第50回(H27) 作業療法士国家試験 解説【午前問題11~15】

 

11 20歳の男性。頸髄完全損傷。動作獲得を制限する関節可動域制限、残存筋力の低下および合併症はない。洋式便座に側方移乗で移乗し、便座上座位で排便を行う。この患者が使用する坐薬挿入の自助具と、自助具を使用する際の姿勢を図に示す。
 Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類による最上位の機能残存レベルはどれか。

1.C6A
2.C6B1
3.C6B2
4.C6B3
5.C7A

解答4

解説

本症例の特徴は、
①洋式便座に側方移乗で移乗し、便座上座位で排便を行うことができる。
②坐薬の挿入の図から、カフの利用と前腕回外位での挿入が可能である。

①からC6B3(手指伸展の機能はないが、円回内筋・橈骨手根屈筋・上腕三頭筋が機能する)以上の機能残存レベル、②C6B1(円回内筋・橈骨手根屈筋・上腕三頭筋の機能はないが、手関節背屈筋は強く働く)以上の機能残存レベルであることが読み取れる。したがって、選択肢4.C6B3(手指伸展の機能はないが、円回内筋・橈骨手根屈筋・上腕三頭筋が機能する)が正しい。

 

1.× C6A/C6B1/C6B2は、上腕三頭筋が機能しないため、車椅子の速報以上は不可能である。ちなみに、C6B2は、前方移乗なら可能となる。
5.× C7Aは、最上位の機能残存レベルではない。

 

 

 

 

 

 

12 84歳の女性。数年前から徐々に左手の示指と中指にしびれが生じ、母指の指尖つまみができなくなった。左手の写真を下図に示す。
 この患者が使用する装具で正しいのはどれか。

1.虫様筋カフ
2.対立スプリント
3.両側支柱付肘装具
4.逆ナックルベンダー
5.コックアップスプリント

解答2

解説

 本症例は、左手の母指球に委縮がみられることから、正中神経麻痺の疑いがある。正中神経損傷の低位型では、母指球筋が萎縮し、母指の掌側外転麻痺が生じ、猿手となる。短対立装具を用いる。ちなみに、高位型では、母指対立不能、母・示指の屈曲障害、前腕の回内障害が加わる。そのため、長対立装具を用いる。

 

1.× 虫様筋カフは、尺骨神経麻痺(鷲手)に適応となる。
2.〇 正しい。対立スプリントは、正中神経麻痺(猿手)に適応となる。
3.× 両側支柱付肘装具は、肘関節の拘縮、骨折や関節不安定性の治療、関節炎の治療などに適応となる。
4.× 逆ナックルベンダー(MP伸展補助装具)は、橈骨神経麻痺低位型に適応となり、MP関節を伸展位に矯正(MP関節屈曲拘縮)することを目的とする。
5.× コックアップスプリントは、橈骨神経麻痺高位型(下垂手)に適応となる。

 

 

 

 

 

 

13 62歳の男性。閉塞性動脈硬化症。著しい感染を伴った下肢壊疽に対して大腿切断術が施行され短断端となった。糖尿病性末梢神経障害を合併している。
 この患者の術直後の断端管理で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.断端の色調を観察する。
2.断端の自動運動を行う。
3.切断部の温熱療法を行う。
4.ギプスソケットを装着する。
5.切断側股関節を外転位に保持する。

解答1/2

解説

 閉塞性動脈硬化症とは、血液の通り道が狭窄、閉塞することにより、組織や臓器全体に血液が行き渡らなくなって(虚血)障害を起こす病気である。

1.〇 正しい。断端の色調を観察する。なぜなら、本症例は閉塞性動脈硬化症・糖尿病を合併しているため。特に、糖尿病患者では、術後の創部癒合不良や感染症による再切断の可能性も高く、断端の色調は循環や皮膚の状態を観察するうえで重要である。
2.〇 正しい。断端の自動運動を行う。なぜなら、短断端ほど拘縮は生じやすいため。断端の自動運動は、断端筋力・可動性を保ち、拘縮を予防する効果があるため、術後早期より始める
3.× 切断部の温熱療法は行わない(禁忌である)。なぜなら、本症例は、糖尿病性末梢神経障害を合併しているため。熱傷などに気が付くことができず、重大な事故とつながってしまうことがある。
4.× ギプスソケットは装着しない。なぜなら、ギプスソケットを装着する方法では、断端の観察ができず、糖尿病患者には適応とはならないため。したがって、弾力包帯による断端管理を行う。ちなみに、断端管理には、①弾力包帯の使用、②ギプス包帯の使用、③術直後義肢装着法がある。
5.× 切断側股関節を外転位ではなく、股関節伸展位に保持する。なぜなら、大腿切断では、股関節の屈曲・外転・外旋拘縮を起こしやすいため。ちなみに、下腿切断では、膝の屈曲拘縮を起こさないよう伸展位をとるようにするが、股関節ほど注意が必要ではない。

 

 

 

 

 

 

次の文により14、15の問いに答えよ。
 20歳の女性。幼少時に両親が離婚した後、友人関係が不安定となりトラブルが絶えなかった。中学入学後から些細なことでリストカットするようになり、精神科を受診し、その後、入退院を繰り返していた。男女関係のもつれをきっかけに過量服薬し救急車で搬送された。入院後は、医療者に対して依存的だが要求が通らないと激しく責める状態である

14 最も考えられるのはどれか。

1.身体表現性障害
2.気分変調性障害
3.統合失調感情障害
4.演技性パーソナリティ障害
5.境界性パーソナリティ障害

解答5

解説
1.× 身体表現性障害とは、症状に身体的問題はないと言われても執拗に検査を求め、繰り返し身体症状を訴えるものである。
2.× 気分変調性障害とは、少なくとも2年間(小児や青年では1年間)持続する慢性的で軽度な抑うつを主体とする気分障害である。
3.× 統合失調感情障害とは、統合失調症の症状と気分障害の症状が同時に存在し、いずれの診断基準とも合致しないものをいう。
4.× 演技性パーソナリティ障害とは、自己の感情を誇張して表出し、他人の影響を受けやすく、自分が注目・賞賛の対象になるように絶えず求めているパーソナリティ障害である。
5.〇 正しい。境界性パーソナリティ障害は、不安定な友人関係、対人関係が不安定(他人への依存とこき下ろし)であり、さらに、リストカット・過量服薬などの行動化がみられる。本症例と一致する。

 

 

 

 

 

 

次の文により14、15の問いに答えよ。
 20歳の女性。幼少時に両親が離婚した後、友人関係が不安定となりトラブルが絶えなかった。中学入学後から些細なことでリストカットするようになり、精神科を受診し、その後、入退院を繰り返していた。男女関係のもつれをきっかけに過量服薬し救急車で搬送された。入院後は、医療者に対して依存的だが要求が通らないと激しく責める状態である。

15 この患者に作業療法を導入する際の対応で適切なのはどれか。

1.作業療法に参加する上での枠組みを明示する。
2.初回の面接で対人関係を中心に取り上げる。
3.患者からの面接の要求は満たすようにする。
4.攻撃的になる場合は担当者を交代する。
5.課題集団での協調行動を促す。

解答1

解説

 境界性パーソナリティ障害は、治療者に対して自分の要求をどんどんエスカレートさせていく傾向があるため、枠組みの設定は重要である。したがって、選択肢1.作業療法に参加する上での枠組みを明示する。依存や理想化は必ず生じるため、作業療法士はそのことを理解して患者に巻き込まれないよう節度ある態度をとる必要がある。また、一貫して安定した環境を提供することにより、自我の成長を促進し、不適応な行動パターンの修正を図ることも大切である。

 

2.× 初回の面接で対人関係を中心に取り上げる必要はない。なぜなら、対人関係が極めて不安定であるため。
3.× 患者からの面接の要求は満たすようにする必要はない。あらかじめ決められた枠内で面接を行い、設定外の面接は行わないようにする。治療者に対して自分の要求をどんどんエスカレートさせていく傾向があるため、枠組みの設定は重要である。
4.× 攻撃的になった場合でも、担当者を交代する必要はない。なぜなら、担当を変えた場合、見捨てられ不安を助長するおそれもあるため。また、境界性パーソナリティー障害は、治療者の態度に敏感で、裏切られたと感じた際には治療者への攻撃に転じることがよくある。治療者を代えないことで、関係の恒常性を維持でき治療の進展につながることも多い。
5.× 課題集団での協調行動を促す必要はない。なぜなら、境界性パーソナリティ障害の患者は、他者への関心が強く、他者を巻き込み逸脱行動を起こすおそれがあるため。したがって、集団での作業療法は不適切である。

 

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