第50回(H27) 作業療法士国家試験 解説【午後問題16~20】

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次の文により16、17の問いに答えよ。
 24歳の女性。高校の授業で教科書を音読する際に声が震えて読めなくなり、それ以降、人前で発表することに恐怖感を抱くようになった。就職後、会議のたびに動悸や手の震え、発汗が生じるようになり、「変だと思われていないだろうか」、「声が出るだろうか」と強い不安を感じるようになった。最近になり「人の視線が怖い」、「会議に出席するのがつらい」と言うようになり、精神科を受診し外来作業療法が開始された。

16 この患者の障害として適切なのはどれか。

1.社交(社会)不安障害
2.全般性不安障害
3.パニック障害
4.強迫性障害
5.身体化障害

解答1

解説
1.〇 正しい。社交(社会)不安障害とは、社交場面でネガティブな評価を受けたり、他人に辱められることに対する強い恐怖と不安を主な症状とする精神疾患である。本症例と症状(緊張・不安・自律神経障害)が合致する。
2.× 全般性不安障害とは、仕事や日常生活など多くの状況での過剰な不安がある状態である。
3.× パニック障害とは、突然前触れもなく(誘因なく)、動悸・息苦しさ・めまいなどの症状が出現するパニック発作を繰り返し、そのため「またあの発作が起きたらどうしよう」と過度に心配になって、外出などが制限される病気である。
4.× 強迫性障害とは、自分でも不合理だと思っている考えが頭から離れず、それを打ち消すために同じ行動を繰り返すものをいう。例えば、何度も手を洗ってしまったり、1時間かけて手を洗ってしまったりする状態。
5.× 身体化障害とは、それらを説明できる検査所見はないが、疼痛や身体症状を何年にもわたって訴え続け、深刻な心理的苦痛や社会的障害がみられるものをいう。

 

 

 

 

 

 

次の文により16、17の問いに答えよ。
 24歳の女性。高校の授業で教科書を音読する際に声が震えて読めなくなり、それ以降、人前で発表することに恐怖感を抱くようになった。就職後、会議のたびに動悸や手の震え、発汗が生じるようになり、「変だと思われていないだろうか」、「声が出るだろうか」と強い不安を感じるようになった。最近になり「人の視線が怖い」、「会議に出席するのがつらい」と言うようになり、精神科を受診し外来作業療法が開始された。

17 この患者に対する作業療法士の初期の対応で適切なのはどれか。

1.会議準備を十分行うよう助言する。
2.人前で発表する練習を取り入れる。
3.リラクセーションを指導する。
4.集団作業療法を基本とする。
5.体力の向上を促す。

解答3

解説

 作業療法士の初期の対応として本問題は問われている。集団を避けるという行動を変容させるために治療は認知行動療法的なアプローチが中心となる。その場合、リラックスできた状態から、不安が生じやすい環境に少しずつ慣れていく必要がある。

1.× 会議準備を十分行うよう助言する必要はない。なぜなら、会議の準備を十分行っても、人前で話す不安や恐怖に対する根本的な解決にはならないため。
2.4.× 人前で発表する練習/集団作業療法を取り入れるのは時期尚早である。なぜなら、そもそも集団の中にいることが不安であるため。まずは自分自身の緊張感をコントロールが行えるよう練習する。
3.〇 正しい。リラクセーションを指導する。なぜなら、リラクセーションの指導することで、自分自身で緊張感の軽減を図ることができるため。
5.× 体力の向上を促す必要はない。なぜなら、体力と社会不安障害との関連はないため。

 

 

 

 

 

18 82歳の女性。認知症。会社員の娘と認知症初期の夫との3人暮らしで、家族に介護されている。患者は興奮すると夫に暴言を吐き、物を投げつけ、不安が強くなると仕事中の娘に十数回電話する状況である。集団を嫌いデイサービスの利用は拒否していたため、訪問作業療法の指示が出た。
 まず行うべきなのはどれか。

1.服薬指導
2.家族への助言
3.身体機能の維持
4.趣味活動の拡大
5.記憶障害の改善

解答2

解説

1.× 服薬指導は優先度が低い。本症例は認知症であり、集団を嫌いデイサービスの利用は拒否している。本人への服薬指導は効果がないことが多く、本人へではなく、家族に服薬の方法を伝えるのが良い。
2.〇 正しい。家族への助言を実施する。本症例は、行動障害により家族の負担が大きくなってきている。したがって、問題行動の出現時の対応など、患者の病気について家族が理解できるよう勧めていく。
3.× 身体機能の維持は優先度が低い。なぜなら、本症例は暴力をふるえるほどの身体機能を認めるため。訪問作業療法が開始された直後に行わなくてよい。
4.× 趣味活動の拡大は優先度が低い。まずは行動障害への対応をする。趣味活動の拡大は、行動障害が安定してから行う。
5.× 記憶障害の改善は優先度が低い。なぜなら、中核症状である記憶障害の改善は難しいため。

 

 

 

 

 

 

19 25歳の男性。統合失調症。大学卒業後、営業職に就いたものの、まもなく発症して入院となった。退院後、就労支援を受けたいという本人の希望があり、現在は配食サービスを行う事業所に通っている。事業所とは雇用契約を交わしており、職業指導員の指導の下に調理と配達業務を担当し、業務以外の悩みについては生活支援員に相談している。
 この患者が利用している就労支援サービス事業所として適切なのはどれか。

1.障害者就業・生活支援センター
2.就労継続支援A型事業所
3.就労継続支援B型事業所
4.障害者職業能力開発校
5.就労移行支援事業所

解答2

解説

障害者総合支援法に基づく障害者の就労支援事業

①就労移行支援事業:利用期間2年
【対象者】一般就労等を希望し、知識・能力の向上、実習、職場探し等を通じ、適性に合った職場への就労等が見込まれる障害者(65歳未満の者)①企業等への就労を希望する者
【サービス内容】一般就労等への移行に向けて、事業所内や企業における作業や実習、適性に合った職場探し、就労後の職場定着のための支援等を実施。通所によるサービスを原則としつつ、個別支援計画の進捗状況に応じ、職場訪問等によるサービスを組み合わせ。③利用者ごとに、標準期間(24ヶ月)内で利用期間を設定する。

②就労継続支援A型(雇用型):利用期限制限なし
【対象者】就労機会の提供を通じ、生産活動にかかる知識及び能力の向上を図ることにより、雇用契約に基づく就労が可能な障害者。(利用開始時、65歳未満の者)
① 就労移行支援事業を利用したが、企業等の雇用に結びつかなかった者
② 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった者
③ 企業等を離職した者等就労経験のある者で、現に雇用関係がない者
【サービス内容】通所により、雇用契約に基づく就労の機会を提供するとともに、一般就労に必要な知識、能力が高まった者について、一般就労への移行に向けて支援。一定の範囲内で障害者以外の雇用が可能。多様な事業形態により、多くの就労機会を確保できるよう、障害者の利用定員10人からの事業実施が可能。

③就労継続支援B型(非雇用型):利用制限なし
【対象者】就労移行支援事業等を利用したが一般企業等の雇用に結びつかない者や、一定年齢に達している者などであって、就労の機会等を通じ、生産活動にかかる知識及び能力の向上や維持が期待される障害者
① 企業等や就労継続支援事業(A型)での就労経験がある者であって、年齢や体力の面で雇用されることが困難となった者
② 就労移行支援事業を利用したが、企業等又は就労継続事業(A型)の雇用に結びつかなかった者
③ ①、②に該当しない者であって、50歳に達している者、又は試行の結果、企業等の雇用、就労移行支援事業や就労継続支援事業(A型)
の利用が困難と判断された者
【サービス内容】
通所により、就労や生産活動の機会を提供(雇用契約は結ばない)するとともに、一般就労に必要な知識、能力が高まった者は、一般就労等への移行に向けて支援。平均工賃が工賃控除程度の水準(月額3,000円程度)を上回ることを事業者指定の要件とする。事業者は、平均工賃の目標水準を設定し、実績と併せて都道府県知事へ報告、公表。

(引用:「就労移行支援について」厚生労働省様HPより)

 本症例は、「事業所とは雇用契約を交わしている」と記載されている。雇用契約を結ぶ就労を行う事業所は、②就労継続支援A型(雇用型)だけである。

1.× 障害者就業・生活支援センターは、就業およびそれに伴う日常生活上の支援を必要とする障害者に対し、センター窓口での相談業務や職場・家庭訪問などを実施している。雇用契約はない。
2.〇 正しい。就労継続支援A型事業所は、通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が可能である者が対象である。期限の設定はない。
3.× 就労継続支援B型事業所は、通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労も困難である者が対象である。期限の設定はない。
4.× 障害者職業能力開発校は、一般の公共職業能力開発施設において職業訓練を受けることが困難な重度障害者などに対して、その障害の内容や程度に配慮した職業訓練を実施している。雇用契約はない。
5.× 就労移行支援事業所は、就業が可能と思われる65歳未満の障害者対して、就業のために必要な知識や技能を身に付けてもらう。2年(特例で3年)が限度である。

 

 

 

 

 

 

20 25歳の男性。Asperger症候群。うつ病を合併していたが最近になり改善した。就労意欲が高まったため就労に向けた評価を実施することになった。
 この患者に実施する評価で適切でないのはどれか。

1.SDS
2.HRS
3.PANSS
4.マイクロタワー法
5.VPI職業興味検査

解答3

解説

Aspergar症候群(アスペルガー症候群)とは、発達障害の1つで、社会性・コミュニケーション・想像力・共感性・イメージすることの障害、こだわりの強さ、感覚の過敏などを特徴とする。自閉症スペクトラム障がいのうち、知能や言語の遅れがないものをいう。本症例の場合、アスペルガー症候群とうつ病を合併した患者である。したがって、アスペルガー症候群に対する職業能力適正評価うつ病に対する評価を選ぶ必要がある.

1.〇 正しい。SDS(Self-rating Depression Scale:うつ性自己評価尺度)は、うつ状態の程度を調べる自記式質問票である。20項目(主感情2項目、生理的随伴症状8項目、心理的随伴症状10項目)を4段階で自己評価するものである。
2.〇 正しい。HRS(HRSDあるいはHAM-D:Hamilton Rating Scale for Depression:ハミルトンうつ病評価尺度)は、医師が判断するうつ病の重症度評価尺度である。
3.× PANSS(Positive and Negative Syndrome Scale)は、統合失調症を対象とし、陽性症状や陰性症状など30項目の精神症状を医師が評価するものである。
4.〇 正しい。マイクロタワー法は、総合的な職業適性評価である。13項目の作業課題を実施することで、運動神経能力・空間知覚・事務的知覚・数的能力・言語能力の5つの領域の職業適性能を測定する。実際の作業に近いサンプルを検査として実施(ワークサンプル法)し、仕事の理解や自己理解に役立つという利点がある。
5.〇 正しい。VPI職業興味検査とは、160項目の具体的な職業に対する興味・関心の有無の回答から、6つの興味領域(現実的・研究的・芸術的・社会的・企業的・慣習的)に対する興味の程度と5つの傾向尺度(自己統制・男性ー女性傾向・地位志向・稀有反応・黙従反応)に対する個人の特性を測定するものである。

 

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