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36.高次脳機能障害と症状の組合せで正しいのはどれか。
1.観念失行:敬礼など単純な口頭指示に従った動作ができない。
2.純粋失読:文字を指でなぞっても読めない。
3.伝導失語:物品呼称ができない。
4.観念運動失行:適切に道具を使用できない。
5.肢節運動失行:習熟した行為の遂行が拙劣になる。
解答5
解説
1.× 敬礼など単純な口頭指示に従った動作ができないのは、「観念失行」ではなく観念運動失行である。観念運動失行とは、習慣的な動作を言語命令に従ったり、模倣で遂行することができない状態である。例えば、敬礼やじゃんけんのグーの動作命令をされても出来ないなどである。角回の障害で出現する。
2.× 文字を指でなぞっても読めないのは、「純粋失読」ではなく失読失書である。失読失書とは、失読と失書が一つの病巣によって同じに生じたものをいう。読みは、音読と読解の両方が障害される。日本語では、仮名、漢字ともに読みが障害さ
れ、両者の間に差があることも少なくないが、いずれかが良好という一定の傾向は見出しがたい。なぞり読みの効果はない。書字障害と失語については障害や回復の程度は異なる場合がある。失書は、左右の手に現れる。字形態の崩れは少ない。写字能力は保存されており、文字を一瞥して自分の字体による書き下ろしが可能である。 ちなみに、純粋失読(視覚性失読)は、優位半球(左)の後頭葉が障害されると起こる。失書を伴わない失読である。文字を指でなぞらえると読むことができ、自発書字・書取りも可能である(※参考:「言語の認知科学」著:浅川伸一)。
3.× 物品呼称ができないのは、「伝導失語」ではなく健忘失語である。健忘失語とは、簡単な物品の呼称が困難となって、なかなか物の名前が出てこないが、その他の点ではおおむね言語機能は保たれているものをいう。伝導失語とは、言語の理解や発話の機能が保たれているものの、言葉を繰り返す能力が障害される失語症の一種である。つまり、発話の流暢性・言語理解は可能だが、復唱が困難である失語症である。
4.× 適切に道具を使用できないのは、「観念運動失行」ではなく観念失行である。観念失行とは、使用すべき対象物(道具・物品)の使用障害である。例えば、急須に茶葉を入れて、お湯を注ぐ行為ができなくなるなどである。
5.〇 正しい。肢節運動失行:習熟した行為の遂行が拙劣になる。肢節運動失行(運動拙劣症)とは、洋服のボタンを掛ける時や手袋を着用する等の単純な動作、歩行の際の特に歩き出しが拙劣となる症状である。「動作の拙劣さを特徴とし、自発運動、模倣動作、道具の使用のいずれにおいても動作の拙劣さを認める症状」とされている。その成立機序は、中心前回から中心後回にかけての中心回領域に運動記憶が保存されていることを前提とし、その損傷により、運動記憶が障害され、運動が拙劣になると推定される。「※引用:肢節運動失行にみられる運動記憶と運動プログラムの障害」
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【PT/OT/共通】失語ついての問題「まとめ・解説」
37.がん検診の実施が規定されているのはどれか。
1.介護保険法
2.健康増進法
3.生活保護法
4.障害者総合支援法
5.健康日本21(第二次)
解答2
解説
健康増進法は、国民の健康維持と現代病予防を目的として制定された日本の法律である。都道府県と市町村は、地域の実情に応じた健康づくりの促進のため、都道府県健康増進計画(義務)および市町村健康増進計画(努力義務)を策定する。平成14(2002)年に制定された。
【市町村が行う健康増進事業】
①健康手帳、②健康教育、③健康相談、④訪問指導、⑤総合的な保健推進事業、⑥歯周疾患検診、⑦骨粗鬆症検診、⑧肝炎ウイルス検診、⑨がん検診、⑩健康検査、⑪保健指導などである。
【都道府県の役割】
都道府県は、都道府県健康増進計画において、管内市町村が実施する健康増進事業に対する支援を行うことを明記する。都道府県保健所は、市町村が地域特性等を踏まえて健康増進事業を円滑かつ効果的に実施できるよう、必要な助言、技術的支援、連絡調整及び健康指標その他の保健医療情報の収集及び提供を行い、必要に応じ健康増進事業についての評価を行うことが望ましい。都道府県は、保健・医療・福祉の連携を図るとともに、市町村による健康増進事業と医療保険者による保健事業との効果的な連携を図るために、地域・職域連携推進協議会を活性化していくことが望ましい。
1.× 介護保険法とは、1997年12月に公布された法律で、40歳以上で介護が必要になった人の自立生活を支援するために、国民が負担する保険料や税金を財源として、日常生活の行為にかかるさまざまな介助やリハビリなどのサービスにかかる給付を行うことを目的にしている。加齢に伴って生じる心身の変化による疾病等により介護を要する状態となった者を対象として、その人々が有する能力に応じ、尊厳を保持したその人らしい自立した日常生活を営むことができることを目指している。
2.〇 正しい。健康増進法にがん検診の実施が規定されている。健康増進法とは、国民の健康維持と現代病予防を目的として制定された日本の法律である。都道府県と市町村は、地域の実情に応じた健康づくりの促進のため、都道府県健康増進計画(義務)および市町村健康増進計画(努力義務)を策定する。平成14(2002)年に制定された。
3.× 生活保護法とは、『日本国憲法』25条の理念に基づき、生活困窮者を対象に、国の責任において、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長することを目的としている。8つの扶助(生活扶助、住宅扶助、教育扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助)があり、原則現金給付であるが、医療扶助と介護扶助は現物給付である。
4.× 障害者総合支援法とは、障害者と障害児を対象とした障害保健福祉施策についてまとめられた法律である。これにより障害者の範囲が拡大され、身体障害者、精神障害者、知的障害者、障害児の全てが対象とされている。そして、対象となっている者は、認定調査というものを受け「障害支援区分」という障害の重症度分類によって7区分(非該当、区分1~6)に分けられる。それにより受けられるサービス内容が変わってくる。①更生医療(自立支援医療)、②育成医療(軽減する手術等の治療によって確実に効果が期待できる者に対して提供される、生活の能力を得るために必要な自立支援医療費の支給を行うもの)、③精神通院医療(精神疾患の治療に掛かる医療費を軽減する公的な制度)、④育成医療(障害児の身体障害を除去、軽減する手術等の治療によって確実に効果が期待できる者に対して提供される)がある。
5.× 健康日本21(第二次)は、生活習慣病の予防やこころの健康など5つの分野にわたり、53項目の数値目標を設定している。健康日本21(第二次)の目標項目として、①「健康寿命の延伸と健康格差の縮小の実現」、②「生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底」、③「社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上」、④「健康を支え、守るための社会環境の整備」、⑤「生活習慣および社会環境の改善」があげられている。
38.装具と疾患の組合せで正しいのはどれか。
1.Williams型装具:側弯症
2.Milwaukee装具:腰部脊柱管狭窄症
3.交互歩行装具(RGO):二分脊椎(機能残存レベルTh12)
4.Oppenheimer型装具:正中神経麻痺
5.スウェーデン式膝装具:大腿神経麻痺
解答3
解説
(※図引用:大阪発達総合療育センター 南大阪小児リハビリテーション病院様HPより)
1.× Williams型装具は、「側弯症」ではなく、脊椎分離症や脊椎すべり症などである。Williams型装具は、腰仙椎の過度な後屈および側屈を制限する目的で使用する。ちなみに、側弯症に適応となるのは、Milwaukee型装具(ミルウォーキー型装具)やBoston型装具(ボストン型装具)である。
2.× Milwaukee装具(ミルウォーキー装具)は、「腰部脊柱管狭窄症」ではなく胸~腰椎の特発性側弯症である。骨盤ガードルと頚部を支持するネックリングを金属支柱で連結し、脊柱の側弯の矯正のために胸椎パッドをつける。
3.× 交互歩行装具(RGO:Reciprocating Gait Orthosis)は、二分脊椎(機能残存レベルTh12)に適応となる。交互歩行装具(RGO)とは、腰椎装具と両側長下肢装具を股継手で連結したもので、一方の股関節屈曲が他方の股関節伸展をきたす構造で両下肢を交互に振り出す交互歩行が可能となる装具である。※ただし、RGO(Reciprocating Gait Orthosis:交互歩行装具)は、第10胸髄節以下の完全対麻痺者の交互歩行実現を目的として開発された装具である(※第46回理学療法士国家試験午後問題46問より)。
4.× Oppenheimer型装具(オッペンハイマー型)は、「正中神経麻痺」ではなく、橈骨神経麻痺高位型(下垂手)である。手関節背屈位、MP伸展位、母指外転位に保持する。
5.× スウェーデン式膝装具は、「大腿神経麻痺」ではなく、反張膝の予防・矯正である。他にも、TKS・SK式膝装具・HRC式膝装具がある。ちなみに、大腿神経麻痺は大腿四頭筋の筋力低下により歩行時の膝折れが起こる。
39.温熱の局所反応で正しいのはどれか。
1.加温によって血液の粘性が増加する。
2.Aδ線維がC線維よりも温度変化の影響を受けやすい。
3.組織温度が1℃上昇すると代謝率は2~3倍に増加する。
4.反射性血管拡張作用は加温部位の循環が増加する現象である。
5.組織温度が1℃上昇すると神経伝導速度は0.2m/sec増加する。
解答2
解説
①組織の粘弾性の改善
②局所新陳代謝の向上
③循環の改善
慢性的な疼痛に対する温熱療法の生理学的影響として、血行の改善によるケミカルメディエーター(痛み物質)の除去、二次的な筋スパズムの軽減、疼痛閾値の上昇などがある。
1.× 加温によって血液の粘性は、「増加」ではなく改善(低下)する。血行の改善によるケミカルメディエーター(痛み物質)の除去、二次的な筋スパズムの軽減、疼痛閾値の上昇をもたらす。
2.〇 正しい。Aδ線維がC線維よりも温度変化の影響を受けやすい。なぜなら、Aδ線維は有髄神経(髄鞘)を持ち跳躍伝導が行えるため。
3.× 組織温度が1℃上昇すると代謝率は、「2~3倍」ではなく約13%(約1.3倍)に増加する。なぜなら、血管が拡張し循環を増大することで、その分、組織に負担がかかる(組織内の物質の交換が活発になる)ため。ちなみに、基礎代謝率とは、活動に必要な最低限のエネルギーのことである。
4.× 反射性血管拡張作用は、「加温部位」に限らず「ある刺激部位」の循環が増加する現象である。反射性血管拡張作用とは、局所的な刺激により、その部位の血管が拡張して血流が増加する現象を指す。この反射的な血管拡張は、神経系と血管系の相互作用によって引き起こす。具体的には、温度変化や物理的な刺激などの局所的な刺激が、Aδ線維やC線維などの感覚神経線維を刺激し、血管収縮を抑制する神経伝達物質が放出される。これによって、血管平滑筋の緊張が緩和され、血管が拡張して血流が増加する。
5.× 組織温度が1℃上昇すると神経伝導速度は、「0.2m/sec」ではなく「約2.0m/sec」増加する。
40.持久力に必要なエネルギー供給系の説明で正しいのはどれか。
1.ATPは大量に体内に保存できる。
2.解糖系の過程をTCA回路という。
3.解糖系は無酸素性エネルギー供給系である。
4.酸化系は無酸素性エネルギー供給系である。
5.ATP-CP系は有酸素性エネルギー供給系である。
解答3
解説
1.× ATPは大量に体内に保存することはできない。「大量」というあいまいな表現は、基本的に不正解となる。何と比較して多いか・少ないか判断できないためである。ちなみに、ATP(アデノシン三リン酸)は、筋肉の収縮など生命活動で利用されるエネルギーの貯蔵・利用にかかわる。 筋線維の中に蓄えられているATPの量はわずかで、激しい運動では短時間で使い果たす。したがって、長時間運動を続けるには、ADP(アデノシン二リン酸)からATPを再合成してATPを供給し続ける必要がある。
2.× 解糖系の過程は、グルコースをピルビン酸(あるいは乳酸)にまで分解する反応のことをいう。TCA回路(TCA回路、クレブス回路、トリカルボン酸回路)は、ミトコンドリアでアセチルCoAが二酸化炭素と水へと酸化されATPを生成する。
3.〇 正しい。解糖系は無酸素性エネルギー供給系である。解糖系とは、生体内に存在する生化学反応経路の名称であり、グルコースをピルビン酸などの有機酸に分解し、グルコースに含まれる高い結合エネルギー(ATP)を生物が使いやすい形に変換していくための代謝過程である。グルコースから生じたピルビン酸は、還元され最終産物として乳酸になる。このグルコースから乳酸への変換経路は、酸素の関与なしに起こりうるので、嫌気的代謝(解糖)と呼ばれる。
4.× 無酸素性エネルギー供給系は、「酸化系」ではなく、ATP-CP系と解糖系である。解糖系とは、生体内に存在する生化学反応経路の名称であり、グルコースをピルビン酸などの有機酸に分解し、グルコースに含まれる高い結合エネルギー(ATP)を生物が使いやすい形に変換していくための代謝過程である。グルコースから生じたピルビン酸は、還元され最終産物として乳酸になる。このグルコースから乳酸への変換経路は、酸素の関与なしに起こりうるので、嫌気的代謝(解糖)と呼ばれる。
5.× 有酸素性エネルギー供給系は、「ATP-CP系」ではなく、有酸素系(TCA回路)である。ATP-CP系とは、筋内のクレアチンがリン酸と結合してクレアチンリン酸となり、ADPにリン酸を与えることでATPを再合成するという働きを担っている。しかし、クレアチンリン酸の貯蔵量も限られており、ATP-CP系の持続時間は8秒未満である。
クエン酸回路(TCA回路、クレブス回路、トリカルボン酸回路)とは、ミトコンドリアでアセチルCoAが二酸化炭素と水へと酸化されATPを生成する。グルコース→ピルビン酸→アセチルCoA→【クエン酸回路】(オキサロ酢酸)+クエン酸→イソクエン酸→α-ケトグルタル酸→サクシニルCoA→コハク酸→フマル酸→リンゴ酸→オキサロ酢酸となる。