第59回(R6) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午後問題86~90】

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86 便秘を最も生じやすい薬剤はどれか。

1.モルヒネ
2.グリセリン
3.センノシド
4.ラクツロース
5.酸化マグネシウム

解答

解説

モルヒネとは?

モルヒネとは、オピオイド鎮痛薬として、おもに鎮痛目的で用いられる。医療用麻薬でもあり、その鎮痛作用は強力である。とくに持続する鈍痛に効果が高く、一般的な鎮痛薬が効きにくい内臓痛をはじめ、各種がん痛や手術後にも適応となる。オピオイド(麻薬性鎮痛薬)とは、主に脳や脊髄などの中枢神経にあるオピオイド受容体と結合することで鎮痛効果を示す化合物である。代表的なオピオイドとして、モルヒネやオキシコドン、フェンタニルが挙げられ、主にがん疼痛の緩和ケアなどに使用される。モルヒネの副作用には、便秘、嘔気・嘔吐、眠気、呼吸抑制などがある。

1.〇 正しい。モルヒネは、便秘を最も生じやすい薬剤である。モルヒネはオピオイド鎮痛剤で、腸管の運動性を低下させ、より腸管で水分を吸収させる。それに加え、膵臓や肝臓からの消化液の分泌を低下させるため、消化が妨げられ、腸管輸送時間が延長し、便が硬くなることによって便秘を生じさせる(※参考:「抗がん剤の副作用とその対応」熊本大学HPより)。
2.× グリセリンとは、排便を促す目的のために浣腸液である。グリセリン浣腸とは、直腸内に50%グリセリン液を注入して排便を促す処置のことである。術前処置または便秘の治療として、直腸内容物を除去するために行われる。浣腸は一般的な処置であるが、腸管穿孔や溶血、血圧低下などさまざまなリスクがある。
3.× センノシドとは、便秘症の治療に用いられる大腸刺激性下剤である。大腸内の細菌の作用で腸のぜん動運動を亢進させる物質になり、大腸粘膜を刺激して腸の動きを促進し、排便を促す。
4.× ラクツロースとは、主に肝性脳症の治療薬(下剤)として使用する。主に、①ラクツロース、②抗菌薬が用いられる。①合成糖であるラクツロースは、下剤として作用し、食物が腸を通過する速度を速めることで、体に吸収されるアンモニアの量が減少させる。②口から投与しても腸から吸収されない抗菌薬(リファキシミンなど)を処方することにより、腸に残り、消化中に毒素を作り出す細菌の数を減らす効果が期待できる。(※参考「肝性脳症」MSDマニュアル家庭版)
5.× 酸化マグネシウムは、一般的な下剤薬である。大腸における水分の吸収を抑制し、便に含まれる水分が多くなることで便を軟らかくする作用がある。また、腸内で浸透圧によって水分を引き寄せる働きがあり、便が柔らかく膨張することで腸が刺激され、自然に近い排便を促す。

 

 

 

 

 

87 装具療法の主たる目的でないのはどれか。

1.機能の補助
2.局所の免荷
3.筋力の強化
4.疼痛の軽減
5.変形の矯正

解答

解説

継手の種類

①固定とは、どの方向にも動かない。
②遊動とは、どの方向にも抵抗なしで動く。
③制限とは、ある角度から動かない。
④制動とは、ある方向にブレーキを受けながら動く。
⑤補助とは、一度たるんだものが元に戻るときに、動きと同方向の力を発生する。

1.〇 機能の補助は、装具療法の目的である。例えば、プラスチックAFO金属支柱付短下肢装具は、足関節背屈補助の機能を持つ。歩行時のつまずきを回避することができる。
2.〇 局所の免荷は、装具療法の目的である。PTB式免荷装具は、膝蓋腱部で荷重を受けるソケットであり、下腿義足に対する標準的なソケットである。下腿骨骨折の手術後、部分荷重より開始とならないような重度のケースや、早期より免荷での歩行導入が必要な症例で用いられる。
3.× 筋力の強化は、装具療法の主たる目的でない。筋力の強化には実際の筋活動が必要である。装具で筋活動を促せない。
4.〇 疼痛の軽減は、装具療法の目的である。なぜなら、関節運動を制限・固定するため。
5.〇 変形の矯正は、装具療法の目的である。例えば、Milwaukee装具(ミルウォーキー型装具)は、骨盤ガードルと頚部を支持するネックリングを金属支柱で連結して、側弯症に適応となり、脊柱の側弯の矯正のために胸椎パッドをつける。

 

 

 

 

88 変形性股関節症で正しいのはどれか。

1.発症は遺伝の影響を受けない。
2.有病率は女性より男性が高い。
3.一次性の頻度は二次性より高い。
4.変形性膝関節症の合併リスクは低い。
5.重量物作業を伴う職業は発症のリスク要因である。

解答

解説

二次性変形性股関節症とは?

二次性変形性股関節症とは、何らかの病気(ペルテス病や先天性股関節脱臼)やケガが原因でおこっている。日本では、この二次性が大半を占め、先天性股関節脱臼と臼蓋形成不全によるものが約90%、圧倒的に女性に多い。壊死部は修復過程を経て正常の骨組織に戻るが、形態異常を伴って修復完了した場合、将来的に変形性股関節症を生じる可能性がある。

1.× 発症は遺伝の影響を受けないとは断言できない。むしろ受けるという報告もある。家族歴のある人に多い傾向があり、これは、遺伝により顔が似ることと同じように、骨格も似ることで、発症しやすいとされている。遺伝的な関与が30~65%あるとされていわれている。​
2.× 逆である。有病率は「男性」より「女性」が高い。なぜなら、臼蓋形成不全(生まれつき骨盤の被りが浅い)があげられるため。臼蓋形成不全は圧倒的に女性に多く(89%)、その結果として変形性股関節症も女性に多くなる。
3.× 逆である。「二次性」の頻度は「一次性」より高い。一次性変形性股関節症とは、原因がわからずに関節軟骨がすり減り、骨が変形するもの。二次性変形性股関節症とは、何らかの病気(ペルテス病や先天性股関節脱臼)やケガが原因でおこっているものをいう。
4.× 変形性膝関節症の合併リスクは低いとは言い切れない。なぜなら、股関節と膝関節は隣り合う関節であるため、お互い影響を受け変形性膝関節症を呈しやすい。
5.〇 正しい。重量物作業を伴う職業は発症のリスク要因である。なぜなら、股関節に過度に負担がかかるため。変形性股関節症リスク要因として、肥満やスポーツ、職業(重量物の作業従事)、臼蓋形成不全などがあげられる。

 

 

 

 

 

 

89 後縦靭帯骨化症で正しいのはどれか。

1.日本人より欧米人に多い。
2.腰椎部に最も多く発生する。
3.進行すれば痙性麻痺を生じる。
4.発症は遺伝の影響を受けない。
5.有病率は男性より女性が高い。

解答

解説

後縦靱帯骨化症とは?

後縦靱帯骨化症とは、椎体骨の後縁を上下に連結し、背骨の中を縦に走る後縦靭帯が骨になった結果、脊髄の入っている脊柱管が狭くなり、脊髄や脊髄から分枝する神経根が押されて、感覚障害や運動障害等の神経症状を引き起こす病気である。症状が進行すると、頚髄損傷のように、四肢の麻痺や、上下肢の腱反射異常、病的反射、膀胱直腸障害が出現するようになる。中年以降、特に50歳前後で発症することが多く、男女比では2:1とされている。

1.× 逆である。「欧米人」より「アジア人(特に日本人)」に多い。原因は不明であるが、家族内でみられることも多いことから、遺伝的な要因がある可能性が指摘されている。また、50代から60代の男性に多くみられ、ホルモンの異常、また肥満や糖尿病の関与も指摘されている。
2.× 「腰椎部」ではなく頸椎に最も多く発生する。手足のしびれで気が付くことが多い。腰椎部に多いのは黄色靭帯骨化症である。黄色靭帯骨化症とは、特定疾患である脊椎靭帯骨化症の一種であり、脊椎の後方にある椎弓をつなぐ黄色靭帯が厚くなり骨化する事により次第に靭帯が圧迫される疾病である。 原因は特定されておらず難病指定されている。第10~12胸椎が好発部位であり、それ以下のレベルで脊髄症状を認める疾患である。後縦靭帯骨化症と合併することが多い。症状として、足のしびれ、締めつけられるような感じ(絞扼感)、脱力感、歩行障害、排尿の障害(頻尿・尿漏れ)などである。
3.〇 正しい。進行すれば痙性麻痺を生じる。なぜなら、上位運動ニューロンを圧迫するため。痙性麻痺とは、中枢神経系の筋を支配する神経細胞より上位の障害によるもので、筋緊張の亢進を伴う麻痺のことである。
4.× 発症は遺伝の影響を受けないと断言できない。原因は不明であるが、家族内でみられることも多いことから、遺伝的な要因がある可能性が指摘されている。また、50代から60代の男性に多くみられ、ホルモンの異常、また肥満や糖尿病の関与も指摘されている。
5.× 逆である。有病率は「女性」より「男性」が高い。男女比では2:1である。

 

 

 

 

 

90 骨粗鬆症の危険因子で誤っているのはどれか。

1.長期の臥床
2.ビタミンAの不足
3.エストロゲンの減少
4.原発性副甲状腺機能亢進症
5.副腎皮質ステロイドの長期投与

解答

解説

骨粗鬆症について

①原発性骨粗鬆症とは、閉経後や高齢者にみられる骨粗鬆症のことである。

②続発性骨粗鬆症とは、結果として二次的な骨量喪失が起こる骨粗鬆症のことをいう。例えば、骨代謝に影響を及ぼすホルモンやサイトカイン異常、不動など骨への力学的負荷の減少、骨構成細胞や物質の異常、全身的および血管障害などの局所的栄養障害などによって起こる。これら骨粗鬆症は原疾患に基づいて発症する続発性骨粗鬆症であるため、原疾患の適切な治療により正常化することが期待しうるが、骨代謝の正常化を期待するには不十分であることが多く、また先天性異常では改善は望めず、多くの症例で骨量喪失に対する治療を要することが多い。

1.〇 正しい。長期の臥床は、骨粗鬆症の危険因子である。なぜなら、長期の安静臥床や活動制限は、骨吸収が亢進、骨量は減少するため。リモデリングのバランスが崩れる。
2.× ビタミンAの不足は、骨粗鬆症の危険因子で誤っている。なぜなら、ビタミンAは、目や皮膚の粘膜を健康に保ち、抵抗力を強める役割があり、暗いところでの視力を保つ働きがあるため。ビタミンA欠乏は、眼球乾燥症・夜盲症を生じる。夜盲症とは、暗いところではたらく網膜の細胞に異常があり暗順応が障害されて、暗いところや夜に見えにくくなる病気である。
3.〇 正しい。エストロゲンの減少は、骨粗鬆症の危険因子である。なぜなら、エストロゲンは、破骨細胞と骨芽細胞の両方に関与しているため。エストロゲンとは、女性らしさをつくるホルモンで、成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育・維持させる働きをもっている。女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用もあるホルモンである。分泌量は、毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎え、45~55歳の更年期になると急激に減る。エストロゲンが減少することで、骨吸収を抑制し骨粗鬆症につながる。
4.〇 正しい。原発性副甲状腺機能亢進症は、骨粗鬆症の危険因子である。なぜなら、原発性副甲状腺機能亢進症により、骨吸収が亢進されるため。特に、副甲状腺ホルモンであるパラトルモンが血液のカルシウムの濃度を増加させるように働く。ちなみに、骨吸収とは、その名の通り骨組織の吸収であり、つまり、破骨細胞が骨の組織を分解してミネラルを放出し、骨組織から血液にカルシウムが移動するプロセスである。
5.〇 正しい。副腎皮質ステロイドの長期投与は、骨粗鬆症の危険因子である。ステロイドの機序として、ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体に結合する。ステロイドの結合したグルココルチコイド受容体は、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われている。 この結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮される。したがって、ステロイドの副作用として、軽度:中心性肥満、体重増加、満月様顔貌、重度:消化管潰瘍、糖尿病、感染症、骨粗鬆症・骨壊死、筋炎、精神症状(抑うつ、せん妄)などがみられる。

ステロイドの副作用

【ステロイドの機序】
ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体に結合する。ステロイドの結合したグルココルチコイド受容体は、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われている。 この結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮される。

【ステロイドの副作用】
軽度:中心性肥満、体重増加、満月様顔貌
重度:消化管潰瘍、糖尿病、感染症、骨粗鬆症・骨壊死、筋炎、精神症状(抑うつ、せん妄)

ステロイドを長期的に内服した場合、体内でステロイドホルモンが分泌されなくなることがある。そのため、急に薬の内服を止めると体内のステロイドホルモンが不足し、倦怠感や血圧低下、吐き気、低血糖などの症状が起こることがある。これをステロイド離脱症候群という。

(※参考:「副腎皮質ステロイド」日本リウマチ学会様HP)

 

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