第57回(R4) 理学療法士国家試験 解説【午前問題31~35】

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31 右大腿骨頭すべり症によりDrehmann〈ドレーマン〉徴候陽性の場合、背臥位で右下肢を他動的に屈曲したときに生ずる関節運動で正しいのはどれか。

1.左股関節が屈曲・外旋する。
2.左股関節が内転・外旋する。
3.右股関節が外転・外旋する。
4.右股関節が外転・内旋する。
5.右股関節が内転・内旋する。

解答

解説

Drehmann徴候とは?

大腿骨頭すべり症でみられる特徴的な徴候として、Drehmann徴候(ドレーマン徴候:股関節を他動的に屈曲すると外転・外旋する)がみられる。

3.〇 正しい。股関節が外転外旋する。Drehmann〈ドレーマン〉徴候とは、大腿骨頭すべり症を発症した際、股関節屈曲を行うと開排して患肢の大腿前面を腹につけられない状態のことをいう。
1~2.4~5.× 股関節が屈曲・外旋する/股関節が内転・外旋する/右股関節が外転・内旋する/右股関節が内転内旋することはない。

 

 

 

 

 

32 上腕骨骨幹部骨折で最も合併しやすい神経障害はどれか。

1.腋窩神経
2.筋皮神経
3.尺骨神経
4.正中神経
5.橈骨神経

解答

解説

1.× 腋窩神経は、肩関節前方脱臼で起こりやすい。
2.× 筋皮神経は、肩関節脱臼や上肢の外転外旋で側副から分かれた部位で圧迫、または牽引されることにより起こりやすい。
3.× 尺骨神経は、肘部管症候群やGuyo管症候群(ギヨン菅症候群)で起こりやすい。また、上腕骨外顆骨折後は、外反肘変形が進行し、尺骨神経が相対的に伸びストレスがかかり、結果的に遅発性尺骨神経麻痺を起こりやすい。
4.× 正中神経は、橈骨遠位端骨折で起こりやすい。ちなみに、正中神経障害/橈骨神経は、上腕骨顆上骨折後に伴いやすい。
5.〇 正しい。橈骨神経は、上腕骨骨幹部骨折で最も合併しやすい。

 

 

 

 

33 NIHSSで評価されるのはどれか。2つ選べ。

1.バランス障害
2.深部腱反射
3.意識障害
4.顔面麻痺
5.歩行速度

解答3・4

解説

NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)とは?

NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)とは、脳卒中神経学的重症度の評価スケールとして世界的に利用されている。ベッドサイドでできる簡便な評価法の1つである。検査項目は、意識水準、意識障害(質問・従命)、最良の注視、視野、顔面麻痺、上肢の運動左右、下肢の運動左右、運動失調、感覚、最良の言語、構音障害、消去現象と注意障害を0点から2~4で評価する。0点が正常で、点数が高いほど重症である。

1~2,5.× バランス障害/歩行速度は含まない
3~4.〇 正しい。意識障害/顔面麻痺は、NIHSSで評価される。NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)とは、脳卒中神経学的重症度の評価スケールとして世界的に利用されている。ベッドサイドでできる簡便な評価法の1つである。検査項目は、意識水準、意識障害(質問・従命)、最良の注視、視野、顔面麻痺、上肢の運動左右、下肢の運動左右、運動失調、感覚、最良の言語、構音障害、消去現象と注意障害を0点から2~4で評価する。0点が正常で、点数が高いほど重症である。

 

 

 

 

 

34 脊髄小脳変性症で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.Frenkel体操は無効である。
2.視覚障害を伴うことが多い。
3.包括的な評価指標にSARAがある。
4.患者数は非遺伝性に比べて遺伝性が多い。
5.自律神経障害は非遺伝性に比べて遺伝性が少ない。

解答3・5

解説

”脊髄小脳変性症とは?多系統萎縮症とは?”

脊髄小脳変性症とは、運動失調を主症状とし、原因が、感染症、中毒、腫瘍、栄養素の欠乏、奇形、血管障害、自己免疫性疾患等によらない疾患の総称である。遺伝性と孤発性に大別され、①純粋小脳型(小脳症状のみが目立つ)と、②多系統障害型(小脳以外の症状が目立つ)に大別される。脊髄小脳変性症の割合として、孤発性(67.2%)、常染色体優性遺伝性(27%)、が常染色体劣性遺伝性(1.8%)であった。孤発性のものの大多数は多系統萎縮症である。(※参考:「18 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く。)」厚生労働省様HPより)

多系統萎縮症とは、成年期(多くは40歳以降)に発症し、進行性の細胞変性脱落をきたす疾患である。①オリーブ橋小脳萎縮症(初発から病初期の症候が小脳性運動失調)、②線条体黒質変性症(初発から病初期の症候がパーキンソニズム)、シャイ・ドレーカー症候群(初発から病初期の症候が自律神経障害であるもの)と称されてきた。いずれも進行するとこれら三大症候は重複してくること、画像診断でも脳幹と小脳の萎縮や線条体の異常等の所見が認められ、かつ組織病理も共通していることから多系統萎縮症と総称されるようになった。(※参考:「17 多系統萎縮症」厚生労働省様HPより)

1.× Frenkel体操は、「無効」であると断言できず、むしろ治療として用いられることもある。Frenkel体操は主に、脊髄障害に対する協調運動改善のための理学療法である(小脳性協調障害にも使用されることもある)。脊髄性運動失調など固有感覚低下による協調運動障害においては、視覚代償などを用い、はじめはゆっくり正確に運動を行い、徐々にスピードを速めていくことが一般的である。
2.× 視覚障害は伴わない。脊髄小脳変性症の主な症状として、①自律神経症状、②小脳失調、③パーキンソニズムである。ちなみに、視覚障害は、多発性硬化症(MSにみられ球後視神経炎を初発症状として呈することが多い。
3.〇 正しい。包括的な評価指標にSARAがある。SARA(scale for the assessment and rating of Ataxia)は、脊髄小脳変性による失調症の定量的な評価法である。全8項目(歩行、立位、座位、言語障害、指追い試験、鼻指試験、手の回内・回外運動、踵脛試験)の評価セットである。四肢の運動失調の他、歩行障害、構音障害、眼球運動障害を簡便に評価できる。
4.× である。患者数は遺伝性に比べて非遺伝性が多い。脊髄小脳変性症の約2/3の方が非遺伝性である。
5.〇 正しい。自律神経障害は非遺伝性に比べて遺伝性が少ない。脊髄小脳変性症の主な症状として、①自律神経症状、②小脳失調、③パーキンソニズムである。選択肢4.でも述べたように、患者数は遺伝性に比べて非遺伝性が多い。脊髄小脳変性症の約2/3の方が非遺伝性である。

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【PT】脊髄小脳変性症についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

35 認知症のスクリーニング検査はどれか。

1.Frenchay Activities Index
2.Fugl-Meyer Assessment
3.MMSE
4.Rorschach Test
5.WAIS-Ⅲ

解答

解説

1.× Frenchay Activities Index(FAI)は、手段的ADLに該当する15項目の活動内容(①食事の用意、②食事の後片付け、③洗濯、④掃除や整頓、⑤力仕事、⑥買い物、⑦外出、⑧屋外歩行、⑨趣味、⑩交通手段の利用、⑪旅行、⑫庭仕事、⑬家や車の手入れ、⑭読書、⑮仕事)における活動性の評価方法である。FAT原法では、3~6カ月の活動頻度を面接調査により0~3点に点数化し、45点を満点とした評価を行う。
2.× Fugl-Meyer Assessment(FMA)は、片麻痺患者の身体機能の回復についての評価である。上肢・手指・下肢の運動機能やバランス、感覚などを226点満点で評価する。上肢運動機能66点、下肢運動機能34点、バランス14点、感覚24点、可動域・疼痛88点からなる。(読み方:フーゲル メイヤー アセスメント) 
3.〇 正しい。MMSE(Mini-Mental State Examination)は、認知障害(認知症・せん妄・健忘性障害)のスクリーニングとして国際的によく用いられている検査である。内容は、見当識・記銘力・注意と計算・想起・言語・組み立ての各項目があり、30点満点で評価する。26点以下で軽度認知障害の疑いを示し、23点以下では認知障害の可能性が高いことを示す。
4.× Rorschach Test(ロールシャッハ・テスト)は、投影法による性格検査の一つである。10枚の図版を被験者に見せて、どのように見えるか答えさせ、そこから患者の知的側面と人格面を調べる。被験者にインクのしみを見せて何を想像するかを述べてもらい、その言語表現を分析することによって被験者の思考過程やその障害を推定するものである。
5.× WAIS-Ⅲ(Wechsler Adult Intelligence ScaleⅢ:ウェクスラー成人知能検査・改訂版)は、記憶の包括的検査であり、知能の個人内差の診断が可能な成人用個別式検査である。高次脳機能障害の評価として用いられる神経心理学的検査において、①動作性検査(絵画完成、符号、積木模様、行列推理、絵画配列、記号探し、組み合わせ)と②言語性検査(単語、類似、算数、数唱、知識、理解、語音整列)の14項目で構成される検査である。適応年齢16歳0ヶ月~89歳 11 か月の偏差IQ(知能指数)を求めることができる。

WAIS-Ⅲとは?

WAIS-Ⅲ(Wechsler Adult Intelligence Scale:ウェクスラー成人知能検査)とは、成人用のウェクスラー知能検査WAISの改訂第3版のことである。質問やイラスト、積み木などの検査キットを用いて、「言語性IQ」「動作性IQ」に加え、「言語理解」「知覚統合」「作動記憶」「処理速度」の4つの指標が得られる。

IQとは、「同世代の集団において、どの程度の知的発達の水準にあるか」を表した数値である。平均値は100であり、点数が平均より高ければIQは100以上になり、点数が平均より低ければIQは100以下となる。79~70以上は「境界域」といい、69以下は「知的障害」と分類される。

 

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