第57回(R4) 理学療法士国家試験 解説【午前問題6~10】

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6 78歳の男性。脳梗塞。左顔面神経麻痺および右片麻痺を呈する。頭部MRIの拡散強調像を下に示す。
 梗塞巣として考えられるのはどれか。

1.①
2.②
3.③
4.④
5.⑤

解答

解説

本症例のポイント

顔面神経麻痺
→顔面神経(Ⅶ)の障害である。
【橋の下縁から走行する】

片麻痺
→錐体路障害である。
【大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄(交差)―錐体交叉―脊髄前角細胞】

1.× ①矢印は放線冠である。放線冠は、運動線維を含む錐体路や感覚線維が通っている。したがって、右片麻痺は生じるが、左顔面神経麻痺は起こらない。
2.× ②矢印は視床である。障害が起こると①視床痛、②運動失調、③視床手、④失語などが特徴である。
3.× ③矢印は小脳虫部である。障害が起こると体幹失調を主体とした小脳失調を呈す。
4.〇 正しい。④矢印は橋腹側である。橋の病変で顔面の末梢性神経麻痺及び眼球の外転障害と、対側の片麻痺を伴うものをMillard-Gubler(ミヤール・ギュブレール症候群:橋下部腹側症候群という。皮質脊髄路と核下性外転神経線維が障害され片麻痺と外転神経麻痺が生じると考えられている。
5.× ⑤矢印は延髄背側である。皮質脊髄路が通過する。

 

 

 

 

 

7 28歳の男性。脊髄完全損傷。両側に長下肢装具を使用し、平行内歩行練習を行っている。歩行パターンを図に示す。
 機能残存レベルはどれか。

1.Th1
2.Th6
3.Th12
4.L4
5.S1

解答

解説

本症例のポイント

脊髄完全損傷。
体幹機能が上部・下部ともに残存。
両側に長下肢装具を使用している。
左手→右足→左手→左足の歩行パターン。

1.× Th1機能残存レベルは、手内在筋は機能するが体幹機能を喪失している。立位・歩行練習には上肢支持と共に体幹装具と長下肢装具が必要である。
2.× Th6機能残存レベルは、上部体幹筋が機能する。立位・歩行練習には上肢支持と骨盤帯付長下肢装具が必要である。
3.〇 正しい。Th12機能残存レベルで設問の図のように歩行できる。Th12機能残存レベルは、下部体幹筋が機能する。したがって、立位・歩行練習には長下肢装具と両手支持が必要である。
4.× L4機能残存レベルは、大腿四頭筋が機能し、多少弱いが前脛骨筋も機能する。立位・歩行練習には、短下肢装具と何らかの杖(ロフストランドクラッチ)による歩行が可能となる。
5.× S1機能残存レベルは、下肢装具は不要となり歩行は自立する。

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8 52歳の女性。踏み台から転落して左踵骨骨折を受傷し、手術が行われた。術後翌日の単純エックス線写真を下に示す。
 この患者に対する運動療法で正しいのはどれか。

1.術後翌日から距腿関節の可動域練習を行う。
2.術後翌日から膝関節の可動域練習を行う。
3.術後翌日から部分荷重を始める。
4.術後1週から外固定内での距踵関節の等尺性運動を行う。
5.術後2週からMP関節の可動域練習を行う。

解答

解説

踵骨骨折とは?

踵骨骨折は足根骨骨折の中で最も頻度が高く、受傷機転の多くは高所からの転落による高エネルギー直達外力である。踵骨骨折のうち関節内骨折は65〜75%を占めるとされる。踵骨の大部分は海綿骨であり骨癒合は良好とされる。その反面、骨萎縮や可動域制限による疼痛などの機能障害が残存しやすい病態であり、適切な時期に的殺な治療を行うことが予後を大きく左右するとされる。

機序:ほとんどは下肢からの墜落で起こる。
骨折の種類:圧迫骨折
重症化:距踵関節面が保たれない。
治療:ほとんどは徒手整復と保存。アキレス腱付着部の裂離骨折であれば手術。
リハビリ:踵免荷のための免荷装具を作成・利用して徐々に荷重を開始する。
予後:骨折は治癒しても、内・外反に加え扁平足になり、関節面にも変形を来たす。

【術後のプロトコル】
全例術後8週免荷
術翌日から:足趾・足関節自他動運動を開始。
腫脹軽減後:踵部免荷装具を作製し、装具装着下での歩行練習を開始としている。
術後8週:足底板へ変更し1/3荷重を開始。
2週ごと:1/3荷重ずつ荷重量を増加。
術後12週で全荷重開始。

1.× 術後翌日から距腿関節の可動域練習を行う優先度は低い。なぜなら、術後翌日はまだ炎症が強い時期でもあるため。また、距腿関節の可動域練習を行うと、下腿三頭筋の伸張がアキレス腱を介して踵骨に牽引ストレスを生じる可能性がある。上記の【術後のプロトコル】には、術翌日から、足趾・足関節自他動運動を開始して良いとあるが、炎症状態を観察し、他の部位(膝関節)から可動域練習を行うことが多い。
2.〇 正しい。術後翌日から膝関節の可動域練習を行う。膝関節の可動域練習により、二関節筋である腓腹筋の緊張の低下にも寄与する。
3.× 部分荷重を始めるのは、術後翌日からではなく「術後8週目」あたりである。術後翌日から部分荷重を始めると、踵骨への圧迫ストレスとなり再骨折のリスクとなる。
4.× 術後1週から、外固定内での距踵関節(距骨下関節)の等尺性運動を行う必要はない。距骨下関節は、複数の関節面を有す回旋軸を中心とした平面関節である。荷重下では回旋軸運動以外での可動性が少ないのが特徴で、この関節の当尺性運動は困難である。距踵関節(距骨下関節)ではなく、「距腿関節」の等尺性運動を行う。
5.× MP関節の可動域練習を行うのは、術後2週からではなく「術後翌日から」の開始が望ましい。なぜなら、患部外であるため。

 

 

 

 

 

9 18歳の女子。動作時の足底部の痛みを訴えた。足底腱膜炎の診断で超音波治療を行う。
 正しいのはどれか。(※不適切問題:解2つ)

1.周波数を10MHzとする。
2.照射強度を10W/cm2とする。
3.照射時間率を40%照射とする。
4.疼痛を訴える場合は照射強度を下げる。
5.プローブを5cm以上、皮膚から離して行う。

解答3・4(複数の選択肢を正解として採点する。
理由:複数の正解があるため。

解説
1.× 周波数は、10MHzではなく「3MHz」とする。周波数は深達度に影響する。超音波治療の周波数は1MHzと3MHzに分けられる。3MHzより1MHzの方が深く伝わる。皮膚表面から2cmは3MHzを使用し、2~5cmには1MHzを使用する。
2.× 照射強度は、10W/cm2ではなく「0.5〜2.5W/cm2」する。非温熱作用:0.5~1.0W/cm2、温熱効果強度は1.0~2.5W/cm2である。
3.〇 正しい。照射時間率(デューティ比)を40%照射とする。照射時間率(デューティ比)とは、照射している時間と照射してない時間の割合を示すものをいう。照射時間率を変更させることにより治療の種類が変わる。一般的に照射時間率100%を「連続」と言い、温熱効果を見込め、照射時間率が5~50%の場合は「パルス(間欠)」と言い、非熱効果(機械的効果)が得られる。つまり、温熱効果を目的とする場合には照射時間率100%を選択する。
4.〇 正しい。疼痛を訴える場合は照射強度を下げる。患者の主観的強度を聴取し、調整する必要がある。非温熱作用:0.5~1.0W/cm2、温熱効果強度は1.0~2.5W/cm2である。
5.× プローブを5cm以上、皮膚から離して行うではなく「皮膚に沿って」照射する。水中法を用いる場合、患部と導子の距離は0.5~1cm程度離して照射する。

 

 

 

 

10 右側の靴型装具の補正と効果の組合せで正しいのはどれか。

1.①:前足部の回内防止
2.②:踏み返しの改善
3.③:足部横アーチの支持性増強
4.④:中足骨骨頭の免荷
5.⑤:接踵時の衝撃吸収

解答

解説
1.× ①内側フレアヒールは、前足部の回内防止ではなく「後足部の回内防止(外反足)」に用いられる。
2.× ②Thomasヒール(トーマスヒール)は、踏み返しの改善ではなく「外反扁平足(初期接地から立脚中期にかけての後足部外反不安定性に対する補正)」に用いられる。ちなみに、踏み返しとは、ウィンドラス機構が起こりそれが戻る際に、復元力として前に進むための推進力を生み出す働きをするものである。つまり、バネのような働きである。ウィンドラス機構とは、中足指節関節伸展に伴う足底腱膜の巻き上げにより内側縦アーチが緊張し、足部の剛性が高まる現象である。
3.× ③内側ソールウェッジは、足部横アーチの支持性増強ではなく「足部縦アーチの支持性増強(外反足)」に用いられる。
4.〇 正しい。④メタタルザルバー(メタタルザルパット)は、中足骨骨頭の免荷(開張足)に用いられる。
5.× ⑤ロッカーバーは、接踵時の衝撃吸収ではなく、「中足骨頭部痛(中足骨骨頭の免荷)」に用いられる。踏み返しの確保もしくは踏み返し時の不安定な関節を支持する目的とした補正に用いられる。

 

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