第58回(R5)作業療法士国家試験 解説【午後問題41~45】

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41 せん妄で正しいのはどれか。

1.緩徐に発症する。
2.注意力は保たれる。
3.活動性は低下しない。
4.日内変動は認められない。
5.脳波で徐波化が認められる。

解答

解説

せん妄とは?

せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。高齢者は薬剤によってせん妄が引き起こされる場合も多い。
【原因】脳疾患、心疾患、脱水、感染症、手術などに伴って起こることが多い。他にも、心理的因子、薬物、環境にも起因する。

【症状】
①意識がぼんやりする。
②その場にそぐわない行動をする。
③夜間に起こることが多い。 (夜間せん妄)
④通常は数日から1週間でよくなる。

【主な予防方法】
①術前の十分な説明や家族との面会などで手術の不安を取り除く。
②昼間の働きかけを多くし、睡眠・覚醒リズムの調整をする。
③術後早期からの離床を促し、リハビリテーションを行う。

1.× 緩徐に発症すると一概にはいえない。何と比較して緩徐というかも曖昧であるが、認知症と比較したときに、せん妄には、①意識障害がある、②急激に発症する、③1日の中でも症状に波があるなどといった特徴がある。
2.× 注意力は「保たれる」のではなく保たれない。せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。
3.× 活動性は、「低下しない」とは一概には言えない。せん妄は活動性の低下や向上のどちらも引き起こす可能性がある。なぜなら、せん妄患者はしばしば興奮したり(過活動型せん妄)、逆に無気力になったり(低活動型せん妄)するため。ちなみに、低活動型せん妄の主な症状として、意欲の低下・無気力、無表情、思考力・注意力の低下などである。
4.× 日内変動は「認められない」のではなく認められる。せん妄は日内変動を示すことがよくあり、特に夕方や夜間に症状が悪化することが一般的である。したがって、主な予防方法として、昼間の働きかけを多くし、睡眠・覚醒リズムの調整をすることが求められる。
5.〇 正しい。脳波で徐波化が認められる。せん妄の脳波検査の特徴として、脳の活動が低下し、本来であればα波(1 秒間に 8~13 個の波)と呼ばれる波が認められなければならないところに、徐波と呼ばれるゆっくりな波(1 秒間に 7 個の波以下が混入した状態が認められる。ちなみに、徐波とは、 α(アルファ)波より周波数が低いものをいい、①δ(デルタ)波【0.5~4.0Hz】、②θ(シータ)波【4.0~8.0Hz】に分けられる。 両者とも覚醒状態にある正常成人の安静閉眼時には、ほとんど出現しない。小児では徐波が多く、老人ではα波の徐波化がみられる。

脳波の分類

δ(デルタ)【0.5~4.0Hz】:深い睡眠
θ(シータ)【4.0~8.0Hz】:浅い睡眠
α(アルファ)【8.0~13.0Hz】:安静閉眼時
β(ベータ)【14.0~30.0Hz】:覚醒・活動時にみられる

 

 

 

 

 

42 統合失調症の認知機能を評価するため用いるのはどれか。

1.AlMS(Abnormal Involuntary Movement Scale)
2.BACS
3.LASMI
4.PANSS
5.SAPS(Scale for the Assessment of Positive Symptoms)

解答

解説
1.× AlMS(Abnormal Involuntary Movement Scale:異常不随意運動スケール)とは、遅発性ジスキネジアの重症度評価に用いられ、各発現部位における重症度を判定する。概ね5~10分を要する。合計14項目で構成され、構成1~7で各部位(表情筋、口、顎、下、上肢、下肢、体幹)の重症度を評価し、これらの合計点が総スコアとして使用される。項目8では異常運動の重症度を総合的に評価する。各項目の重症度は0~4点で判定する。
2.〇 正しい。BACSは、統合失調症の認知機能を評価するため用いる。BACS(The Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia:統合失調症認知機能簡易評価尺度)は、ワーキング・メモリを測定する検査が含まれている。6つの認知機能(①言語性記憶と学習、②ワーキング・メモリ(作動記憶)、③運動機能、④注意と情報処理速度、⑤言語流暢性、⑥遂行機能)を評価する。ただし、言語流暢性のみ2つの検査があるので、7つの検査で構成されている。
3.× LASMI(Life Assessment Scale for the Mentally Ill:精神障害者社会生活評価尺度)は、「持続性・安定性」と「自己認識」が下位尺度に含まれる社会機能の評価法である。精神障害のある人の生活を包括的に評価するための尺度である。5つの大項目(①日常生活、②対人関係、③労働または課題遂行能力、④持続性・安定性、⑤自己認識)からなる。
4.× PANSS(Positive and Negative Syndrome Scale:陽性・陰性症状評価尺度)は、統合失調症の急性期において、治療効果をみるのに最も有効である。統合失調症を対象に、精神状態を全般的に把握することを目的として作成された評価尺度である。30項目について陽性尺度、陰性尺度、総合精神病理尺度を医師が評定する。
5.× SAPS(Scale for the Assessment of Positive Symptoms:陽性症状の評価尺度)は、統合失調症の陽性症状を評価するための尺度である。精神病患者の陽性症状の程度や特徴を把握し、治療効果を評価するために使用される。Andreasen(1984)によって開発され、4つの主要なカテゴリー(①妄想、②異常な思考、③幻覚、④形式的思考障害)に分類される。0から5の評価スケールが用いられ、高いスコアほど陽性症状の程度が重いことを示す。評価者は、患者との面接や観察を通じて、症状の程度を評価し、各項目のスコアをつける(※参考:「Andreasen, N.C. (1984). The Scale for the Assessment of Positive Symptoms (SAPS). Iowa City: University of Iowa.」)。

 

 

 

 

 

43 統合失調症再発防止のために患者本人に対する同居家族の対応として最も有用なのはどれか。

1.本人の外出に毎回同行する。
2.本人の借金を無条件に返済する。
3.不適切な行動には本人の人格を批判する。
4.口論がみられるようなら対面接触時間を減らす。
5.本人が処方薬の内服を忘れた場合、厳しく叱責する。

解答

解説

家族心理教育とは?

家族心理教育とは、家族が病気を正しく理解し、適切な対応や望ましい接し方を身につけることを目的とする。病気による行動特性を理解し、症状に対する適切な対応と接し方を学ぶことができ、治療効果の増進・再発防止にもつながる。

1.× 本人の外出に「毎回」同行する必要はない。なぜなら、監視されているというストレスから、症状の悪化を助長しかねない。本人と適切な距離をとること、治療に適した穏やかな家庭環境をつくることが大切である。
2.× 本人の借金を「無条件」に返済する必要はない。なぜなら、過度な支援や過保護は逆に自立を阻害するため。家族は、極端な自己犠牲せず、本人と近すぎず、遠すぎない距離を保つ。
3.× 不適切な行動には、本人の人格を批判する必要はない。不適切な行動に対し、その内容・理由に加え、どうしてほしいかを短く具体的に伝える。本人と一緒に興奮したり、議論したりしないことが大切である。また、統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。したがって、人格の批判は、自責を促しやすく症状の悪化、うつ病の発症を助長する。
4.〇 正しい。口論がみられるようなら対面接触時間を減らす。静かで穏やかな家庭の雰囲気を作れるよう、本人と近すぎず、遠すぎない距離を保つことが大切である。本人と一緒に興奮したり、議論せず、対立しそうになったら家族が一歩退くように指導する。
5.× 本人が処方薬の内服を忘れた場合、厳しく叱責する必要はない。厳しく叱責することは、患者にストレスを与え、病状の悪化や再発リスクを高めるため。代わりに、薬の服用を思い出させるような工夫やサポートを提供することが望ましい。たとえ時間がかかっても本人のやり方とペースを尊重し、手や口を出すことを控える。

(※参考:「回復を促す家族の接し方」すまいるナビゲーター統合失調症)

”統合失調症とは?”

統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。

(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)

 

 

 

 

44 疾患と治療の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

1.肝性脳症:芳香族アミノ酸
2.神経梅毒:ステロイド
3.尿毒症性脳症:人工透析
4.ペラグラ:ニコチン酸
5.ヘルペス脳炎:ペニシリン

解答3・4

解説
1.× 肝性脳症は、「芳香族アミノ酸」投与ではなく、芳香族アミノ酸の脳内への移行を阻害する分岐鎖アミノ酸製剤を投与する。ちなみに、肝性脳症は、肝臓の機能低下による意識障害である。直接の原因については不明な点が多いが、高度の肝機能障害や門脈-大循環シャントにより腸管内で産生された毒性物質が、肝臓で解毒されることなく透過性の亢進した血液脳関門を通過して脳に到達することで生じる。
2.× 神経梅毒は、「ステロイド」投与ではなく、ペニシリンを投与する。梅毒とは、性感染症の一種で、梅毒トレポネーマという細菌が粘膜から感染することによって起こる。感染後3~6週間前後の潜伏期間後に性器、肛門、口などの感染部位にしこり、びらん、潰瘍などが現れるが、治療をしなくても一定期間が過ぎると最初の症状は消える。感染後数ヶ月すると手のひらや足の裏を含めた全身に赤い斑点(バラ疹)が広がる。
3.〇 正しい。尿毒症性脳症は、「人工透析」を実施する。尿毒症性脳症とは、尿毒症(腎不全により、身体の中に老廃物が蓄積する状態)の影響が脳に出ているものである。症状として、集中力の低下や幻覚・錯覚・抑うつ状態・手足の震えが現れる。血液検査や脳波検査、画像検査(CT検査、MRI検査など)によって詳しく調べ、尿毒症性脳症の治療は透析(老廃物を身体の外に出すこと)と、可能であれば腎臓の機能を回復させることである。
4.〇 正しい。ペラグラは、「ニコチン酸」を投与する。ペラグラとは、ナイアシン欠乏症のことで、手足や顔、首に皮膚炎が起こる。他の症状として、下痢や頭痛、進行していくと脳の機能に障害(意識障害など)が起こす。アルコール依存の患者に多くみられ、治療として、ニコチン酸アミド(ナイアシン)を毎日服用する。
5.× ヘルペス脳炎は、「ペニシリン」ではなくアシクロビルを投与する。ヘルペス脳炎とは、単純ヘルペスウイルスの感染や、免疫力低下による再活性化によって引き起こされる急性脳炎である。重症化することが多く、発症すると死亡することもある。アシクロビルの作用は、ウイルス増殖を抑制することにある。ちなみに、ペニシリンは、抗菌薬の一つで、神経梅毒に投与する。

肝性脳症とは?

肝性脳症とは、重度の肝疾患がある人において、正常なら肝臓で除去されるはずの有害物質が血液中に蓄積して脳に達することで、脳機能が低下する病気である。長期にわたる(慢性の)肝疾患がある患者に発生する。 原因として、消化管での出血、感染症、処方薬を正しく服用しないこと、その他のストレスによって誘発される。正常な肝なら代謝されるはずの有害物質(アンモニアなど)が脳に達することによって生じる。肝性脳症は多くの場合、治療により予後良好である。主に、①ラクツロース、②抗菌薬が用いられる。①合成糖であるラクツロースは、下剤として作用し、食物が腸を通過する速度を速めることで、体に吸収されるアンモニアの量が減少させる。②口から投与しても腸から吸収されない抗菌薬(リファキシミンなど)を処方することにより、腸に残り、消化中に毒素を作り出す細菌の数を減らす効果が期待できる。(※参考「肝性脳症」MSDマニュアル家庭版)

 

 

 

 

 

45 うつ病回復期前期の作業療法で最も適切なのはどれか。

1.1回の活動は短時間にする。
2.リワークプログラムを導入する。
3.新しい生きがいを見出す援助をする。
4.再発予防について家族を交えて話し合う。
5.集団での心理教育プログラムへの参加を促す。

解答

解説

1.× 1回の活動は短時間にするより優先度が高いものが他にある。1回の活動時間を「短時間」と決めてしまうと、その時間は「休まずやらなくてはならない」という使命感責任感を感じてしまう。活動を「短時間」と決めるのではなく、いつでも休憩ができ、かつ短期間で完成できるものを選択する。
2.× リワークプログラムを導入するより優先度が高いものが他にある。うつ病の回復前期は、徐々に生活に関連した活動を行えるようになってきた時期であるが、仕事復帰など焦りも見られる時期である。復職の時期を見誤ると、症状がさらに悪化し、復職が遅れてしまう可能性もある。したがって、本人の気持ちと同時に医師の判断も重要である。休業中の労働者から事業者に対して職場復帰の意思が伝えられた場合、事業者は労働者に対して主治医による職場復帰が可能という判断が記された診断書の提出を求めることになる。(※参考:「厚生労働省心の健康問題により体業した労働者の職場復帰支援の手引き」厚生労働省HPより)
3.× 新しい生きがいを見出す援助をする必要はない。なぜなら、新しい生きがいを見出すこと自体、かえってストレス負担となりうつ症状の悪化を助長するため。これと類似して、旅行に出かけることも気晴らしにはならず、むしろ疲労感を強め、症状が悪化する。
4.× 再発予防について家族を交えて話し合うのは、「回復前期」ではなく回復後期以降の課題である。なぜなら、回復前期の支援目標は、現実感の回復が優先されるため。再発予防のためにはストレス対策が必要で、ストレス対策は、本人と家族、職場などの周囲の理解が必要である。
5.〇 正しい。集団での心理教育プログラムへの参加を促す。回復後期に向けて、集団活動の参加の促しを行っていく。ただし、集団での活動は負担・ストレスとも大きいため、受け入れられない体験であれば、無理しないようにする。心理教育プログラムとは、病気の概要や治療方法・経過を知ることで病気に対する理解を深め、今後の日常生活での対処法、再発防止について学ぶものである。また、同じ病気を抱える人たちとの話し合いを通して、人との関係も作っていく。

うつ病の対応

かかりやすい:几帳面で完璧主義、責任感が強い人が多い。

うつ病の特徴:意欲低下、精神運動抑制などの症状のため、自己評価が低く、疲労感が強い。

①調子が悪いのは病気のせいであり、治療を行えば必ず改善すること。
②重要事項の判断・決定は先延ばしにする。
③自殺しないように約束してもらうことなど。

【作業基準】
①工程がはっきりしている。
②短期間で完成できる。
③安全で受身的で非競争的である。
④軽い運動(いつでも休憩できる)

【対応】
①気持ちを受け入れる。
②共感的な態度を示す。
③心理的な負担となるため、激励はしない。
④無理をしなくてよいことを伝える。
⑤必ず回復することを繰り返し伝えていく。
⑥静かな場所を提供する。

復職支援プログラムとは?

復職支援プログラムとは、リワークプログラムや職場復帰支援プログラムともいう。リワークとは、「return to work」の略語。気分障害などの精神疾患を原因として休職している労働者に対し、職場復帰に向けたリハビリテーション(リワーク)を実施する機関で行われているプログラムである。

【医療リワークプログラムの実施形態の定義】
(1)個人プログラム:文字や数字、文章を扱う。机上での作業を一人で行い、集中力や作業能力の確認、向上を図る
(2)特定の心理プログラム:認知行動療法やグループカウンセリングなど、特定の心理療法を実施
(3)教育プログラム:症状の自己理解を主目的とし、主に講義形式で病気について学ぶ
(4)集団プログラム:実際に役割分担をしての共同作業などを行い、対人スキルの向上などを目指す
(5)その他のプログラム:運動、個人面談等、(1)~(4)のいずれにも該当しないプログラム

(※引用:「リワークプログラムについて」日本うつ病リワーク協会様HPより)

 

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