第59回(R6) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午後問題96~100】

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96 うつ病と比較した場合の双極性障害の特徴はどれか。

1.発症年齢が低い。
2.生涯有病率が高い。
3.遺伝的素因が少ない。
4.自殺のリスクが低い。
5.生涯有病率の男女差が大きい。

解答

解説

双極性障害とは?

気分障害におけるうつ病(単極性)と双極性障害について、双極性障害は障害有病率約1%で、うつ病よりも若い時期に発症しやすく、性差は認められていない。遺伝素因はうつ病よりも2倍以上の関与が考えられている。

双極性障害とは、気分が高まったり(躁状態)、落ち込んだり(うつ状態)を繰り返す脳の病気である。激しい躁状態とうつ状態のある双極Ⅰ型と、軽い躁的な状態(軽躁状態)とうつ状態のある双極Ⅱ型がある。躁状態では、気分が高ぶって誰かれかまわず話しかけたり、まったく眠らずに動き回ったりと、過活動的になる。ほかにも、ギャンブルに全財産をつぎ込んだり、高額のローンを組んで買い物をしたり、上司と大ゲンカして辞表を叩きつけたりするような社会的信用や財産、職を失ったりする激しい状態になることもある。

1.〇 正しい。発症年齢が低い。うつ病の発症年齢は20~30代(中高年でも多い)である。一方、双極性障害は20代前半である。
2.× 生涯有病率が「高い」ではなく低い。うつ病の生涯有病率は約10~15%である。一方、双極性障害は約0.5%である。ちなみに、生涯有病率とは全生涯に関連した健康事象の症例数である。
3.× 遺伝的素因が「少ない」ではなく多い。うつ病の遺伝的素因は遺伝が40%、環境が60%の割合である。一方、双極性障害は遺伝が80%、環境が20%の割合である。双極性障害の原因は、何らかの脳の機能的異常が背景にあると考えられている。親が双極性障害である場合は、およそ10倍にリスクが高まるといわれいる。
4.× 自殺のリスクが「低い」ではなく高い。うつ病の自殺のリスクは2%である。一方、双極性障害は8%である。
5.× 生涯有病率の男女差が「大きい」ではなく男女差ない。うつ病の有病率の男女比は1:2程度である。一方、双極性障害の有病率の男女比はほとんどみられない。

うつ病の対応

かかりやすい:几帳面で完璧主義、責任感が強い人が多い。

うつ病の特徴:意欲低下、精神運動抑制などの症状のため、自己評価が低く、疲労感が強い。

①調子が悪いのは病気のせいであり、治療を行えば必ず改善すること。
②重要事項の判断・決定は先延ばしにする。
③自殺しないように約束してもらうことなど。

【作業基準】
①工程がはっきりしている。
②短期間で完成できる。
③安全で受身的で非競争的である。
④軽い運動(いつでも休憩できる)

【対応】
①気持ちを受け入れる。
②共感的な態度を示す。
③心理的な負担となるため、激励はしない。
④無理をしなくてよいことを伝える。
⑤必ず回復することを繰り返し伝えていく。
⑥静かな場所を提供する。

 

 

 

 

 

97 せん妄で正しいのはどれか。

1.認知機能は保たれる。
2.高齢は危険因子となる。
3.睡眠覚醒リズムは保たれる。
4.症状の経過は不可逆的である。
5.夜間に起こることはまれである。

解答

解説
1.× 認知機能は「保たれる」のではなく低下する。せん妄は、注意力、集中力、認知機能、記憶力、判断力、見当識などが広く障害される病態である。
2.〇 正しい。高齢は危険因子となる。高齢者は薬剤によってせん妄が引き起こされる場合も多い。ほかの危険因子として、脳疾患、心疾患、脱水、感染症、手術、心理的因子、薬物、環境などにも起因する。
3.× 睡眠覚醒リズムは「保たれる」ではなく乱れる。せん妄は日内変動を示すことがよくあり、特に夕方や夜間に症状が悪化することが一般的である。したがって、主な予防方法として、昼間の働きかけを多くし、睡眠・覚醒リズムの調整をすることが求められる。
4.× 症状の経過は、「不可逆的」ではなく可逆的である。不可逆的とは、もとには戻らないという意味である。
5.× 夜間に起こることはまれであるとは言い切れない。夜間せん妄とは、夜間にせん妄が出現する状態を指す。夜間せん妄では、夜間に大声を出したり暴れたりする症状が現れることもある。高齢者に多く、脳が混乱しやすい状況(入院で急に環境が変わるなど)や、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の投与でも生じやすくなる。

せん妄とは?

せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。高齢者は薬剤によってせん妄が引き起こされる場合も多い。
【原因】脳疾患、心疾患、脱水、感染症、手術などに伴って起こることが多い。他にも、心理的因子、薬物、環境にも起因する。

【症状】
①意識がぼんやりする。
②その場にそぐわない行動をする。
③夜間に起こることが多い。 (夜間せん妄)
④通常は数日から1週間でよくなる。

【主な予防方法】
①術前の十分な説明や家族との面会などで手術の不安を取り除く。
②昼間の働きかけを多くし、睡眠・覚醒リズムの調整をする。
③術後早期からの離床を促し、リハビリテーションを行う。

 

 

 

 

98 統合失調症の陰性症状はどれか。2つ選べ。

1.意欲低下
2.感情の平板化
3.幻覚
4.妄想
5.連合弛緩

解答1・2

解説

陽性徴候と陰性徴候

陽性徴候(陽性症状)とは、普段出ていないけど病気になることで出現する症状のことである。
例えば、クローヌス、痙縮、バビンスキー反射、連合反応などである。統合失調症でいうと幻覚、妄想、緊張病症状などである。陽性症状の方が薬物反応はよく、予後良好といえる。

陰性徴候(陰性症状)とは、普段持っている能力(健常者が持っている能力)が失われることである。
例えば、筋力低下、巧緻性の低下、疲労感などである。統合失調症でいうと感情平板化、自発性低下、思考の貧困化など。

1.〇 正しい。意欲低下/感情の平板化は、統合失調症の陰性症状である。
3.× 幻覚/妄想は、統合失調症の陽性症状である。
5.× 連合弛緩は、統合失調症の陽性症状である。連合弛緩とは、個々の話の間の関連性が弱く、話のまとまりが悪い状態をいう。連合弛緩は、思考の異常である。

”統合失調症とは?”

統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。

(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)

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【OT/共通】精神症状(精神医学)についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

99 自閉症スペクトラム障害児が母親の手をとり目的の物に持っていく行動はどれか。

1.常同運動
2.運動チック
3.オウム返し
4.クレーン現象
5.タイムスリップ現象

解答

解説

自閉症スペクトラム障害とは?

自閉症スペクトラム障害とは、正常な社会的関係を構築することができず、言葉の使い方に異常がみられるか、まったく言葉を使おうとせず、強迫的な行動や儀式的な行動がみられる病気である。 自閉スペクトラム症の患者は、他者とコミュニケーションをとったり関係をもったりすることが苦手である特徴を持つ。

広汎性発達障害(自閉スペクトラム障害)とは、相互的な社会関係とコミュニケーションのパターンの障害、および限局・常同・反復的な行動パターンがあげられる。生後5年以内に明らかとなる一群の障害である。通常は精神遅滞を伴う。広汎性発達障害、およびその下位分類である自閉症、アスペルガー症候群、高機能自閉症は、「自閉スペクトラム症」とまとめられた。

【診断基準の要点】
①「社会及び感情の相互性の障害」「社会的相互作用で用いられる非言語的コミュニケーションの障害」「発達レベル相応の関係を築き維持することの障害」の3つがすべて込められること。
②行動、興味活動の、限局的で反復的な様式が認められること。

1.× 常同運動は、Rett症候群にみられる。Rett症候群(レット症候群)は、自閉症やてんかん・失調性歩行・特有の手もみ動作(常同運動)を主徴とする進行性の精神・神経疾患である。女児のみに発症し、初期には一見正常な発達をするが、その後それまで獲得していた手先の技能や言葉が喪失する。7か月~2歳に発症し、頭部発育が阻害され小頭症となる。
2.× 運動チックは、Tourette症候群にみられる。運動チックとは、目的のない同じような不随意運動が素早く不規則に繰り返される現象である。例えば、首を振ったり、目をパチパチさせるなどである。ちなみに、Tourette症候群(トゥレット障害)とは、複数の運動チックと音声チックが同時に存在し、1年以上継続する状態を指す。汚言症がみられることがある。汚言症とは、卑猥語や罵倒語(汚言、醜語、糞語、猥言、猥語)を不随意的に発する症状。一方、一過性チック障害は運動性チックおよび(または)音声チックが1日中頻繁に生じ、少なくとも4週間は持続するが、1年以上には至らないものをいう。
3.× オウム返しは、前頭側頭型認知症にみられる。オウム返しとは、反響言語ともいい、言った言葉を繰り返す状態を指す。ちなみに、前頭側頭型認知症とは、前頭葉・側頭葉に限局した萎縮性病変を認める症候群をいう。代表的な疾患にPick病がある。発症は初老期(40~60歳代)にみられる。初期は、自発性の低下、自発語の減少、偏食・過食、脱抑制などの人格変化・行動異常で潜行性に発症する。
4.〇 正しい。クレーン現象は、自閉症スペクトラム障害児が母親の手をとり目的の物に持っていく行動である。クレーン現象は、言葉がうまく使えないため、動作で要求を実現させようとする動作である。 例えば、のどが渇いたら、母親の手を取って冷蔵庫の所まで連れて行くといった動作である。言葉で要求を伝えられない小児(自閉スペクトラム症を含む)にみられることが多い。
5.× タイムスリップ現象とは、杉山が提唱した概念であるが、自閉症の児童・青年が突然に、時として数年以上間の出来事を思い出し、その想起した内容を、あたかもそれがつい先程のことのように対応する現象である。

自閉性障害の特徴

対人関係の障害
コミュニケーション障害
知能の遅れ
特徴的な常同行動やオウム返しなど。

 

 

 

 

 

100 振戦せん妄で正しいのはどれか。

1.生命への危険性は低い。
2.羽ばたき振戦がみられる。
3.ベンゾジアゼピン系薬を使用する。
4.飲酒停止後24時間以内に多くみられる。
5.アルコール血中濃度の上昇に伴って生じる。

解答

解説

振戦せん妄とは?

振戦せん妄とは、アルコール断酒後に起こる離脱症状の一つである。断酒2~3日後には、振戦せん妄が生じる。離脱症状とは、飲酒中止後に生じ、精神的、肉体的な症状を呈する。最終飲酒から数時間後から出現し、20時間後にピークを迎える早期離脱症候群(振戦、自律神経症状、発汗、悪心・嘔吐、けいれん、一過性の幻覚)と最終飲酒後72時間頃から生じ数日間持続する後期離脱症候群(早期離脱症状に加え意識変容を呈したもの、振戦せん妄といわれる。小動物幻視や日頃やり慣れた動作、例えば運転動作を繰り返す、夜間に目立つ)に分けられる。

1.× 生命への危険性は、「低い」とは言い切れない。生命の危険性が具体的な数字でどの程度が低いもしくは高いか判断するのが難しいが、一部の報告では「未治療例での死亡率37%程度、適切な治療で5%以下」と言われている(※参考:「アルコール離脱の伴うふるえ(振戦せん妄)」日吉台病院様HPより)。
2.× 羽ばたき振戦がみられるのは、肝性脳症呼吸不全(CO2ナルコーシス)に認められる。羽ばたき振戦とは、手関節を背屈させたまま手指と上肢を伸展させ、その姿勢を保持するように指示すると、「手関節及び中指関節が急激に掌屈し、同時に、元の位置に戻そうとして背屈する運動」が認められる。手関節や手指が速くゆれ、羽ばたいているようにみえるので、このように呼ばれる。
3.〇 正しい。ベンゾジアゼピン系薬を使用する。なぜなら、振戦せん妄(アルコール離脱症状)は、興奮系ニューロンが著しく活性化し症状(振戦・発汗、幻覚)を呈しているため。したがって、治療として、睡眠薬にも用いられるベンゾジアゼピン系薬を使用する。
4.× 飲酒停止後、「24時間以内」ではなく2日後に多くみられる。20時間後にピークを迎える早期離脱症候群(振戦、自律神経症状、発汗、悪心・嘔吐、けいれん、一過性の幻覚)がみられる。
5.× アルコール血中濃度の「上昇」ではなく低下に伴って生じる。なぜなら、振戦せん妄は、アルコール依存症の患者の体内のアルコール濃度が下がってくるとみられる離脱症状の一つであるため。ちなみに、血中アルコール濃度とは、飲酒して消化管から吸収されたアルコールが血中に移行した状態の濃度であり、酔いの程度を決める指標の一つである。

アルコール依存症とは?

アルコール依存症とは、少量の飲酒でも、自分の意志では止めることができず、連続飲酒状態のことである。常にアルコールに酔った状態でないとすまなくなり、飲み始めると自分の意志で止めることができない状態である。最終飲酒後72時間頃までに症状が最も激しくなるのは、アルコール離脱症状である。

【合併しやすい病状】
①離脱症状
②アルコール幻覚症
③アルコール性妄想障害(アルコール性嫉妬妄想)
④健忘症候群(Korsakoff症候群)
⑤児遺性・遅発性精神病性障害 など

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