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11 14歳の女子。強度の弱視(両眼の視力の和が0.04未満、両眼の矯正視力が0.2)で特別支援学校に通っている。
日常生活や学校生活において使用しない支援機器はどれか。
1.遮光眼鏡
2.罫プレート
3.プリズム眼鏡
4.内側黒色の茶碗
5.コンピューター(タッチパネル画面付き)
解答3
解説
・14歳の女子(特別支援学校)。
・強度の弱視
・両眼の視力の和が0.04未満、両眼の矯正視力が0.2
→弱視とは、眼鏡やコンタクトレンズなどをしても、視力が十分に出ない状態をさす。
1.〇 遮光眼鏡とは、まぶしさの要因となる500ナノメートル以下の短波長光(紫外線+青色光線)を効果的にカットし、それ以外の光を出来るだけ多く通すよう作られた特殊カラーフィルターレンズである。短波長を取り除くことでくっきりさせ、コントラストを強調させる。したがって、白内障初期や網膜色素変性症、加齢黄斑変性、緑内障による視野狭窄、その他視神経疾患などまぶしさにより見えにくさを感じる方に適応となる。
2.〇 罫プレート(※読み:ケイプレート)とは、タイポスコープともいい、黒い紙やプラスチックシートに、行幅くらいの細長い窓を一つまたは数個空けたものである。文字をまっすぐに書けない時に役立つ。
3.× プリズム眼鏡は、使用しない支援機器である。プリズム適応療法は、半側空間無視やパーキンソン病に適応となる眼鏡である。視野を右にずらすプリズム眼鏡をかけ、目標物を指さす課題を繰り返すと、最初は正確な位置を指すのが難しいが、次第にプリズムによる視覚情報に適応し、正確な位置を指せるようになる。そして、プリズム眼鏡をはずすと、今度は逆に目標物よりも左側を指すようになる。この現象が、左半側空間無視の治療に応用される。ただし、脳卒中治療ガイドラインでは、プリズム適応療法は、グレードC1(十分な科学的根拠がないが、行うことを考慮しても良い。有効性が期待できる可能性がある)である。
4.〇 内側黒色の茶碗は、弱視でもご飯粒がはっきりと見え、食べ残しなどなくきれいに食べることができる。へらや包丁も同様で、刃の部分が白くなっていたり、ご飯を見やすく黒い色のへらだと便利である。
5.〇 コンピューター(タッチパネル画面付き)は、印刷物や本、ウェブ上のホームページを読み上げて理解したり、操作に慣れれば一般的な便利道具として使用することもできる。スマートフォンであれば、カメラで写真を撮り、その写真を拡大表示することで、より詳細にモノを認識することもできる。コンピューターやスマホにも、弱視でも操作がしやすいように、文字の大きさを拡大するだけでなく、マウスカーソルを拡大表示したり、白黒反転、ポインターの軌道を表示、拡大鏡の設定などさまざまである。
12 58歳の男性。脳梗塞後の左不全片麻痺。Brunnstrom法ステージ上肢Ⅲ、手指Ⅲ、下肢Ⅲ。短下肢装具装着で杖歩行が可能である。MMSEは25点、高次脳機能障害はない。利き手は右手である。山間部に在住であり自動車の運転が必要である。同居の妻は運転免許を取得していない。オートマチック車での運転再開に向けて作業療法を開始した。
運転再開支援で最も適切なのはどれか。
1.運転免許を更新するために教習所に通うように指導する。
2.運転再開には臨時適正検査を受けるように指導する。
3.スライディングボードを使用するように指導する。
4.運転時には妻を助手席に乗せるように指導する。
5.運転再開の許可は作業療法士が行う。
解答2
解説
・58歳の男性(脳梗塞後の左不全片麻痺、利き手:右)
・Brs:上肢Ⅲ、手指Ⅲ、下肢Ⅲ(短下肢装具装着で杖歩行可)
・MMSE:25点、高次脳機能障害はない。
・山間部に在住であり、自動車の運転が必要。
・同居の妻:運転免許を取得していない。
・目標:オートマチック車での運転再開。
→本症例は、片麻痺(Brs:上肢Ⅲ、手指Ⅲ、下肢Ⅲ)である。運転にあたって、身体機能面で支障が出てくる可能性がある。また、高次脳検査はカットオフ値にかからなかったとしても、実際の運転の場ではとっさの判断や高次脳が必要となる。作業療法士が独断で、運転の許可を出してしまうと、事故した際の責任問題にもなりかねない。よく理学療法士でも臨床で運転免許の相談を受けるが、運転再開には臨時適正検査を受けるように指導する。ちなみに、作業療法士は、運転免許センターにおいて、運転適性検査を活用した安全運転相談・支援、医療系知識を生かした助言・指導等に従事しているものもいる。
1.× 運転免許を更新するために教習所に通うように指導する必要はない。なぜなら、本症例は58歳の男性で、免許の更新の方法はすでに知っていると考えられるため。免許の更新は、運転免許センターや運転免許試験場、警察署などで行える。病気にかかったとしても一般的な免許更新の方法と変更はない。
2.〇 正しい。運転再開には臨時適正検査を受けるように指導する。臨時適正検査とは、運転免許をこれから取得される方、すでにお持ちの方が、一定の病気等を疑う理由がある時に、公安委員会が認める専門医の診断により行われる検査である。本症例は、片麻痺(Brs:上肢Ⅲ、手指Ⅲ、下肢Ⅲ)である。運転にあたって、身体機能面で支障が出てくる可能性がある。また、高次脳検査はカットオフ値にかからなかったとしても、実際の運転の場ではとっさの判断や高次脳が必要となる。
3.× スライディングボードを使用するように指導する必要はない。なぜなら、本症例は、Brs:下肢Ⅲ(短下肢装具装着で杖歩行可)であるため。スライディングボードは、座位保持可能で立位困難な場合に用いることが多い。スライディングボードは、座った姿勢を保持したままベッドから車椅子に移乗するための福祉用具である。介助者は少ない力で無理なく介助できる。
4.× 運転時には妻を助手席に乗せるように指導する優先度は低い。なぜなら、同居の妻は、運転免許を取得しておらず、詳細な標識や運転方法も知らない可能性が高いため。
5.× 運転再開の許可は、「作業療法士」ではなく公安委員会が認める専門医が行う。臨時適正検査の結果で判断してもらう。作業療法士が独断で、運転の許可を出してしまうと、事故した際の責任問題にもなりかねない。
臨時適正検査とは、運転免許をこれから取得される方、すでにお持ちの方が、一定の病気等を疑う理由がある時に、公安委員会が認める専門医の診断により行われる検査である。公安委員会が認める専門医の診断を受け、病気等の申告があった場合は、職員が症状等について具体的に聞く。症状によっては、ドライブシミュレータ等を使用した検査の実施や診断書の提出を求める場合もある。一定の病気等とは、認知症、統合失調症、てんかん、再発性の失神、そううつ病、そう病、うつ病、無自覚性の低血糖症、重度の眠気の症状を呈する睡眠障害、アルコール依存症、麻薬、大麻、あへん、覚せい剤等の中毒者(依存症)、その他安全な運転に支障のある方(半盲等の視野障害、高次脳機能障害により注意障害等がある、病気により体が思うように動かせないことがある等)がある。
13 56歳の女性。4年前に関節リウマチと診断された。Steinbrockerのステージ3、クラス3。趣味は料理、手芸および絵画で活動への意欲は高い。両肩関節と両股関節の可動域制限は著明であり、起き上がりが困難である。後頸部と両膝の痛みを訴えている。
作業療法で適切なのはどれか。
1.趣味活動の絵画は中止する。
2.柔らかいマットレスの導入を勧める。
3.高さのある枕を使用するように勧める。
4.等張性収縮を利用した上肢の筋力維持を図る。
5.料理の際は座面の高い椅子を使用するように勧める。
解答5
解説
・56歳の女性(4年前:関節リウマチ)。
・Steinbrockerのステージ3、クラス3。
・趣味:料理、手芸、絵画(活動への意欲は高い)。
・両肩関節と両股関節の可動域制限:著明。
・起き上がり:困難。
・後頸部と両膝の痛みを訴えている。
→関節リウマチ患者に対する日常生活の指導は、関節保護の原則に基づき行う。関節保護の原則とは、疼痛を増強するものは避けること、安静と活動のバランスを考慮すること、人的・物的な環境を整備することがあげられる。変形の進みやすい向きでの荷重がかからないように手を使う諸動作において、手関節や手指への負担が小さくなるように工夫された自助具が求められる。関節保護法の基本として「小さな関節より大きな関節を使う、小さな筋肉より大きな筋肉を使う」ことが挙げられる。大関節は、肩関節、肘関節、股関節、膝関節を指す。一方、小関節は、指やMP関節、足趾のことをいうことが多い。例えば、買い物袋であれば、指で握るよりは前腕にかけた方が良く、片手鍋よりも両手鍋を使用する方が望ましい。変形の進みやすい向きでの荷重がかからないように手を使う諸動作において、手関節や手指への負担が小さくなるように工夫された自助具が求められる。
1.× 趣味活動の絵画は中止する優先度は低い。なぜなら、活動への意欲は高いため。変形が進みやすく痛みがあるようなら、手関節や手指への負担が小さくなるように工夫された自助具を提供し、できる限り活動量の維持に努める。
2.× 柔らかいマットレスの導入を勧める優先度は低い。なぜなら、なぜなら、柔らかいマットレスは、体幹の沈み込み、頸部だけでなくその他の関節に負担がかかるため。
3.× 高さのある枕を使用するように勧める優先度は低い。なぜなら、高めの枕の使用は、頸部屈曲が強まり、環軸椎亜脱臼を引き起こす可能性が考えられるため。
4.× 「等張性収縮」ではなく等尺性収縮を利用した上肢の筋力維持を図る。等尺性収縮運動は、関節運動がないため、関節にかかる負担が低く適している。
5.〇 正しい。料理の際は座面の高い椅子を使用するように勧める。なぜなら、座面が高い椅子は、股・膝関節にも負担がかかりにくく、本症例の趣味である料理を続けられるきっかけともなるため。
Steinbrockerのステージ分類とは、関節リウマチ患者の関節破壊の程度を病期に合わせて分類する方法である。一方、クラス分類とは、関節リウマチの機能障害度をクラス別に分類する方法である。ステージ(クラス)ⅠからⅣの4段階に分類し、進行度を評価する。
【ステージ分類:リウマチの病期】
ステージⅠ:X線検査で骨・軟骨の破壊がない状態。
ステージⅡ:軟骨が薄くなり、関節の隙間が狭くなっているが骨の破壊はない状態。
ステージⅢ:骨・軟骨に破壊が生じた状態。
ステージⅣ:関節が破壊され、動かなくなってしまった状態。
【クラス分類:機能障害度】
クラスⅠ:健康な方とほぼ同様に不自由なく生活や仕事ができる状態。
クラスⅡ:多少の障害はあるが普通の生活ができる状態。
クラスⅢ:身の回りのことは何とかできるが、外出時などには介助が必要な状態。
クラスⅣ:ほとんど寝たきりあるいは車椅子生活で、身の回りのことが自分ではほとんどできない状態。
関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。
(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)
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14 58歳の男性。アルコール依存症。長年、製造業に従事し晩酌を欠かしたことはなかった。徐々に飲酒量が増え、連続飲酒で入退院を繰り返している。今回Wernicke脳症のため入院となり、その後Korsakoff症候群が残遺した。状態が安定したため作業療法が処方された。
この患者に出現する可能性が高い症状はどれか。
1.観念奔逸
2.体感幻覚
3.不安発作
4.記銘力障害
5.フラッシュバック
解答4
解説
・58歳の男性(アルコール依存症)。
・徐々に飲酒量が増え、連続飲酒。
・今回Wernicke脳症のため入院。
・Korsakoff症候群が残遺した。
→本症例は、アルコール依存症である。アルコール依存症とは、少量の飲酒でも、自分の意志では止めることができず、連続飲酒状態のことである。常にアルコールに酔った状態でないとすまなくなり、飲み始めると自分の意志で止めることができない状態である。【合併しやすい病状】①離脱症状、②アルコール幻覚症、③アルコール性妄想障害(アルコール性嫉妬妄想)、④健忘症候群(Korsakoff症候群)、⑤児遺性・遅発性精神病性障害 など。
→Wernicke脳症は、ビタミンB1欠乏によって起こり、意識障害、眼球運動障害、運動失調を3主徴とする。
→Korsakoff症候群(コルサコフ症候群)の特徴的な症状は、①健忘、②記銘力低下、③見当識障害、④作話である。ビタミンB1の欠乏による脳障害が原因であり、治療はビタミンB1の投与である。完治しにくく後遺症を残す可能性が高い。
1.× 観念奔逸とは、考えが次から次へとほとばしり出ることで、繰状態の患者によくみられる症状である。双極性障害の躁状態に多い症状である。
2.× 体感幻覚とは、通常感じない身体の異常な感覚であり、知覚障害に分類される。例えば、作業療法中に「脳が溶けて流れ出す」と辛そうに訴える患者の症状である。統合失調症にみられる。
3.× 不安発作とは、急激に訪れる不安、動悸、冷や汗などの症状である。パニック障害でみられる。
4.〇 正しい。記銘力障害が、この患者に出現する可能性が高い。Korsakoff症候群(コルサコフ症候群)の特徴的な症状は、①健忘、②記銘力低下、③見当識障害、④作話である。ビタミンB1の欠乏による脳障害が原因であり、治療はビタミンB1の投与である。完治しにくく後遺症を残す可能性が高い。
5.× フラッシュバックとは、心的外傷的な出来事に関する苦痛な記憶が侵入的に繰り返し想起される現象である。心的外傷後ストレス障害(外傷後ストレス障害:PTSD)で認められる。また、精神作用物質(覚醒剤など)の常用者に、睡眠不足・過労などのストレスがかかると、薬剤を使用しなくても使用した時と同様の精神症状を呈することもある。
15 11歳の男児。知的障害。ゲームソフトを買ってもらえなかったことをきっかけに、母親への暴力が激しくなり精神科に入院した。入院1週後、興奮は徐々に落ち着いてきたため、作業療法が導入された。
この患児に対して行う作業療法で適切でないのはどれか。
1.暦年齢相応の作業を用いる。
2.障害の特性を家族に説明する。
3.患児が興味を示す作業から導入する。
4.指示をする際には称賛し動機付けを高める。
5.親子の自然な情緒的交流ができるように支援する。
解答1
解説
・11歳の男児(知的障害)。
・きっかけ:ゲームソフトを買ってもらえなかったこと。
・母親への暴力が激しくなった。
・入院1週後:興奮は徐々に落ち着いてきた。
→知的障害とは、「知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の支援を必要とする状態にあるもの」と定義されている。状況の判断能力が低く、他者の発言を被害的に受け取る傾向が強い。注意されたことを叱責と捉えるなど自信がなく、自分の気持ちを表現することが苦手である。知的障害では、抽象的概念の形成が困難で、言語概念の形成も遅れることが多く、学習障害を呈する。また、左右の協調的運動や微細運動が不得意であり、更衣動作などの身辺作業面に遅れを伴う。原因として、①出生前要因(染色体異常、奇形症候群、先天代謝異常、神経変性疾患、神経筋疾患、内分泌疾患、子宮内感染など)、②周産期要因(胎内環境異常、新生児疾患など)、③出生後要因(外傷、事故、養育環境など)が挙げられる。
1.× 「暦年齢相応」の作業を用いるのは難易度が高すぎる。なぜなら、知的障害は左右の協調的運動や微細運動が不得意であり、更衣動作などの身辺作業面に遅れを伴うことが多いため。一般的に知的障害の対応として、本人の年齢に応じた話しかけを行う。知的障害のある子どもが親に暴力を振るう理由は、自分の気持ちをうまく伝えられないことや、叱責されることが多く自己肯定感が持ちにくいことなどが挙げられるため、話の内容は、「はっきり」「短く」「具体的」に話すことが求められる。
2.〇 正しい。障害の特性を家族に説明する。なぜなら、患児は11歳と力も強くなり、さらに母親への暴力が激しくなるときもあるため。暴力までならないよう接し方を説明したり、大きな怪我に発展しないように、暴力がひどいときはその場から離れたり、ヘルメット着用したりネックレスを外すなどの対応を伝えるとよい。
3.〇 正しい。患児が興味を示す作業から導入する。なぜなら、興味を示すことから作業に入ることで、その患児の様子から知的障害の評価をすることができるため。ただし、知的障害のある人は、特定の物事に強い興味を示し、自分のやり方など特定のことにこだわりが強いという特徴がある。
4.〇 正しい。指示をする際には称賛し動機付けを高める。なぜなら、知的障害は、普段から注意されたことを叱責と捉えるなど自信がなく、自分の気持ちを表現することが苦手であるため。
5.〇 正しい。親子の自然な情緒的交流ができるように支援する。なぜなら、患児はゲームソフトを買ってもらえなかったことをきっかけに母親への暴力を起こしている。コミュニケーションや情緒が不安定であることが考えられる。情緒とは、喜び、悲しみ、怒り、恐怖、不安のような一時的で急激な心の動きをいう。 情緒的交流は、子どもの情緒的安定性や親の養育に肯定的な影響を与え、子どもの適応に良い影響をもたらすといわれている。