第59回(R6)作業療法士国家試験 解説【午後問題36~40】

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36 大規模災害時の避難所における作業療法士の災害支援で誤っているのはどれか。

1.生活ニーズの聞き取り
2.避難所責任者との情報共有
3.障害者の避難所アセスメント
4.廃用症候群の予防のための体操指導
5.傷病重症度に応じた治療優先度の判断

解答

解説
1~4.〇 正しい。生活ニーズの聞き取り/避難所責任者との情報共有/障害者の避難所アセスメント/廃用症候群の予防のための体操指導は、大規模災害時の避難所における作業療法士の災害支援である。「作業療法士は、障害者への支援同様、生活に支障が生じている被災者に対してもリハビリテーションや作業療法の考え方をもって対象者の課題を分析し支援できる。作業療法士が提供できる支援は、①作業を通した被災者の心身機能の維持・向上、②被災者の心のケア、③高齢者および障害者の生活環境調整、④高齢者および障害者の日常生活能力の維持・向上、⑤福祉用具の選定と適応、などである。中でも、抑圧されている被災者の想いの開放を目的とした作業活動の提供は、心のケアに有効である。この大震災で被った心の傷は容易に癒すことはできないが、日々の生活に折り合いをつけるための交流や作業活動は重要である。今後も長期的なケアが求められる被災者に、作業活動の場面を活かしながら多くの専門職の技もつなげていくことが期待される」(※参考:「災害時における専門職の役割と連携」著:渡邉忠義様より)。
5.× 傷病重症度に応じた治療優先度の判断は、作業療法士の災害支援ではない。傷病重症度に応じた治療優先度の判断は、トリアージとも呼ばれ、主に医師が行うのが基本である。状況によっては救急救命士や看護師などが行う場合もあるがそのケースはまれである。災害時においては医療スタッフや医薬品などの医療資源が限られるため、より効果的に傷病者の治療を行うために、治療や搬送の優先順位を決定するものである。

 

 

 

 

 

37 日本ACLS〈Advanced Cardiovascular Life Support〉協会の定める一次救命措置のアルゴリズムの①から④の順で正しいものはどれか。
   ①呼吸確認
   ②心肺蘇生開始
   ③周囲の安全確認
   ④緊急通報とAEDの準備

1.①②③④
2.②③①④
3.③①④②
4.③④①②
5.④③①②

解答

解説

(※画像引用:「BLSとは?」日本ACLS協会ガイド様HPより)

選択肢4.③周囲の安全確認→④緊急通報とAEDの準備→①呼吸確認→②心肺蘇生開始が正しい。

 

 

 

 

38 臨床実習にて訪問リハビリテーションに同行する学生の行動で最も適切なのはどれか。

1.対象者との会話は常に録音する。
2.メモは実習終了後にゴミ箱に捨てる。
3.屋内の写真は許可を得ずに撮影できる。
4.訓練実施後のバイタルサイン測定は必要ない。
5.指導者との対象者情報の共有は訪問先では行わない。

解答

解説
1.× 対象者との会話は常に「録音」する必要はない。なぜなら、常に録音している場合、対象者と話す内容も限定的になってしまうため。対象者にもよるが、デジタルでの記録は、嫌悪感を抱く方もまだまだ多い。なるべくメモにして、一部でも録音する場合でも、マナー違反にならないよう許可をもらうようにしよう。
2.× メモは実習終了後に「ゴミ箱に捨てる」のではなくシュレッダーにかける。もしくは第三者にみられないように大切に保管する。なぜなら、個人が特定されないよう個人情報の部分をわからないようするため。シュレッダーがない場合は、粉々に破ったり、個人情報保護するスタンプ使用する。
3.× 屋内の写真は許可を得ずに撮影「できない」。屋内・屋外にかかわらず、写真は個人を容易に特定できる情報が組み込まれている。特に、スマホの場合、写真を撮影したとき、自動で位置情報が共有されたり、写真の詳細には撮影日など細かく記録されるものがある。写真撮影は、インターネットにつながらないデジカメを使用し、必ず許可をもらうのが望ましい。
4.× 訓練実施後のバイタルサイン測定は「必要である」。なぜなら、安全に訓練が行えた指標となるため。バイタルサインとは、生命徴候のことで、脈拍、呼吸、体温、血圧、意識レベルの5つである。
5.〇 正しい。指導者との対象者情報の共有は訪問先では行わない。なぜなら、対象者からすると、「事前にやっておいてほしい」と思われて、どんな形であれあまりいい気にはならないため。信頼関係に支障をきたしかねない。また、自宅の前で駐車して車の中で話していたとしても、自宅の前で「○○病院」と書かれた車がいつもより長い時間停まっていると、対象者も近所の人も良く思わなかったり、近所からの苦情にもつながりかねないため、訪問には細心の気配りが必要である。

個人情報保護法とは?

個人情報保護法とは、個人情報の保護に関する法律の略称である。個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とした個人情報の取扱いに関連する日本の法律である。定義(第2条)には、「この法律において『個人情報』とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述などにより特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)をいう」とされている。

個人情報保護に関するコンプライアンスプログラムの要求事項では、センシティブ情報の具体的項目に関して、以下の5項目を挙げている。①思想及び信条に関する事項、②政治的権利の行使に関する事項、③労働者の団体交渉に関する事項、④医療、性に関する事項、⑤犯罪の経歴、人種、民族、社会的身分、門地並びに出生地及び本籍地など社会的差別の原因となる事項である。

 

 

 

 

 

39 最もエビデンスレベルが高いのはどれか。

1.記述研究
2.コホート研究
3.症例対照研究
4.メタアナリシス
5.ランダム化比較試験

解答

解説
1.× 記述研究(症例報告)は、エビデンスレベルⅤである。記述的研究とは、個別の症例の治療を経験した後に、教科書的な経過をたどらなかったもの、あるいは教科書的な治療を超える工夫を行ったものについて、今後の参考に資するために詳細を報告する。
2.× コホート研究(分析疫学研究)は、エビデンスレベルⅣaである。コホート研究は、前向きコホート研究・後向きコホート研究・縦断研究があり、短期間に大量のデータを得られるという長所があるが、一方で時間経過による変化が及ぼす影響、因果関係については把握できないという短所がある。
3.× 症例対照研究(分析疫学研究:ケース・コントロール研究)は、エビデンスレベルⅣaである。症例対照研究は、症例群と対照群に分け、両群の過去の曝露状況を比較する方法である。曝露と疾病発症の関連を明らかにする。欠点としては,選択バイアスや情報バイアスの影響が入りやすいことなど。
4.〇 正しい。メタアナリシスは、最もエビデンスレベル(エビデンスレベルⅠ)が高い。メタアナリシスとは、複数の研究結果を定量的に統合し、まとめ上げる解析方法である。
5.× ランダム化比較試験は、エビデンスレベルⅡである。無作為化比較試験(ランダム化比較試験)とは、「ランダムに割り付けた対象群間で前向きに効果の差を比較する試験」である。ある集団の対象者を実験的予防、治療、介入などを受けるか受けないかにより介入群と対照群の2群に無作為に配分した疫学的研究方法である。

 ● 図:Minds診療ガイドライン作成の手引き2014に記載されている「エビデンスのレベル分類」

 

 

 

 

 

40 亜急性期(離脱後初期)の薬物依存症の評価項目で最も優先すべきなのはどれか。

1.作業能力
2.身体症状
3.生活リズム
4.対処能力
5.対人関係

解答

解説


1.3.× 作業能力/生活リズムは、治療前期に評価する項目である。治療前期は、精神的にも安定し社会生活技能の向上を目指していける時期である。
2.〇 正しい。身体症状は、亜急性期(離脱後初期:解毒期)の評価項目で最も優先すべきある。なぜなら、アルコール依存症の亜急性期(離脱後初期:解毒期)は、離脱症状がみられやすいため。離脱症状とは、飲酒中止後に生じ、精神的、肉体的な症状を呈する。最終飲酒から数時間後から出現し、20時間後にピークを迎える早期離脱症候群(振戦、自律神経症状、発汗、悪心・嘔吐、けいれん、一過性の幻覚)と最終飲酒後72時間頃から生じ数日間持続する後期離脱症候群(早期離脱症状に加え意識変容を呈したもの、振戦せん妄といわれる。小動物幻視や日頃やり慣れた動作、例えば運転動作を繰り返す、夜間に目立つ)に分けられる。
4~5.× 対処能力/対人関係は、治療後期に評価する項目である。なぜなら、治療後期は、ある程度ストレスに対する行動を獲得できている時期でもあるため。アルコール依存症の集団精神療法では、自己の飲酒問題を認め、断酒の継続を行うことが治療上極めて有効である。自助グループ(セルフヘルプグループ、当事者グループ)に、同じ問題や悩みを抱える者同士が集まり、自分の苦しみを訴えたり、仲間の体験談を聞いたりすることで問題を乗り越える力を養っていく。断酒継続のための自助グループ(当事者グループ)としてよく知られているものに、断酒会とAA(Alcoholics Anonymous:アルコール依存症者匿名の会)がある。断酒会は日本独自のもので、参加者は実名を名乗り、家族の参加も可能である。AAはアメリカで始まり、世界各地にある。匿名で参加し、家族は原則として同席しない。

アルコール依存症とは?

アルコール依存症とは、少量の飲酒でも、自分の意志では止めることができず、連続飲酒状態のことである。常にアルコールに酔った状態でないとすまなくなり、飲み始めると自分の意志で止めることができない状態である。最終飲酒後72時間頃までに症状が最も激しくなるのは、アルコール離脱症状である。

【合併しやすい病状】
①離脱症状
②アルコール幻覚症
③アルコール性妄想障害(アルコール性嫉妬妄想)
④健忘症候群(Korsakoff症候群)
⑤児遺性・遅発性精神病性障害 など

 

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