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71 膝関節で正しいのはどれか。(※不適切問題:解2つ)
1.膝関節は顆状関節である。
2.内側半月はO字状の形状である。
3.外側側副靱帯は屈曲時に緊張する。
4.前十字靱帯は脛骨の後方への逸脱を防いでいる。
5.完全伸展位に近づくと脛骨は大腿に対し外旋する。
解答1・5
対応:複数の選択肢を正解として採点する。
解説
1.× 膝関節は顆状関節(らせん関節)である。膝関節において、らせん関節とされてきたが、これまで文献によって、顆状関節と紹介されていたものもあった。どちらの意見も尊重して覚えておこう。らせん関節は、腕尺関節、距腿関節がある。顆状関節(楕円関節)は、橈骨手根関節、手根中央(尺側)関節、顎関節、中手指節関節(MP関節)である。
2.× 内側半月は、「O字状」ではなくC字状の形状である。O字状(円板上)であるのは、外側半月である。
3.× 外側側副靱帯は、「屈曲時」ではなく伸展時に緊張する。なぜなら、立脚期の膝関節の安定性を確保するため。
4.× 前十字靱帯は脛骨の「後方」ではなく前方への逸脱を防いでいる。前十字靭帯とは、膝関節の中で、大腿骨と脛骨をつないでいる強力な靭帯である。役割は、主に①大腿骨に対して脛骨が前へ移動しないような制御(前後への安定性)と、②捻った方向に対して動きすぎないような制御(回旋方向への安定性)である。前十字靭帯損傷とは、スポーツによる膝外傷の中でも頻度が高く、バスケットボールやサッカー、スキーなどでのジャンプの着地や急な方向転換、急停止時に発生することが多い非接触損傷が特徴的な靭帯損傷である。Lachman test(ラックマンテスト)/軸移動テスト(pivot shift test:ピポットシフトテスト)/Jerkテスト(ジャークテスト)は、膝前十字靭帯損傷を検査する。
5.〇 正しい。完全伸展位に近づくと脛骨は大腿に対し外旋する。これを終末強制回旋運動(スクリューホームムーブメント)という。
参考にどうぞ↓
72 距骨上面の高さの足関節部と下腿筋との位置関係を図に示す。
正しいのはどれか。
1.①:長腓骨筋
2.②:前脛骨筋
3.③:長指伸筋
4.④:後脛骨筋
5.⑤:第3腓骨筋
解答2
解説
1.× ①は、「長腓骨筋」ではなく長母趾伸筋である。長母趾伸筋の【起始】下腿骨間膜、腓骨体前面中央、【停止】母趾末節骨底、【作用】足関節背屈、母趾の伸展である。
2.〇 正しい。②は、前脛骨筋である。前脛骨筋の【起始】脛骨外側面、下腿骨間膜、【停止】内側楔状骨と第1中足骨の底面、【作用】足関節背屈、内返しである。
3.× ③は、「長指伸筋」ではなく後脛骨筋である。後脛骨筋の【起始】下腿骨間膜の後面上半、下腿骨間膜に接する脛骨と腓骨、【停止】舟状骨粗面、内側、中間、外側楔状骨、立方骨、第2~3中足骨底、【作用】足関節底屈、内返しである。一方、長指伸筋の【起始】腓骨体前面、前下腿筋間中隔、脛骨上端の外側面、下腿骨間膜の下部、【停止】第2~5趾の中節骨、末節骨【作用】第2~5趾の伸展、足関節背屈、外返しである。
4.× ④は、「後脛骨筋」ではなく第3腓骨筋である。第3腓骨筋の【起始】前下腿筋間中隔の下部、腓骨の前縁、【停止】第5中足骨底背側、【作用】足関節背屈、外返しである。
5.× ⑤は、「第3腓骨筋」ではなく長腓骨筋である。長腓骨筋の【起始】腓骨頭、腓骨体外側面の上半、一部は筋膜と前下腿筋間中隔、【停止】第1,2中足骨底、内側楔状骨、【作用】足関節底屈、外返しである。
73 成人の正常立位姿勢で正しいのはどれか。
1.仙骨は前弯を示す。
2.腰仙角は約5度である。
3.重心の位置は小児より相対的に頭部に近い。
4.矢状面における重心は仙骨の前方に位置する。
5.矢状面上における身体の重心線は大転子の前方を通る。
解答4
解説
(※「イラスト素材:胸郭」illustAC様)
1.× 仙骨は、「前弯」ではなく後弯を示す。ちなみに、頸椎と腰椎は前弯を示す。
2.× 腰仙角は、「約5度」ではなく約140度である。腰仙角とは、骨盤傾斜の指標であるL5/S1の角度である。平均143°である。ちなみに、仙骨傾斜角(水平線と第1仙椎上部を通る直線とのなす角)は、約30度が正常である。
3.× 重心の位置は小児より相対的に頭部に「近い」ではなく遠い。なぜなら、小児の頭部の大きさは成人より大きいため。成人男性の平均的な重心位置の高さは床面からおよそ56%の位置ある。一方、4歳時の重心位置は頭部が大きい分、重心位置が高くなり、床面からおよそ57%の位置にあるとされる。
4.〇 正しい。矢状面における重心は仙骨の前方に位置する。重心位置は、第2仙髄のやや前方にある。
5.× 矢状面上における身体の重心線は、「大転子の前方」ではなく大転子を通る。矢状面上における立位姿勢の重心線は、耳垂(やや後方)、肩峰、大転子、膝関節前部(膝蓋骨後面)、外果前方であり、股関節の後方、膝関節の前方、足関節の前方を通る。
74 運動学習で最も適切なのはどれか。
1.学習初期から二重課題法を取り入れる。
2.学習課題の難易度は高いほど効果がある。
3.療法士の助言は内在的フィードバックである。
4.記憶障害がある場合は試行錯誤学習を適応する。
5.運動技能が向上すればエネルギー効率が良くなる。
解答5
解説
運動学習とは、訓練や練習を通して獲得される運動行動の変化で、状況に適した協調性が改善していく過程である。感覚運動学習とも呼ぶ。運動学習をする際には、①口頭指示(文字のみ)→②模倣→③介助(誘導)の順で難易度が下がっていく。
1.× 学習初期から二重課題法を取り入れる必要はない。なぜなら、二重課題は難易度が高い可能性があるため。二重課題法では、練習課題とそれ以外の課題とを同時に遂行させる。練習課題に加えて注意力を分散させる課題を同時遂行させる方法である。例えば、歩行中に計算やしりとりなどをすることである。
2.× 学習課題の難易度は高いほど効果があるとはいえない。なぜなら、難易度はその人に合わせる必要があるため。野球初心者がバッティングの練習の際、大谷選手から投げられたボールを打ち続ける練習をするより、素振りや構えから練習する必要がある。
3.× 療法士の助言は、「内在的」ではなく外在的フィードバックである。外在的フィードバックとは、例えば、100m走のタイムの確認、体操競技における採点結果の確認、フォームを動画で確認することなどである。ちなみに、内在的フィードバックは、自己の感覚情報によるものである。
4.× 記憶障害がある場合は、試行錯誤学習を適応する必要はない。なぜなら、記憶障害がある場合、試行錯誤を繰り返すことによる刺激と反応の結びつきの強化は見込みにくいため。つまり忘却が学習を阻害する可能性が高い。ちなみに、試行錯誤学習とは、試行錯誤学習とは、Thorndike,E. L(ソーンダイク)が提唱し、「試行の積み重ねによって問題の解決に至ることから生じる学習」をいう。一般的に、試行錯誤を繰り返すことにより、刺激と反応の結びつきか徐々に強くなり、問題解決にかかる時間は短くなっていく。
5.〇 正しい。運動技能が向上すればエネルギー効率が良くなる。運動技能学習の③最終相(自動相)ともなれば、運動は空間的・時間的に統合され、無駄がなく、速く滑らかになる。手続きは自動化され、運動に対する注意は減少していく。運動技能は完成に近づくが、さらに高度な技能を身につけたい場合には過剰学習によって下位技能を身につけなければならない。
①初期相(認知相)
何を行うかを理解し、技能獲得のための戦略を立てる時期。
②中間相(連合相)
個々の運動が滑らかな協調運動へと融合して系列動作へと移行する。初期の理解の誤りが見出され、修正され余剰の運動は省かれる。
③最終相(自動相)
運動は空間的・時間的に統合され、無駄がなく、速く滑らかになる。手続きは自動化され、運動に対する注意は減少していく。運動技能は完成に近づくが、さらに高度な技能を身につけたい場合には過剰学習によって下位技能を身につけなければならない。
75 疾患と病因病理学的変化の組合せで正しいのはどれか。
1.Creutzfeldt Jakob病:神経変性疾患
2.Parkinson病:腫瘍性疾患
3.肝性脳症:感染性疾患
4.多系統萎縮症:脳血管疾患
5.多発性硬化症:脱髄疾患
解答5
解説
1.× Creutzfeldt Jakob病は、「神経変性疾患」ではなく感染性疾患である。Creutzfeldt-Jakob病(クロイツフェルト・ヤコブ病)は、異常なプリオン蛋白が脳に蓄積する致死性神経感染症である。初期には精神症状(健忘症、抑うつなど)、視覚障害、歩行障害、運動失調などで発症し、進行すると精神症状が急速に悪化し、高度の認知症に発展する。会話、自発語不能となり、四肢のミオクローヌスも特徴的所見である。様々な症状を呈して、多くは数ヶ月から半年以内、長くとも2年以内で死亡する。
2.× Parkinson病は、「腫瘍性疾患」ではなく神経変性疾患である。パーキンソン病は、黒質線条体系のドパミン不足による慢性の進行性の錐体外路疾患である。四大徴候として①安静時振戦、②筋固縮、③無動、④姿勢保持反射障害が挙げられる。患者への対応としては、安静時振戦や無動などの症状から運動範囲の狭い机上作業などよりも、身体を大きく使うような粗大運動が適切である。
3.× 肝性脳症は、「感染性疾患」ではなく、肝臓の機能低下による疾患(代謝性の疾患)である。肝性脳症とは、重度の肝疾患がある人において、正常なら肝臓で除去されるはずの有害物質が血液中に蓄積して脳に達することで、脳機能が低下する病気である。長期にわたる(慢性の)肝疾患がある患者に発生する。 原因として、消化管での出血、感染症、処方薬を正しく服用しないこと、その他のストレスによって誘発される。正常な肝なら代謝されるはずの有害物質(アンモニアなど)が脳に達することによって生じる。肝性脳症は多くの場合、治療により予後良好である。主に、①ラクツロース、②抗菌薬が用いられる。①合成糖であるラクツロースは、下剤として作用し、食物が腸を通過する速度を速めることで、体に吸収されるアンモニアの量が減少させる。②口から投与しても腸から吸収されない抗菌薬(リファキシミンなど)を処方することにより、腸に残り、消化中に毒素を作り出す細菌の数を減らす効果が期待できる。(※参考「肝性脳症」MSDマニュアル家庭版)
4.× 多系統萎縮症は、「脳血管疾患」ではなく神経変性疾患である。多系統萎縮症とは、成年期(多くは40歳以降)に発症し、進行性の細胞変性脱落をきたす疾患である。①オリーブ橋小脳萎縮症(初発から病初期の症候が小脳性運動失調)、②線条体黒質変性症(初発から病初期の症候がパーキンソニズム)、シャイ・ドレーカー症候群(初発から病初期の症候が自律神経障害であるもの)と称されてきた。いずれも進行するとこれら三大症候は重複してくること、画像診断でも脳幹と小脳の萎縮や線条体の異常等の所見が認められ、かつ組織病理も共通していることから多系統萎縮症と総称されるようになった。(※参考:「17 多系統萎縮症」厚生労働省様HPより)
5.〇 正しい。多発性硬化症は、脱髄性疾患である。多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)