第49回(H26) 作業療法士国家試験 解説【午後問題6~10】

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6 75歳の男性。転倒した後の股関節エックス線写真正面像を下図に示す。
 骨折部位はどれか。

1.臼蓋部
2.大腿骨頸部
3.大腿骨転子部
4.大腿骨転子下
5.大腿骨顆部

解答2

解説

X線写真での左右差から、左の大腿骨に骨折があることがわかる。大腿骨頭と転子部の間の頸部に明らかな骨折線がみられる。大腿骨頸部骨折である。

1.× 臼蓋(部)とは、股関節を構成する寛骨臼の天井部分(骨頭の上部分)を指す。
2.〇 正しい。X線に骨折位置は、大腿骨頸部である。
3.× 大腿骨転子部は、大腿骨大転子、小転子部分を指す。ちなみにこの部位の骨折は転子部(間)骨折ともいわれる。
4.× 大腿骨転子下とは、転子部より遠位で、近位骨幹部を指す。
5.× 大腿骨顆部とは、大腿骨遠位に大腿骨遠位の大腿骨内・外顆部分を指す。

 

 

 

 

 

 

7 28歳の男性。右環指の深指屈筋腱と浅指屈筋腱をZoneⅡでガラスの破片により損傷し、腱縫合術を受けた。
 正しいのはどれか。

1.神経損傷は合併しない。
2.受傷部位は腱の癒着が起きにくい。
3.環指のMP関節の屈曲が不能となる。
4.腱が癒合するまでは環指の運動を控える。
5.手術後はKleinert法による運動が用いられる。

解答5

解説

ZoneⅡとは?

ZoneⅡとは、Kleinert(クライナート)による屈筋腱に区域分類で、中節骨中央からMP関節までの範囲をいう。指屈筋腱手術に不利な領域のため、ノーマンズランド(no mans land:誰も触れてはいけない領域)と言われている。これは、浅指屈筋腱と深指屈筋腱が同一の狭い腱硝内を走行するため、腱縫合術後の拘縮が高率であることに由来する。癒着は回復早期から形成されるため、再断裂などに注意しながら手指の運動を行うことで癒着を防ぎ、損傷前の強度へと回復していくことが必要である。

1.× 神経損傷を合併しやすい。屈筋腱損傷では神経血管損傷を高頻度に合併する。
2.× 受傷部位は、腱の癒着が起きやすい
3.× 環指のMP関節の屈曲は可能である。なぜなら、MP関節屈曲は虫様筋の作用で起こり、損傷されないようため。
4.× 腱が癒合しないよう環指の運動を実施する。癒合するまで運動を控えると癒着が起きてしまうので、適切な負荷や運動を行う。
5.〇 正しい。手術後はKleinert法(クライナート法)による運動が用いられる。Kleinert法(クライナート法)は手指の屈筋腱に対する代表的な早期運動開始療法である。

 

 

 

 

 

8 58歳の男性。作業中に左前腕遠位で屈筋腱断裂とSunderlandのⅤ度の正中神経断裂を受傷し、腱縫合術と神経縫合術を受けた。術後5か月を経過した時の手掌の静的触覚の局在の検査結果を図に示す。患者は実際の刺激点ではなく矢印で示した先が刺激点であると回答した。
 この知覚障害の原因はどれか。

1.神経支配の破格
2.軸索再生の遅延
3.過誤神経支配
4.Waller変性
5.Tinel徴候

解答3

解説

SunderlandのⅤ度とは?

Sunderland(サンダーランド)のⅤ度とは、Seddon(セダン)分類の神経断裂にあたり、軸索、髄鞘、結合組織すべての連続性が断たれた状態である。再生した神経が本来とは違う終末目的器官に到達して過誤神経支配となる可能性がある。

1.× 神経支配の破格とは、一般的な解剖学的神経支配と異なる神経支配を受けていることをいう。正中・尺骨神経損傷例では注意を要するものであるが、本症例は受傷後に症状が出現していると考えれば、破格が原因とはいえない。
2.× 軸索再生の遅延があれば、刺激点の感覚消失や鈍麻など起こると考えられる。
3.〇 正しい。誤神経支配がこの知覚障害の原因である。誤神経支配とは、再生した軸索が本来と異なる終末に達してしまい、実際の刺激点ではない点を刺激点と感じてしまうものである。
4.× Waller(ワーラー)変性とは、神経線維の損傷により、損傷部位より末梢側の軸索で栄養が供給されないために、2、3日以内に軸索や髄鞘が変性、消失してしまうことである。
5.× Tinel(ティネル)徴候とは、障害部位を叩打すると、神経支配領域に放散痛が生じる現象である。

 

 

 

 

 

 

9 脊髄完全損傷患者(Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類C7B)に適した装具はどれか。

解答5

解説

Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類(頸髄損傷分類)C7Bは、手指の完全伸展が可能だが、母指伸展が弱い状態である。

1.× RICスプリントである。手関節背屈運動により対立つまみを可能にする装具である。C6の残存に適応となる。
2.× MP伸展補助装具(逆ナックルベンダー)である。MP関節を伸展位に矯正する。C7BではMP関節伸展可能なため、不適切である。
3.× コックアップ型装具である。手関節を背屈位に、母指外転位に保持し、機能的に把持動作を獲得する。橈骨神経麻痺高位型に適応がある。
4.× オッペンハイマースプリントである。橈骨神経麻痺高位型の際に適応である。
5.〇 正しい。短対立スプリントは、脊髄完全損傷患者(Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類C7B)に適した装具である。C7Bでは母指を対立位にできないため、母指を対立位に保持する装具である短対立スプリントの適応となる。

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10 Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類でC6Aである患者の食事の自助具・装具で適切なのはどれか。

解答3

解説

Zancolliの分類C6Aは手関節背屈が弱い。そのため肘屈曲作用で食事動作が可能となるような自助具、装具を選べばよい。

1.× 食事支援ロボットである。食事動作が全介助であるC4残存レベルで適応となる。
2.× BFO(Balanced Forearm Orthosis)である。C4、C5残存レベルで適応となる。BFOは、食事等の日常生活動作の自立を目的とし、車椅子やテーブルに取り付けて使用する。肩・肘関節の働きが弱い人で、手を口に近づける食事動作に役立つ。
3.〇 正しい。ホルダー付きスプーンは、Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類でC6Aである患者の食事の自助具・装具で適切である。手指が機能していなくても肘屈曲作用で口元に食物を運ぶことができる。
4.× オッペンハイマースプリントである。橈骨神経麻痺高位型に適応となる。
5.× ピンセット箸である。C8残存レベルで適応となる。

 

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