第59回(R6)作業療法士国家試験 解説【午前問題26~30】

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26 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律〈障害者総合支援法〉の対象者で平成25年4月より追加されたのはどれか。

1.難病患者
2.発達障害児
3.身体障害児・者
4.精神障害児・者
5.知的障害児・者

解答

解説

障害者総合支援法とは?

障害者総合支援法は、2013年(平成25年)に障害者自立支援法から障害者総合支援法へと改正され、障害者と障害児を対象とした障害保健福祉施策についてまとめられた法律である。これにより障害者の範囲が拡大され、身体障害者、精神障害者、知的障害者、障害児の全てが対象とされている。そして、対象となっている者は、認定調査というものを受け「障害支援区分」という障害の重症度分類によって7区分(非該当、区分1~6)に分けられる。それにより受けられるサービス内容が変わってくる。

①障害者も難病患者も自立できる社会をめざす。
②応能負担(所得に応じて自己負担額が変わること)が原則。
③あらゆる障害(身体・知的・精神+難病)についてこの法律で対応する。
④市区町村が事業の母体である。

1.〇 正しい。難病患者が、平成25年4月より追加された。対象となる方は、障害者手帳の所持の有無にかかわらず、必要と認められた障害福祉サービス等の受給が可能となった。
2.× 発達障害児は、障害者自立支援法の平成22年より追加された。
3~5.× 身体障害児・者/精神障害児・者/知的障害児・者は、障害者自立支援法の施行(平成18年)から対象であった。

 

 

 

 

 

27 高次脳機能検査の一部を図に示す。
 このような図版が含まれるのはどれか。

1.BADS
2.BIT
3.FAB
4.SLTA
5.WAIS-IV

解答

解説
1.〇 正しい。BADSに含まれる動物園地図検査である。「動物園の地図上にある一連の決められた場所を訪れて目的地(広場)まで到達する」ように示すことが求められる。ちなみに、BADS(Behavioral Assessment of the Dysexecutive Syndrome:遂行機能障害症候群の行動評価)は、カードや道具を用いた6種類の下位検査と1つの質問紙で構成されている。質問紙には合計20の質問があり、①感情・人格、②動機付け、③行動、④認知の4カテゴリーが5段階で評価される。検査項目は、【6種類の下位検査】①規則変換カード検査、②行為計画検査、③鍵探し検査、④時間判断検査、⑤動物園地図検査、⑥修正6要素検査である。下位検査は0~4点の5段階で点数化し24点満点で評価する。合計点数が88点以上で車の運転が可能となる。
2.× BIT(Behavioural inattention test)は、行動性無視検査である。①通常検査(線分抹消試験・文字抹消試験・星印抹消試験・模写試験・線分二等分試験・描画試験)と、②行動検査(写真課題・電話課題・メニュー課題・音読課題・時計課題・硬貨課題・書写課題・地図課題・トランプ課題)がある。半側空間無視の検査として用いられている。
3.× FAB(Frontal Assessment Battery:前頭葉機能検査)は、類似課題(概念化)、言語流暢課題、Fist-edge-palm test(運動のプログラミング)、干渉課題、Go-No-Go課題、把握課題(被影響性)の下位6項目で構成されている(※参考:「前頭葉機能検査 Frontal Assessment Battery 」愛宕病院HPより)。
4.× SLTA(Standard Language Test of Aphasia:標準失語症検査)は、失語症の検査である。26項目の下位検査での構成で、「聴く」「話す」「読む」「書く」「計算」について6段階で評価する。
5.× WAIS-Ⅳ(Wechsler Adult Intelligence Scale-Fourth Edition)は、成人の知能検査(16歳0カ月〜90歳11カ月)である。個別式の包括的な臨床検査であり、特定の認知領域の知的機能を表す4つの合成得点(VCI、PRI、WMI、PSI)と全般的な知能を表す合成得点(FSIQ)を算出する。

WAIS-Ⅲとは?

WAIS-Ⅲ(Wechsler Adult Intelligence Scale:ウェクスラー成人知能検査)とは、成人用のウェクスラー知能検査WAISの改訂第3版のことである。質問やイラスト、積み木などの検査キットを用いて、「言語性IQ」「動作性IQ」に加え、「言語理解」「知覚統合」「作動記憶」「処理速度」の4つの指標が得られる。

IQとは、「同世代の集団において、どの程度の知的発達の水準にあるか」を表した数値である。平均値は100であり、点数が平均より高ければIQは100以上になり、点数が平均より低ければIQは100以下となる。79~70以上は「境界域」といい、69以下は「知的障害」と分類される。

 

 

 

 

28 近時記憶検査で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.CAT
2.TMT
3.RAVLT
4.ハノイの塔
5.三宅式記銘力検査

解答3・5

解説
1.× CAT〈Clinical Assessment for Attention〉とは、標準注意検査で注意機能全般を評価する検査である。(検査項目は下参照)
2.× TMT(Trail Making Test)は、一般的な注意障害の評価である。注意の維持と選択、また視覚探索・視覚運動協調性を測定する。ちなみに、TMT-AとTMT-Bがあり、TMT-Aは紙にランダムに記載された1~25の数字を1から順番に線で結び、作業完了までの所要時間を測定する。TMT-Bは紙に記載された1~13の数字と「あ」から「し」のひらがなを1→あ、2→い… といったように数字とひらがなを交互に結び、作業完了までの所要時間を測定する。
3.〇 正しい。RAVLT(Rey Auditory Verbal Learning Test Rey Auditory Verbal Learning Test:レイ聴覚性言語学習検査)は、近時記憶検査で、言語性記憶機能を測る検査である。意味関連のない15語よりなる語系列(リストA)を読み上げ、直後に呈示順にかかわらずできる限り多くの単語を口頭で回答させ(即時再生)、次にこれとは異なる15の単語からなるリストBを同様の方法で回答させ、さらにその後にリストAのうちまだ覚えている単語を口頭で回答させる(遅延再生)検査である。視覚性の即時記憶と近時記憶をみる。
4.× ハノイの塔とは、遂行機能(問題解決能力)障害を評価する。開始時に3枚の円盤が左端の杭に小さいものが上になるように積み重ねられている。円盤を1回に1枚ずつどれかの杭に移動させることができるが、小さな円盤の上により大きな円板を乗せてはならない。このようなルールで3枚の円盤を右端の杭に開始の時と同様な形に積み重ねられれば完成である。移動回数の制限はなく、所要時間が測定される。
5.〇 正しい。三宅式記銘力検査は、近時記憶検査で、記憶の形成、保持、再生と注意機能を評価する検査である。2つずつ対にした「有関連対語10対」と「無関係対語10対」を読んで聞かせたあとに、片一方を読んでもう一方を想起させて10点満点の得点とし、同じことを3回繰り返す。

CAT〈Clinical Assessment for Attention〉とは?

CAT〈Clinical Assessment for Attention〉とは、標準注意検査で注意機能全般を評価する検査である。7つの下位検査から成り立っている。

① Span
 1)Digit Span(数唱):聴覚性の短期記憶
 2)Tapping Span(視覚性スパン):視覚性の短期記憶
② Cancellation and Detection Test(抹消検出課題):選択性の注意機能を評価する
 1)Visual Cancellation Task(視覚性抹消検査)
 2)Auditory Detection Task(聴覚性検出課題)
③ Symbol Digit Modalities Test(SDMT):分配性注意機能を評価する
④ Memory Updating Test(記憶更新検査):作動記憶(ワーキングメモリー)を評価する
⑤ Paced Auditory Serial Addition Test(PASAT):分配性注意機能を評価する
⑥ Position Stroop Test(上中下検査):転換性注意機能を評価する
⑦ Continuous Performance Test (CPT):持続性注意、選択性注意機能を評価する

 

 

 

 

 

29 身体計測の種類と計測方法の組合せで正しいのはどれか。

1.上肢長:肩峰から母指先端までの直線距離
2.前腕長:上腕骨内側上顆から橈骨茎突点までの直線距離
3.手の幅:第2中手骨骨頭の橈側端と第5中手骨骨頭の尺側端との直線距離
4.大腿長:大転子から大腿骨内側上顆との直線距離
5.下腿長:脛骨点から踵点までの直線距離

解答

解説
1.× 上肢長は、肩峰から、「母指先端」ではなく中指先端までの直線距離である。
2.× 前腕長は、「上腕骨内側上顆」ではなく上腕骨外側上顆の外側突出部から橈骨茎状突起までの直線距離である。
3.〇 正しい。手の幅は、第2中手骨骨頭の橈側端と第5中手骨骨頭の尺側端との直線距離を測定する。
4.× 大腿長は、大転子から「大腿骨内側上顆」ではなく大腿骨外側上顆との直線距離である。
5.× 下腿長は、「脛骨点(脛骨内側顆)」ではなく脛骨外側顆から、「踵点」ではなく外果までの直線距離である。脛骨点とは、脛骨の内側顆の上縁のうち、最も高い点である。踵点とは、踵骨のうち、最も後方に突き出している点である。

 

 

 

 

 

30 感覚検査で正しいのはどれか。

1.温度覚検査に氷を使用する。
2.痛覚検査はピンで皮膚をこする。
3.立体識別覚検査に鈴を使用する。
4.位置覚検査は指腹と爪をつまみ動かす。
5.振動覚検査は音叉を皮膚の骨突出部に当てる。

解答

解説
1.× 温度覚検査に「氷」ではなく冷水と温水を使用する。温度覚検査は、10℃の冷覚と50℃の温覚を感じることができれば正常である。一般的に冷覚は5~10℃、温覚は40~45℃である。これらを感じない場合には、0℃と60℃で検査を行い、感じることができれば鈍麻、感じることができなければ脱失と判定する。
2.× 痛覚検査はピンで皮膚を「こする」のではなく刺す。こすると触覚検査となる。
3.× 立体識別覚検査に「鈴」ではなく木製の積み木を使用する。立体覚の検査は、立方体や球など一辺が2.5~4cmの5種類の木製の積木を2セット準備し、1 セットを机上に並べ、手に持たせたものと同じ物を選択してもらう。他にも、立体覚の検査として、日用物品を用い、答えてもらうものがある。普段よく使うブラシ・鉛筆・鍵などの5つ用意し実施する。ただし、日用物品の立体覚検査で正答した物品は、「冷たいから金属…スプーン」など、材質大きさの質感、温度覚などから推測した回答もあるため注意すべきである。ちなみに、立体識別覚とは、四肢の空間における位置を認識する感覚である。つまり、触れることで物の形や材質を判断する感覚である。
4.× 位置覚検査は、「指腹と爪」ではなく手指では側面をつまみ動かす。なぜなら、上下に持つと、指の皮膚に上下方向への触圧覚刺激が感知され、正確な評価ができないためである。
5.〇 正しい。振動覚検査は音叉を皮膚の骨突出部に当てる。具体的な部位として、皮下に骨が容易に触知できる鎖骨・胸骨・外果などの骨の突出部に音叉を振動させて当てる。

複合感覚(皮質覚)

複数の感覚が統合され、「認識」「理解」される感覚である。

つまり、複数の与えられた感覚情報が大脳皮質で統合されることにより、物の性質・形態などを認識することである。

種類として、①立体覚、②皮膚書字感覚、③二点識別覚、④部位覚、⑤重量覚などがある。

 

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