第57回(R4) 作業療法士国家試験 解説【午前問題16~20】

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16 16歳の男子。乳幼児健診で異常を指摘されたことはなかったが、乳幼児期、母親の後追いをせず、履いている靴がボロボロになっても他の靴では嫌だと強いこだわりを見せた。大人びた話し方をし、小学校では自分の関心事について熱中して一方的に話すために、友達から避けられるようになって孤立していた。中学校入学後は不登校になり、ゲームに熱中するようになったため、心配した母親が児童思春期専門の医療機関を受診させた。
 評価に用いるテストとして適切なのはどれか。

1.ASQ
2.HTP
3.WAIS-Ⅲ
4.バウムテスト
5.CAARS(Conners’ Adult ADHD Rating Scales)

解答

解説

本症例のポイント

・16歳の男子。
・乳幼児健診で異常を指摘されたことはない。
・強いこだわり
・小学校では自分の関心事について熱中する。

→上記の特徴から、Aspergar症候群(アスペルガー症候群)が疑われる。Aspergar症候群(アスペルガー症候群)とは、発達障害の1つで、社会性・コミュニケーション・想像力・共感性・イメージすることの障害、こだわりの強さ、感覚の過敏などを特徴とする。自閉症スペクトラム障害のうち、知能や言語の遅れがないものをいう。

1.〇 正しい。ASQ(Autism Screening Questionnaire:自閉症スクリーニング質問紙)は、問診形式による自閉症チェックリストである。自閉症にみられる症状を39項目の質問事項とし、それに「はい」「いいえ」で答える質問紙である。Aspergar症候群(アスペルガー症候群)は、自閉症スペクトラム障害のうち、知能や言語の遅れがないものをいう。
2.× HTP(House-tree-person test:投影描画法)は、描き手は「家」「木」「人」の絵をかいてもらう。描かれた絵には描き手の心理が投影されている。
3.× WAIS-Ⅲ(Wechsler Adult Intelligence ScaleⅢ:ウェクスラー成人知能検査・改訂版)は、記憶の包括的検査であり、知能の個人内差の診断が可能な成人用個別式検査である。高次脳機能障害の評価として用いられる神経心理学的検査において、①動作性検査(絵画完成、符号、積木模様、行列推理、絵画配列、記号探し、組み合わせ)と②言語性検査(単語、類似、算数、数唱、知識、理解、語音整列)の14項目で構成される検査である。適応年齢16歳0ヶ月~89歳 11 か月の偏差IQ(知能指数)を求めることができる。
4.× バウムテストとは、「実のなる木」を1本自由に描いてもらう描画検査(投影法の人格検査)である。コッホによって開発された。「バウム(Baum)」がドイツ語で「木」という意味である。幼児以上の幅広い年齢が対象となる。
5.× CAARS(Conners’ Adult ADHD Rating Scales)は、18歳以上を対象とした、注意欠如・多動性障害(ADHD)の症状重症度を把握するための評価尺度である。検査用紙は「自己記入式」「観察者評価式」の2種類があり、複数の回答者からの情報をもとに包括的に評価を行う。観察者は、家族、友人、同僚など最近の対象者をよく知る人を指す。「自己記入式」「観察者評価式」は、尺度・項目に整合性があり、回答者間の情報を容易に比較できることが特徴である。

広汎性発達障害とは?

 広汎性発達障害とは、相互的な社会関係とコミュニケーションのパターンにおける質的障害、および限局した常同的で反復的な関心と活動の幅によって特徴づけられる一群をいう。現在の分類では「自閉スペクトラム症/自閉スペクトラム障害」に含まれている。

広汎性発達障害、およびその下位分類である自閉症、アスペルガー症候群、高機能自閉症は、「自閉スペクトラム症」とまとめられた。
【診断基準の要点】
①「社会及び感情の相互性の障害」「社会的相互作用で用いられる非言語的コミュニケーションの障害」「発達レベル相応の関係を築き維持することの障害」の3つがすべて込められること。
②行動、興味活動の、限局的で反復的な様式が認められること。

 

 

 

 

 

17 68歳の男性。半年前から睡眠中に奇声をあげたり、気分が沈みがちになることがあった。次第に物忘れや立ちくらみ、手の震えが出現した。最近、「玄関に小人が立っている」と言うことが増えたため、家族に付き添われて精神科病院に入院し、作業療法が開始された。
 この患者にみられる特徴はどれか。2つ選べ。

1.動きが緩慢になる。
2.症状が変動しやすい。
3.毎食のメニューにこだわる。
4.周囲に対し一方的な要求をする。
5.環境からの刺激を受けても集中できる。

解答1・2

解説

本症例のポイント

・68歳の男性。
・半年前から睡眠中に奇声をあげたり、気分が沈みがちになる(睡眠障害)
・物忘れ(認知症状)
・立ちくらみ、手の震えが出現した(パーキンソン症状)
・「玄関に小人が立っている」(幻視)

→上記症状から、Lewy小体型認知症と疑われる。Lewy小体型認知症とは、Lewy小体が広範な大脳皮質領域で出現することによって、①進行性認知症と②パーキンソニズムを呈する病態である。認知機能の変動・動揺、反復する幻視(人、小動物、虫)、パーキンソニズム、精神症状、REM睡眠型行動障害、自律神経障害などが特徴である。

1〜2.〇 正しい。動きが緩慢になる(動作緩慢)/症状が変動しやすい(認知機能の変動・動揺)は、この患者(Lewy小体型認知症)にみられる特徴である。
3.× 毎食のメニューにこだわる(常同行動)/周囲に対し一方的な要求をする(脱抑制)は、前頭側頭型認知症の特徴である。
5.× 環境からの刺激を受けても集中できる(過集中)は、アスペルガー症候群にみられる。

 

 

 

 

18 16歳の女子。高校進学後から体型を笑われたように思い、極端な減量をして痩せが目立つようになった。2か月前から登校できなくなって入院治療を受けることになった。入院後、気分転換と早期の復学を目的とした作業療法が処方された。
 この患者に対する導入期の作業療法で最も適切なプログラムはどれか。

1.簡単なアクセサリーを作る創作活動プログラム
2.柔軟な思考を得るための小集団でのプログラム
3.体力増強のための機器を用いた運動プログラム
4.調理メニューのカロリー計算を行う教育的プログラム
5.退院後の生活のためのADLを中心とした退院準備プログラム

解答

解説

本症例のポイント

・16歳の女子。
・高校進学後から、極端な減量をして痩せが目立った。
・2か月前から、登校できず入院治療を受ける。
→本症例は、摂食障害である神経性無食欲症と疑える。

神経性無食欲症は、思春期~青年期の若い女性に発症しやすい。神経性無食欲症の主な特徴は以下の通りである。①病的な痩せ願望、②ボディーイメージのゆがみ、③極端な食べ物制限と下剤などの乱用、④月経の停止、うぶげの増加、⑤乳房委縮はみられない、⑥性格的には頑固で競争心が強い、⑦母親との心的葛藤をみることがある。

1.〇 正しい。簡単なアクセサリーを作る創作活動プログラムは、導入期の作業療法で最も適切なプログラムである。神経性無食欲症の患者の性格的な特徴として、頑固で競争心が強い傾向である。周囲に対して過剰に適応してしまう特徴があるため、集団プログラムよりアクセサリー作りのような机上でできる個人作業が望ましい。
2.× 柔軟な思考を得るための小集団でのプログラムは優先度が低い。神経性無食欲症の患者の性格的な特徴として、頑固で競争心が強い・自己評価は低い傾向である。他の患者にも影響を与えかねない。小集団プログラムを実施するより個別作業が望ましい。
3.× 体力増強のための機器を用いた運動プログラムは優先度が低い。神経性無食欲症の患者は、痩せるために過活動になってしまうことが多いので、身体運動は逆効果になる恐れがある。
4.× 調理メニューのカロリー計算を行う教育的プログラムは優先度が低い。主な特徴として、病的な痩せ願望と極端な食べ物制限、下剤などの乱用がみられる。より食べ物への関心が強まり逆効果である。可能な限り食べ物以外へ関心を向けるように働きかけていく。
5.× 退院後の生活のためのADLを中心とした退院準備プログラムは優先度が低い。なぜなら、神経性無食欲症はADLの障害は起こりにくいため。また、設問で問われているのは「この患者に対する導入期の作業療法」である。退院準備プログラムは、退院日や退院の目安がついてから行っていくことが多い。

摂食障害とは?

摂食障害には、①神経性無食症、②神経性大食症がある。共通して肥満恐怖、自己誘発性嘔吐、下剤・利尿剤の使用抑うつの症状がみられる。作業療法場面での特徴として、過活動、強迫的なこだわり、抑うつ、対人交流の希薄さ、表面的な対応がみられる。患者の性格として、細かい数値へのこだわり(①体重のグラム単位での増減、②この食べ物はあの食べ物より〇カロリー多いなど)がみられる。

【摂食障害の作業療法のポイント】
①ストレス解消、②食べ物以外へ関心を向ける、③自信の回復(自己表出、他者からの共感、自己管理)、④過度の活動をさせない、⑤身体症状、行動化に注意する。

【性格的特徴】
①強情、②負けず嫌い、③執着心が強い、③極端な行動に及びやすい。

 

 

 

 

 

19 7歳の男児。幼児期から落ち着きがなく、一つのおもちゃで遊べないなどの行動があった。小学校入学後、長時間椅子に座れない、順番を待てない、注意散漫などの問題行動があり、外来作業療法を受けることになった。作業療法では、次第に活動に継続して取り組めるようになってきたが、協調動作が必要な作業は苦手である。知能検査では知的障害は認められなかった。
 作業療法を行う上での留意点として適切なのはどれか。

1.複数の課題を同時に提示する。
2.順番が守れない場合は厳しく注意する。
3.周囲に受け入れられる行動は積極的に褒める。
4.数週間継続して取り組める連続課題を実施する。
5.作業台の上にいろいろな道具や材料を揃えておく。

解答

解説

本症例のポイント

・7歳の男児。
・幼児期:落ち着きがなく、一つのおもちゃで遊べない。
・小学校入学後:長時間椅子に座れない、順番を待てない、注意散漫。
・協調動作:苦手である。
・知能検査:知的障害は認められない。

→本症例は、注意欠陥多動性障害(ADHD)と疑える。

注意欠陥多動性障害(ADHD)とは、発達障害の一つであり、脳の発達に偏りが生じ年齢に見合わない①注意欠如、②多動性、③衝動性が見られ、その状態が6ヵ月以上持続したものを指す。その行動によって生活や学業に支障が生じるケースが多い。

1.× 複数の課題を「同時」ではなく「一つずつ」に提示する方が良い。なぜなら、注意欠陥多動性障害(ADHD)の特徴である注意欠如や衝動性により、複数の課題を同時にこなすことが難しいため。
2.× 順番が守れない場合は、厳しく注意する必要はない。なぜなら、注意・叱責は強く行うのは、自信喪失や自尊心の低下につながるため。順番が守れない行動をした場合は、注意がそれないような環境調整にすることが大切である。子どもの周囲の環境(学習環境、生活環境など)で、子どもの良い行動を引き出すようにする。
3.〇 正しい。周囲に受け入れられる行動は積極的に褒める。褒められることは男児にとって快感であり、適正な行動をすれば褒められて快感が得られることを学習するようになり、適正な行動が増えてくる。
4.× 数週間継続して取り組める連続課題を実施する優先度が低い。なぜなら、注意散漫となりやすいため。また、本症例の場合、幼児期は落ち着きがなく、一つのおもちゃで遊べないと記載されている。その日に完成することができる作業が望ましい。ちなみに、①連続課題(オープンスキル)とは、身体運動の始まりや終わりが明らかでない課題で、自動車の運転などをいう。一方、②不連続課題(クローズドスキル)は、運動に明らかな始まりと終わりがあるもので、ゴルフスイングなどをいう。
5.× 作業台の上にいろいろな道具や材料を揃えておく必要はない。なぜなら、視野内に道具や材料が多くあると、目移りしてしまい作業に集中しにくくなるため。したがって、作業台の上には最低限の物品のみ置くようにする。

 

 

 

 

20 35歳の男性。母親との2人暮らし。大学卒業後に就職した。統合失調症を発症したために退職し、精神科に外来通院しながら自閉的な生活をしていた。主に家事を行っていた母親が体調を崩したために同居生活が困難となり、精神科に入院した。入院6か月で自宅退院となり、母親の負担軽減のために日中の家事援助を受けることになった。
 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)に規定されるサービスの中でこの患者が利用できるのはどれか。

1.共同生活援助
2.居宅介護(ホームヘルプ)
3.重度訪問介護
4.短期入所(ショートステイ)
5.同行援護

解答

解説

本症例のポイント

・35歳の男性。
・母親との2人暮らし。
・統合失調症を発症し退職(精神科に入院し、入院6か月で自宅退院)
・母親が体調を崩し同居生活が困難。
・母親の負担軽減のために日中の家事援助を受けることになった。

→身体障害なし、ADLは自立している可能性が高い。したがって、障害支援区分は区分1〜2程度と考える。

障害者総合支援法は、2013年に障害者自立支援法から障害者総合支援法へと改正され、障害者と障害児を対象とした障害保健福祉施策についてまとめられた法律である。これにより障害者の範囲が拡大され、身体障害者、精神障害者、知的障害者、障害児の全てが対象とされている。そして、対象となっている者は、認定調査というものを受け「障害支援区分」という障害の重症度分類によって7つの区分に分けられる。それにより受けられるサービス内容が変わる。

1.× 共同生活援助(グループホーム)は、主に夜間や休日に精神障害者が共同生活を営む住居で、食事の世話・服薬指導など、相談や日常生活の援助を行う。本症例は、母親と自宅で一緒に住み、家事動作のみの介助を要する。
2.〇 正しい。居宅介護(ホームヘルプ)は、障害者総合支援法に規定されるサービスの中で本症例が利用できる。居宅介護は、居宅において食事や入浴などの生活動作、調理や洗濯などの家事動作に関する援助を行うサービスである。対象は、障害者支援区分が区分1以上である者である。本症例は、障害者支援区分1〜2相当で、調理や洗濯などの家事動作に介助を要する。
3.× 重度訪問介護は、重度の精神障害、知的障害や、重度の肢体不自由者など生活場面でかなり介助を要し、常時介護が必要なものに対して、居宅に置いて食事や入浴などの生活動作、調理や洗濯などの家事動作に関する援助を行うサービスである。また、それに加え外出時における移動中の介護なども含まれる。対象は、障害支援区分が区分4以上である。
4.× 短期入所(ショートステイ)は、居宅において介護者の疾病やその他の理由により、当事者の介護が行えない場合に、障害者支援施設、児童福祉施設などに短期間入所するサービスである。入所中は食事や入浴などの生活動作を支援する。対象は、障害者支援区分が区分1以上である者である。症例の男性は、6ヵ月の入院を経て自宅退院し、「母親の負担軽減のために日中の家事援助を受けること」を目的にサービスを検討しているため、短期入所は該当しない。
5.× 同行援護とは、視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等が外出時において、当該障害者等に同行し、移動に必要な情報の提供や、移動の援護等、外出時に必要な援助を行うものである。

障害者総合支援法とは?

障害者総合支援法は、2013年に障害者自立支援法から障害者総合支援法へと改正され、障害者と障害児を対象とした障害保健福祉施策についてまとめられた法律である。これにより障害者の範囲が拡大され、身体障害者、精神障害者、知的障害者、障害児の全てが対象とされている。そして、対象となっている者は、認定調査というものを受け「障害支援区分」という障害の重症度分類によって7区分(非該当、区分1~6)に分けられる。それにより受けられるサービス内容が変わってくる。

①障害者も難病患者も自立できる社会をめざす。
②応能負担(所得に応じて自己負担額が変わること)が原則。
③あらゆる障害(身体・知的・精神+難病)についてこの法律で対応する。
④市区町村が事業の母体である。

 

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