第46回(H23) 作業療法士国家試験 解説【午前問題46~50】

 

46 境界性パーソナリティ障害の作業療法の目的で正しいのはどれか。

1.対人距離の確保
2.失敗体験の克服
3.生活技能の獲得
4.居住環境の調整
5.課題集団への参加

解答

解説

境界性パーソナリティ障害

 境界性パーソナリティ障害では、感情の不安定性と自己の空虚感が目立つ。こうした空虚感や抑うつを伴う感情・情緒不安定の中で突然の自殺企図、あるいは性的逸脱、薬物乱用、過食といった情動的な行動が出現する。このような衝動的な行動や表出される言動の激しさによって、対人関係が極めて不安定である。見捨てられ不安があり、特定の人物に対して依存的な態度が目立ち、他者との適切な距離が取れないなどといった特徴がある。

【関わり方】
患者が周囲の人を巻き込まないようにするための明確な態度をとる姿勢が重要で、また患者の自傷行為の背景を知るための面接が必要である。

1.〇 正しい。対人距離の確保は、境界性パーソナリティ障害の作業療法の目的である。なぜなら、境界性パーソナリティ障害は対人関係が不安定で、集団作業では問題を起こすことが多いため。また、特定の人物に対して強い依存心を抱く傾向があり、またそれが裏切られたと感じた時には強い怒りをきたす。このため、対人距離を確保し、過度の依存を形成しないよう注意が必要である。
2.× 失敗体験の克服することの優先度が低い。なぜなら、失敗体験はある程度のストレスが加わり、行動化が起こりやすいため。行動化とは、情緒的葛藤やストレス因子に対して内省することによってではなく、行為によって対処するもので、不適切な形で現れた防衛機制の1つである。具体例として、診察室から出ていってしまったり、診察の場で沈黙を続けたりするなどである。したがって、行動化は、自己破壊的な側面(睡眠薬の自殺やリストカット)を助長する可能性がある。治療では衝動性をコントロールし、より高い自律性の獲得を目標とする。
3~4.× 生活技能の獲得する/居住環境の調整することの優先度が低い。なぜなら、境界性パーソナリティ障害の基本的な日常生活は障害されていないため。
5.× 課題集団への参加することの優先度が低い。むしろ、集団作業では問題を起こすことが多いため、個別の作業療法ができるように配慮する。

 

 

 

 

 

 

47 気分障害について正しいのはどれか。

1.大うつ病は男性に多い。
2.躁病の思考障害には観念奔逸がある。
3.季節性感情障害の症状は冬に改善する。
4.大うつ病の思考障害には思考途絶がある。
5.仮性認知症は双極性感情障害に出現しやすい。

解答

解説

MEMO

 気分障害とは、気分の変動によって日常生活に支障をきたす病気の総称である。うつ状態だけが続くものを「うつ病」、躁状態とうつ状態をくり返すものを「双極性障害」などと分類される。気分障害におけるうつ病(単極性)と双極性障害について、双極性障害は障害有病率約1%で、うつ病よりも若い時期に発症しやすく、性差は認められていない。遺伝素因はうつ病よりも2倍以上の関与が考えられている。

1.× 大うつ病は、「男性」ではなく「女性」に多い。ちなみに、男女比は1:2程度である。
2.〇 正しい。躁病の思考障害には観念奔逸がある。観念奔逸とは、考えが次から次へとほとばしり出てくるが、考え全体としてのまとまりがなくなるものをいう。
3.× 季節性感情障害(季節性うつ病)の症状は冬に「改善する」のではなく「増悪する」。季節性感情障害(季節性うつ病)は日照時間が短くなると再燃しやすい。日照時間が短くなる冬に抑うつ状態が悪化し、翌年の春に回復するのは特徴的である。
4.× 思考途絶があるのは「大うつ病」ではなく「統合失調症」である。思考途絶とは、突然思考が停止するものでる。ちなみに、大うつ病でみられるのは、思考制止(思考がなかなか前に進まない状態)である。
5.× 仮性認知症は、双極性感情障害に「出現しやすい」のではなく「出現しにくい」。仮性認知症とは、制止の強い高齢者のうつ病患者が、質問に答えるのに時間がかかり、あたかも認知症のようにみえる状態をいう。仮性認知症は、高齢者のうつ病で反応が鈍いなどの症状により、認知症と間違えられるような状態をいうことが多い。うつ病に付随する身体症状(睡眠障害、倦怠感、食欲不振など)の訴えが多くて、背景にある抑うつ気分などの精神症状が表面に現れないものをいう。老年期のうつ病にとりわけ多いわけではなく、もともと「身体症状だけにとらわれず、背景にある精神症状も見逃すな」という警告から出た用語である。

躁病の特徴

①異常に高揚した、開放的な、または怒りっぽい気分の持続
②過度の自尊心・誇大的思考
③睡眠欲求の減少
④多弁
⑤観念奔逸(考えが次から次へとほとばしり出ること)
⑥注意散漫
⑦目標指向性の異常亢進
⑧快楽的活動への没頭

 

 

 

 

 

 

48 うつ状態の作業療法における留意点で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.生活に関連する活動を行う。
2.気分転換の方法を検討する。
3.社会適応のための耐性を高める。
4.病前に得意だったことを優先する。
5.他者との競争を作業に取り入れる。

解答1・2

解説

うつ病の作業療法について、うつ病では意欲低下、精神運動抑制などの症状のため、自己評価が低く、疲労感が強い。そのため、負荷が小さく、自信を回復させるような作業が適切である。病前のようには作業ができないことから自責や自信を無くしてしまうことがあるため配慮が必要である。

うつ病の作業療法の選択基準

工程がはっきりしたもの。
短期間で完成できるもの。
安全で受け身的で非競争的なもの。
軽い運動。

1.〇 正しい。生活に関連する活動を行う。なぜなら、うつ病の作業療法は、安全で受け身的で非競争的なものが望ましいため。また、生活に関連する活動は、日常生活の中で回復感が実感できる。
2.〇 正しい。気分転換の方法を検討する。なぜなら、一般的な健常者の気分転換の方法(旅行や映画、外出など)では、うつ状態の患者の場合だと負担が大きいため。気楽に「旅行でも行ってきたら」「飲み会に行ったら」などと言ってはいけない。
3.× 社会適応のための耐性を高めることの優先度は低い。なぜなら、うつ病の患者はそもそも几帳面で完璧主義、責任感が強い性格にかかりやすいため。また、うつ状態の患者は意欲低下、精神運動制止などの症状があり、自己評価が低く、疲労感が強い。そのため、負荷が小さく自信を回復させるような作業を行っていく。
4.× 病前に得意だったことを優先する必要はない。なぜなら、病前に得意だったことができない自分と比較してしまい、より自信喪失する可能性が高いため。
5.× 他者との競争を作業に取り入れることの優先度は低い。なぜなら、他者との競争は、頑張りすぎて疲労感を高め、自己評価を低下させる可能性が高いため。

 

 

 

 

 

 

49 うつ状態の悪化を示す特徴はどれか。2つ選べ。

1.大声で話す。
2.妄想が出現する。
3.場当たり的な行動を行う。
4.作業に取り組める時間が増える。
5.声かけに対する反応が遅くなる。

解答2・5

解説

うつ病の症状について

感情面:抑うつ、不安、焦燥。
意欲面:意欲低下(日内変動があり特に朝が悪い)、自殺念慮。
思考面:微小妄想(罪業、貧困、心気)、思考抑止、離人。
身体面:不眠(早期覚醒が多い)、頭重感、めまい、倦怠感。

1.× 大声で話すことは操転(躁状態)でみられる。うつ状態の患者は、自信がなく、ほそぼそとこもったように話すのが特徴であり、通常の声の大きさに戻ることは改善といえるが、大声で話すことは改善とは一概にいいにくい。
2.〇 正しい。妄想が出現することは、うつ状態の悪化を示す特徴である。妄想の出現は増悪傾向を示す。うつ病の特徴的な妄想として、①貧困妄想:お金がない、自分は貧乏だと思い込む妄想。②心気妄想:自分が病気にかかっているのではないかと強く思い込む妄想。③罪業妄想:自分が取り返しのつかない罪を犯してしまった、自分は罪深い存在であると思い込む妄想があげられる。
3.× 場当たり的な行動を行うことは操転(躁状態)でみられる。「うつ病」、躁状態とうつ状態をくり返すものを「双極性障害」などと分類される。
4.× 作業に取り組める時間が「増える」のではなく「減少する」とうつ状態の悪化を示す特徴である。なぜなら、うつ状態の患者は疲労を感じやすいため。
5.〇 正しい。声かけに対する反応が遅くなることは、うつ状態の悪化を示す特徴である。抑うつ気分が増大していると考える。

 

 

 

 

 

 

50 神経症性障害の特徴で正しいのはどれか。2つ選べ。(※不適切問題:解3つ)

1.解離性障害では健忘が生じる。
2.強迫性障害では失声が生じる。
3.社会恐怖では他人との会食を避ける。
4.全般性不安障害ではパニック発作が生じる。
5.外傷後ストレス障害は1か月以内に改善する。

解答1・3・4

解説

神経症性障害とは?

神経症性障害(神経症)とは、不安障害、解離性障害、離人症性障害、身体表現性障害などを総称していう。心因性の機能障害であり、ストレスが原因になり、様々な症状をあらわれる。例えば、恐怖、不安、パニック発作、強迫観念、抑うつ、記憶の喪失などである。神経症性障害患者は、基本的な心身機能や身辺処理能力には問題のない場合が多い。作業療法導入時には、まずは症状に対しての対処法ができているかどうかを評価する。その後、就労の可能性や障害の根本的な原因となっている精神内界の評価を行う流れとなる。

1.〇 正しい。解離性障害では健忘が生じる。解離性障害とは、症状の原因となる身体的障害がなく、ストレスの多い出来事などの心理的要因があることを前提条件として、統合的な自己同一感、身体運動のコントロール感、直感的感覚の意識などが、部分的あるいは完全に失われた状態をいう。健忘・遁走・Ganser症候群(ガンザー症候群:拘禁状態などで生じる的外れ応答と小児症)を呈する。もちろんすべてが生じるわけではない。
2.× 強迫性障害では失声が生じることはない。強迫性障害とは、自らは不合理だと思っている考えが繰り返し浮かび(強迫観念)、それを打ち消すためにやはり不合理な行為を繰り返してしまうこと(強迫行為)をいう。ちなみに、失声を生じるのは転換性障害である。転換性障害は、無意識領域下に抑圧されたストレスや葛藤が、知覚あるいは随意運動系の身体症状に変換された反応である。①演技性、②自己愛性、③依存性などの特徴的な性格がみられることも多く、性格の未熟性が身体症状の出現の原因になりうる。
3.〇 正しい。社会恐怖では他人との会食を避ける。社会恐怖とは、知らない人の前で他人から注目されるような状況を恐れるものである。赤面恐怖症といわれてきたものに近い。
4.〇 正しい。全般性不安障害ではパニック発作が生じる。全般性不安障害とは、多数の出来事や活動に対する過剰な不安および心配が、ほぼ毎日6か月以上続き、制御することができない状態である。
5.× 外傷後ストレス障害(PTSD)の症状は「1か月以内に改善する」のではなく「一か月以上続いた状態」をいう。実際に死に直面するような体験や、大災害などを体験した人が、その出来事を再体験(フラッシュバック)したり、似たような状況を回避しようとしたり、過覚醒状態などが、1か月以上続いた状態をいう。喜びや楽しみを感じられないことを「アンヘドニア(無快楽症)」という。通常6か月以内に発症し,1か月以上継続する。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)