第60回(R7) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午前問題81~85】

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81 投影法の人格検査はどれか。

1.MMPI
2.TAT
3.TEG
4.Y-G性格検査
5.内田クレペリン精神検査

解答

解説

投影法とは?

投影法とは、曖昧で多義的な刺激に対する被検査者からの自由な反応を得て、それを分析することで被検査者の性格特徴を把握しようとする性格検査の総称である。

※性格検査には、①投影法、②質問技法、③作業検査法の3種類があげられる。

1.× MMPI(Minnesota Multiple Personality Inventory:ミネソタ多面人格目録)は、質問紙法による人格検査である。550の質問に対して「あてはまる」「あてはまらない」「どちらでもない」を選択する3件法が用いられている。

2.〇 正しい。TATは、投影法の人格検査である。TAT(Thematic Apperception Test:主題統覚検査)は、多様な受け取り方ができる場面を描いた「30枚の図版と1枚の白紙」から何枚かを見せ、それぞれの物語を作ってもらう。マレーの「欲求圧力埋論(欲求圧力分析法)」を基盤とし、「被検者が葛藤状況をどのように認識し、どのような対処行動を行っているか」といった性格・行動傾向から、バーソナリティを明らかにしていくという特徴を持つ。

3.× TEG(Tokyo University Egogram:東大式エゴグラム)は、個人の人格を知ることに特化している検査である。53の質問項目(質問紙法)からなり、被験者の回答によりエゴ(自我)の状態を調べる。

4.× Y-G性格検査は、質問紙法による性格検査の1つである。120項目で12の性格特性を測定する。また、測定結果で5つの類型に分類することも可能である。はい、いいえ、どちらでもない、の3件法である。

5.× 内田クレペリン精神検査は、作業検査法による性格検査・職業適性検査の一種である。被験者に一定時間計算させ続けることで、作業量・集中力・注意力などの作業能力と、性格傾向を知ることができる。

代表的な質問紙法による心理検査

MMPI(Minnesota Multiphasic Personality Inventory )
YG性格検査
MPI(モーズレイ人格目録)
EPPS(Edwards Personal Preference Schedule )
SDS(Self-rating Depression Scale)
HRSD(Hamilton Rating Scale for Depression)
エゴグラム(TEG)

 

 

 

 

 

82 取り組みが始まった時期の年代順で正しいのはどれか。
①国際障害者年、②ノーマライゼーション、③自立生活運動〈IL運動〉

1.①→②→③
2.①→③→②
3.②→①→③
4.②→③→①
5.③→①→②

解答

解説

①国際障害者年とは、1981年に国連が制定した記念年で、障害を持つ人々の権利保障や社会参加の促進を目的としている。この年、世界各国で支援体制の強化や法整備、啓発活動が行われ、障害への理解が深まる契機となった。

②ノーマライゼーションとは、「障害者が一般市民と同じ環境で、同じ条件で家庭や地域で共に生活すること」を目指す概念である。障害を持つ人が健常者と共存して「普通の社会生活」営めるように、当該社会から物心両面において改善しようという社会的志向である。1959年にデンマークで、「知的障害者のために可能な限りノーマルな生活状態に近い生活を創造する」として知的障害者福祉法が成立し、障害者にも一般市民と同様の生活や権利などが保障されるようになった。

③自立生活運動(IL運動:Independent Living)とは、「重度の障害があっても、健常者と同じように自立して、生きていきたい」という障害者の主張を実現するため、障害者の自己決定権の拡大などを目的とした運動である。1960年代にアメリカで始まり、その後世界に広がった。

したがって、選択肢4.(ノーマライゼーション:1959年)→(自立生活運動:1960年代)→(国際障害者年:1981年)は、取り組みが始まった時期の年代順である。

 

 

 

 

 

83 長期間の安静臥床で増加するのはどれか。

1.骨密度
2.筋持久性
3.腸管蠕動運動
4.関節の結合組織
5.最大酸素摂取量

解答

解説
1.× 骨密度は、長期間の安静臥床で低下する。なぜなら、長期の安静臥床や活動制限は、骨吸収が亢進、骨量は減少するため。リモデリングのバランスが崩れる。骨は荷重や運動による刺激で維持される。

2.× 筋持久性は、長期間の安静臥床で低下する。なぜなら、長期の安静臥床や活動制限は、筋萎縮がおき、持久力や酸化能力が失われるため。

3.× 腸管蠕動運動は、長期間の安静臥床で低下する。なぜなら、長期の安静臥床や活動制限は、腸の動きも鈍くなり便秘が生じるため(重力刺激の低下、腸管への血流量の低下など)。ちなみに、蠕動運動とは、管腔臓器において中枢側(口側)が収縮し末梢側(肛門側)が弛緩することで、末梢側(肛門側)に尿や消化管内容物を押し出していく運動のことである。

4.〇 正しい。関節の結合組織は、長期間の安静臥床で増加する。なぜなら、長期の安静臥床や活動制限は、関節包や靭帯においてコラーゲンの沈着や線維化が進行し、拘縮が生じるため。

5.× 最大酸素摂取量は、長期間の安静臥床で低下する。なぜなら、長期の安静臥床や活動制限により心肺機能の低下や筋力の低下が起きるため。ちなみに、最大酸素摂取量とは、1分間に体重1㎏当たりに取り込むことができる酸素量である。体内に取り込める酸素量が多い(最大酸素摂取量の増加)ほど、エネルギー産生量も多くなり、より長く運動を続けることができる。

廃用症候群とは?

 廃用症候群とは、病気やケガなどの治療のため、長期間にわたって安静状態を継続することにより、身体能力の大幅な低下や精神状態に悪影響をもたらす症状のこと。関節拘縮や筋萎縮、褥瘡などの局所性症状だけでなく、起立性低血圧や心肺機能の低下、精神症状などの症状も含まれる。一度生じると、回復には多くの時間を要し、寝たきりの最大のリスクとなるため予防が重要である。廃用症候群の進行は速く、特に高齢者はその現象が顕著である。1週間寝たままの状態を続けると、10~15%程度の筋力低下が見られることもある。

 

 

 

 

 

84 関節リウマチのSteinbrockerのステージⅣの特徴はどれか。

1.腱鞘炎
2.関節強直
3.骨粗鬆症
4.軟骨下骨の破壊
5.関節周囲の筋萎縮

解答

解説

Steinbrockerの病気分類

Steinbrockerのステージ分類とは、関節リウマチ患者の関節破壊の程度を病期に合わせて分類する方法である。一方、クラス分類とは、関節リウマチの機能障害度をクラス別に分類する方法である。ステージ(クラス)ⅠからⅣの4段階に分類し、進行度を評価する。

【ステージ分類:リウマチの病期】
ステージⅠ:X線検査で骨・軟骨の破壊がない状態。
ステージⅡ:軟骨が薄くなり、関節の隙間が狭くなっているが骨の破壊はない状態。
ステージⅢ:骨・軟骨に破壊が生じた状態。
ステージⅣ:関節が破壊され、動かなくなってしまった状態。

【クラス分類:機能障害度】
クラスⅠ:健康な方とほぼ同様に不自由なく生活や仕事ができる状態。
クラスⅡ:多少の障害はあるが普通の生活ができる状態。
クラスⅢ:身の回りのことは何とかできるが、外出時などには介助が必要な状態。
クラスⅣ:ほとんど寝たきりあるいは車椅子生活で、身の回りのことが自分ではほとんどできない状態。

1.× 腱鞘炎とは、骨と筋肉をつないでいる腱と、腱を包む腱鞘が擦れ合うことで炎症が起こる病気のことである。原因として、主に手指を使いすぎることによって発症する。特に、動きが多い手首や指などの場所に発症することが多い。代表的なものでは、ドケルバン病やばね指などが挙げられる。

2.〇 正しい。関節強直は、ステージⅣ(関節が破壊され、動かなくなってしまった状態)の特徴である。関節強直とは、徒手的には改善困難な関節可動域制限の状態で、関節が破壊されて変形を起こし、機能しなくなった状態である。長期的な炎症や関節損傷によって引き起こされる。

3.× 骨粗鬆症とは、骨量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気である。原因として、閉経による女性ホルモンの低下や運動不足・喫煙・飲酒・栄養不足・加齢などである。骨粗鬆症の患者は、わずかな外力でも容易に圧迫骨折(特に胸腰椎)、大腿骨頚部骨折、橈骨遠位端骨折を起こしやすい。

4.× 軟骨下骨の破壊は、ステージⅢ(骨・軟骨に破壊が生じた状態)の特徴である。軟骨下骨とは、成人の関節軟骨(4層構造:表層、中間層、深層、石灰化層)の最深層の石灰化層の下のことを呼ぶ。骨組織があり骨と連続している。ちなみに、軟骨下骨の変化(硬化)は変形性関節症で起こるため、関節リウマチとの違いもしっかりおさえておこう。

5.× 関節周囲の筋萎縮は、Steinbrockerのステージ分類には該当しない。なぜなら、Steinbrockerのステージ分類は、「骨・軟骨・関節」に焦点があたっているものであるため。

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85 加齢で低下するのはどれか。

1.骨塩量
2.肺残気量
3.自己抗体形成
4.末梢血管抵抗
5.炎症性サイトカイン

解答

解説
1.〇 正しい。骨塩量は、加齢で低下する。そのため、骨粗鬆症になりやすくなる。これは、年齢とともに骨の再構築のバランスが崩れ、骨吸収が骨形成を上回るため。

2.× 肺残気量は、加齢で増加する。なぜなら、末梢気道が狭小化するため。ちなみに、肺残気量とは、安静呼吸で息を吐いた時に、肺に残っている空気量のことである。一方、肺活量、一秒率、拡散能などは加齢により低下する。

3.× 自己抗体形成は、加齢で増加する。なぜなら、加齢とともに、慢性炎症や自己免疫疾患への罹患が増えることにも関連するため。自己抗体とは、自分自身の細胞や組織を攻撃してしまう抗体のことである。加齢に伴って慢性的な炎症が起きやすくなり、自己免疫疾患にかかるリスクも増えるため、自己抗体が作られやすくなると考えられている。

4.× 末梢血管抵抗は、加齢で増加する。なぜなら、加齢により、動脈硬化や内皮機能障害が進行するため。高齢者で高血圧が多いのは、末梢血管抵抗の上昇が関与しているためである。ちなみに、末梢血管抵抗とは、末梢の血管の血液の流れにくさを表す。したがって、全身末梢血管抵抗が低下すると、血管内の圧力が減少し、心臓がより容易に血液を送り出せるようになる。

5.× 炎症性サイトカインは、加齢で増加する。なぜなら、加齢によって免疫機能が細胞レベルや個体レベルで低下するため。炎症性サイトカインとは、炎症を引き起こす働きを持つタンパク質で、細菌やウイルスが体内に侵入した際、それらを撃退する免疫反応に重要な役割を果たす。ただし、これらが加齢によって増えると、慢性的な炎症状態が続き、動脈硬化やメタボリックシンドロームなど、老化に関連した病気が増加する。

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