第49回(H26) 作業療法士国家試験 解説【午前問題16~20】

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次の文により16、17の問いに答えよ。
 13歳の男子。幼児期は図鑑をひとりで眺めて過ごしていた。小学校に入ると、しつこく意味を確認する癖や協調性がとれないことを教師に注意されることが多くなり、級友からいじめられるようになった。最近、級友の話し声に過敏に反応したり、家族への暴言と暴力が頻繁となり入院となった。

16 この患者の診断として考えられるのはどれか。

1.自閉症
2.統合失調症
3.Rett症候群
4.Asperger症候群
5.注意欠陥/多動性障害

解答4

解説
1.× 自閉症(小児自閉性障害)の特徴として、対人関係を築けず、活動や興味の極端な限定がみられる。Asperger症候群(アスペルガー症候群)と類似した特徴を持つ(男児に多いなど)が、①言語発達の遅れ、②知能低下が見られる点で自閉症とAsperger症候群(アスペルガー症候群)で区別される。
2.× 統合失調症でも、話声への過敏・暴言・暴力はみられるが、その他の記載(協調性・執拗性)は統合失調症にはみられないものであり、発症年齢も低いので統合失調症の可能性は低い。
3.× Rett症候群(レット症候群)は、女子のみに発症する進行型の脳障害である。生後5ヶ月までは正常に発達するが、その後は頭部の発達が遅くなり、常同的な手の動き(手を揉む、手を洗うような動作)、歩行困難、対人関係の消失がみられ、会話ができなくなり重篤な精神遅滞を伴う。
4.〇 正しい。Asperger症候群(アスペルガー症候群)は、知的障害・言語障害はないが、コミュニケーション能力の障害、特定の分野への強いこだわり、他者の気持ちを推測できないことが特徴的で、社会適応に問題をきたす場合が多い。本症例と合致する
5.× 注意欠陥/多動性障害は男児に多く、就学前に発症し、学童期で顕著になる。極端に落ち着きがなく、注意欠陥多動性衝動性が特徴である。

 

 

 

 

 

 

次の文により16、17の問いに答えよ。
 13歳の男子。幼児期は図鑑をひとりで眺めて過ごしていた。小学校に入ると、しつこく意味を確認する癖や協調性がとれないことを教師に注意されることが多くなり、級友からいじめられるようになった。最近、級友の話し声に過敏に反応したり、家族への暴言と暴力が頻繁となり入院となった。

17 この患者に対する作業療法実施時の声かけとして適切なのはどれか。

1.「この作業をしてみたいですか」
2.「休みは適当にとってください」
3.「周囲の人に配慮して行動してください」
4.「その作業の難しい点はどの辺りですか」
5.「私の話す説明をよく覚えて作業に取り掛かってください」

解答1

解説
1.〇 正しい。「この作業をしてみたいですか」と伝えることは、本人の気持ちの表出を促すような声かけとなる。自分の感情をうまく表現することが難しいことから、本人の希望を聞き、作業療法に反映することは望ましい。
2.× 「休みは適当にとってください」というより、休む時間などは具体的に伝える必要性がある。
3.× 「周囲の人に配慮して行動してください」というより、他者の気持ちを汲み取ることが苦手なことから、どのような配慮をするべきなのか具体的な内容を説明する方が良い。
4.× 本症例は、どこが難しいのか適切に表現し、他者に援助を求めることは難しい。「その作業の難しい点はどの辺りですか」というより、本人に能力に見合った課題設定や、援助の求め方を支援することが作業療法に求められる。
5.× Asperger症候群(アスペルガー症候群)は、口頭の指示や、長い説明を受けても、実際とるべき行動に移しかえることは苦手である。したがって、「よく覚えて作業に取り掛かってください」と口頭で支持するのではなく、一つの工程ごとに、絵や図などを用いて具体的にわかりやすく説明する方がいい。

 

 

 

 

 

18 52歳の男性。アルコール依存症。45歳ころから入退院を繰り返し離婚した。単身生活になって飲酒が一層激しくなり、食事も摂らず泥酔状態が続くところを保護されて入院した。離脱症状が消失した時点で作業療法が開始されたが、落ち込んだ様子や自己中心的な行動がみられたり、理由なく作業療法を欠席したりすることがある。
 この時点での作業種目で適切なのはどれか。

1.散歩
2.革細工
3.パソコン操作
4.バレーボール
5.院内新聞の編集

解答1

解説

本症例のポイント

・52歳の男性(アルコール依存症
・45歳ころから入退院を繰り返し離婚した。
・単身生活:飲酒が一層激しくなり、食事も摂らず泥酔状態が続くところを保護。
・離脱症状が消失した時点で作業療法が開始された。
・落ち込んだ様子や自己中心的な行動がみられたり、理由なく作業療法を欠席したりすることがある。
→本症例はアルコール依存症の導入期である。アルコール依存症における作業療法の導入期の目的は、動機づけや病気の認識の他、生活リズムの確立と体力の回復が大切である。

1.〇 正しい。導入期として体力と生活リズムの改善が必要なため、散歩は体力をつける上で適当であり、対人交流が少ない中でできることである。
2~3× 革細工/パソコン操作などの作業は、精神的に負荷のかかりやすい。また、作業や集団で行う作業は時期尚早である。本症例は、精神面に不安定な様子がみられるため、まずは精神面で負担の少ない作業を優先する。
4.× バレーボールは、集団行動となりコミュニケーションが必要となるので、精神的疲労が大きいと思われる。バレーボールは、体力向上につながる。
5.× 院内新聞の編集は、精神面での負担や対人関係を調整することも必要となるので、時期尚早である。

 

 

 

 

 

 

次の文により19、20の問いに答えよ。
 38歳の女性。1年前から夫が単身赴任。中学2年生の息子のことで心労が重なっていた。1か月前から眠れなくなり食欲も低下した。その後、気分が落ちこみ口数が減り、もともと好きであったテレビドラマも楽しめなくなった。母として妻としての自分を責め、涙をこぼすようになり、夫に付き添われ精神科を受診し、入院となった。患者は「料理の作り方が分からなくなりました」と訴えた。

19 この訴えに該当するのはどれか。

1.行為心迫
2.罪業妄想
3.抑うつ気分
4.喜びの喪失
5.遂行機能障害

解答5

解説
1.× 行為心迫(こういしんぱく)は、切迫した行動欲求があって落ち着かない状態を指す。躁病に特徴的である。
2.× 罪業妄想(ざいごうもうそう)は、実際にそうではないのに自分は重い罪を負っていると思い込んでいるものをいう。うつ病に特徴的な症状である。設問の訴え「料理の作り方が分からなくなりました」には該当しない。
3.× 抑うつとは、気分が落ち込んでエネルギーが枯渇してしまった感じがして、意欲が著しく低下している状態をいう。
4.× 喜びの喪失もうつ病の症状だが、「楽しい(嬉しい)はずのものが楽しめ(嬉しく)ない」という状態である。設問の訴え「料理の作り方が分からなくなりました」には該当しない。
5.〇 正しい。遂行機能障害は、自分で必要な情報を整理し、計画を立てて実行するという一連の作業が困難になる状態になる状態をいう。設問の訴え「料理の作り方が分からなくなりました」は、精神運動抑制や思考停止などにより、どう料理を作っていいのか作業に流れを頭の中で組み立てることが難しい状態にあることをうかがわせる。

 

 

 

 

 

 

次の文により19、20の問いに答えよ。
 38歳の女性。1年前から夫が単身赴任。中学2年生の息子のことで心労が重なっていた。1か月前から眠れなくなり食欲も低下した。その後、気分が落ちこみ口数が減り、もともと好きであったテレビドラマも楽しめなくなった。母として妻としての自分を責め、涙をこぼすようになり、夫に付き添われ精神科を受診し、入院となった。患者は「料理の作り方が分からなくなりました」と訴えた。

20 薬物療法と休息によって症状に軽快傾向がみられた。入院7日目に作業療法が処方された。
 導入時の作業種目で適切なのはどれか。

1.家計簿作り
2.献立表作り
3.生活技能訓練
4.短時間のストレッチ
5.パソコンでの文書作成

解答4

解説
1.× 家計簿作りは導入時の作業種目ではない。なぜなら、精神的に集中が必要な作業であるため。この時期にはうまくできない可能性が高く、病前と比較して自身を失くしてしまう恐れがある。
2.× 献立表作りは導入時の作業種目ではない。なぜなら、判断力が低下しているため。何かを決めながら進める作業は難しい。
3.× 生活技能訓練は導入時の作業種目ではない。生活技能は十分にあったので、うつ病の改善とともに改善していく。
4.〇 正しい。短時間でストレッチは、身体的回復を促し、リフレッシュにもなり、あまり負担をかけずに行うことができるため、導入時には適切である。
5.× パソコンでの文書作成は導入時の作業種目ではない。なぜなら、パソコンでの文書作成は、精神的に集中力が必要な作業であり、この時期にはうまくできない可能性が高く、自身喪失につながりやすいため。

 

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