第46回(H23) 作業療法士国家試験 解説【午前問題41~45】

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41 薬物依存で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.パニック障害になりやすい。
2.強迫性障害の人が陥りやすい。
3.薬物摂取の自制が困難である。
4.使用頻度と使用量は反比例する。
5.薬物中止によって離脱症状が出現する。

解答3・5

解説
1~2.× パニック障害になりやすい/強迫性障害の人が陥りやすいといったことはない。薬物依存では①身体依存、②精神依存、③耐性の形成が問題となる。
3.〇 正しい。薬物摂取の自制が困難である。なぜなら、②精神依存があるため。
4.× 使用頻度と使用量は、「反比例」ではなく「比例」する。なぜなら、耐性が形成されるため。同じ効果を得るために使用量が増え、使用頻度が増えれば1回の使用量も増えていく。
5.〇 正しい。薬物中止によって離脱症状が出現する。なぜなら、①身体依存があるため。離脱症状とは、生体が薬物に適応して、薬物の存在下で生理的平衡が保たれる状態になったあと、急に薬をやめることにより、生理的平衡が乱れて身体症状が生じるようになることをいう。

 

 

 

 

 

 

42 アルコール依存症患者の作業療法の目的で優先度が低いのはどれか。

1.自尊感情の向上
2.認知能力の向上
3.基礎体力の向上
4.現実認識の向上
5.ストレス耐性の向上

解答

解説

アルコール依存症患者の治療

アルコール依存症患者の治療において最も重要なことは断酒である。作業療法を行うにあたっては、離脱症状の有無、身体状態や身体合併症の確認、患者の社会的背景の把握、特有の心理状態への理解が重要である。患者が断酒し、社会復帰できるような作業療法を行っていく。

1.× 自尊感情の向上は作業療法の目的である。なぜなら、自尊感情の低下を紛らわすために再飲酒となりやすいため。
2.〇 正しい。認知能力の向上は、選択肢の中で最も優先度が低い。なぜなら、アルコール依存症において認知機能は維持されやすいため。ただし、アルコール依存症によるコルサコフ症候群などで健忘症候群を発症することもある。
3.× 基礎体力の向上は作業療法の目的である。なぜなら、連続的な飲酒により、身体的合併症や低栄養状態も予想されるため。外来患者でも運動習慣がないものが多いため、体力の回復は自信の回復につながる。
4.× 現実認識の向上は作業療法の目的である。現実認識とは、自分がアルコール飲酒のために様々な問題を起こしていることを認め、断酒以外に解決する方法がないことを理解することである。
5.× ストレス耐性の向上は作業療法の目的である。なぜなら、ストレス耐性が低下した場合、より飲酒再開への誘因となるため。

 

 

 

 

 

43 入院後2週の統合失調症患者。
 作業療法の初期評価項目で優先度が低いのはどれか。

1.生活技能
2.現実検討
3.対人緊張
4.薬物効果
5.身体感覚

解答

解説

本症例のポイント

本症例は、入院後2週の統合失調症患者である。この時期は、回復期前期であり、ようやく消耗状態が軽減してきた時期である。

1.〇 正しい。生活技能(日常生活をスムーズに行うために必要な行動)は、選択肢の中で最も優先度が低い。なぜなら、生活技能(日常生活をスムーズに行うために必要な行動)は、回復期後期の評価項目であるため。
2.× 現実検討(現実と想像を区別する能力)は、作業療法の初期評価項目である
3.× 対人緊張(緊張しないで人と場を共有できる状態)は、作業療法の初期評価項目である
4.× 薬物効果は、作業療法の初期評価項目である。薬物療法により、急性期の陽性症状が治まった時期である。 この時期は、些細な刺激により再燃しやすく、また陰性症状も目立ち始めるようになるため、薬物の変更が行われる可能性が高い。そのため、薬物効果は重要な評価項目である。
5.× 身体感覚(自分の身体のある部分が通常とは違う感覚)は、作業療法の初期評価項目である

統合失調症の消耗期

①安心感、満足感の提供。
②生活リズムの回復
③身体感覚の回復
④身辺処理能力の回復

 

 

 

 

 

 

44 統合失調症患者。織物作業中に突然「この糸は腐っている」と叫んだ。
 この症状はどれか。

1.心気妄想
2.妄想着想
3.被害妄想
4.関係念慮
5.憑依妄想

解答

解説

1.× 心気妄想とは、自分が病気にかかっているのではないかと強く思い込む妄想である。主にうつ病にみられる。
2.〇 正しい。妄想着想とは、突然頭に浮かんだことをそのまま確信することをいう。例えば、「自分は世界を変える運命にある」などと確信する。本症例は、統合失調症の患者が作業中に「糸が腐っている」と実際には起こりえないことを思い叫んでいる状態である。
3.× 被害妄想とは、他人から被害を受けているという妄想である。自分が誰かに危害や悪意を持たれていたり、危害を与えられるのではないかと考えるものである。
4.× 関係念慮とは、周囲のささいな出来事や、他人の身振りや言葉など、自分と無関係のものが、自分と関わりがあるのではないかと疑惑をもつことである。
5.× 憑依妄想(ひょういもうそう)とは、自分に人間霊や動物霊、悪霊などがとり憑いていると感じるものである。

 

 

 

 

 

 

45 パーソナリティ障害とその特徴の組合せで正しいのはどれか。

1.妄想性パーソナリティ障害:他者への過度の依存
2.シゾイドバーソナリティ障害:魔術的思考
3.境界性パーソナリティ障害:芝居がかった態度
4.自己愛性パーソナリティ障害:共感の欠如
5.強迫性パーソナリティ障害:批判に対する恐怖

解答

解説
1.× 他者への過度の依存は、「妄想性パーソナリティ障害」ではなく「依存性パーソナリティ障害」である。妄想性パーソナリティ障害は、他人に対して常に疑いをもち、他人の言動を悪い方に解釈する傾向をもつ。
2.× 魔術的思考は、「シゾイドパーソナリティ障害」ではなく「失調型パーソナリティ障害」である。シゾイドパーソナリティ障害は、きわめて内向的で人との接触に乏しく、社会技能の障害が顕著であるものである。社会的関係への関心のなさ、人との関わりが苦手で孤独を選ぶ傾向、そして感情的な平板さを特徴とする障害である。
3.× 芝居がかった態度は、「境界性パーソナリティ障害」ではなく「演技性パーソナリティ障害」である。境界性パーソナリティ障害とは、対人関係・自己像・感情の不安定・著しい衝動性を特徴とする。境界性パーソナリティ障害の患者は、情緒が不安定で衝動性が亢進し、対人関係を良好に維持することが困難である。衝動的な浪費、奔放な異性関係、自傷行為、見捨てられ不安などがみられる。
4.〇 正しい。自己愛性パーソナリティ障害は、共感の欠如がみられる。自己愛性パーソナリティ障害は、自己の重要性に関する誇大な感覚、賞賛されたいという欲求などを特徴とする。自分が素晴らしいと誇大に思い、自己中心的に振る舞う傾向にある。
5.× 批判に対する恐怖は、「強迫性パーソナリティ障害」ではなく「回避性パーソナリティ障害」である。ちなみに、強迫性パーソナリティ障害は、仕事の完了を妨げたりするような規則性、完全主義、およびコントロールへの広汎なとらわれを特徴とする。

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