第55回(R2) 作業療法士国家試験 解説【午後問題46~50】

 

46 心理的な外傷体験後の早期介入法として適切なのはどれか。

1. デブリーフィング
2. 心理的応急処置
3. 集団精神療法
4. 生活技能訓練
5. 精神分析療法

解答2

解説
1.× デブリーフィングは、外傷を体験した人が自分の体験と現在の症状を語り、起こっている反応が外傷後では当然の反応であると認識して、回復を促す方法である。外傷後2~3日後から始められるが、最早期の介入法ではない。
2.〇 正しい。心理的応急処置は、心理的な外傷体験後の早期介入法として適切である。選択肢の中で最早期の介入法である。心理的応急処置は、災害などが起こった直後から被災者に提供されるものである。被災者から必要なことやものを聞いたりして心理的動揺を早期に抑えることを目的とする。
3.× 集団精神療法は、参加者同士の相互作用から各自の問題点を明らかにして治療を促進しようとするものである。回復期ごろに行う。
4.× 生活技能訓練(Social Skills Training:SST))は、主に慢性期の統合失調症患者に主に用いられる。アメリカのリバーマンにより提唱された認知行動療法の一つである。患者が習得すべき行動パターンを治療者(リーダー)が手本として示し、患者がそれを模倣して適応的な行動パターンを学ぶという学習理論に基づいたモデリング(模倣する)という技法が用いられる。
5.× 精神分析療法は、自由連想法により無意識のうちに抑圧されていた葛藤を意識化させ、洞察し解決に向かわせるというものである。神経症性障害に適応がある。

 

 

 

 

 

 

47 強迫性障害の患者に対する作業療法で適切なのはどれか。

1. 自由度の高い作業を提供する。
2. 正確さを必要とする作業を提供する。
3. 強迫行為が始まれば作業を中止させる。
4. 強迫行為の原因についての洞察を促す。
5. 作業工程の確認は作業療法士が本人に代わって行う。

解答1

解説

強迫性障害とは?

強迫性障害は、「不合理だとわかっていてもこだわって確認してしまう」という特徴がある。作業療法では、他のことに目を向けさせることによりこだわりを軽減することを目的とする。

1.〇 正しい。自由度の高い作業を提供する。自由度の高い作業の実施は、細部へのこだわりの軽減が望める。
2.× 正確さを必要とする作業を提供する必要はない。むしろ、順序や手順への患者のこだわりを助長する。
3.× 強迫行為が始まれば作業を中止させる必要はない。なぜなら、「症状へのとらわれ」を助長させてしまうおそれがあるため。強迫行為が始まってもなるべく早く作業に復帰するように促すことが重要である。
4.× 強迫行為の原因についての洞察を促す必要はない。むしろ、原因を考えることは強迫行為への固執を促してしまう。したがって、他のことに関心を向けられるように促す。
5.× 作業工程の確認は、作業療法士が本人に代わって行う必要はない。むしろ、作業工程の確認を作業療法士に行ってもらわないと不安であるという状況に陥ってしまいやすく、患者は何度確認を要求するようになるおそれがある。

 

 

 

 

 

 

48 広汎性発達障害の説明で正しいのはどれか。

1. 女児に多い。
2. 育児方法が発症に影響する。
3. 障害は成人期までには消失する。
4. 社会的コミュニケーションの障害はない。
5. 小児期崩壊性障害は正常な発達の後に出現する。

解答5

解説

広汎性発達障害とは?

広汎性発達障害とは、相互的な社会関係とコミュニケーションのパターンにおける質的障害、および限局した常同的で反復的な関心と活動の幅によって特徴づけられる一群のをいう。現在の分類では「自閉スペクトラム症/自閉スペクトラム障害」に含まれている。

広汎性発達障害、およびその下位分類である自閉症、アスペルガー症候群、高機能自閉症は、「自閉スペクトラム症」とまとめられた。
【診断基準の要点】
①「社会及び感情の相互性の障害」「社会的相互作用で用いられる非言語的コミュニケーションの障害」「発達レベル相応の関係を築き維持することの障害」の3つがすべて込められること。
②行動、興味活動の、限局的で反復的な様式が認められること。

1.× 女児ではなく、男児に多い。
2.× 発症に影響するのは、育児方法ではなく、何らかの生物学的要因と推定されている。したがって、育児方法は影響しない。
3.× 障害は、成人期になっても持続する。ただし、症状は発達の段階に応じて変わっていくことが多い。
4.× 社会的コミュニケーションの障害がみられる。①対人的に異常な近づき方をする、②興味・関心を共有できない、③非言語的なコミュニケーションが苦手、④友人ができないなど。
5.〇 正しい。小児期崩壊性障害は正常な発達の後に出現する。小児期崩壊性障害は、2~3歳までは外見上は正常に発達するが、その後はいったん獲得された機能が徐々に失われる障害である。例えば、言えていた言葉が言えなくなったり、対人コミュニケーションがとれなくなったり、常道行動や強迫行為を繰り返すようになったりする。また、 常に不安感を持つほか、排便や排尿のコントロールもできなくなる。

 

 

 

 

 

 

49 Alzheimer型認知症で正しいのはどれか。

1. まだら認知症の特徴を示す。
2. 症状の経過は階段状の増悪を示す。
3. 認知症症状は老人斑の形成より遅れて出現する。
4. 神経原線維変化はタウ蛋白の細胞外沈着により起こる。
5. 現在では認知症治療薬を使用することで根本的治療も望める。

解答3

解説

Alzheimer型認知症とは?

Alzheimer型認知症は、認知症の中で最も多く、病理学的に大脳の全般的な萎縮、組織学的に老人斑・神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である。特徴は、①初期から病識が欠如、②著明な人格崩壊、③性格変化、④記銘力低下、⑤記憶障害、⑥見当識障害、⑦語間代、⑧多幸、⑨抑うつ、⑩徘徊、⑩保続などもみられる。Alzheimer型認知症の患者では、現在でもできる動作を続けられるように支援する。ちなみに、休息をとることや記銘力を試すような質問は意味がない。

1.× まだら認知症の特徴を示すのは、血管性認知症である。まだら認知症は、脳機能が全体的に低下するのではなく、部分的に障害されるため機能低下と正常が混在する状態である。
2.× 症状の経過が、階段状の増悪を示すのは、血管性認知症の特徴である。動揺性(まだら)階段状に進行する経過をたどる。
3.〇 正しい。認知症症状は、老人斑の形成より遅れて出現する。老人斑とは、神経細胞外にアミロイドβ蛋白が蓄積してできた異常構造物である。このアミロイドβ蛋白が細胞毒性を発揮し、神経細胞の変性・消失が起こることで認知症が生じると現在では考えられている。
4.× 神経原線維変化は、タウ蛋白の細胞外沈着ではなく、細胞内沈着により起こる。神経原線維変化とは、アルツハイマー病患者脳の神経細胞にみられる病理所見で、過剰リン酸化タウの細胞内凝集体であることが知られている。
5.× 現在での認知症治療薬を使用することでも、根本療法(原因療法)は望めない。Alzheimer型認知症は、緩徐進行性の疾患であり、現在対症療法として、認知機能低下の進行を抑制する薬物療法が行われている。ちなみに、根本療法(原因療法)とは、病気の原因を取り除いて治す治療法である。

 

 

 

 

 

 

50 統合失調症の家族心理教育において適切なのはどれか。2つ選べ。

1. 家族を精神疾患の原因ととらえる。
2. 精神分析理論に基づいて行われる。
3. 家族の対処能力が向上することを目指す。
4. 再発防止効果についての科学的根拠がある。
5. EE< expressed emotion >を高める指導を行う。

解答3/4

解説

家族心理教育とは?

家族心理教育とは、家族が病気を正しく理解し、適切な対応や望ましい接し方を身につけることを目的とする。病気による行動特性を理解し、症状に対する適切な対応と接し方を学ぶことができ、治療効果の増進・再発防止にもつながる。

1.× 家族を精神疾患の原因ととらえるのではなく、「家族が疾病を理解することによって患者への対処能力を高め、患者の症状の安定化や改善を図ろうとする」ものである。
2.× 精神分析理論は、自由連想法により無意識のうちに抑圧されていた葛藤を意識化させ、洞察し解決に向かわせる方法である。神経症性障害に対する精神療法として用いられるものである。家族心理教育とは異なる。
3~4.〇 正しい。家族の対処能力が向上することを目指す/再発防止効果についての科学的根拠がある。患者の症状悪化や再発を防止する科学的根拠に基づく効果が認められている。
5.× EE< expressed emotion >を高めるのではなく、抑える指導を行う。EE< expressed emotion >とは、感情表出のことである。患者と接するときに家族に生じた主に否定的な感情を家族がありのままに表すことをいう。感情表出の強い家族のもとでは患者の症状は悪化しやすいとされ、家族心理教育では感情表出を抑えるような指導教育が行われる。

 

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