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11 25歳の男性。頸髄完全損傷、Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類でC6A。ベッド・車椅子間の移乗動作の自立を目指して天井走行型リフトを使用した訓練を行うことになった。吊り具の写真を下図に示す。
選択する吊り具として正しいのはどれか。
1. ①
2. ②
3. ③
4. ④
5. ⑤
解答5
解説
C6Aの頸髄損傷患者は、肘関節屈曲が作用するが、手関節背屈筋力の低下がみられるレベルである。したがって、まずはベッド・車椅子間の移乗動作の自立を目指す。課題として、ベッド・車椅子でのスリングの着脱である。
1.× ①は、移動用床走行スタンディングリフト用の吊り具である。リフト本体に体幹・下肢を固定し、殿部を包み込むようにして使用する。移動には介助が必要である。
2.× ②は、脚分離型(ローバック)である。体幹を包みこみ体全体を浮かして移動する。車椅子上での装着・脱着はできず、移動には介助が必要である。
3.× ③は、トイレ用吊り具である。脚分離型より殿部が大きく開いた形状であるため、吊り上げた状態でパンツの着脱・陰部の洗浄ができる。ベッド・車椅子間の移乗にも用いることもできるが、車椅子上での装着・脱着は困難である。
4.× ④は、シート型(ハイバック)である。頸部・体幹の筋力が低下し、座位保持が不安定な場合に使用する。臥位でのみ着脱可能であり、自身での装着は困難である。
5.〇 正しい。⑤は、セパレート型(ベルト)である。体幹ベルトと脚ベルトに分かれており、上肢が自由に使え、移乗練習がしやすい。吊り具の装着・脱着は、最も容易であり、C6A レベルでもなんとか装着ができるが、脚ベルトの位置の設定に習熟しないと落下の危険性がある。
(図引用:公益財団法人テクノエイド協会様HP)
リフトによって人を持ち上げる際に使用する、人との接点となるものである。身体機能により、使用場面により、また介助者の状況により、最適な形、大きさのものを使い分けることを原則とする。
【脚分離型】
座位姿勢で着脱でき、吊り上げられたときの感覚も比較的よい。
1.ローバック型:頭の支持を必要としない場合に使用する。
2.ハイバック型:頭の支持を必要とする場合に使用する。
【シート型】
1枚のシートでできており、身体全体をくるみ込む。座位姿勢では着脱はできず、臥位あるいは膝立ち位で行う。
1.ローバック型とハイバック型がある。
2.入浴に適しており、メッシュが多い。
【セパレート型】
2本のベルトまたは2枚のシートで吊り上げる。
1.吊具着脱の介助がもっとも容易な吊具である。
2.身体機能によっては落下したり、痛みを感じたりする危険がある。
3.股関節、肩関節・肩甲帯の固定力を必要とし、適応は慎重に行う必要がある。
【トイレ用】
脚分離型の臀部のおおいを小さくしたタイプで、ベルト型との中間的な吊具である。
1.吊り上げたとき臀部が大きく空くので、下着などを着脱させることができる。
2.身体機能によって臀部が落下した姿勢になりやすい。これを防止するために、胸ベルトがついているタイプ、吊り上げるにしたがい体重で胸を押さえるタイプなどがある。
12 87歳の男性。脳血管障害の後遺症により週1回の訪問作業療法を行っている。訪問時、85歳の妻が「家で介護することがつらい。疲れた」と暗い顔でため息をついている。
訪問作業療法士の対応で正しいのはどれか。
1. 妻に精神科の受診を勧める。
2. 近隣の入所施設の空き情報を伝える。
3. 患者へ妻に甘えすぎないように話す。
4. 訪問介護事業所に利用開始を依頼する。
5. ケアマネージャーに妻の状況を報告する。
解答5
解説
1.× 妻に精神科の受診を勧めることの優先度は低い。なぜなら、85歳の妻が「家で介護することがつらい。疲れた」と暗い顔でため息をついた原因は、介護の負担が原因である可能性が高いため。精神科の受診を勧めることで、妻は「自分は病気なのか」と自責にとらわれる可能性もある。まずは、よく話を聞き、環境調整など他の手段を模索する。
2.× 近隣の入所施設の空き情報を伝えるのは、作業療法士の対応として優先度は低い。入所が必要となったら、ケアマネジャー(介護支援専門員)が対応するため、作業療法士はケアマネジャー(介護支援専門員)と相談する。
3.× 患者へ妻に甘えすぎないように話す必要はない。なぜなら、患者はできないことを妻に介助してもらっている可能性が高いため。二人の仲がギクシャクしかねない。
4.× 訪問介護事業所に利用開始を依頼するのは、作業療法士の対応として優先度は低い。ケアマネジャー(介護支援専門員)が対応するため、作業療法士はケアマネジャー(介護支援専門員)と相談する。ケアマネジャー(介護支援専門員)は、主にケアプランの立案・変更、事業所との連絡・調整を行っている。利用者本人や家族参加のもとに相談しながら立案する。
5.〇 正しい。ケアマネージャーに妻の状況を報告する。まずはケアマネジャーに報告し、現在の患者・家族の状況について情報共有し、家族への対応方針を統一する。
13 46歳の男性。脳梗塞による右片麻痺。Brunnstrom法ステージは上肢Ⅴ、手指Ⅴ、下肢Ⅴ。発症後7か月が経過し、認知機能はMMSE が24 点、軽度の注意障害を認めている。既に退院し、父母と同居している。発症前は内装業に従事していたが、同職での復職が困難であることから、就労移行支援による雇用を目指している。
作業療法士が患者に実施する内容で正しいのはどれか。
1. 就労準備は課題がなくなるまで続ける。
2. 雇用されたら支援が終了となる。
3. 実際の場面での職業評価を行う。
4. 雇用条件通りの就業を目指す。
5. 通勤は付き添いを前提とする。
解答3
解説
本症例は、設問から「就労移行支援による雇用を目指している」ことが分かる。就労移行支援とは、一般就労などを希望する就業が可能と思われる65歳未満の障害者に対して、知識・能力の向上、実習、職場探しなどを通じ、適性に合った職場への就労が見込まれる障害者を対象としたサービスである。事業所内での作業などを通じた訓練、適性に合った職場探し、就労後の職場定着のための支援などを実施する。就労移行支援の期限は2年(特例で3年)である。
1.× 就労準備は、課題がなくなるまで続けることはできず、支援期間は原則2年(特例で3年)と期限が決まっている。
2.× 雇用されたら支援が終了とならず、就職後も定着にむけた支援(就労定着支援)が受けられる。就労定着支援とは、就労移行支援、就労継続支援などの利用を経て、通常の事業所に新たに雇用され6か月を経過したもので3年が限度である。
3.〇 正しい。実際の場面での職業評価を行う。職場実習などにより適性を評価する。
4.× 「雇用条件通りの就業」ではなく、利用者の適性や能力に応じた条件で就業を目指す。
5.× 通勤に付き添いは不要である。本症例は、片麻痺が残存し、注意障害もあるが、どちらも軽度であるため、通勤を一人で行えることも目指す。
①就労移行支援事業:利用期間2年
【対象者】一般就労等を希望し、知識・能力の向上、実習、職場探し等を通じ、適性に合った職場への就労等が見込まれる障害者(65歳未満の者)①企業等への就労を希望する者
【サービス内容】一般就労等への移行に向けて、事業所内や企業における作業や実習、適性に合った職場探し、就労後の職場定着のための支援等を実施。通所によるサービスを原則としつつ、個別支援計画の進捗状況に応じ、職場訪問等によるサービスを組み合わせ。③利用者ごとに、標準期間(24ヶ月)内で利用期間を設定する。
②就労継続支援A型(雇用型):利用期限制限なし
【対象者】就労機会の提供を通じ、生産活動にかかる知識及び能力の向上を図ることにより、雇用契約に基づく就労が可能な障害者。(利用開始時、65歳未満の者)
① 就労移行支援事業を利用したが、企業等の雇用に結びつかなかった者
② 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった者
③ 企業等を離職した者等就労経験のある者で、現に雇用関係がない者
【サービス内容】通所により、雇用契約に基づく就労の機会を提供するとともに、一般就労に必要な知識、能力が高まった者について、一般就労への移行に向けて支援。一定の範囲内で障害者以外の雇用が可能。多様な事業形態により、多くの就労機会を確保できるよう、障害者の利用定員10人からの事業実施が可能。
③就労継続支援B型(非雇用型):利用制限なし
【対象者】就労移行支援事業等を利用したが一般企業等の雇用に結びつかない者や、一定年齢に達している者などであって、就労の機会等を通じ、生産活動にかかる知識及び能力の向上や維持が期待される障害者
① 企業等や就労継続支援事業(A型)での就労経験がある者であって、年齢や体力の面で雇用されることが困難となった者
② 就労移行支援事業を利用したが、企業等又は就労継続事業(A型)の雇用に結びつかなかった者
③ ①、②に該当しない者であって、50歳に達している者、又は試行の結果、企業等の雇用、就労移行支援事業や就労継続支援事業(A型)
の利用が困難と判断された者
【サービス内容】
通所により、就労や生産活動の機会を提供(雇用契約は結ばない)するとともに、一般就労に必要な知識、能力が高まった者は、一般就労等への移行に向けて支援。平均工賃が工賃控除程度の水準(月額3,000円程度)を上回ることを事業者指定の要件とする。事業者は、平均工賃の目標水準を設定し、実績と併せて都道府県知事へ報告、公表。
(引用:「就労移行支援について」厚生労働省様HPより)
14 24歳の女性。統合失調症。1年前に職場の対人関係のストレスから発症した。現在は休職し、外来通院をしている。嫌がらせをされているという被害妄想は薬物療法により消失したが、ちょっとした周りの表情やしぐさを見て「周りの人が私のことを言っているような気がする」という猜疑的な言動はみられている。そこで主治医の判断により、認知機能の改善を目的に週1回、外来作業療法を利用したプログラムに参加することになった。
この患者の治療目的に合ったプログラムとして適切なのはどれか。
1. ACT< assertive community treatment >
2. Empowerment approach
3. IPS< individual placement and support >
4. SCIT< social cognition and interaction training >
5. WRAP< wellness recovery action plan >
解答4
解説
設問から「認知機能の改善」を目的に外来作業療法が開始されていることが分かる。
1.× ACT< assertive community treatment:包括型地域生活支援プログラム>は、精神障害者への包括型地域生活支援プログラムである。重度の精神障害をもった人が地域社会の中で生活を送ることができるよう精神科医・看護師・精神保健福祉士・作業療法士など多職種が医療チームをつくり、精神障害者が地域で生活できるように365日24時間体制で支援する仕組みである。訪問が支援活動の中心である。
2.× Empowerment approach(エンパワーメント アプローチ)は、個人の潜在能力に気づき、置かれている状況に対しての対処能力を高めるようなアプローチをいう。
3.× IPS< individual placement and support:個別就労支援プログラム>は、就労支援専門員と医療関係者でチームをつくり精神障害者の就労を支援するものである。特徴は、症状の重さは問題にせず、本人の好みや意欲に基づき職を選択し、「障害者雇用」ではなく一般就労を目指すものである。
4.〇 正しい。SCIT< social cognition and interaction training:社会認知と対人関係のトレーニング>は、統合失調症の患者の社会認知の障害の改善を目指したアプローチである。対人関係改善のためのグループワークトレーニングを行う。
5.× WRAP< wellness recovery action plan:元気回復行動プラン>は、重篤な精神科患者であっても元気になって回復できる方法があり、そのためのプランについて、自分や同じような悩みをもつ人の体験やアイデアについて語り合うものである。
IPSとは、個別の就労活動支援と職場定着支援を中心とした就労支援モデルです。正式名称は「Individual Placement and Support」といい、日本語に訳すと「個別職業紹介とサポート」になります。IPSモデルの理念は、「どんなに重い精神障害を持つ人であっても、本人に働きたいという希望さえあれば、本人の興味、技能、経験に適合する職場で働くことが出来る」「就労そのものが治療的であり、リカバリーの重要な要素となる」という信念に基づいています。
IPSモデルの基本原則
IPSには下記7つの基本原則があります
① 就労支援対象についての除外基準なし
② 短期間、短時間でも企業への就労を目指す
③ 施設内でのトレーニングやアセスメントは最小限とし、迅速に職場開拓(就職活動など)を実施する
④ 就労支援と医療保健の専門家でチームを作る
⑤ 職探しは本人の技能や興味に基づく
⑥ 就労後のサポートは継続的に行う
⑦ 生保や年金など経済的側面の相談、支援も行う
(引用:「IPSモデルとは?」多摩地域IPS就労支援センター様HPより)
15 26歳の女性。通勤途中に2人が亡くなる交通事故を目撃した。数日後から睡眠障害、集中力の低下、現実感の変化などの症状が生じ、また、交通事故の起きた場所を避け、事故の夢を繰り返しみるようになった。これらの症状は3週後には消退した。
考えられるのはどれか。
1. 解離性障害
2. 強迫性障害
3. パニック障害
4. 急性ストレス障害
5. PTSD<外傷後ストレス障害>
解答4
解説
①交通事故という衝撃的な場面に遭遇している。
②数日後に睡眠障害、集中力の低下、逃避などがみられる。
③3週後に消失している。
④早期に症状が発症するも早期に改善している。
1.× 解離性障害とは、心的外傷体験・人間関係などを原因として、それらの問題を抱えきれず、記憶・同一性の統合を失うことで当面の苦痛を回避する行動をいう。健忘、混迷状態、解離性同一性障害(多重人格)、Ganser症候群(偽認知症の一つで的外れ応答が特徴)などがみられる。疾病利得が根底に存在する。
2.× 強迫性障害とは、自分の意志に反する不合理な観念(強迫観念)にとらわれ、それを打ち消すために不合理な行動(強迫行為)を繰り返す状態をいう。治療として、①SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、②森田療法、③認知行動療法などである。
3.× パニック障害とは、誘因なく突然予期せぬパニック発作(動悸、発汗、頻脈などの自律神経症状、狂乱・死に対する恐怖など)が反復して生じる状態をいう。また発作が起こるのではないかという予期不安を認め、しばしば広場恐怖を伴う。治療として、①SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、②抗不安薬、③認知行動療法などである。
4.〇 正しい。急性ストレス障害とは、交通事故・自然災害といった極めて強烈なストレスを原因として、その後、急性・一過性に解離症状(感情・感覚麻痺、健忘など)、PTSDと同様の再体験症状、回避症状などが出現し、著しい苦痛や社会的障害を生じている状態をいう。心的外傷後すぐに症状が出現し、持続期間は3日間~4週間である。本症例の特徴と合致する。
5.× PTSD<外傷後ストレス障害>とは、極めて強烈なストレスを受けた後、数週間から数ヵ月を経て(6ヵ月以上潜伏期間があることはまれ)、再体験、回避、認知や気分の異常、過覚醒の各症状が4週間以上持続し、著しい苦痛や社会的障害を生じている状態をいう。本症例は、発症が心的外傷を受けてから数日後と短く、また3週間と早期に消退しているため否定できる。