第55回(R2) 作業療法士国家試験 解説【午後問題16~20】

 

16 37歳の男性。日頃から職場での待遇に不満を感じており、たまたま入ったパチンコ店で大勝してから、パチンコを繰り返すようになった。負けを繰り返す中、妻に黙って娘の学資保険を解約するなどしてお金をつぎ込んでいた。その後も借金を繰り返すがやめられず、借金に気づいた妻から「このままだと離婚する」と言われ、妻の勧めで精神科を受診し、病的賭博(ギャンブル障害)の診断を受けた。
 この障害の特徴で正しいのはどれか。

1. 生活のストレスはパチンコの衝動に影響しない。
2. アルコール・薬物依存症を合併しやすい。
3. 一般人口の1割に同様の問題がみられる。
4. 女性では思春期に発症することが多い。
5. 女性に多い。

解答2

解説

病的賭博(ギャンブル障害)とは?

 病的賭博(ギャンブル障害)は、ギャンブルへの病的な執着のために自己のギャンブル行動を制御できず、治療的アプローチがなければギャンブルへの強い欲求が再燃し、やめ続けることの困難な状態のことである。このため、経済的困窮、離婚、親子の不和、窃盗や横領などの犯罪、自殺企図など、重篤な個人的、家庭的、社会的問題を引き起こすことが多い。ギャンブル障害の患者さんは、経済的に追い詰められるために、しばしば、うつや不安の症状を呈す。内科や産業医を受診する際には、うつや不安からくる、不眠、食思不振、疲れやすさ、胃痛、吐き気、体重減少、下痢、便秘、頭痛、肩こりなどの、ごくありふれた症状を主訴にされる場合が多い。

1.× 生活のストレスは、パチンコの衝動に影響しやすい。ストレスと関連する苦痛の症状(無気力、罪悪感、不安、抑うつなど)があるときに賭博をしやすい。
2.〇 正しい。アルコール薬物依存症を合併しやすい。なぜなら、ギャンブル行動が、アルコールや薬物乱用によるものと同じ脳内の報酬系を活性化させるため。また、発達障害、注意欠陥・多動性障害は、病的賭博(ギャンブル障害)に陥りやすいとされる。
3.× 病的賭博(ギャンブル障害)は、一般人口の1割に満たない。有病率は一般人口の約0.2~0.3%である。生涯有病率は約0.4~1.0%である。日本では0.8%、生涯有病率は3.6%である。
4.× 女性は、思春期ではなく、中年~高齢期に発症することが多い。ちなみに、若年期は男性に多く、女性は中年~高齢期で男性より多くなる
5.× 女性ではなく、男性に多い。全体で7:3(男女比)といわれている。

 

 

 

 

 

 

17 34歳の女性。掃除と整理整頓が趣味というほど几帳面な性格である。職場での昇進によって仕事量が増え、そのため夜遅くまで残り、懸命にこなすように努力していた。しばらくして、抑うつ状態になり、早朝覚醒、体重減少などの身体症状も出現し、精神科を受診した。抑うつ気分は朝方に強く、夕方に軽くなる傾向が認められる。
 この患者でみられやすいのはどれか。

1. まわりくどく説明する。
2. 他人からの依頼を断れない。
3. 早朝から友人に電話をかける。
4. 他人からの評価を気にしない。
5. 不必要なものをいろいろと買い込む。

解答2

解説

本症例は、うつ病が疑われる。几帳面な完璧主義が発症しやすく、今回は職場での昇進によるストレス増大を原因として抑うつ状態となっている。

1.× まわりくどく説明すること(迂遠)は、老化脳器質障害(てんかん)などでみられる。
2.〇 正しい。他人からの依頼を断れない。うつ病になりやすい性格・状況は、①真面目、②几帳面、③転勤、④昇進、⑤人間関係があげられる。うつ病の病前性格(人間関係)として、他人からの依頼を断われず、多くの仕事を抱え込む傾向がある。
3.× 早朝から友人に電話をかけることはしない。なぜなら、うつ病の患者は、早朝や午前中に抑うつ気分が強いため。一方で、躁状態は、早朝から不必要に電話をかけることはある。
4.× 他人からの評価を気にする。他人の期待に応えようとしたりするあまりに、 他人の評価を気にしたり、無理をしてしまうことが多い。
5.× 不必要なものをいろいろと買い込むのは、躁状態にみられる。むしろ、うつ病患者は、貧困妄想が見られ出費が少なくなる。

 

 

 

 

 

 

18 21歳の女性。衝動的に食器を割ったり、自身の手首を切ったりするなどの行為が続いたため精神科病院へ入院となった。夜になると両親に電話し、自分を見捨てるのではないかと脅迫的に責めたてた。また主治医を罵倒し、椅子を投げつけるなどの暴力を振るった後すぐに「先生はすばらしいお医者さんですからどうか治してください」と泣きながら懇願することもあった。
 この患者の作業療法を行う上で適切でないのはどれか。

1. 患者の退行的な言動を受け入れる。
2. 作業療法以外の治療状況を把握する。
3. 作業療法士の中に生じてくる感情を自覚する。
4. 行動化による自己破壊的な結果を患者に説明する。
5. 患者、作業療法士の双方が守るべき規則を明確にする。

解答1

解説

本症例は、境界性パーソナリティ障害が疑われる。本症例は、①家族や医師に衝動的・暴力的な行動・発言、②自傷行為をはたらく傍ら、家族や医師から見捨てられるのではないかという不安がみられている。

1. × 患者の退行的な言動を受け入れてはならない。なぜなら、退行的な言動を受け入れることで医療者への依存が増す可能性があるため。治療の枠組みを明確に定めて、退行的な言動を受け入れないようにする。
2.〇 正しい。作業療法以外の治療状況を把握する。なぜなら、医療チームが一貫した態度で関わることが重要であるため。他職種の治療状況を把握し、情報を共有して対応していく必要がある。
3.〇 正しい。作業療法士の中に生じてくる感情を自覚する。攻撃的態度や行動化をとる患者に対し、医療従事者(作業療法士も含む)は、逆転移に陥ることがある。自らの感情を自覚しコントロールする必要がある。ちなみに、転移と逆転移は、精神分析療法の上で重要な概念である。転移とは、患者が今までの生活史における重要人物(親、学校の先生)に示してきた感情や態度を治療者に向けることを言い、一方、逆転移とは治療者が患者に向けることである。
4.〇 正しい。行動化(例:自傷、自殺行為、リストカット)による自己破壊的な結果を患者に説明する。なぜなら、行動化は、自分自身および他者を傷つけるおそれがあるため。行動化は、情緒的葛藤やストレス因子に対し内省することによってではなく、行為によって対処するもので、不適切な形で現れた防衛機制のことである。自傷行為のほかにも、臨床では、診察室から出て行ってしまったり、診察の場で沈黙を続けたりする行動のことである。
5.〇 正しい。患者、作業療法士の双方が守るべき規則を明確にする。なぜなら、日によって、応じればないことがあると、不安な対人関係を助長する恐れがあるため。規則を作ることで枠組みを明確にし、それを越える要求に対しては応じないことが重要である。

 

 

 

 

 

 

19 28歳の男性。統合失調症で6か月前に精神科病院に措置入院歴がある。その後退院し、自治体による退院後支援計画に基づいて外来でフォローされていたが、2か月前から抗精神病薬の服薬が不規則になり、幻聴の増悪がみられた。自傷行為はなく、家族をはじめ周囲の人間に対して手をあげるようなことはないが「薬は飲むな」という幻聴に左右されてこの1週間は全く服薬しておらず、一昨日から一睡もできていない。両親が「担当医に相談しよう」と勧めてなんとか外来受診をさせたが、精神保健指定医から入院を勧められてもかたくなに拒否を続けている。
 この患者の現在の状態において適切な入院形態はどれか。

1. 任意入院
2. 応急入院
3. 医療保護入院
4. 緊急措置入院
5. 医療観察法による入院

解答3

解説

本症例のポイント

①入院治療の必要がある。
②幻聴の増悪あり。
③患者が入院を拒否している。

1.× 任意入院は、患者本人の同意に基づく入院である。
2.× 応急入院は、拒食や意識障害など医療および保護の依頼があり急を要するが、家族等からも本人からも同意が得られない場合に、72時間に限り精神保健指定医1名の診察により行われる入院である。入院後は指定医は直ちに都道府県知事へ届け出る。
3.〇 正しい。医療保護入院が適切な入院形態である。医療保護入院は、本人の同意は得られないが保護者の同意が得られる場合、精神保健指定医1名の診察により行われる入院である。入院後は10日以内に都道府県知事へ届け出る。ちなみに、未成年の患者が医療保護入院をする場合には、原則両親2名共が家族等となり入院
に同意する必要がある。片親の場合は1名の同意でよい。
4.× 緊急措置入院は、自傷他害のおそれが著しく急を要するが精神保健指定医を2名確保できない場合に適用される措置入院である。72時間に限り1名の指定医の診察により入院が行われ、また72時間以内にあらためて2名の指定医による診察が必要である。ちなみに、措置入院・緊急措置入院は公費負担がある.。
5.× 医療観察法による入院は適応ではない。なぜなら、他害行為の記録は無いため。ちなみに、「医療観察法」は、心神喪失または心神耗弱の状態(精神障害のために善悪の区別がつかないなど、通常の刑事責任を問えない状態)で重大な他害行為を行った人に対して適切な医療を提供し、社会復帰を促進することを目的としている。

入院の形態

①任意入院:本人の同意に基づく入院で、本人から退院の申出があれば、退院させなければならない。

②医療保護入院:本人の同意がなくても、1名の精神保健指定医が入院の必要性を認めれば、保護者の同意で入院させることができる。

③応急入院:自傷他害のおそれはないが急を要し、本人、保護者の同意が得られない場合でも1名の精神保健指定医が入院の必要性を認めれば72時間以内に限り入院させることができる。

④措置入院:自傷他害のおそれのある患者に対して、2名の精神保健指定医が入院の必要性を認めた場合に入院させることができる。都道府県知事または政令指定都市の市長の命令による。

⑤緊急措置入院:措置入院に該当する症例ではあるが、急速を要し、2名の精神保健指定医の診察ができない場合は、1名の指定医の診察で72時間以内の措置入院ができる形態をいう。72時間以内にあらためて2名の指定医による診察が必要である。

 

 

 

 

 

 

20 45歳の男性。統合失調症。外来治療を受けながら母親と2人で暮らしている。3年前までは仕事に就いていたが、職場での対人関係がうまくいかず症状が悪化し退職した。現在は精神症状は落ち着き、ADLは自立し生活リズムも整っている。一般就労を希望し、作業療法士に相談した。
 この時点で患者が利用する障害福祉サービスとして適切なのはどれか。

1. 自立訓練
2. 共同生活援助
3. 就労移行支援
4. 就労定着支援
5. 就労継続支援B 型

解答3

解説

本症例のポイント

①45歳の男性
②現在、精神症状が落ち着いている。
③ADLは、自立し生活りズムも整っている。
③一般就労を希望し、作業療法士に相談している。

1.× 自立訓練(生活訓練)は、知的障害者・精神障害者に対して、自立した日常生活ができるように訓練や助言をするものである。現在、本症例は、ADLは自立し生活リズムも整っている。
2.× 共同生活援助(グループホーム)は、主に夜間や休日に精神障害者が共同生活を営む住居で、食事の世話・服薬指導など、相談日常生活の援助を行う。現在、本症例は、ADLは自立し生活リズムも整っている。
3.〇 正しい。就労移行支援は、この時点で患者が利用する障害福祉サービスとして適切である。就労移行支援は、一般企業などへの就労を希望する65歳未満の障害者に対し、就労に必要な知識・能力の向上のための訓練を一定期間行うものである。
4.× 就労定着支援は、障害者の就労や就労に伴って生じている生活面での課題を解決し、長く働き続けられるようにサポートするものである。具体的には、生活リズム・家計や体調の管理など、就労に伴う環境変化などの課題解決に向けて、必要な連絡調整や指導・助言などの支援を実施する。現在、本症例は就労をしていない
5.× 就労継続支援は、一般企業での就労が困難な障害者に働く場を提供するとともに、就労に必要な知識・能力の向上のための訓練を行う。ちなみに、A型(雇用型)とB型(非雇用型)に分けられ、B型は通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労も困難である者が対象となる。本症例は、一般就労を希望している。

障害者総合支援法に基づく障害者の就労支援事業

①就労移行支援事業
 就業が可能と思われる65歳未満の障害者に対して、就業のために必要な知識や技能を身に付けてもらう。2年(特例で3年)が限度である。

②就労継続支援A型(雇用型)
 通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が可能である者が対象である。期限の設定はない。

③就労継続支援B型(非雇用型)
 通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労も困難である者が対象である。期限の設定はない。

 

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