を動かせる。
Grade5:正常筋力。
6関節を徒手筋力テストで評価し、四肢スコア合計が60点満点となる。5点×6関節×2(左右)
1.〇 正しい。ICU-AWは、MRC sum scoreで評価できる。集中治療室獲得性筋力低下〈ICU-AW:ICU acquired weakness)とは、ICU入室後の重症患者さんにおいて、数日以内に発生する急性の筋力低下を総称したものである。発症すると病態の重症化を招き、死亡率の増加やICU入室期間の延長をきたす。診断は筋力評価などの臨床所見による方法が有用である(※診断基準は参照)。
2.× 意識障害とは、意識が清明ではない状態のことを示し、覚醒度あるいは自分自身と周りの認識のいずれかが障害されていることである。GCS(Glasgow Coma Scale)やJCS(Japan coma Scale)などが評価としてあげられる。
3.× 嚥下障害とは、口から胃まで食物などを運ぶ(飲み込み)の障害のことをいい、口腔期から食道期までの動作を指すことが多い。水飲みテストや嚥下造影検査、ファイバースコープ下嚥下検査などが用いられる。
4.× 入院関連能力低下[HADK〈Hospitalization Associated Disability〉]とは、「直接的には運動障害を来さない疾患(肺炎,心不全,悪性腫瘍など)のために入院したときに発症する,(過剰な)安静臥床(すなわち不動)を原因としたADL障害もしくは身体機能低下/認知・精神機能低下」と定義される。HADKの評価には、ADLであるBIやFIMが用いられる。
5.× 抑うつとは、気分が落ち込んでエネルギーが枯渇してしまった感じがして、意欲が著しく低下している状態をいう。抑うつの評価には、ベックうつ病調査表(BDI:Beck Depression Inventory)や簡易抑うつ症状尺度(Quick Inventory of Depressive Symptomatology:QIDS -J)が用いられる。
下記の1かつ2かつ【3or4】かつ5を満たす。
1.重症病態の発症後に進展した全身の筋力低下。
2.筋力低下はびまん性(近位筋・遠位筋の両者)、左右対称性、弛緩性であり、通常脳神経支配筋は侵されない。
3.24時問以上空けて2回以上行ったMRCスコアの合計が48点未満、または検査可能な筋の平均MRCスコアが4点未満。
4.人工呼吸器に依存している。
5.背景にある重症疾患と関連しない筋力低下の原因が除外されている。
38 理学療法評価における社会的情報に該当しないのはどれか。
1.趣味
2.職業
3.体重
4.配偶者の有無
5.家屋内の段差の有無
解答3
解説
社会歴とは、疾病の発病原因となる患者の生活上の習慣や環境をいい、患者の生活像である。例えば、①出身地、②教育、③職業、④嗜好、⑤趣味、⑥一日の過ごしかたをいう。
社会情報とは、家族歴や社会歴が疾病との関連での聴取であるのに対して、社会情報は、患者の退院後の日常生活活動や社会参加レベルの目標設定に役立てるのに重要である。例えば、①家族関係、②経済状況、③住環境がそれにあたる。
(※参考:「理学療法評価学改訂第3版 P18」 著:松澤 正様より)
1~2.〇 趣味/職業は、「社会的情報(正確には、社会歴)」に該当する。※私の手持ちの資料では、選択肢1~2は、社会歴で、社会的情報とは項目が異なると認識しているが、分かる方いらしたらコメントにてご教授お願い致します。
3.× 体重は、「形態測定」に該当する。
4~5.〇 配偶者の有無(家族関係)/家屋内の段差の有無(住環境)は、「社会的情報」に該当する。
・家族関係:患者が退院してから生活ができるような状況にあるかということである。すなわち,患者が介護を必要とする場合,介護者がいるか,一人暮らしなのかなどのサポート態勢があるかを収集する。また,家族の中での役割や家族の健康状態を知ることも大切である。
・経済状況:経済状況は,患者の生活を支えるために重要である。特に,年金や健康保険,その他収入があるかを聴取することは,患者の退院後の方向性に影響を及ぼすので,ソーシャルワーカーなどから情報収集することが大切である。
・住環境:住環境は,患者が退院して,日常生活をする場所であり,病院でのADLの自立ができていても,自宅での環境の中では自立しないことがある。そのようなことから,事前に家庭訪問をして,患者が自立した生活ができるのかを調べることが重要である。もし,家屋改造が必要な場合は,退院前に家屋改造に対する訪問指導をする。(※引用:「理学療法評価学改訂第3版 P18」 著:松澤 正様より)
39 血液検査項目と疾患の組合せで正しいのはどれか。
1.CK-MB:末梢動脈疾患[PAD(peripher alartery disease)]
2.Dダイマー:深部静脈血栓症〈DVT〉
3.eGFR:慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉
4.NT-proBNP:間質性肺疾患〈ILD〉
5.SP-D:慢性心不全〈CHF〉
解答2
解説
1.× CK-MB:末梢動脈疾患[PAD(peripher alartery disease)]
・CK-MB(クレアチンキナーゼ)は、急性心筋梗塞、心筋虚血、心筋炎の診断に使用される心臓マーカーである。
・末梢動脈疾患とは、心臓や脳に供給する動脈以外の動脈が異常に狭くなる疾患である。
2.〇 正しい。Dダイマー:深部静脈血栓症〈DVT〉
・Dダイマーとは、フィブリンがプラスミンによって分解される際の生成物である。つまり、血液検査において血栓症の判定に用いられる。
・深部静脈血栓症とは、長時間の安静や手術などの血流低下により下肢の静脈に血栓が詰まってしまう病気である。下肢の疼痛、圧痛、熱感などの症状がみられる。ほかのリスク因子として、脱水や肥満、化学療法などがあげられる。
3.× eGFR:慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉
・推算糸球体濾過量〈eGFR:Glomerular Filtration Rate〉は、腎臓にどれくらい老廃物を尿へ排泄する能力があるかを示しており、この値が低いほど腎臓の働きが悪いということになる。5つの段階に分類され、①正常(G1:90以上)、②軽度低下(G2:60〜89)、③中等度低下(G3a:45〜59、G3b:30〜44)、④高度低下(G4:15〜29)、⑤末期腎不全(G5:15以下)に分類される。
・慢性閉塞性肺疾患とは、以前には慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称である。他の特徴として、肺の過膨張、両側肺野の透過性亢進、横隔膜低位、横隔膜の平低化、滴状心などの特徴が認められる。進行性・不可逆性の閉塞性換気障害による症状が現れる。
増加:残気量・残気率・肺コンプライアンス・全肺気量・PaCO2
減少:一秒率・一秒量・肺活量・肺拡散能・PaO2
4.× NT-proBNP:間質性肺疾患〈ILD〉
・NT-proBNP検査(N-Terminal pro Brain Natriuretic Peptide:慢性心不全リスク検査)とは、心不全の検査で、心臓機能が低下して心臓の負担が大きくなるほど(その重症度に応じて)血液中に多く分泌され、数値が高くなる。施設によって、BNP検査を用いるところがあるが、基準値が異なる。
・間質性肺疾患とは、肺の間質と呼ばれる部分に炎症や線維化などの病的な変化が起こり、肺が硬く縮んでしまう病気である。肺が硬くなる病的変化を線維化と呼ぶことから、肺線維症とも呼ばれる。
5.× SP-D:慢性心不全〈CHF〉
・SP-D(肺サーファクタントプロテインD)とは、間質性肺炎のマーカーである。Ⅱ型肺胞上皮細胞と細気管支領域に存在するクララ細胞から産生される物質である。肺に極めて特異性が高く、間質性肺疾患で高値を示し、活動性の指標になる。ちなみに、間質性肺炎とは、肺の間質組織の線維化が起こる疾患の総称で、慢性的かつ進行性の特徴を持つ。病因は、喫煙、職業上の曝露、感染、免疫不全などである。症状は咳、痰、呼吸困難などで、早期には特徴的な症状がないこともある。
・慢性心不全とは、心臓だけではなく、全身症状(息切れや脱力感など)をきたし、日常生活に支障をきたしている状態である。代表的な症状は、動悸・動作時の息切れ・呼吸困難・体のむくみ・体重増加などあり、さらに悪化すれば、夜間に急に息が苦しくなって目が覚めたり、じっとしていても息が切れることもある。日常生活の指導では、①塩分の過剰摂取を控える、②息切れしないように休みながら活動する、③適度な運動で体力をつける等が挙げられる。
BNP(心臓に無理がかかると増加する心臓ホルモン)とは、心臓に無理がかかると増加する心臓ホルモンのことである。心不全の病態を反映する指標であるため、BNPの増加は心不全の増悪を表している。
40 筋力増強運動で正しいのはどれか。
1.高齢者では高負荷低頻度で実施するのがよい。
2.運動の効果には対象者の運動経験は影響しない。
3.等張性収縮には求心性収縮と遠心性収縮がある。
4.筋力維持には最大筋力の40~50%以上の負荷が必要である。
5.等速性収縮の角速度高速域での運動は筋出力効果が増大する。
解答3
解説
1.× 高齢者では、「高負荷低頻度」ではなく低負荷高頻度で実施するのがよい。なぜなら、低負荷高頻度(全身持久力トレーニング:有酸素運動)は、呼吸筋や肺コンプライアンスを向上させ、運動耐容能を向上につながるため。一方、高負荷の筋力増強訓練(ハイパワーエクササイズ)は、速筋(筋肥大)の強化を主とした運動であるため、一般健常者も含め高齢者の日常生活において、高負荷下においた短時間な筋力発揮は必要ない。したがって、介護予防や病気の進行の予防に対し、低~中強度の筋力トレーニングが効果的である。
2.× 運動の効果には対象者の運動経験は「影響する」。なぜなら、個別性の原則のため。これは、個人の特性(運動経験、遺伝的要因、体力レベルなど)によって、同じトレーニングでも効果が異なるものである。また、トレーニングと同一の収縮様式における筋力の増加率は、他の収縮様式より大きいとされている(特異性の原則)。
3.〇 正しい。等張性収縮には、求心性収縮と遠心性収縮がある。等張性収縮とは、筋の収縮力(張力)が変化しないままに、筋の全長が変化する状態である。
①求心性収縮とは、筋収縮時に筋の起始部と停止部が近づく関節運動である。
②遠心性収縮とは、筋が収縮しながら伸張されていく運動である。
※等張性運動は心肺機能の維持・改善に適する筋の収縮・弛緩の反復によるポンプ効果で、血液循環がよくなる。
4.× 筋力維持には、最大筋力の「40~50%以上」ではなく20~30%以上の負荷が必要である。ちなみに、筋肥大を見込むためには、1RMに対する負荷量75~80%で、反復回数は8~10回とされている。
5.× 等速性収縮の角速度高速域での運動は、筋出力効果が「増大」ではなく低下する。なぜなら、等速性収縮では、角速度が上がると筋が発揮できる最大トルクは低下するため。つまり、等速性収縮の筋出力効果は、筋の力・速度関係(トルクと角速度の積)であるといえる。ただし、最適な角速度(中間程度)で最大パワーが発揮されることに考慮する。
等運動性収縮(等速性収縮)は、関節の運動速度が一定に保たれている運動である。したがって、可動域全般にわたり負荷が可能である。しかし、等運動性収縮(等速性収縮)の欠点として、バイオデックスなどの特殊な機器を必要とする。
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