第47回(H24) 作業療法士国家試験 解説【午前問題26~30】

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26 三角筋付着部よりも近位の上腕骨骨幹部骨折で、中枢骨片が転位する方向はどれか。

1.外転屈曲方向
2.内転内旋方向
3.屈曲外旋方向
4.伸展外旋方向
5.内転外旋方向

解答

解説


1.3~5.× 外転屈曲方向/屈曲外旋方向/伸展外旋方向/内転外旋方向には転位しない。
2.〇 正しい。内転内旋方向に三角筋付着部よりも近位の上腕骨骨幹部骨折で転位する。なぜなら、中枢骨片は大胸筋によって牽引されるため。他にも大結節(棘上筋、棘下筋など)、小結節(大円筋、肩甲下筋)が付着しているが、筋の大きさに依存するため、大胸筋の影響を強く受ける。

 

 

 

 

 

 

 

27 頸髄完全損傷者における残存髄節レベルと感覚残存部位の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

1.C4:肩峰
2.C5:腋窩
3.C6:母指球
4.C7:乳頭
5.C8:胸骨剣状突起

解答1・3

解説

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」より)

1.〇 正しい。肩峰は、C4領域である。
2.× 腋窩は、「C5」ではなくT2領域である。
3.〇 正しい。母指球は、C6領域である。
4.× 乳頭は、「C7」ではなくT4領域である。
5.× 胸骨剣状突起は、「C8」ではなくT7領域である。

 

 

 

 

 

 

28 学習理論の用語として適切でないのはどれか。

1.強化
2.消去
3.否認
4.弁別
5.報酬

解答

解説

学習理論とは?

学習理論とは、何らかの方法で適応的な考え方や行動パターンを繰り返し強化していくことで、それらを習得させる方法をいう。新しい行動や、より適応的な行動が身につく過程を説明する心理学的理論である。治療者がモデルを示し、患者が模倣する。

1.〇 正しい。強化は、学習理論の用語である。強化とは、行動が増加する過程をいい、その要因になったものを正の刺激(報酬)という。逆に行動が減少する過程を弱化といい、その要因になったものを負の刺激(罰)という。
2.〇 正しい。消去は、学習理論の用語である。消去とは、上記の強化によって維持されていた行動が、強化をやめることにより起こらなくなることをいう。
3.× 否認は、防衛機構の用語である。否認とは、容認したくない感情、経験を実際には存在しなかったかのように振る舞うこと。例えば、異性から振られたのに自分から振ったのだと思い込むことである。
4.〇 正しい。弁別は、学習理論の用語である。弁別とは、ある特定の刺激に対する反応を強化し、それ以外の刺激に対しては反応が生じないようにすることである。
5.〇 正しい。報酬は、学習理論の用語である。報酬とは学習を促すために与えられる正の刺激である。

 

 

 

 

 

 

 

29 「気管吸引のガイドライン成人で人工気道を有する患者のための」(日本呼吸療法医学会による)に基づく吸引の適応となる状態で正しいのはどれか。

1.誤嚥した。
2.肺下葉の水泡音を聴取した。
3.努力性呼吸が弱くなってきている。
4.気管チューブ内に分泌物が確認できない。
5.経皮的動脈血酸素飽和度が改善してきている。

解答

解説

1.〇 正しい。誤嚥した場合は適応となる。
2.× 肺下葉の水泡音を聴取した場合は、すでに肺胞内に分泌物があることを示している。気管吸引は「気管分岐部に当たらない位置まで」が対象となる。
3.× 努力性呼吸が「弱くなってきている場合」ではなく「強くなってきている場合」に適応となる。
4.× 気管チューブ内に分泌物が「確認できない場合」ではなく「確認できる場合」に適応となる。視覚的に確認できる(チューブ内に分泌物が見える)場合に適応となる。
5.× 経皮的動脈血酸素飽和度が「改善してきている場合」ではなく「低酸素血症」に適応となる。ガス交換障害がある場合(動脈血ガス分析や経皮酸素飽和度モニタで低酸素血症を認める場合)に適応となる。

適応となる状態とそのアセスメント

1)患者自身の咳嗽やその他の侵襲性の少ない方法を実施したにもかかわらず、気道内から分泌物を喀出することが困難であり、以下の所見で気管内または人工気道内に分泌物があると評価された場合に適応となる。1 〜 2 時間毎というように時間を決めてルーチンに行うべきではなく、必要と判断された状況においてのみ気管吸引を行うことを推奨する(1B)。
ⅰ)努力性呼吸が強くなっている(呼吸仕事量増加所見:呼吸数増加、浅速呼吸、陥没呼吸、補助筋活動の増加、呼気延長など)。
ⅱ)視覚的に確認できる(チューブ内に分泌物が見える)。
ⅲ)胸部聴診で気管から左右主気管支にかけて分泌物の存在を示唆する副雑音(低音性連続性ラ音:rhonchi)が聴取される。または、呼吸音の減弱が認められる。
ⅳ)気道分泌物により咳嗽が誘発されている場合であり、咳嗽に伴って気道分泌物の存在を疑わせる音が聴こえる(湿性咳嗽)。
ⅴ)胸部を触診しガスの移動に伴った振動が感じられる。
ⅵ)誤嚥した場合
ⅶ)ガス交換障害がある。動脈血ガス分析や経皮酸素飽和度モニタで低酸素血症を認める。
ⅷ)人工呼吸器使用時:
a)量設定モード使用の場合:気道内圧の上昇を認める。
b)圧設定モード使用の場合:換気量の低下を認める。
c)フローボリュームカーブで、特徴的な “ のこぎり歯状の波形 ” を認める。
2)喀痰検査のためのサンプル採取のため。

(※引用:気管吸引ガイドライン(成人で人工気道を有する患者のための)より)

 

 

 

 

 

 

 

30 糖尿病患者にみられる病態で運動負荷が禁忌となるのはどれか。

1.高血圧症
2.脳梗塞後遺症
3.ケトアシドーシス
4.閉塞性動脈硬化症
5.糖尿病性神経障害

解答

解説

運動療法の絶対的禁忌

・眼底出血あるいは出血の可能性の高い増殖網膜症・増殖前網膜症。
・レーザー光凝固後3~6カ月以内の網膜症。
・顕性腎症後期以降の腎症(血清クレアチニン:男性2.5mg/dL以上、女性2.0mg/dL以上)。
・心筋梗塞など重篤な心血管系障害がある場合。
・高度の糖尿病自律神経障害がある場合。
・1型糖尿病でケトーシスがある場合。
・代謝コントロールが極端に悪い場合(空腹時血糖値≧250mg/dLまたは尿ケトン体中等度以上陽性)。
・急性感染症を発症している場合。(※参考:「糖尿病患者さんの運動指導の実際」糖尿病ネットワーク様HPより)

1.× 高血圧症は禁忌とはならない。
2.× 脳梗塞後遺症は禁忌とはならない。ちなみに、心筋梗塞など重篤な心血管系障害がある場合に禁忌となる。
3.〇 正しい。ケトアシドーシスは糖尿病患者にみられる病態で運動負荷が禁忌となる。1型糖尿病でケトーシスがある場合に当てはまる。ちなみに、ケトーシスとは、体内のケトン体が何らかの原因で増加している状態をいう。激しい運動や糖質制限でもケトーシスになることがある。一方、ケトアシドーシスとは、ケトーシスがかなり進んだ状態になり、体内が酸性になった重症の状態といえる。つまり重症度の違いである。
4.× 閉塞性動脈硬化症は禁忌とはならない。むしろ、閉塞性動脈硬化症に対し運動療法は推奨される。閉塞性動脈硬化症とは、血液の通り道が狭窄、閉塞することにより、組織や臓器全体に血液が行き渡らなくなって(虚血)障害を起こす病気である。
5.× 糖尿病性神経障害は一概に禁忌とはならない。高度の糖尿病自律神経障害がある場合に禁忌となる。ちなみに、糖尿病性神経障害とは、糖尿病に合併する末梢神経障害である。症状は、①眼筋・眼瞼挙筋麻痺、③下肢の腱反射低下、④振動覚障害、しびれなどが特徴である。上肢よりも下肢,近位部よりも遠位部が障害されやすい。感覚障害は、手部や足部に左右対称におこることが多い。

閉塞性動脈硬化症とは?

閉塞性動脈硬化症は、手や足の血管の動脈硬化により、狭窄(血管が狭くなる)や閉塞(血管が詰まる)を起こして、血液の流れが悪くなり、手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなる病気である。下肢の慢性虚血による間欠性跛行が発症症状であることが多く、虚血が進行すると壊死に至る。50~70歳代の男性、糖尿病症例に多くみられる。太ももの付け根(大腿動脈)や足の甲(足背動脈)を触診し、脈が触れないことで診断し、確定診断には血管造影検査を行う。

【病期】
Ⅰ期:「しびれ」「冷感」。
Ⅱ期:「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」。一定距離を歩くと脚が傷み、休むとまた歩けるようになる。
Ⅲ期:「安静時疼痛」。安静にしていても脚に痛みが生じる。
Ⅳ期:「潰瘍」「壊疽」。血液が足の先に行かないので、足に潰瘍ができ、ついには足が腐ってしまう。

【治療】
まず動脈硬化の原因である糖尿病・高血圧・脂質異常症の治療を行う。喫煙者は禁煙する。初期の手足の冷感やしびれには血管拡張薬や血液を固まりにくくする薬(抗血小板剤)を用いる。また歩くことによって、側副血行路が発達し血行の流れの改善をはかる。

(※参考:「閉塞性動脈硬化症」厚生労働省HPより)

 

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