第59回(R6) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午前問題76~80】

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76 末梢血管抵抗が低下するショックをきたす病態はどれか。2つ選べ。

1.アナフィラキシー
2.消化管出血
3.心筋梗塞
4.心タンポナーデ
5.敗血症

解答1・5

解説

ショックとは?

ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。頻度的に最も多いのは出血性ショックである。

末梢血管抵抗が低下するショックは、①アナフィラキシー、②敗血症性、③神経原性の3つである。それ以外は、循環動態を回復しようと代償作用が働き末梢血管抵抗は増大(血管は収縮)する。

1.〇 正しい。アナフィラキシーは、末梢血管抵抗が低下するショックをきたす。なぜなら、アレルゲンに曝露し、肥満細胞から放出されるヒスタミン等の化学物質が放出されるため。アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応で起こるショックのことである。主にⅠ型アレルギー反応の結果、血管拡張や血管透過性の亢進による血漿漏出が生じ、循環血液量の減少をきたすことで起こる。アナフィラキシーショックの症状として(頻脈、血圧低下、意識障害、喉頭浮腫、呼吸困難)を引き起こす。
2.× 消化管出血は、末梢血管抵抗が上昇するショックをきたす。循環血液量減少性ショックとは、血管内容量の危機的な減少で起こるショックのことである。 静脈還流(前負荷)が減少すると、心室が充満せず、一回拍出量が減少する。 心拍数の増加によって代償されない限り、心拍出量は減少する。 一般的な原因は出血(出血性ショック)で、通常、外傷、外科手術、消化性潰瘍、食道静脈瘤、大動脈瘤破裂によって起こる。
3.× 心筋梗塞は、末梢血管抵抗が上昇するショックをきたす。心原性ショックとは、心ポンプ機能の低下により、全身諸組織における循環不全(安静時における組織代謝需要を満たす血流が供給されない状態)が生じ、低酸素、アシドーシス、毛細血管透過性亢進をきたす重篤な病態を指す。全身および心筋組織の循環不全、低酸素化が生じ、アシドーシス、フリーラジカルの発生、サイトカインの増加、白血球凝集、血管内皮障害、微小循環障害などが生じる。心原性ショックの原因として最も多いのは急性心筋梗塞である。他にも、心臓ポンプ機能の異常による心筋収縮力低下のほか、心筋変性や心タンポナーデによる心室拡張不全、頻脈や徐脈などの不整脈で心拍出量が低下するなど、さまざまな病態が原因になる。
4.× 心タンポナーデは、末梢血管抵抗が上昇するショックをきたす。心タンポナーデとは、心臓を包んでいる2層の膜(心膜)の間に体液などの血液が貯留し、心臓が圧迫される。その結果、血液を送り出す心臓のポンプ機能が阻害され、 典型的にはふらつきや息切れを感じ、失神することもある。心膜腔に大量の血液が貯留し、著明な心室拡張障害から静脈還流障害が生じ、血圧低下およびショック状態に至る病態である。開心術後の合併症として生じ得る。
5.〇 正しい。敗血症は、末梢血管抵抗が低下するショックをきたす。なぜなら、敗血症性ショックの原因の細菌(炎症刺激)により、炎症性サイトカインが産生され、一酸化窒素合成酵素とともに一酸化窒素が大量に合成されるため。一酸化窒素には、血管拡張作用がある。ちなみに、敗血症とは、感染症への反応が制御不能に陥ることで生命を脅かす臓器機能障害が生じる臨床症候群である。敗血症性ショックでは、組織灌流が危機的に減少する。肺・腎臓・肝臓をはじめとする急性多臓器不全が起こる場合もある。特に、新生児は免疫学的に未熟であるため重症化しやすく、肺炎や髄膜炎を併発することもある。そのため、早期診断、早期治療が極めて重要である。

敗血症とは?

肺血症とは、感染症への反応が制御不能に陥ることで生命を脅かす臓器機能障害が生じる臨床症候群である。つまり、感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされている状態といえる。そのなかでも敗血症性ショックは「急性循環不全により細胞障害および代謝異常が重度となり、死亡率を増加させる可能性のある状態」と定義される。組織灌流が危機的に減少し、肺・腎臓・肝臓をはじめとする急性多臓器不全が起こる場合もある。特に、新生児は免疫学的に未熟であるため重症化しやすく、肺炎や髄膜炎を併発することもある。そのため、早期診断、早期治療が極めて重要である。

【初期の症状】悪寒、全身のふるえ、発熱、発汗など。
【症状進行時】心拍数、呼吸数の増加、血圧低下、排尿困難、意識障害など。
【重症化】腎不全、肝不全といった臓器不全、敗血性ショックを招き、命を落とす危険が高まる。

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77 咳をしたときに生じる尿失禁はどれか。

1.溢流性
2.機能性
3.切迫性
4.反射性
5.腹圧性

解答

解説
1.× 溢流性尿失禁とは、尿道が狭くなったり、膀胱から尿を出す力が弱くなったりすることで、尿意はあるが自分では尿を出せず、膀胱に大量の尿が溜まったときに少しずつ溢れるように出てしまうことである。前立腺肥大症の男性に多い。神経因性膀胱や重症の前立腺肥大症で、尿の排出がうまくできず、残尿が貯留し溢れることにより起こる。尿道留置カテーテルを挿入し、その後は自己導尿などの残尿を減らす治療が有効である。
2.× 機能性尿失禁とは、尿の膀胱内保持可能で正常な排尿も可能であるが、傷病者や高齢者など体動が不自由な人が尿意を感じてからトイレにたどり着くのが間に合わずに失禁してしまう状態である。対応策は、ポータブルトイレの設置などの環境調整、衣類の変更などで対応することが多い。
3.× 切迫性尿失禁とは、膀胱が自身の意思に反して収縮することで、急に排尿したくなりトイレに行くまでに我慢できずに漏れてしまう失禁である。原因として膀胱にうまく尿がためられなくなる過活動膀胱が多く、脳血管障害など排尿にかかわる神経の障害で起きることもある。過活動性膀胱に対して、電気刺激療法や磁気刺激療法が有効とされる。薬物療法も用いられる。
4.× 反射性尿失禁とは、脊髄損傷により排尿をつかさどる神経が障害されており(神経因性膀胱)、膀胱に尿が充満した状態で反射的に尿が漏れてしまうものである。原因として、膀胱尿管逆流症や水腎症などの合併症が起こり得るため、治療法として間欠的な自己導尿も選択される。治療としては、自己導尿や排尿訓練などを行う。
5.〇 正しい。腹圧性が、咳をしたときに生じる尿失禁である。腹圧性尿失禁とは、腹圧をかけるような運動時(重い荷物を持ち上げたときなど)に尿が漏れる状態で、男性よりも女性に多くみられる。尿道括約筋を含む骨盤底の筋肉が弱くなることが原因で、加齢、出産、喫煙、肥満などと関連している。

過活動膀胱とは?

過活動膀胱とは、膀胱の蓄尿期において尿意切迫感があり、頻尿や尿失禁をきたす疾患である(切迫性尿失禁)。明らかな神経学的異常に起因する神経因性過活動膀胱と、原因を特定できない非神経因性過活動膀胱に分けられる。原因として、①加齢、②骨盤底筋の低下、③生活習慣病、④肥満などと関連するといわれている。有病率は高齢になるほど高くなる。過活動膀胱では、膀胱訓練や骨盤底筋訓練など機能訓練を行い、薬物療法で治療を行う。

骨盤底筋は子宮、膀胱、直腸を含む骨盤臓器を支える筋肉で、骨盤底筋を強化することで尿漏れ対策となる。仰臥位が基本的な姿勢であるが、伏臥位や座位など日常生活の中でどんな姿勢で行ってもよい。座位や膝立て背臥位などで、上体の力を抜いてお尻の穴を引き上げて「きゅっ」とすぼめ、5秒キープする動作を10~20回ほど繰り返す方法と、すぼめたりを繰り返す方法の2種類ある。

膀胱訓練とは、排尿の間隔を徐々に延長し、膀胱にためることができる尿量を徐々に増やしていくものである。最初は30秒程度からスタートし、徐々に我慢する時間を延ばしていく。

 

 

 

 

78 左右対称のインクのシミでできた図版を順番に提示する検査はどれか。

1.バウムテスト
2.MMPI
3.P-Fスタディ
4.Rorschachテスト
5.WPPSI

解答

解説
1.× バウムテストとは、「実のなる木」を1本自由に描いてもらう描画検査(投影法の人格検査)である。コッホによって開発された。「バウム(Baum)」がドイツ語で「木」という意味である。幼児以上の幅広い年齢が対象となる。
2.× MMPI(Minnesota Multiple Personality Inventory:ミネソタ多面人格目録)は、質問紙法による人格検査である。550の質問に対して「あてはまる」「あてはまらない」「どちらでもない」を選択する3件法が用いられている。
3.× P-Fスタディ(Picture Frustration Study:絵画欲求不満テスト)は、投影法による心理検査である。日常生活で欲求不満を起こすような絵が描かれた24の場面について被験者に空白の吹き出しに自由に記入させる。核反応から対処行動としての自責・他責・無責の性格傾向を明らかにする。
4.〇 正しい。Rorschachテストが、左右対称のインクのシミでできた図版を順番に提示する検査である。Rorschachテスト(ロールシャッハ・テスト)は、投影法による性格検査の一つである。10枚の図版を被験者に見せて、どのように見えるか答えさせ、そこから患者の知的側面と人格面を調べる。被験者にインクのしみを見せて何を想像するかを述べてもらい、その言語表現を分析することによって被験者の思考過程やその障害を推定するものである。
5.× WPPSI(Wecheler Preschool and Primary Scale of Intelligence)は、ウェクスラー知能検査の幼児版である。ちなみに、WAIS-Ⅲ(Wechsler Adult Intelligence Scale:ウェクスラー成人知能検査)は、質問やイラスト、積み木などの検査キットを用いて、言語性知能尺度・動作性知能尺度から総合の知能指数(IQ)を測定する。16~89歳までが対象となる。

 

 

 

 

 

79 陽性転移はどれか。

1.医療者が患者に過剰な親近感を抱く。
2.医療者が患者に怒りの感情を示す。
3.患者が医療者に好意を寄せる。
4.患者が医療者を強く軽蔑する。
5.患者が医療者を嫌悪する。

解答

解説

転移とは?

転移とは、患者が今までの生活史における重要人物に示してきた感情や態度を治療者に向けることを言い、一方、逆転移とは治療者が患者に向けることである。

・陽性転移とは、治療者に対して信頼、尊敬、情愛、感謝などの感情を示す。
・陰性転移とは、治療者に対して敵意、攻撃性、猜疑心、不信感などの感情を示す。

1.× 「医療者が」患者に過剰な親近感を抱くのは、陽性逆転移である。陽性逆転移とは、治療者が患者に信頼、尊敬、情愛、感謝などの感情を向けることである。
2.× 「医療者が」患者に怒りの感情を示すのは、陰性逆転移である。陰性逆転移とは、治療者が患者に敵意、攻撃性、猜疑心、不信感などの感情を向けることである。
3.〇 正しい。患者が医療者に好意を寄せる。これが、陽性転移である。陽性転移とは、治療者に対して信頼、尊敬、情愛、感謝などの感情を示す。
4~5.× 患者が医療者を強く軽蔑する/患者が医療者を嫌悪するのは、陰性転移である。陰性転移とは、治療者に対して敵意、攻撃性、猜疑心、不信感などの感情を示す。

 

 

 

 

 

80 他者の模範行動を観察して、自らの行動変容をきたすようにする治療法はどれか。

1.系統的脱感作法
2.行動活性化技法
3.マインドフルネス
4.モデリング法
5.問題解決技法

解答

解説
1.× 系統的脱感作法とは、患者に不安を引き起こす刺激を順に挙げてもらい(不安階層表の作成)、最小限の不安をまず想像してもらう。不安が生じなかったら徐々に階層を上げていき、最終的に源泉となる不安が消失する(脱感作)ことを目指す手法である。認知行動療法のひとつである。
2.× 行動活性化技法とは、主にうつ病に対して選択される新しい精神療法の一つで、本人の思考ではなく行動パターンを変えることを重視し、それにより気持ちを軽くして本来の自分を取り戻すことを目的としたアプローチ法である。つまり、本人の思考ではなく行動を修正することを重視する治療法である。
3.× マインドフルネス(マインドフルネスストレス低減法:瞑想)とは、意識的に現在の瞬間に、そして瞬間瞬間に展開する体験に判断を加えず注意を払うことである。今この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに捕らわれのない状態で、ただ観ることである。脳をリラックスさせ、リラックス状態になることで副交感神経が優位となる。カバットジン,J.によって提唱された「注意集中」とも言い換えることができ、心の動きに惑わされることなく、刻一刻と変化する内的状態を冷静に観察することである。
4.〇 正しい。モデリング法観察学習模倣学習)は、他者の模範行動を観察して、自らの行動変容をきたすようにする治療法である。ちなみに、モデリング(訳:模倣)とは、患者に手本となる他者の振る舞いを見せて学んでもらうことである。良いやり方を具体的に示すその行動を見て模倣し、学習していく方法のことをロールプレイという。
5.× 問題解決技法とは、患者に直接働きかけ、①問題提起、②明確化・定式化、③解決法の考案、④意思決定、⑤実施と検証と細かく具体的に実行する方法である。認知行動療法のひとつである。

 

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