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※問題の引用:第49回理学療法士国家試験、第49回作業療法士国家試験の問題および正答について
※注意:著者は理学療法士で、解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究・自己研鑽のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。またコメントにて解き方等教えてくださると幸いです。
1 関節可動域測定の開始肢位と運動方向で正しいのはどれか。2つ選べ。
解答1/5
解説
1.〇 正しい。肩関節屈曲・伸展の【基本軸】肩峰を通る床への垂直線、【移動軸】上腕骨、【測定部位及び注意点】上腕中間位とし、体幹が動かないように固定。脊柱前後屈しないように注意する
2.× 肩関節水平屈曲・伸展の【基本軸】肩峰を通る床への垂直線、【移動軸】上腕骨、【測定部位及び注意点】肩関節90°外転位とする。
3.× 肘関節屈曲の【基本軸】上腕骨、【移動軸】橈骨、【測定部位及び注意点】上腕骨と橈骨が一直線になる肢位を0°とする。前腕は回外位。
4.× 膝関節屈曲・伸展は【基本軸】大腿骨、【移動軸】腓骨、【測定部位及び注意点】背臥位にて股関節屈曲位で行う。大腿骨と腓骨が一直線になる肢位を0°とする。
5.〇 正しい。股関節内外転の【基本軸】両側の上前腸骨棘を結ぶ線への垂直線、【移動軸】大腿中央線、【測定部位及び注意点】背臥位で骨盤を固定する。
覚えなおしたい方はこちら↓
2 感覚検査の実施方法で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.触覚
2.痛覚
3.振動覚
4.静的二点識別覚
5.位置覚
解答1/2
解説
1.〇 正しい。触覚の検査の実施方法で正しい。SWT(Semmes-Weinstein monofilament)による静的触覚検査である。
2.〇 正しい。痛覚の検査の実施方法で正しい。定量型知覚針による感覚検査である。
3.× 振動覚検査の実施方法で不適切な部分がある。図は振動する方を直接当てているため、手に当てた時点で振動が止まってしまい検査できない。振動覚を評価する際には、皮下に骨が露出する部位に音叉を当てなければならない
4.× 静的2点識別覚検査の実施方法で不適切な部分がある。Disk-criminator(2点識別感覚測定器具)による2点感覚識別検査である。図では刺激が指の長軸と垂直に加えられており、これは動的2点識別覚の測定方法である。さらに、器具を傾かせすぎているため刺激が点ではなくなってしまう。静的2点識別覚を評価する際は体の長軸と平行に2点刺激を加える。
5.× 位置覚検査の実施方法で不適切な部分がある。図のような持ち方をすると、指の皮膚に上下方向の触圧刺激が感知され、正確な評価ができない。位置覚の検査を手指の屈伸で行う場合、検者は手指の側面を持たなければならない。
3 82歳の男性。右利き。突然の意識消失のため救急搬入された。入院後意識は回復した。発症後2時間のMRI拡散強調像を下図に示す。
今後この患者に生じる可能性の高い症状はどれか。
1.観念失行
2.左右失認
3.運動性失語
4.観念運動失行
5.左半側空間無視
解答5
解説
右利きの人では、ほとんどが優位半球は左にある(右大脳は劣位半球に当たる)。劣位半球頭頂葉が障害されると、対側の半側空間無視が起こる。
1.× 観念失行は左頭頂葉の障害で生じる。ちなみに観念失行とは、日常使用している物品や道具の一連の操作や説明ができなくなる状態。(例:急須に茶葉を入れて、お湯を注ぐ行為ができなくなるなど)
2.× 左右失認は左頭頂葉角回の障害によって生じる。
3.× 運動性失語は前頭葉Broca野(運動性言語中枢)の障害によって生じる。
4.× 観念運動失行は左頭頂葉~前頭葉の障害で生じる。ちなみに、観念運動失行とは、指示や模倣による習慣的な運動の動作の再現ができなくなる状態となる。(例:敬礼やじゃんけんのグーの動作命令をされても出来ない)
5.〇 正しい。左半側空間無視は主に右頭頂葉後方の障害で生じる。
次の文により4、5の問いに答えよ。
30代前半の男性。システムエンジニア。自転車走行中に自動車とぶつかり、外傷性脳損傷を生じ入院となった。作業療法は受傷後20日目から開始。麻痺はみられない。病棟では、食事、更衣、整容、排泄などは自立しているが、トイレや病室の場所が覚えられない、今日の日付が分からない、担当者の顔は分かっているが名前が覚えられない、などがみられた。
4 この患者に行う評価で必要性が低いのはどれか。
1.RBMT
2.前頭葉機能検査(FAB)
3.Trail making test(TMT)
4.標準高次動作性検査(SPTA)
5.Mini mental state examination(MMSE)
解答4
解説
外傷性脳損傷では、前頭葉や側頭葉は損傷されやすく、前頭葉機能に関する評価を優先的に行う。また、症例はトイレや病室の場所を覚えられない、今日の日付がわからない、担当者の顔はわかっているが名前を覚えられないことからそれに関連した検査も行う必要がある。
1.× RBMT(Rivermead behavioural memory test:リバーミード行動記憶検査)は日常生活的な記憶検査である。特に展望記憶の検査項目が含まれている。
2.× FAB(Frontal Assessment Battery at bedside: 前頭葉機能検査)は前頭葉機能に対するスクリーニング検査である。類似課題(概念化)、言語流暢課題、Fist-edge-palm test(運動のプログラミング)、干渉課題、Go-No-Go課題、把握課題(被影響性)の下位6項目で構成されている(※参考:「前頭葉機能検査 Frontal Assessment Battery 」愛宕病院HPより)。
3.× TMT(Trail making test)とは、注意の維持と選択、また、視覚探索・視覚運動性を測定する検査である。
4.〇 正しい。SPTA(Standard Performance Test for Apraxia:標準高次動作性検査)は習慣的動作、着衣、描画などについて検査を行い、失行症を中心とする高次脳機能障害を評価する。症例は、見当識などは見られるが、ADLは自立していることから動作性の障害が見られないため評価を行う必要性は低い。
5× MMSE(Mini mental state examination)は、長谷川式簡易認知機能検査スケールと同様に認知機能や記憶の障害に対するスクリーニングとして用いられる。
次の文により4、5の問いに答えよ。
30代前半の男性。システムエンジニア。自転車走行中に自動車とぶつかり、外傷性脳損傷を生じ入院となった。作業療法は受傷後20日目から開始。麻痺はみられない。病棟では、食事、更衣、整容、排泄などは自立しているが、トイレや病室の場所が覚えられない、今日の日付が分からない、担当者の顔は分かっているが名前が覚えられない、などがみられた。
5 このような症状がある時期に適切な作業療法はどれか。
1.調理
2.日記
3.買い物訓練
4.職業前訓練
5.電車乗車訓練
解答2
解説
前頭葉が障害されると、知能低下、記憶・計算の障害、ワーキングメモリーの低下、見当識障害、注意障害、遂行機能障害、人格変化、感情障害などが症状として見られる。問題文から、記銘力と見当識の障害があると判断し、それらに対するアプローチをする作業療法の活動を選択する。
1.× ADL(調理)は自立しており、何らかの一連の作業について問題があるといったことも述べられていないことから、遂行機能障害などはないと考えられ、手順を重視する調理訓練の必要性は高くない。
2.〇 正しい。日記は適切な作業療法といえる。なぜなら、日記を書くことで、記憶を補助し、一日の行動を思いだす手がかりとなるため。また、想起する事で記憶の訓練になる。
3~5.× 買い物訓練/職業前訓練/電車乗車訓練(社会適応訓練)は、今後必要になってくるものではあるが、今の時期では記銘力と見当識の障害が顕著であり、これらの訓練は難易度が高く、患者の混乱を招く恐れがある。