第60回(R7)理学療法士国家試験 解説【午前問題31~35】

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31 WeeFIMで正しいのはどれか。

1.できる活動を評価する。
2.検査項目は15項目である。
3.適応年齢は8歳以上である。
4.介助の程度に応じて6段階で評価する。
5.社会的交流として、遊びへの参加を評価する。

解答

解説

WeeFIMとは?

WeeFIM(Functional Independence Measure for children:子供のための機能的自立度評価法)とは、子どものための機能的自立度評価法でFIMをもとに子ども用に作られたADL評価法である。

評価項目:18項目(運動項目13、認知項目5)
段階:介護度に応じて7段階
総得点:18点~126点
対象年齢:6か月~7歳未満
※備考:6項目で小児への応用を考慮した修正が加えられている。

1.× 「できる活動」ではなく普段している活動を評価する。これは、FIM(Functional Independence Measure:機能的自立度評価法)と同様である。

2.× 検査項目は、「15項目」ではなく18項目(運動項目13、認知項目5)である。

3.× 適応年齢は、「8歳以上」ではなく6か月~7歳未満である。

4.× 介助の程度に応じて、「6段階」ではなく7段階で評価する。

5.〇 正しい。社会的交流として、遊びへの参加を評価する。評価は生活場面の直接観察や聴取で行う。所要時間は15~20分で、十分に実用的なスクリーニングおよび経過観察の手順として利用可能である。

 

 

 

 

 

32 認知症の中核症状はどれか。2つ選べ。

1.失認
2.徘徊
3.妄想
4.抑うつ
5.見当識障害

解答1・5

解説

(※図引用:「SOMPO笑顔倶楽部」様HPより)

認知症の主な症状

①中核症状:神経細胞の障害で起こる症状
(例:記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、失語・失行など)

②周辺症状:中核症状+(環境要因や身体要因や心理要因)などの相互作用で起こる様々な症状
(例:徘徊、幻覚、異食、せん妄、妄想、不安など)

1.〇 正しい。失認は、認知症の中核症状である。失認とは、1つまたは複数の感覚で物体を識別する能力が失われる障害である。視覚・聴覚・味覚・嗅覚・体性感覚などその感覚自体の異常がなく、注意や知能といった一般的な精神機能は保たれているが、対象を認知できないことである。

2.× 徘徊は、認知症の周辺症状である。徘徊とは、家から外に出て、あてもなくうろうろと歩き回る行動のことを指す。夜中の徘徊の原因として、記憶障害や見当識障害によるものとされている。

3.× 妄想は、認知症の周辺症状である。妄想とは、事実ではないことを、確信しており、訂正ができないことをいう。

4.× 抑うつは、認知症の周辺症状である。抑うつとは、気分が落ち込んでエネルギーが枯渇してしまった感じがして、意欲が著しく低下している状態をいう。

5.〇 正しい。見当識障害は、認知症の中核症状である。見当識障害とは、「今がいつか(時間)」「ここがどこか(場所)」がわからなくなる状態である。自分の周囲の状況や、 自分が置かれている状況(人や時間、 場所)が正しく理解できなくなる。

 

 

 

 

 

33 フレイルの判定要件はどれか。2つ選べ。

1.骨密度の減少
2.柔軟性の低下
3.肺活量の低下
4.歩行速度の低下
5.身体活動量の減少

解答4・5

解説

フレイルとは?

フレイルとは、健常な状態と要介護状態(日常生活でサポートが必要な状態)の中間の状態のことをいう。多くは、「健康状態」→「フレイル」→「要介護状態」と経過する。
定義:加齢とともに心身の活動(運動機能や認知機能など)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態である。
診断基準に含まれるのは【①体重減少、②主観的疲労度、③日常生活活動量の低下、④歩行速度の低下、⑤握力の減弱】である。

【フレイルの要因】
①身体的:体重減少、活力低下、握力低下、歩行速度低下など。
②社会的:閉じこもりがち、社会交流の減少など。
③精神的:認知機能の低下、意欲判断力の低下、抑うつなど。

1.× 骨密度の減少は、フレイルの判定要件には含まれない。骨密度の低下は骨粗鬆症と関連する。ちなみに、骨粗鬆症とは、骨量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気である。原因として、閉経による女性ホルモンの低下や運動不足・喫煙・飲酒・栄養不足・加齢などである。骨粗鬆症の患者は、わずかな外力でも容易に圧迫骨折(特に胸腰椎)、大腿骨頚部骨折、橈骨遠位端骨折を起こしやすい(※参考:「骨粗鬆症」日本整形外科学会様HPより)。

2~3.× 柔軟性/肺活量の低下は、フレイルの判定要件には含まれない

4.〇 正しい。歩行速度の低下は、フレイルの判定要件である。ちなみに、通常の歩行速度が秒速1.0m以下の場合が該当する。

5.〇 正しい。身体活動量の減少は、フレイルの判定要件である。
①軽い運動・体操をしていますか?
②定期的な運動・スポーツをしていますか?
上記の2つのいずれも「週に1回もしていない」と回答した場合に該当する。

フレイルの基準

体重減少(6か月間で2~3㎏以上)
易疲労感
歩行速度の低下
握力の低下
身体活動量の低下

3項目以上該当で「フレイル」

1~2項目該当で「プレフレイル」

 

 

 

 

 

34 Functional Reach Testで正しいのはどれか。

1.歩行速度の簡易予測に用いる。
2.リーチ時に踵を浮かせてよい。
3.リーチ距離の水平成分を測定する。
4.両上肢をそろえて前方にリーチさせる。
5.SPPB(Short Physical Performance Battery)検査の一部である。

解答

解説

Functional Reach Testとは?

Functional Reach Test(機能的上肢到達検査)は、動的バランス能力評価検査である。立位姿勢をとらせ、片方の上肢を前方90°挙上し、手指をできるだけ遠くに位置してもらう距離を測る。距離が大きいほど良い結果となる。カットオフ値は、①脳卒中片麻痺:15cm、②Parkinson病:31cmなど疾患によって異なるが、30cmまでバランスが保てていれば転倒のリスクは低い。

1.× 「歩行速度」ではなく転倒のリスクの簡易予測に用いられる。カットオフ値は、①脳卒中片麻痺:15cm、②Parkinson病:31cmなど疾患によって異なるが、30cmまでバランスが保てていれば転倒のリスクは低い。

2.× リーチ時に踵を「浮かせてはならない」。立位で、足が前に出たり浮いたりしないようにしながら、水平方向に上肢をできるだけ伸ばせた長さを測定する。

3.〇 正しい。リーチ距離の水平成分を測定する。 開始位置から指先がどれだけ前に伸びたかを水平に測定し、動的バランス能力を評価する。

4.× 「両上肢」ではなく両下肢をそろえて前方にリーチさせる。上肢は、通常、利き腕など片腕を使って前方にリーチする。

5.× SPPB(Short Physical Performance Battery)検査の「一部でない」。SPPB(Short Physical Performance Battery)検査とは、地域高齢者を対象とした身体機能のスクリーニングテストの一つであり,死亡率や施設入所の予測因子になると報告されている。検査項目は、①バランステスト(片脚立位→セミタンデム立位→タンデム立位)、②歩行速度テスト、③椅子立ち上がりテストである。

 

 

 

 

 

35 酸素療法機器で正しいのはどれか。

1.鼻カニュラは高流量系である。
2.高流量系機器は加湿不要である。
3.医療ガスの酸素ボンベは緑色である。
4.ベンチュリマスクは低流量系である。
5.在宅酸素療法では酸素濃縮器を用いる。

解答

解説

M酸素療法とは?

酸素療法とは、室内空気より高い濃度の酸素を投与することである。したがって、在宅酸素療法とは、酸素療法を自宅で実施することをさす。適応として、慢性呼吸不全や慢性心不全により体内の酸素濃度が低下している人に対して行われる。

1.× 鼻カニュラは、「高流量系」ではなく低流量系である。鼻カニューラは、低い酸素濃度(1~5L/分程度)で酸素化が維持できるときに選択する。流量が多いと鼻の不快感が強くなるだけでなく、吸入気酸素濃度の上昇も期待できないため、実際は3L/分程度が望ましい。

2.× 高流量系機器は、加湿「不要」であると断言できない。ガイドラインにより様々であるが、低流量系では酸素流量3~5L/分以下のとき、高流量系では酸素濃度40%以下のとき、酸素加湿は「不要」といわれている。高流量酸素療法では、加温加湿された酸素が供給され、乾燥による粘膜障害を防止できる。
【酸素加湿が必要な場合】①鼻腔(天然の加湿器)を介して呼吸している。②一回換気量に占める配管からの酸素(乾燥酸素)の割合が少ない。③酸素を加湿しなくても気道から失われる水分量が少ない。④酸素加湿の有無で自覚症状に差がない。

3.× 医療ガスの酸素ボンベは、「緑色」ではなく黒色である。医療用ガスボンベの色は、高圧ガス保安法によって決められている。ちなみに、医療ガスの空気・窒素ボンベの色は灰色、炭酸ガスの色は緑色である。医療ガス設備における識別色は、酸素ガスは緑、笑気は青、空気は黄、炭酸ガスは橙となっている。

4.× ベンチュリマスクは、「低流量系」ではなく高流量系である。ベンチュリーマスクとは、高流量システムに分類される酸素療法デバイスの一種である。一部を細くした酸素の供給路から酸素を流して陰圧をつくり、周りの空気を引き込みながら酸素とミキシング(混合)できるマスクタイプの酸素療法デバイスとなっている。呼吸状態に左右されず、安定した酸素濃度を維持できるため、慢性呼吸不全患者などに使用される。

5.〇 正しい。在宅酸素療法では酸素濃縮器を用いる。酸素濃縮器は、空気中の酸素を集めて濃度を高め、患者に供給する医療機器である。自宅で簡単に高濃度の酸素を吸入でき、呼吸が苦しい慢性呼吸不全の患者の生活を助けるため、長期的な治療に適している。

在宅酸素療法とは?

在宅酸素療法とは、酸素療法を自宅で実施することをさす。適応として、慢性呼吸不全や慢性心不全により体内の酸素濃度が低下している人に対して行われる。在宅でも安心して酸素療法を受けられるよう、生活指導などの看護支援が必要で、在宅酸素療法を実施している間は、火気厳禁となる。

酸素濃縮器とは、空気の成分の約80%を占める窒素を吸着し、酸素濃度90%以上の空気をつくり出す装置である。最大7ℓ/分までの流量を供給できる。現在、酸素療法をおこなっている患者の約90%が酸素濃縮器を使用する。

 

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