第57回(R4) 理学療法士国家試験 解説【午前問題36~40】

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36 高齢者において好ましい変化はどれか。

解答

解説

1.× BMI<body mass index>が低下することは、高齢者の好ましい変化とはいえない。BMIは、体重÷(身長m×身長m)で求められる。18.5未満から「やせ」と診断され、BMI低下は筋肉量や骨密度低下の可能性も考えられる。
2.〇 正しい。FBS(数)が低下することは、高齢者の好ましい変化である。なぜなら、得点が高いほどバランス機能良好であるため。FBS(functional balance scale)は、バランス能力の低下を発見するスクリーニング検査である。14項目について、0~4点の5段階で評価する。つまり、56点満点である。一般的には、Berg Balance Scale(BBS)を指す。
3.× TUG(秒)が低下することは、高齢者の好ましい変化とはいえない。TUG(Timed Up and Go Test)は、椅子から3m離れたところにコーンなどを置き、被検者が椅子から立ち上がりコーンを回って戻り再び椅子に座るまでの時間を測定する。転倒予測(運動器不安定症)のカットオフは、11秒程度である。TUGの時間は、延長すればするほど、転倒のリスクが高まる。
4.× MMSE(点)が低下することは、高齢者の好ましい変化とはいえない。MMSE(Mini Mental State Examination)は11項目から構成される30点満点の認知機能検査であり、点数の高い方が認知機能は高いことを指す。見当識、記銘力、注意と計算、 想起、言語、組み立ての各項目がある。30点満点のうち、26点以下で軽度認知隊害の疑い、23点以下では認知障害の可能性が高いことを示す。
5.× 基本チェックリスト数(該当数)が増加することは、高齢者の好ましい変化とはいえない。基本チェックリストとは、高齢者が自分の生活や健康状態を振り返り、全25項目の質問で構成される自己チェックツールである。チェック項目が少ない方が生活機能は高いことを指す。

 

 

 

 

 

37 感染予防の標準予防策〈standard precautions〉について正しいのはどれか。

1.感染症患者のみに対して日常的に実施されるべき感染対策である。
2.歩行練習中に患者が出血した場合は手袋をして対処する。
3.屋外での歩行練習では感染予防対策は不要である。
4.血圧測定を行う前の手指衛生は不要である。
5.マスクはN95を使用する。

解答

解説

標準予防策とは?

標準予防策(standard precaution)とは、院内感染の防止策として推奨されている方法であり、感染の有無に関わらず入院患者すべてに適用される予防対策であり、患者の血液や体液、分泌、排泄されるすべての湿性物質、粘膜、創傷の皮膚は感染のおそれがあるとみなして、対応、行動する方法である。

1.× 「感染症患者のみ」ではなく、「感染の有無に関わらず入院患者すべて」に対して日常的に実施されるべき感染対策である。標準予防策(standard precaution)とは、院内感染の防止策として推奨されている方法であり、感染の有無に関わらず入院患者すべてに適用される予防対策である。
2.〇 正しい。歩行練習中に患者が出血した場合は手袋をして対処する。患者の血液や体液、分泌、排泄されるすべての湿性物質、粘膜、創傷の皮膚は感染のおそれがあるとみなして、対応、行動する必要がある。
3.× 屋外での歩行練習では感染予防対策でも「不要」ではなく「必要」である。なぜなら、標準予防策(standard precaution)とは、院内感染の防止策として推奨されている方法であり、感染の有無に関わらず入院患者すべてに適用される予防対策であるため。入院患者であれば、屋内・外の条件はない。
4.× 血圧測定を行う前の手指衛生も「不要」ではなく「必要」である。患者と医療従事者双方における医療関連感染の危険性を減少させるために標準的に講じる感染対策である。つまり、患者に直接接触する前 (入室前・診察前、検温や血圧測定など)に手指衛生(手洗いや手袋)は必要となる。
5.× マスクはN95を使用する必要はない。なぜなら、N95マスクは空気感染源を捕集し、空気感染リスクを低下させるマスクであるため。ちなみに、感染経路が空気感染なのは、「麻疹・水痘・結核」である。また、患者の排出物中に結核菌が認められるものへの対応の際は、「N95マスク」を着用する。また、痰や排出物に触れる際には予防衣(ガウン・手袋など)が必要である。

 

 

 

 

38 装具と疾患の組合せで正しいのはどれか。

1.Jewett型装具:橈骨神経麻痺
2.Milwaukee装具:先天性股関節脱臼
3.Oppenheimer型装具:胸椎圧迫骨折
4.Riemenbügel(リーメンビューゲル)装具:側弯症
5.SOMI装具:頸椎環軸骨折

解答

解説

1.× Jewett型装具(ジュエット型装具)は、橈骨神経麻痺ではなく「椎体圧迫骨折や円背など」に適応となる。体幹前屈を制限する。脊柱病変に対して固定性を高める装具となる。ちなみに、橈骨神経麻痺は選択肢3.Oppenheimer型装具が適応となる。
2.× Milwaukee装具(ミルウォーキー型装具)は、先天性股関節脱臼ではなく「側弯症」に適応となる。ちなみに、先天性股関節脱臼は、選択肢4.Riemenbügel(リーメンビューゲル)装具が適応となる。
3.× Oppenheimer型装具(オッペンハイマー型装具)は、胸椎圧迫骨折ではなく「橈骨神経麻痺(下垂手)」に適応となる。軽度背屈位にして安定保持する装具である。ちなみに、胸椎圧迫骨折は、選択肢1.Jewett型装具が適応となる。
4.× Riemenbügel(リーメンビューゲル)装具は、側弯症ではなく「先天性(発育性)股関節脱臼の患児」に適応となる。先天性股関節脱臼の患児の足を固定し、脱臼状態を治療する装具である。ちなみに、側弯症は選択肢2.Milwaukee装具が適応となる。
5.〇 正しい。SOMI装具(sternal occipital mandibular immobilizer装具)は、頸椎環軸骨折に適応となる。名称通り、胸骨・後頭骨・下顎で3点固定するため、頸椎の可動性が強く制限される。頚部外傷後の固定や、頚椎椎間板ヘルニア術後などで用いられる。

 

 

 

 

 

39 環椎骨折(Jefferson骨折)に対する運動療法で正しいのはどれか。

1.頸椎の可動性が得られてから頸椎周囲筋の等張性筋力増強練習を行う。
2.頸椎の関節可動域運動は他動運動から開始する。
3.骨癒合が得られてから歩行練習を開始する。
4.骨癒合が得られるまで体幹筋力運動は行わない。
5.受傷直後から装具は使用せず立位練習を行う。

解答

解説

環椎骨折(Jefferson骨折)とは?

環椎骨折(Jefferson骨折)とは、第一頸椎(環椎)の前弓・後弓の破裂骨折(椎体の前方の壁だけではなく、後方の壁も割れる骨折で、脊髄症状を生じる骨折)を指す。環椎骨折(Jefferson骨折)の治療は、主に装具を用いた保存療法が選択される。不安定性が強く早期の場合は手術が選択されることもあるが稀である。環椎は可動性が高く、周囲に神経・血管が通っている特徴がある。

1.〇 正しい。頸椎の可動性が得られてから頸椎周囲筋の等張性筋力増強練習を行う。頸椎周囲筋に対して等張性筋力増強練習を行うことで、関節運動が伴わず頸部周囲を安定させることができる。最も安全に運動療法を提供できる。
2.× 頸椎の関節可動域運動は、他動運動から開始するのは危険性が高い。他動運動から開始する関節可動域運動は、腱板断裂の手術後など筋の収縮に伴い再断裂の恐れがある場合である。環椎骨折(Jefferson骨折)の治療は、保存療法が中心であり頸椎の関節可動域運動は原則行わないことが多い。
3.× 骨癒合が得られてから歩行練習を開始する必要はない。なぜなら、骨癒合までの期間は、細い骨では骨折後約3週間、太い骨では約3か月と長く、その期間で廃用が進む可能性が高いため。もちろん、臨床の場面で、主治医より歩行訓練の許可が早期から出てから歩行練習を開始する。
4.× 骨癒合が得られる前から、体幹筋力運動を実施する。なぜなら、骨癒合までの期間は、細い骨では骨折後約3週間、太い骨では約3か月と長く、その期間で廃用が進む可能性が高いため。また、体幹筋力運動は頸部に負荷をかけず訓練として実施できる。心配であれば、主治医より許可をもらうよう担当PTは働きかける。
5.× 受傷直後から装具は使用せず、立位練習を行う必要はない。環椎骨折(Jefferson骨折)の治療は、主に装具を用いた保存療法が選択される。受傷直後より装具は着用が必要となる。不安定性が強く早期の場合は手術が選択されることもあるが稀である。心配であれば、主治医より許可をもらうよう担当PTは働きかける。

 

 

 

 

40 脳卒中後のPusher現象について誤っているのはどれか。

1.右半球損傷に多い。
2.垂直判断の障害が関係する。
3.身体軸が非麻痺側に傾斜する。
4.座位だけでなく立位でも認められる。
5.端座位で体幹を正中位に近づけると非麻痺側の股関節が外旋する。

解答

解説

pusher現象(プッシャー現象)とは?

pusher現象(プッシャー現象)とは、脳血管疾患後に生じる姿勢異常の一種である。座位や立位で姿勢を保持させたときに、非麻痺側上肢・下肢で麻痺側へ押し、身体が麻痺側に傾き、他者が修正しようとしても抵抗してしまう現象をいう。右半球損傷に多い。

1.〇 正しい。右半球損傷に多い。
2.〇 正しい。垂直判断の障害が関係する。pusher現象は、①垂直に対する体性感覚の障害と②無傷の視覚システムとの間でエラーが生じる結果といわれている。
3.× 身体軸が非麻痺側ではなく「麻痺側」に傾斜する。麻痺側に身体軸が傾斜することでpushingが生じる。
4.〇 正しい。座位だけでなく立位でも認められる。pusher現象は、①垂直に対する体性感覚の障害と②無傷の視覚システムとの間でエラーが生じる結果といわれているため、姿勢の変化に関わらずみられる。
5.〇 正しい。端座位で体幹を正中位に近づけると非麻痺側の股関節が外旋する。端座位で正中位に近づいた時、非麻痺側下肢で麻痺側へ押し返そうと働く。麻痺側へ傾くために非麻痺側下肢は股関節外旋する必要がある。

 

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