第57回(R4) 理学療法士国家試験 解説【午前問題46~50】

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46 運動療法を中止する状態として誤っているのはどれか。

1.胸痛の出現
2.チアノーゼ
3.単発性心室期外収縮
4.端鳴による呼吸困難感
5.胸部不快感を伴う心室頻拍

解答

解説
1〜2/4〜5.〇 正しい。胸痛の出現/チアノーゼ/端鳴による呼吸困難感/胸部不快感を伴う心室頻拍は、運動療法を中止する状態である。
3.× 単発性心室期外収縮は、運動療法を中止する状態とはいえない。単発性心室期外収縮は、極めて頻繁に起こらないかぎり、心臓のポンプ機能にほとんど影響を及ぼさず、通常は症状を引き起こすことはない。主な症状は、強い心拍や脈の飛びを感じること(動悸)である。心疾患がない人は、心室期外収縮は危険ではない。しかし、心臓弁膜症や心臓発作など、心臓に構造的な病気がある人で心室期外収縮が頻繁に起きると、心室頻拍や心室細動などの危険な不整脈が続いて発生することがあり、それにより突然死に至る可能性もあるため注意が必要である。

リハビリテーションの中止基準

1. 積極的なリハを実施しない場合
[1] 安静時脈拍 40/分以下または 120/分以上
[2] 安静時収縮期血圧 70mmHg 以下または 200mmHg 以上
[3] 安静時拡張期血圧 120mmHg 以上
[4] 労作性狭心症の方
[5] 心房細動のある方で著しい徐脈または頻脈がある場合
[6] 心筋梗塞発症直後で循環動態が不良な場合
[7] 著しい不整脈がある場合
[8] 安静時胸痛がある場合
[9] リハ実施前にすでに動悸・息切れ・胸痛のある場合
[10] 座位でめまい,冷や汗,嘔気などがある場合
[11] 安静時体温が 38 度以上
[12] 安静時酸素飽和度(SpO2)90%以下

2. 途中でリハを中止する場合
[1] 中等度以上の呼吸困難,めまい,嘔気,狭心痛,頭痛,強い疲労感などが出現した場合
[2] 脈拍が 140/分を超えた場合
[3] 運動時収縮期血圧が 40mmHg 以上,または拡張期血圧が 20mmHg 以上上昇した場合
[4] 頻呼吸(30 回/分以上),息切れが出現した場合
[5] 運動により不整脈が増加した場合
[6] 徐脈が出現した場合
[7] 意識状態の悪化

3. いったんリハを中止し,回復を待って再開
[1] 脈拍数が運動前の 30%を超えた場合。ただし,2 分間の安静で 10%以下に戻らないときは以後のリハを中止するか,または極めて軽労作のものに切り替える
[2] 脈拍が 120/分を越えた場合
[3] 1 分間 10 回以上の期外収縮が出現した場合
[4] 軽い動悸,息切れが出現した場合

 

 

 

 

 

47 慢性腎臓病で正しいのはどれか。

1.若年者に多い。
2.血清クレアチニンは筋量に影響を受ける。
3.蛋白尿の評価には随時尿のみ用いられる。
4.レジスタンストレーニングは禁忌である。
5.推算糸球体濾過量〈eGFR〉は4つの段階に分類される。

解答

解説

慢性腎不全(CKD)とは?

 慢性腎不全(慢性腎臓病とも)は、腎臓の濾過機能が数ヶ月〜数年をかけて徐々に低下していく病気である。その結果血液の酸性度が高くなり、貧血が起き、神経が傷つき、骨の組織が劣化し、動脈硬化のリスクが高くなる。その原因として最も多いのは糖尿病で、次に多いのは高血圧である。尿や血液、腹部超音波検査やCTなどの検査で腎臓機能に異常が見られ、その状態が3カ月以上続いている場合に診断される。

慢性腎不全(CKD)に対する治療は、①生活習慣の改善、②食事療法が重要である。
①生活習慣の改善:禁煙・大量飲酒の回避・定期的な運動・ワクチン接種による感染症の予防・癌スクリーニングなど。
②食事療法:十分なエネルギー摂取量を確保しつつ、蛋白質・塩分・リンの制限。

1.× 若年者ではなく「加齢とともに」に多い。なぜなら、慢性腎臓病は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病や慢性腎炎、加齢などのさまざまな原因で腎臓の機能が低下してしまった状態であるため。
2.〇 正しい。血清クレアチニンは筋量に影響を受ける。血清クレアチニン(Cr)は、筋肉に含まれているタンパク質の老廃物である。本来は、尿素窒素と同様に腎臓の糸球体で濾過され尿中に排泄されるが、腎臓の機能が低下すると尿中に排泄される量が減少し、血液中にクレアチニンが溜まる。腎臓の機能の低下とともに、血清クレアチニンの値は高くなる
3.× 蛋白尿の評価には、随時尿のみではなく「一日蓄尿(24時間蓄尿)」も用いられる。つまり、尿蛋白は、一日蓄尿にて判断するが、随時尿でも算出できる。随時尿とは、任意の時間に採取した尿のことである。患者さんに時間的な制約がなく検査できる。一方、一日蓄尿(24時間蓄尿)とは、一日蓄尿(24時間蓄尿)に出る尿すべてを貯めておいたものである。昼夜や食事の影響を受ける成分の尿中排出量を正確に測定するために用いられる。蛋白尿は、過激な運動や発熱、ストレスなどでも数値に変化が生まれる為、随時尿ではなく持続性に認められる場合に病的意義がある。
4.× レジスタンストレーニングは禁忌とはいえない。むしろ、有酸素運動とレジスタンストレーニングを取り入れることで血糖値や血圧の改善の効果が上がり、慢性腎臓病の悪化の予防、改善にも繋がる。
5.× 推算糸球体濾過量〈eGFR〉は、4つの段階ではなく「5つの段階」に分類される。推算糸球体濾過量〈eGFR〉は、①正常(G1:90以上)、②軽度低下(G2:60〜89)、③中等度低下(G3a:45〜59、G3b:30〜44)、④高度低下(G4:15〜29)、⑤末期腎不全(G5:15以下)に分類される。推算糸球体濾過量〈eGFR〉は、腎臓にどれくらい老廃物を尿へ排泄する能力があるかを示しており、この値が低いほど腎臓の働きが悪いということになる。

 

 

 

 

48 認知症患者の運動療法を行うときの対応として適切でないのはどれか。

1.肯定語で指示する。
2.患者のペースに合わせる。
3.同じ動作を繰り返し実施する。
4.運動を拒否しても説得して行う。
5.日常慣れ親しんだ動作を利用する。

解答

解説

1.〇 正しい。肯定語で指示する。肯定とは、一般に、同意すること、価値があると判断することに加え、そのとおりだと判断し認めることである。肯定語の対義語は、「否定語」である。認知症患者に限らず、「緊張しないでください」と否定語で指示されるより、「あなたらしく楽しんできてください」と肯定語で指示されたほうが安心感を与えることができる。
2.〇 正しい。患者のペースに合わせる。なぜなら、認知症患者は、理解するまでに時間がかかるため。患者一人ひとりに患者のペースがある。
3.〇 正しい。同じ動作を繰り返し実施する。なぜなら、反復することで動作の定着を狙えるため。
4.× 運動を拒否しても説得して行う必要はない。なぜなら、説得とは、「よく話して、わからせること。説き伏せること」である。論理的な説得よりも「説明」し選択権は認知症患者に委ねることが望ましい。
5.〇 正しい。日常慣れ親しんだ動作を利用する。なぜなら、認知症患者は、新しいことを覚えにくいため。

 

 

 

 

 

49 介護保険制度について正しいのはどれか。

1.利用者はケアプランの作成にかかる費用の1割を負担する。
2.要支援者は介護予防サービスを受けることができる。
3.医療保険加入者は20歳から介護保険料を支払う。
4.要支援者は施設サービスを利用できる。
5.保険者は厚生労働省である。

解答

解説

1.× 利用者はケアプランの作成にかかる費用の「1割を負担する」のではなく「負担はない」。ケアプランを作成する際には、利用者にかかる自己負担はないが、実際にはケアマネ―ジャーに対して介護保険の保険者から「居宅介護支援」という、ケアマネジメント費として約1万円が支払われている。ただ、ケアプラン作成は、被保険者自らが作成することも可能である。
2.〇 正しい。要支援者は、介護予防サービスを受けることができる。介護予防サービスは住み慣れた地域環境で自立した生活を継続していけるように支援するサービスの1つである。サービスを受けられる対象は基本的に自立した生活のできる要支援1、2の方である。
3.× 医療保険加入者は、20歳から介護保険料を支払う必要はない。40歳~64歳までの健康保険の加入者は、健康保険料と一緒に介護保険料を納める。介護保険制度における被保険者は、65歳以上の「第1号被保険者」と、40~64歳までの「第2号被保険者」とに大別される。
4.× 要支援者は、施設サービスを利用できない。施設サービスを利用できるのは、要支援者ではなく「要介護者」である。施設サービスは、「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」「介護医療院」に入所した要介護状態にある高齢者に対して提供されるサービスである。
5.× 保険者は、厚生労働省ではなく「市町村と特別区(広域連合を設置している場合は広域連合)」である。

 

 

 

 

50 疾患と支援機器の組合せで適切なのはどれか。

1.関節リウマチ:台付き爪切り
2.片側手関節離断:プルトップオープナー
3.第2腰髄完全損傷:スライディングボード
4.第8頸髄完全損傷:コミュニケーションエイド
5.アテトーゼ型脳性麻痺:リーチャー

解答

解説

1.〇 正しい。台付き爪切りは、関節リウマチに適応となる。台付き爪切りは、関節リウマチによる手指変形の場合や、両側上肢の切断などの患者、握力低下時でも弱い力で切れる爪切りである。手指の負担をかけず、手掌や踵を用い押すことで爪を切ることが可能である。
2.× プルトップオープナーは、片側手関節離断ではなく「関節リウマチ」に適応となる。プルトップオープナーとは、ビンの蓋や缶のプルトップ、ペットボトルのキャップなどが楽に開けられるオープナーである。把持動作を必要とする。ちなみに、片側上肢の切断で必要となるのは、ボトルオープナーである。
3.× スライディングボードは、第2腰髄完全損傷ではなく「座位保持可能で立位困難」な場合に用いることが多い。スライディングボードは、座った姿勢を保持したままベッドから車椅子に移乗するための福祉用具である。介助者は少ない力で無理なく介助できる。第2腰髄完全損傷は、スライディングボードを使用せずに移乗可能である。第6頸髄機能残存レベルでは、基本的に前方移乗で行った方が安全に遂行できるが、側方移乗でもトランスファーボードを使用すれば可能である。
4.× コミュニケーションエイド(意思の伝達)は、第8頸髄完全損傷ではなく「発語や発声困難」な場合に用いることが多い。コミュニケーションエイド(意思の伝達)とは、電話に文字変換装置、パソコン通信などに音声変換装置、椅子に文字盤をつけるなど機能補助をした福祉機器を指す。発語や発声が難しい方の為に文字やシンボルを選んで、合成音声で会話したり、画面に文章を打って意思を伝えたりする道具である。第8頸髄完全損傷の場合、上肢運動までが可能であることが考えられ、発話や発声に問題が起きない
5.× リーチャーは、アテトーゼ型脳性麻痺ではなく、脱臼の恐れのある人工股関節や車いす患者が、床のものや遠くのものを拾ったり操作したりするときに使用する。アテトーゼ型は、麻痺の程度に関係なく四肢麻痺であるが上肢に麻痺が強い特徴を持つ。錐体外路障害により動揺性の筋緊張を示す。筋緊張は低緊張と過緊張のどちらにも変化する。他にも、特徴として不随意運動が主体であることや、原始反射・姿勢反射が残存しやすいことがあげられる。アテトーゼ型脳性麻痺には、不随意運動も伴うことからリーチャーの操作は困難である。

 

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