第58回(R5) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午前問題96~100】

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96.アルコール依存症で誤っているのはどれか。(※不適切問題:採点対象外)

1.依存性パーソナリティ障害は発症リスクを高める。
2.発症時はアルコール耐性が増大している。
3.断酒後、依存症状態に戻ることが多い。
4.アルコール幻覚症は幻聴を主とする。
5.発症には遺伝的影響がある。

解答 解なし(※採点対象外)
理由:選択肢に正解がないため。 

解説

1.〇 正しい。依存性パーソナリティ障害は発症リスクを高める。依存性パーソナリティ障害は、他人に強く依存し、自信に欠けている傾向をもつ。ストレスを感じると自己犠牲的な行動に走ったり、すぐに安楽を求めるために悪癖に陥ることがあり、このような行動が、アルコールや薬物などの依存症につながることがあるとされている。また、依存性パーソナリティ障害の患者には、しばしば以下のうち1つ以上の病気もみられることが報告されている。①うつ病や持続性抑うつ障害などの抑うつ障害、②不安症、③アルコール使用障害、④別のパーソナリティ障害など。
2.〇 正しい。発症時はアルコール耐性が増大している。アルコール依存症とは、少量の飲酒でも、自分の意志では止めることができず、連続飲酒状態のことである。常にアルコールに酔った状態でないとすまなくなり、飲み始めると自分の意志で止めることができない状態である。ちなみに、耐性とは、同じ量の飲酒でもあまり効かなくなってくることである。 
3.〇 正しい。断酒後、依存症状態に戻ることが多い。なぜなら、依存症とは、自分の意志では止めることができなくなる脳の病気といわれているため。依存症は、脳内に報酬を求める回路ができあがり、コントロール喪失に陥ってしまっている。
4.〇 正しい。アルコール幻覚症は幻聴を主とする。アルコール幻覚症とは、長期間かつ大量のアルコール摂取により、幻聴や被害妄想などを生じる精神障害である。したがって、抗精神病薬(統合失調症治療薬)の投与することが多い。
5.〇 正しい。発症には遺伝的影響がある。アルコールを分解する酵素の遺伝子による違いが、依存症のなりやすさに強く影響することが知られている。さらに、最近では環境による影響の受けやすさに遺伝が関係していると報告されている。

アルコール依存症とは?

アルコール依存症とは、少量の飲酒でも、自分の意志では止めることができず、連続飲酒状態のことである。常にアルコールに酔った状態でないとすまなくなり、飲み始めると自分の意志で止めることができない状態である。

【合併しやすい病状】
①離脱症状
②アルコール幻覚症
③アルコール性妄想障害(アルコール性嫉妬妄想)
④健忘症候群(Korsakoff症候群)
⑤児遺性・遅発性精神病性障害 など

 

 

 

 

 

 

97.興奮や昏迷などの意志発動の異常が主体となる統合失調症の病型はどれか。

1.緊張型
2.残遺型
3.単純型
4.破瓜型
5.妄想型

解答

解説
1.〇 正しい。緊張型は、興奮や昏迷などの意志発動の異常が主体となる統合失調症の病型である。緊張型は、主に青年期(20歳前後)に突然発症することが多い。主な症状は、著しい神経運動障害(激しい興奮状態と昏迷状態という正反対の症状)である。具体的には、急に大声を出して叫んだり、身体が奇妙な姿勢のまま動かないなどの異常行動がみられる。それらの症状は一定期間過ぎると症状が治まるが、治療を中断すると再発を繰り返す可能性が高くなる。
2.× 残遺型は、症状が残っている状態を指す。妄想型や解体型、緊張型といった統合失調症の初期段階が過ぎたもので、 幻覚や幻聴などの陽性症状は軽いため、治ったように見える。
3.× 単純型は、陰性症状・中間症状(自閉傾向、意欲低下、思考のまとまりの無さなど)が主体となる統合失調症の病型である。陽性症状(幻覚、妄想など)に乏しい。 20歳前後に発病し緩徐に進行しますが、人格の荒廃に至ることは少ないと考えられています。 軽症例では、家族が病気に気づかないことすらあります。
4.× 破瓜型(解体型)は、主に思春期から青年期(10代から20代)までに発病することが多い。症状としては、陰性症状(支離滅裂な会話行動、喜怒哀楽の感情の起伏がなくなり意欲が低下してしまうなど)がみられる。
5.× 妄想型は、主に30歳前後に発病することが多い。症状としては、幻覚妄想(被害的または誇大妄想)などが顕著である。社会的なコミュニケーションは円滑に保たれていることが多い。

”統合失調症とは?”

統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。

(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)

 

 

 

 

 

98.欠神発作で正しいのはどれか。

1.心因性である。
2.高齢で発症する。
3.発作後に入眠する。
4.過呼吸で誘発される。
5.周囲の人に気付かれやすい。

解答

解説

欠神発作とは?

欠神発作は、①定型欠神と②非定型欠神に分類される。非定型欠神は、脳全体に全般性に現れる棘徐波に一致して意識消失を主体とする発作症状がみられるという点では定型欠神と同じだが、発作の始まりや終わりが定型欠神ほどはっきりしなくて、なんとなく始まり、なんとなく終わるということがほとんどである。脳波上も定型欠神のものより遅い1.5~2.5サイクルの棘徐波が認められる。定型欠神は、脳に障害がない患者さんに多くみられるが、非定型欠神はLennox-Gastaut症候群(レノックス・ガストー症候群)など脳に障害のある患者さんによくみられる発作である。

1.× 心因性であるおこるのは、「てんかん」ではなく心因性非てんかん性発作(いわゆる偽発作)である。欠神発作の原因は、てんかんのような脳の機能異常である。
2.× 発症するのは、「高齢」ではなく小児期(出生から思春期)である。
3.× 発作後に入眠することもあるのは、「欠神発作」ではなく強直間代けいれん発作である。強直間代けいれん発作は、十数秒間の全身性の強直期(体幹・四肢を伸展する強直発作)に続いて、数十秒持続する間代期(四肢を激しく動かす間代発作)が出現し、この間は意識が消失する。発作後は、数分間のもうろう状態を示し、その後睡眠に移行することもある。対応として、無理に発作を抑えつけないようにすることが重要である。また、重積状態では意識は消失し、呼吸機能が低下するおそれがあるので、まずはバイタルサインを確認するべきである。ちなみに、欠神発作もまれに発作後に入眠することもある。
4.〇 正しい。過呼吸で誘発される。欠神発作は両側大脳半球が同時に過剰興奮を起こすてんかんである。その発作は突然の意識消失を主徴とし、諸行動の中断、空虚な凝視、短時間の眼球上転などからなる。発作は突然はじまり数秒から約30秒間持続し、突然収束する。脳波では発作中に 3Hz 棘徐波複合を認め、過呼吸によって誘発される。欠神発作の診断と治療効果の判定には脳波検査で過呼吸賦活を行うことが有効である(※引用:「欠神発作における過呼吸賦活について」愛知医科大学病院様HPより)。
5.× 周囲の人に気付かれ「やすい」のではなく「にくい」。なぜなら、欠神発作は数秒気を失う程度であるため。手足が硬直したり、倒れるというような目に見えて派手な動きが見られないため、周りの人からは発作が起きていることを気付かれにくい。虚空(こくう:何もない空間を注視する)ことや、突然に会話を停止することがみられる。

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99.統合失調症患者の健康関連QOLの測定に用いることができるのはどれか。

1.BPRS(Brief Psychiatric Rating Scale)
2.NEO-PI-R
3.RDQ(Roland-Morris Disability Questionnaire)
4.SF-36
5.SFS(Social Functioning Scale)

解答

解説
1.× BPRS(Brief Psychiatric Rating Scale):簡易精神症状評価尺度)は、統合失調症患者の薬物療法の効果を簡便に評価する尺度として考案されたものである。18の評価項目があり、医師(または心理学者)が評価する。
2.× NEO-PI-R(Revised NEO Personality Inventory)は、質問紙法による性格検査である。240項目の質問を通じて、神経症傾向、外向性、開放性、調和性、誠実性の5因子の観点で人格を診断するものである。大学生・成人が対象となる。
3.× RDQ(Roland-Morris Disability Questionnaire)は、腰痛による日常生活の障害を患者自身が評価する尺度である。腰痛のために、「立つ」、「歩く」、「座る」、「服を着る」、「仕事をする」などの日常の生活行動が障害されるか否かを、「はい」、「いいえ」で尋ねる24の項目からなる。
4.〇 正しい。SF-36は、統合失調症患者の健康関連QOLの測定に用いる。SF-36(MOS 36-Item Short-Form Health Survey)は、質問紙法によって対象者の健康関連QOLを包括的に評価する尺度である。8つの健康概念【①身体機能、②日常役割機能(身体)、③体の痛み、④全体的健康感、⑤活力、⑥社会生活機能、⑦日常役割機能(精神)、⑧心の健康】を測定する。
5.× SFS(Social Functioning Scale:社会機能評価尺度)は、慢性期の統合失調症における家族介入の効果を測定するため、コミュニティでの生活の維持において重要な機能を評価する尺度である。19項目の質問用紙で行う。

 

 

 

 

 

100.強迫性障害で正しいのはどれか。

1.薬物療法は無効である。
2.曝露反応妨害法が行われる。
3.強迫行為はさせられ体験による。
4.うつ病を合併することはまれである。
5.患者は強迫行為の不合理性を自覚していない。

解答

解説

MEMO

強迫性障害とは、自分の意志に反する不合理な観念(強迫観念)にとらわれ、それを打ち消すために不合理な行動(強迫行為)を繰り返す状態をいう。治療として、①SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、②森田療法、③認知行動療法などである。他のことに目を向けさせることによりこだわりを軽減することを目的とする。

認知行動療法とは、ベックによって精神科臨床に適応された治療法である。例えば、うつ病患者の否定的思考を認知の歪みと考え、その誤りを修正することによって症状の軽快を図る。認知行動療法の中に、系統的脱感作法がある。系統的脱感作法とは、患者に不安を引き起こす刺激を順に挙げてもらい(不安階層表の作成)、最小限の不安をまず想像してもらう。不安が生じなかったら徐々に階層を上げていき、最終的に源泉となる不安が消失する(脱感作)ことを目指す手法である。

1.× 薬物療法は、「無効」ではなく有効である。主に、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬が一般的に使用される。ちなみに、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)とは、抗うつ薬の一種である。脳の神経伝達物質のセロトニンとノルアドレナリンの両方について再取り込みを阻害することで神経細胞と神経細胞の間のセロトニンとノルアドレナリンの量を増やし、情報伝達を増強して抗うつ効果を発揮すると考えられている。適応疾患として、うつ病・うつ状態以外にもパニック障害、社交不安障害、強迫性障害などに有効とされている。一方、副作用として、吐き気、嘔吐、下痢、便秘などの消化器症状が現れることがある。
2.〇 正しい。曝露反応妨害法が行われる。曝露反応妨害法は、強迫性障害の治療法の一つで認知行動療法に分類される。ある強迫観念に曝された時に、それに対する強迫行為を我慢(反応妨害)させることで徐々に不安や恐怖に慣れさせるものである。不安の弱い曝露反応から順番に繰り返していくことで効果を発揮していく。
3.× 強迫行為はさせられ体験によるものではない。させられ体験(作為体験)とは、 統合失調症の代表的な症状のひとつで、自分の行動や考えなどが、自分の意志ではなく、自分ではない何者かによって支配されていると感じることである。ちなみに、強迫行為とは、必要ないとわかっているのに繰り返し行ってしまう行為である。
4.× うつ病を合併することは「まれである」とは言い切れない。大うつ病性障害の併発の割合として、20~37%という報告がある。また、生涯有病率は54~67%とされていることから、大うつ病性障害の併存はまれではない。
5.× 患者は強迫行為の不合理性を「自覚していない」のではなく自覚している。強迫行為とは、必要ないとわかっているのに繰り返し行ってしまう行為である。

 

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