第59回(R6)作業療法士国家試験 解説【午前問題46~50】

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46 うつ病の復職支援の説明で正しいのはどれか。

1.公務員はリワークを目的とした精神科デイケアの利用対象外である。
2.試し出勤(リハビリ出勤)とは産業保健スタッフ同伴での出勤である。
3.地域障害者職業センターのリワーク支援は病状の回復を目的とする。
4.急性期での安静・休養が終わり次第、リワークプログラムを導入する。
5.リワークで実施されているプログラムには教育プログラムが含まれる。

解答

解説
1.× 公務員は、リワークを目的とした精神科デイケアの利用「対象外」ではなく対象である。職種によって精神科デイケアの利用が制限されるといったことはない。ちなみに、精神科デイケアは、精神障害や発達障害をもつ精神科患者の中でも、比較的症状が落ち着いており、医師により入院の必要がないと判断された方が利用できる。また、リワークとは、「return to work」の略語で、気分障害などの精神疾患を原因として休職している労働者に対し、職場復帰に向けたリハビリテーション(リワーク)を実施する機関で行われているプログラムである。
2.× 試し出勤(リハビリ出勤)とは産業保健スタッフ同伴での出勤ではない。なぜなら、明確に定義されている言葉ではないため。試し出勤制度(リハビリ勤務制度)とは、休職者の復職をスムーズに進めることなどを目的に、労働者を試行的に勤務させる制度をいう。
3.× 地域障害者職業センターのリワーク支援は、「病状の回復」ではなく職場復帰を目的とする。なぜなら、あくまでもリワーク支援とは、「return to work」の略語で、気分障害などの精神疾患を原因として休職している労働者に対し、職場復帰に向けたリハビリテーション(リワーク)を実施する機関で行われているプログラムであるため。ちなみに、地域障害者職業センターとは、障害のある人に対して専門的な職業リハビリテーションを提供している施設である。全国の各都道府県に最低1か所ずつ設置されており、運営法人である独立行政法人高齢・障害者・求職者雇用支援機構が運営を行っている。
4.× リワークプログラムを導入するのは、「急性期での安静・休養が終わり次第」ではなく維持期(症状が完全に落ち着いた時期)で行う。なぜなら、復職の時期を見誤ると、症状がさらに悪化し、復職が遅れてしまう可能性もあるため。
5.〇 正しい。リワークで実施されているプログラムには教育プログラムが含まれる。教育プログラムは、症状の自己理解を主目的とし、主に講義形式で病気について学ぶものとなっている。ちなみに、プログラムには、①個人プログラム、②特定の心理プログラム、③教育プログラム、④集団プログラム、⑤その他のプログラムなどがあげられる。詳しくは下を参照。

復職支援プログラムとは?

復職支援プログラムとは、リワークプログラムや職場復帰支援プログラムともいう。リワークとは、「return to work」の略語。気分障害などの精神疾患を原因として休職している労働者に対し、職場復帰に向けたリハビリテーション(リワーク)を実施する機関で行われているプログラムである。

【医療リワークプログラムの実施形態の定義】
(1)個人プログラム:文字や数字、文章を扱う。机上での作業を一人で行い、集中力や作業能力の確認、向上を図る
(2)特定の心理プログラム:認知行動療法やグループカウンセリングなど、特定の心理療法を実施
(3)教育プログラム:症状の自己理解を主目的とし、主に講義形式で病気について学ぶ
(4)集団プログラム:実際に役割分担をしての共同作業などを行い、対人スキルの向上などを目指す
(5)その他のプログラム:運動、個人面談等、(1)~(4)のいずれにも該当しないプログラム

(※引用:「リワークプログラムについて」日本うつ病リワーク協会様HPより)

 

 

 

 

 

47 自殺の二次予防はどれか。

1.自死遺族へのグループケア
2.住民参加型健康教室の企画
3.うつ病パンフレットの全戸配布
4.自殺念慮者に対する精神的ケア
5.傾聴ボランティア養成講座の開催

解答

解説

疾病予防の概念

疾病の進行段階に対応した予防方法を一次予防、二次予防、三次予防と呼ぶ。
一次予防:「生活習慣を改善して健康を増進し、生活習慣病等を予防すること」
二次予防:「健康診査等による早期発見・早期治療
三次予防:「疾病が発症した後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図ること」と定義している。(※健康日本21において)

1.× 自死遺族へのグループケアは、自殺の一次予防といえる。グループケアとは、個々の身体機能や残存能力によってグループに分け、それぞれに適応したプランを立ててケアを行うものを指す。
2.× 住民参加型健康教室の企画は、自殺の一次予防といえる。
3.× うつ病パンフレットの全戸配布が、自殺の一次予防といえる。
4.〇 正しい。自殺念慮者に対する精神的ケアが、自殺の二次予防といえる。「自殺念慮(じさつねんりょ)」とは、死にたいと思い、自殺することについて思い巡らす事のことをいう。自殺念慮の切迫度は、計画の具体性が高い場合、また実際に準備をしている場合に高いと判断する。
5.× 傾聴ボランティア養成講座の開催が、自殺の一次予防といえる。

うつ病の対応

抑うつ病とは、脳内の神経伝達物質のアンバランスにより、気分や感情をうまく調節できなくなり、心身の不調が表れる病気である。症状には、眠れない、疲れやすい、体がだるいといった身体的な症状や、自信が持てず、自己評価も低下しがちになる精神的な症状などがある。

かかりやすい:几帳面で完璧主義、責任感が強い人が多い。

うつ病の特徴:意欲低下、精神運動抑制などの症状のため、自己評価が低く、疲労感が強い。

①調子が悪いのは病気のせいであり、治療を行えば必ず改善すること。
②重要事項の判断・決定は先延ばしにする。
③自殺しないように約束してもらうことなど。

【作業基準】
①工程がはっきりしている。
②短期間で完成できる。
③安全で受身的で非競争的である。
④軽い運動(いつでも休憩できる)

【対応】
①気持ちを受け入れる。
②共感的な態度を示す。
③心理的な負担となるため、激励はしない。
④無理をしなくてよいことを伝える。
⑤必ず回復することを繰り返し伝えていく。
⑥静かな場所を提供する。

 

 

 

 

48 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律〈心神喪失者等医療観察法〉で継続的に関与するケアマネージャーの役割を担うのはどれか。

1.鑑定医
2.検察官
3.裁判官
4.社会復帰調整官
5.精神保健参与員

解答

解説

医療観察法とは?

 医療観察法とは、重大な他害行為を行った精神障害者に医療を受けさせ、犯罪の再発を防ぎ社会復帰の促進が目的である。平成15年に制定され、平成17年施行した。「重大な他害行為」とは、①殺人、②放火、③強盗、④強姦、⑤強制わいせつ、⑥傷害の6つである。鑑定入院の後で、裁判官と精神保健審判員からなる合議体(裁判官と精神保健審判員からなる)が処罰の審判を下す。

1.× 鑑定医(精神科医)は、鑑定入院時の評価に関与する。しかし、鑑定入院中に作業が行われた場合は、作業療法士の意見も鑑定に盛り込まれることがある。ちなみに、鑑定入院時には、①精神障害者の疾病性、②対象行為との関係、③治療反応性、④社会復帰阻害要因などが評価される。
2.× 検察官は、処遇を申し立てる役割を持つ。また、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行い、不起訴や無罪になった人については、検察官から地方裁判所に、適切な処遇の決定を求める申立てがなされる。申立てを受けた裁判所では、裁判官と精神科医(「精神保健審判員」という。)それぞれ1名から成る合議体を構成し、両者がそれぞれの専門性をいかして審判を行うことになる。
3.× 裁判官は、検察官の申立てに基づき、対象者に鑑定入院を命じる役割を持つ。(医療観察法の)鑑定入院とは、医療観察法の処遇が申し立てられてから、最終的な決定が出されて、指定入院医療や指定通院医療の処遇が開始される(あるいは処遇が行われないことが決まる)まで時間がかかる。この期間も対象者は病院に入院して、標準的な精神医療を受ける必要がある。その期間を鑑定入院で対応する。
4.〇 正しい。社会復帰調整官が、心神喪失者等医療観察法において、継続的に関与するケアマネージャーの役割を担う。社会復帰調整官は、鑑定入院時から対象者と関わる。対象者(精神障害者)の生活環境調査を行ったり、対象者の社会復帰に向けてのケア会議を開催するなど、本法での中心的な役割をもつ。
5.× 精神保健参与員は、初審判において精神障害者の保健や福祉に関する専門家の立場から意見を述べる役割を担う。精神保健参与員は、鑑定入院が1ヶ月を経過した頃に、合議体の裁判官を通して、鑑定医と同様の役割を果たす。

ケアマネージャーとは?

ケアマネージャーとは、介護支援専門員ともいい、介護を必要とする方が介護保険サービスを受けられるように、ケアプラン(サービス計画書)の作成やサービス事業者との調整を行う専門職である。要支援・要介護者からの相談に応じ、状況等に応じ各種サービス事業を行う。

 

 

 

 

 

49 就労支援の制度の説明で適切なのはどれか。

1.就労定着支援の対象は就労してから6か月経過した者である。
2.ストレスチェックで高ストレス者に該当した者を対象とする。
3.障害者雇用率には障害者手帳を所持しない難病患者が含まれる。
4.作業療法士が企業訪問した場合は訪問リハビリテーションで算定する。
5.両立支援コーディネーターは支援対象者の代理として関係者と交渉を行う。

解答

解説
1.〇 正しい。就労定着支援の対象は就労してから6か月経過した者である。就労定着支援とは、就労移行支援、就労継続支援などの利用を経て、通常の事業所に新たに雇用され6か月を経過したもので3年が限度である。障害者の就労や、就労に伴って生じている生活面での課題を解決し、長く働き続けられるようにサポートする。就労に伴う環境変化などの課題解決(①生活リズム、②家計や体調の管理など)に向けて、必要な連絡調整や指導・助言などの支援を実施する。
2.× ストレスチェックの対象は、「高ストレス者に該当した者」ではなくすべての労働者である。心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック制度)は、労働者に対して行う心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)や、検査結果に基づく医師による面接指導の実施などを事業者に義務づける制度である。平成26(2014)年6月の法改正で、労働者50人以上の事業所で毎年1回、すべての労働者に対してストレスチェックを実施することが義務づけられた。ストレスチェック後に「高ストレス判定」が出た場合、会社の対応が義務つけられている。①検査の結果「高ストレス者」と判定された労働者から申し出があった場合、産業医などの医師による面談(面接指導)を実施すること。②面接指導の結果に基づき、医師の意見を聞き、必要に応じ就業上の措置を講じることも義務となる。
3.× 障害者雇用率には障害者手帳を「所持しない」ではなく所持する難病患者が含まれる。障害者雇用率制度とは、民間企業や国・地方公共団体に一定以上割合で障害者を雇用するように義務づけた制度のことである。障害者雇用率制度の雇用対象となる障害者には、障害者手帳を交付されて身体障害者福祉法などに基づく障害者と認定される必要がある。
4.× 作業療法士が企業訪問した場合は訪問リハビリテーションで算定することはできない。なぜなら、そこに医師の指示患者がいないため。訪問リハビリテーションは、医師の指示書に基づき、リハビリテーション専門職が、通院困難な在宅療養者の居宅を訪問して機能訓練や日常動作に関わる訓練を行い、患者の心身の機能の維持回復を図り日常生活の自立を目指すものである。
5.× 両立支援コーディネーターは、支援対象者の「代理」として関係者と交渉を行うことはできない。あくまでも患者に寄り添う、つまり支援の関係である。両立支援コーディネーターとは、主治医と会社の連携の中核となり、患者に寄り添いながら継続的に相談支援を行いつつ、個々の患者ごとの治療・仕事の両立に向けたプランの作成支援などを担うものを指す。

 

 

 

 

 

50 臨床実習施設で職員からハラスメントを受けた場合、学生の対応で最も適切なのはどれか。

1.詳細は記録せず口頭で報告する。
2.養成校の実習担当教員に相談する。
3.自分がハラスメントを受けた原因を振り返る。
4.ハラスメントをした相手との距離は変えない。
5.自分が不快に感じた言動を相手に悟られないようにする。

解答

解説
1.× 詳細は、「記録せず口頭で」ではなく記録して文章を残し報告する。音声レコーダーなど具体的な証拠が残っているとなおよい。
2.〇 正しい。養成校の実習担当教員に相談する。学生の場合は養成校の実習担当者が第三者として介入してくれる。社員の場合は、労働局に相談しよう。労働局とは、職場のあらゆるトラブルの相談に乗るため、『総合労働相談コーナー』などを設置している。
3.× 自分がハラスメントを受けた原因を振り返るより優先度が高いものが他にある。もちろんある程度の自責思考はビジネスや自己成長において必要であるが、ハラスメントと感じられる接し方をする人は基本頭おかしいので、まずは君が壊れないように相談できる環境を整えよう。
4.× ハラスメントをした相手との「距離は変えない」のではなく距離を置こう。ハラスメントをした相手と「仲良くなってやろう」など絶対思わず、他の周りの普通の人も口には出していないが、距離を置いている理由を察してくれている。むしろ、距離を置くように言ってくれる職場もある。
5.× 自分が不快に感じた言動を相手に悟られないようにする必要はない。なぜなら、ハラスメントがさらにエスカレートしていく可能性があるため。ハラスメントは場合によっては犯罪ともなりえるので、損害賠償を請求したい場合は、証拠をたくさんそろえ、泳がせるために相手に悟らせないようにふるまうことも大切かもしれない(ただ時間もかなり消費してしまうため受験を控える学生のうちはあまりおすすめできない)。とはいえ、ハラスメントは「指導の一環」という言い訳は通用せず、損害賠償を請求されて大事件に発展するケースもあるため、絶対に人が嫌がることはしないこと。

 

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