第58回(R5)作業療法士国家試験 解説【午前問題36~40】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

36 摂食嚥下障害で正しいのはどれか。

1.液体は誤嚥しにくい。
2.認知機能の影響は受けない。
3.むせがなければ誤嚥はない。
4.頚部を屈曲すると嚥下反射は遅れる。
5.梨状窩は咽頭残留の好発部位である。

解答

解説

嚥下の過程

①先行期・・・飲食物の形や量、質などを認識する。
②準備期・・・口への取り込み。飲食物を噛み砕き、飲み込みやすい形状にする。
③口腔期・・・飲食物を口腔から咽頭に送り込む。
④咽頭期・・・飲食物を咽頭から食道に送り込む。
⑤食道期・・・飲食物を食道から胃に送り込む。

1.× 液体は誤嚥「しにくい」のではなくしやすい。なぜなら、水分のようにサラサラした液体は咽頭部を急速に流れるため。そのため、増粘剤でとろみをつける必要がある。ちなみに、固形は液体より誤嚥が少ない理由として、①食塊が均一、②凝集性が高い、③付着性が低い、④適度な粘性、⑤咽頭通過時に変形しやすいことがあげられる。
2.× 認知機能の影響は「受けない」のではなく受ける。なぜなら、嚥下の過程において、先行期があげられるため。先行期とは、飲食物の形や量、質などを認識する。したがって、認知機能が低下すると、食べ物へ認識が不十分で誤嚥のリスクが高まる。
3.× むせがなければ「誤嚥はない」と断言することはできない。なぜなら、不顕性誤嚥がみられるため。不顕性誤嚥とは、むせない誤嚥のことで、病気が原因の神経麻痺や加齢に伴う筋力の衰えにより気管の感覚が鈍くなることや、嚥下反射の低下が主な原因で起こる。高齢者の場合でも、咳嗽反射が低下していることが多くむせなくても気管内に誤嚥している可能性がある。
4.× 頚部を屈曲すると、嚥下反射は「遅れる」のではなく促進される。なぜなら、気管は食道の前面に位置しており、頚部を前屈すると咽頭と気管に角度がついて、食べ物が気管に入りにくくなるため。喉頭蓋が閉まりやすくなる。ちなみに、嚥下反射を遅延させるのは頸部伸展位(後屈位)である。
5.〇 正しい。梨状窩は咽頭残留の好発部位である。梨状窩は、声門の両側のくぼみのことをいう。咽頭機能に左右差があり梨状窩の残留、誤嚥を防ぐには、病巣側への頸部回旋位とする。重力を利用して健側に食塊の経路を形成できる。

(※図引用:「illustAC様」)

誤嚥しやすい食べ物

①サラサラした液体、②口腔内でバラバラになりまとまりにくい物、③水分が少なく,パサパサした物、④口腔内や咽頭に貼り付きやすい物、⑤粘りの強い物、⑥すべりのよすぎる物、⑦硬い物などである。

 

 

 

 

 

37 関節リウマチ患者の日常生活の評価に用いられるのはどれか。

1.DAS28
2.Larsen分類
3.Lansbury指数
4.Steinbrockerのclass分類
5.AIMS(Arthritis Impact Measurement Scale)

解答

解説
1.× DAS28(disease activity score 28)は、関節リウマチの活動性の指標である。観察対象関節は、肩関節2、肘関節2、手関節2、手指(DIP除く)20、膝関節2で、合計28関節を評価する。
2.× Larsen分類(ラーセン分類)は、関節破壊に対するX線を用いたgrade分類である。
3.× Lansbury指数(ランスバリー指数)は、関節リウマチの活動性の指標である。
4.〇 正しい。Steinbrockerのclass分類は、関節リウマチ患者の日常生活の評価に用いられる。class分類は日常生活における機能障害度分類、stage分類は病期の分類である。
5.× AIMS(Arthritis Impact Measurement Scale:関節炎影響測定尺度)は、関節リウマチ患者自身による運動機能評価である。ADL関連6指標と社会活動、痛み、仕事など6指標の計12指標をアンケートでの自己記入により解答する。QOLの評価法として国際的に用いられている。

Steinbrockerの病気分類

【ステージ分類:リウマチの病期】
ステージⅠ:X線検査で骨・軟骨の破壊がない状態。
ステージⅡ:軟骨が薄くなり、関節の隙間が狭くなっているが骨の破壊はない状態。
ステージⅢ:骨・軟骨に破壊が生じた状態。
ステージⅣ:関節が破壊され、動かなくなってしまった状態。

【クラス分類:機能障害度】
クラスⅠ:健康な方とほぼ同様に不自由なく生活や仕事ができる状態。
クラスⅡ:多少の障害はあるが普通の生活ができる状態。
クラスⅢ:身の回りのことは何とかできるが、外出時などには介助が必要な状態。
クラスⅣ:ほとんど寝たきりあるいは車椅子生活で、身の回りのことが自分ではほとんどできない状態。

類似問題はこちら↓

【OT専門のみ】関節リウマチについての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

38 Hoehn&Yahrの重症度分類ステージⅢのParkinson病への作業療法で最も適切なのはどれか。

1.車椅子操作
2.万能カフの導入
3.音声入力によるパソコン操作
4.棒体操による頚部体幹伸展運動
5.机上での細かいビーズを用いた手芸

解答

解説

Hoehn&Yahr の重症度分類ステージ

ステージⅠ:片側のみの症状がみられる。軽症で機能障害はない。
ステージⅡ:両側の症状がみられるが、バランス障害はない。また日常生活・通院にほとんど介助を要さない。
ステージⅢ:歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLの一部に介助が必要になる。
ステージⅣ:日常生活・通院に介助を必要とする。立位・歩行はどうにか可能。
ステージⅤ:寝たきりあるいは車いすで、全面的に介助を要する。歩行・起立は不能。

1.× 車椅子操作は時期尚早である。なぜなら、本症例はステージⅢ(姿勢保持反射障害はあるが歩行は可能である)でため。
2.× 万能カフの導入は必要ない。なぜなら、万能カフとは、フォークやスプーンに巻きつけて使う補助具で、握力の弱い方や手指の曲がらない(頚髄損傷:C5)に対し適応となるため。
3.× 音声入力によるパソコン操作は必要ない。なぜなら、主に筋萎縮性側索硬化症(ALS)に適応となるため。
4.〇 正しい。棒体操による頚部体幹伸展運動を優先して行う。なぜなら、本症例はステージⅢで、姿勢保持反射障害か出現しているため。頚部体幹伸展運動により前傾姿勢の改善や転倒予防を努めることが大切である。
5.× 机上での細かいビーズを用いた手芸は必要ない。なぜなら、細かい作業はパーキンソン病の症状(前傾姿勢・固縮)を助長しかねないため。また、現段階では姿勢保持反射障害により、集中しすぎることで椅子から転倒・転落の可能性も考えられる。

類似問題です↓
【OT専門のみ】パーキンソン病についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

39 SOAPによる作業療法記録で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.問題指向型の診療記録である。
2.Sには作業療法士が観察した情報を記載する。
3.Oには患者本人や家族から得た情報を記載する。
4.Aには作業療法プログラムを記載する。
5.PにはAに対する具体的な対応を記載する。

解答1・5

解説

SOAP(subjective, objective, assessment, plan)とは?

SOAP(subjective, objective, assessment, plan)とは、叙述的経過記録方式の問題志向型記録のことである。

S=主観的データ(自覚症状などの患者の訴え)
O=客観的データ(他覚所見:診察所見・血液検査・検査所見)
A=評価(S・Oをもとにした患者の状態の評価・考察)
P=計画(Aをもとにした今後の検査・治療・患者教育の計画・方針)

で、経過を記録する。

1.〇 正しい。問題指向型の診療記録である。問題志向型医療記録とは、患者の抱える問題に目を向け、患者の問題を中心に行う医療(POM:problem oriented medical)の考え方に合わせた記録方法のことをいう。問題(プロブレム) 毎に情報を整理し、問題毎にSOAP(subjective, objective, assessment, plan)に分けて記載する。
2.× S(subjective)には、「作業療法士が観察した情報」ではなく、主観的データ(自覚症状などの患者の訴え)を記載する。ちなみに、作業療法士が観察した情報は、O(objective)に該当する。
3.× O(objective)には、「患者本人や家族から得た情報」ではなく、客観的データ(他覚所見:診察所見・血液検査・検査所見)を記載する。患者本人や家族から得た情報は、S(subjective)に該当する。
4.× A(assessment)には、「作業療法プログラム」ではなく、評価(S・Oをもとにした患者の状態の評価・考察)を記載する。ちなみに、作業療法プログラムは、P(plan)に該当する。
5.〇 正しい。P(plan)には、「Aに対する具体的な対応」ではなく、計画(Aをもとにした今後の検査・治療・患者教育の計画・方針)を記載する。

 

 

 

 

 

40 高次脳機能障害で正しいのはどれか。

1.性格の変化はみられない。
2.外見上から障害を容易に判断できる。
3.脳の損傷部位によらず症状は一定である。
4.記憶障害と比べて注意障害は回復しにくい。
5.60歳以上では脳血管障害によるものが多い。

解答

解説

高次脳機能障害とは?

高次脳機能障害とは、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、 この中にはいわゆる巣症状としての失語・失行・失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などが含まれる。

1.× 性格の変化は、「みられない」のではなくみられる。前頭葉の障害は、発動性・意欲・創造性・判断力の低下、注意障害、脱抑制易怒性、病識の欠如などが起こる。
2.× 外見上から障害を容易に、「判断できる」とは断言できない。なぜなら、高次脳機能障害とは、脳損傷に起因するため。脳の病変であるため、外見上の異常がみられないことが多い。
3.× 脳の損傷部位によらず症状は、「一定」ではなく不定である。例えば、前頭葉障害では判断力の低下や計画性の喪失が見られるが、頭頂葉障害では観念失行などの失行がみられる。ちなみに、観念失行とは、複合的な運動の障害であり、日常使用する物品が正当に使用できない失行のことである。優位半球頭頂葉(特に角回)を中心とする広範囲な障害で生じる。例えば、タバコに火をつける、お茶を入れる、歯磨きをするなどの手順が困難になる。
4.× 記憶障害と比べて注意障害は回復しにくいと一概にはいいきれない。むしろ注意障害のほうが回復しやすいといった報告もある。なぜなら、記憶に関与する脳の部位(例えば、海馬)は、特有な機能を持ち脳の代償が困難であることがあげられるため。一方、注意障害は、脳の複数の部位が関与しているため、他の部位が機能を補完する可能性があるとされている。ただし、患者の状況や障害の原因、程度、治療法など様々な要因により異なるため、一概にはいいきれない。
5.〇 正しい。60歳以上では脳血管障害によるものが多い。高次脳機能障害者は、男性が女性よりも多く、また、年代別では60歳以上の者が67.2%であった。高次脳機能障害の主な原因は、発症の原因は、脳血管障害が81.6%、脳外傷が10.0%であった。 年代別にみると、30歳代以上は脳血管障害の割合が脳外傷より高くなっており、60歳以上では脳血管障害者が89.9%を占めていた(※引用:「高次脳機能障害者実態調査結果」東京都福祉保健局HPより)。

注意障害5つ

①持続性:注意を一定時間の状態に保つことが困難になる。
②選択性:多数の刺激の中から必要な情報や物事に注意を向けられない
③転換(導)性:必要に応じて注意の方向性を切り替えることが困難になる。
④配分性(多方向性):2つ以上の課題を同時に遂行したり、順序立てて行ったりすることが困難になる。
⑤容量性(感度):ある情報に関する注意の閾値が適度に保つことが困難である。
※:全般性注意障害ではこの5つが全般的に障害されている状態である。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)