第60回(R7)理学療法士国家試験 解説【午前問題26~30】

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26 我が国の65歳以上の高齢者における軽度認知障害〈MCI〉の有病率で適切なのはどれか。

1.5%
2.15%
3.35%
4.55%
5.75%

解答

解説

軽度認知障害〈MCI〉とは?

2012年の日本の65歳以上の高齢者における、認知症有病率推定値は15%で、認知症有病者数は約462万人と推計されている。軽度認知障害(MCI)の有病率は、13%と推定され、約400万人の軽度認知症の方がいると推計されている。ちなみに、軽度認知障害(MCI)とは、認知症と正常な状態の中間と定義され、時間経過とともにアルツハイマー型認知症を発症すると言われている。軽度認知障害(MCI)とアルツハイマー型認知症の違いは、日常生活を独立して行えるかどうかとされているが、その境界線は曖昧である。

【軽度認知障害〈MCI〉の診断基準】(Winblad B ら、2004)
1.認知症または正常のいずれでもないこと
2.客観的な認知障害があり、同時に客観的な認知機能の経時的低下、または、主観的な低下の自己報告あるいは情報提供者による報告があること
3.日常生活能力は維持されており、かつ、複雑な手段的機能は正常か、障害があっても最小であること

(※引用:「認知症と軽度認知機能障害と軽度認知機能障害について」厚生労働省様HPより)

1.3~5.× 5%/35%/55%/75%は、軽度認知障害〈MCI〉の有病率とはいえない。

2.〇 正しい。15%は、我が国の65歳以上の高齢者における軽度認知障害〈MCI〉の有病率である。2022年時点で、65歳以上に占める割合は15.5%である。

 

 

 

 

 

27 スワンネック変形で過伸展となるのはどれか。

1.遠位指節間関節
2.遠位橈尺関節
3.近位指節間関節
4.手根中手関節
5.中手指節間関節

解答

解説
1.× 遠位指節間関節(DIP関節)過伸展は、ボタン穴変形である。ボタン穴変形は、手指の変形でPIP関節屈曲、DIP関節過伸展を示す。関節リウマチなど、正中索の断裂によりボタン穴変形が起こる。

2.× 遠位橈尺関節は、手関節付近の橈骨と尺骨の形成される関節で、前腕の回内・外運動を担う。

3.〇 正しい。近位指節間関節(PIP関節)は、スワンネック変形で過伸展となる。スワンネック変形とは、MP関節屈曲、PIP関節過伸展、DIP関節屈曲する変形をいう。関節リウマチなどによっておこる。

4~5.× 手根中手関節(CM関節)/中手指節間関節(MP関節)過伸展は、鷲手(尺骨神経麻痺)にみられる。手内筋が萎縮し、とくに環指と小指の付け根の関節(MP関節、中手指骨関節)が過伸展する一方、指先の関節(DIP関節、遠位指節間関節)と中央の関節(PIP関節、近位指節間関節)が屈曲した状態である。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

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28 基礎代謝量で正しいのはどれか。

1.体温上昇に伴い低くなる。
2.慢性炎症性疾患では高くなる。
3.除脂肪体重が少ないと高くなる。
4.思春期以降は加齢とともに高くなる。
5.同一年齢では男性のほうが女性より低い。

解答

解説

基礎代謝量とは?

基礎代謝量とは、生体が正常に生命を維持するために必要な代謝量のことである。基礎代謝量は、体表面積/性別/年齢/体格/体温/ホルモンなどの影響を受けるものである。

1.× 体温上昇に伴い、「低く」ではなく高くなる。なぜなら、発熱時には体温を維持するためのエネルギー消費が増えるため。

2.〇 正しい。慢性炎症性疾患では、高くなる。なぜなら、慢性炎症状態では、炎症メディエーター(サイトカインなど)が代謝を刺激し、エネルギー消費が増加するため。

3.× 除脂肪体重が少ないと「高く」ではなく低くなる。なぜなら、基礎代謝量は、主に筋肉などの除脂肪体重に依存しているため。したがって、筋肉量が多い人は、安静時でもエネルギー消費が多い。ちなみに、除脂肪体重とは、体重において体脂肪以外の筋肉や骨、内蔵などの総重量のことをいう。

4.× 思春期以降は加齢とともに「高く」ではなく低くなる。なぜなら、加齢により筋肉量が減少し、代謝活動・基礎代謝量ともに低下するため。したがって、高齢者は若年者に比べ、筋肉量が減り基礎代謝量も低下する。

5.× 逆である。同一年齢では「女性」のほうが「男性」より低い。なぜなら、一般に、女性より男性のほうが、筋肉量は多いため。したがって、体重が同じでも、女性よりも男性は筋肉量が多いため、エネルギー消費量が高くなる。

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29 UPDRS〈Unified Parkinson’s Disease Rating Scale〉Version3.0の運動能力検査の項目はどれか。

1.嚥下
2.固縮
3.転倒
4.寝返り
5.歩行中のすくみ

解答

解説

UPDRSとは?

パーキンソン病統一スケール(Unified Parkin-son’s Disease Rating Scale:UPDRS)は、1987年にパーキンソン病の方の病態把握のための評価尺度としてFahnらにより開発された。評価項目はⅣ部に分けられ、Ⅰ部:認知・情動状態(知的機能)、Ⅱ部:ADL(歩行)、Ⅲ部:運動機能(姿勢)、Ⅳ部:薬剤の副作用の項目(ジスキネジア)を評価する。全42項目を0~4の5段階で行い、評価尺度は順序尺度である。

1.3~5.× 嚥下/転倒/寝返り/歩行中のすくみは、Ⅱ部:日常生活上の運動面評価である。運動検査(Part Ⅲ)は医師が臨床的に評価する14項目の運動症状(発話、表情、振戦、固縮など)から構成されており​、一方「嚥下障害」「転倒頻度」「寝返り動作の困難さ」「歩行中のすくみ現象」といった項目は日常生活動作(ADL)PartⅡの評価である。「嚥下」の障害の有無や程度、「転倒」の頻度、ベッドでの「寝返り」動作の困難さ、そして歩行中に足がすくむ現象の頻度などが含まれており、これらは、患者が日常生活で経験する症状を主に自己申告や問診で評価する項目である。

2.〇 正しい。固縮は、Ⅲ部:運動機能(姿勢)の評価である。Ⅲ部:運動機能(姿勢)の評価は、医師がその場で身体所見として評価する。

※ちなみに、
・「歩行中のすくみ」という項目は、Ⅱ:日常生活上の運動面評価である。
・「歩行」という項目は、Ⅲ部:運動機能(姿勢)の評価にある。

詳しく見ていくと,,,

Ⅱ:日常生活上の運動面評価の「歩行中のすくみ」は、この一週間において、歩行時に突然止まってしまったり、あるいは床に足が張り付いたように感じた事はありますか?と質問するものなっている。

Ⅲ部:運動機能(姿勢)の評価の「歩行」は、評価者への指示:歩行を容易に一度で左右から観察できるので、患者には遠ざかった後手前に歩いてもらうように検査する事。患者は少なくとも10m歩き、それから方向転換して検査者の方へ戻ってきてもらうようにする。この項目ではいくつかの行動を測定する:歩幅、歩行速度、足の上がりの高さ、踵接地があるかどうか、方向転換、腕の振り、ただし、すくみは除く。”すくみ足”も同時に評価する。と決められている。

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30 Fugl-Meyer Assessmentで正しいのはどれか。2つ選べ。

1.評価は4段階で行う。
2.満点は226点である。
3.感覚は痛覚を評価する。
4.評価項目は4つである。
5.Brunnstrom法ステージと共通する評価項目がある。

解答2・5

解説

MEMO

FMA<Fugl-Meyer assessment>は、脳血管障害患者の総合的機能障害の評価である。
・上肢運動機能66点、下肢運動機能34点、バランス14点、感覚24点、可動域・疼痛88点からなる。

1.× 評価は、「4段階」ではなく3段階(1部は2段階)で行う。上肢運動機能のⅠ反射活動は、「0:消失」、「2:誘発可能」の2段階であるが、Ⅱ随意運動は、「0:なし」、「1:部分的」、「2:完全」の3段階となっている。

2.〇 正しい。満点は226点である。上肢運動機能66点、下肢運動機能34点、バランス14点、感覚24点、可動域・疼痛88点からなる。

3.× 感覚は、「痛覚」ではなく触覚と深部感覚を評価する。痛覚は、別の評価項目として扱われている。

4.× 評価項目は、「4つ」ではなく5つである。①上肢運動機能66点、②下肢運動機能34点、③バランス14点、④感覚24点、⑤可動域・疼痛88点からなる。

5.〇 正しい。Brunnstrom法ステージと共通する評価項目がある。共通して、上肢運動機能の随意運動(共同運動パターン、分離運動が一部出現)などが該当する。

 

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