第46回(H23) 作業療法士国家試験 解説【午後問題26~30】

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26 手指の変形性関節症について正しいのはどれか。

1.安静時痛は少ない。
2.女性よりも男性に多い。
3.母指CM関節症が最も多い。
4.Heberden結節はPIP関節に起こる。
5.Bouchard結節はDIP関節に起こる。

解答

解説

手指の変形性関節症とは?

手指の変形性関節症は大きく2種類あり、①DIP関節の変形(ヘバーデン結節)と、②PIP関節の変形(ブシャール結節)がある。これらの関節と親指の付け根がこわばり、ときに痛みを伴うことがある。一般的に手首・MP関節、手掌の関節は侵されない。治療としては、①関節可動域を改善する訓練を温水中で行う(運動中の痛みを軽減しできるだけ関節を柔軟にしておくため)、②安静にする、③間欠的に副子で固定して変形を予防する、④鎮痛薬や非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を用いて痛みや腫れを軽減するなどがあげられる。

1.〇 正しい。安静時痛は少ない。運動時に痛むことが多い。
2.× 女性よりも男性に多いといった報告はなく、「性差はない」。
3.× 最も多いのは、「母指CM関節症」ではなく「DIP関節」である。
4.× Heberden結節(へバーデン結節)は「PIP関節」ではなく「DIP関節」に起こる。
5.× Bouchard結節(ブシャール結節)は「DIP関節」ではなく「PIP関節」に起こる。

 

 

 

 

 

 

27 関節リウマチで障害されにくいのはどれか。

1.手関節
2.肘関節
3.膝関節
4.環軸関節
5.遠位指節間関節

解答

解説

関節リウマチの関節破壊と変形

①環軸椎亜脱臼、②肩関節可動域制限、③肘関節屈曲拘縮、④手関節尺側偏位、⑤手指変形、⑥股関節屈曲拘縮、⑦膝関節内外反変形・屈曲拘縮、⑨足・足趾変形などがある。

1.× 手関節は、尺側偏位となりやすい。尺骨頭が背側脱臼し、疼痛や前腕回外障害、伸筋腱断裂の原因となる。
2.× 肘関節は、屈曲拘縮となりやすい。
3.× 膝関節は、内外反変形・屈曲拘縮となりやすい。
4.× 環軸関節は、亜脱臼となりやすい。関節リウマチの死因としても知られ、頚椎可動域運動を行わないほうが良い。特に、頸部の屈曲は禁忌である。
5.〇 正しい。遠位指節間関節(DIP関節)は、関節リウマチで障害されにくい。DIP関節の変形は、ヘバーデン結節を疑う。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

28 手根管症候群について正しいのはどれか。

1.掌側骨間筋が萎縮する。
2.女性よりも男性に多い。
3.小指に知覚障害が認められる。
4.手を振っても疼痛は軽減しない。
5.手関節掌屈位でしびれ感が誘発される。

解答

解説

手根管症候群とは?

手根管症候群は、正中神経の圧迫によって手指のしびれや感覚低下などの神経障害が生じる。手根管(手関節付近の正中神経)を4~6回殴打すると、支配領域である母指から環指橈側および手背の一部にチクチク感や蟻走感が生じる(Tinel徴候陽性)。Tinel徴候のほか、ダルカン徴候(手根管部を指で圧迫するとしびれ感が増悪する)やファーレン徴候(Phalen徴候:手首を曲げて症状の再現性をみる)も陽性となる場合が多い。

1.× 掌側骨間筋が萎縮しない。なぜなら、掌側骨間筋は尺骨神経支配であるため。手根管症候群は、正中神経障害であるため、母指球筋が萎縮する。
2.× 逆である。「男性」よりも「女性」に多い。40~60歳の女性に多く、男女比7:3である。
3.× 知覚障害が認められるのは、「小指」ではなく「母指・示指・中指・環指の掌側」である。
4.× 手を振ると、疼痛の軽減が起こる。手を振ったり、指を動かしたりすると痛みが軽減することがある。なぜなら、手根管内で傷んだ神経が、動かすことで循環が良くなったり、圧迫が一時的に軽減するため。
5.〇 正しい。手関節掌屈位でしびれ感が誘発される。手関節を掌屈すると約1分でしびれ感や疼痛が現れる。これをPhalen徴候(ファーレン徴候)という。

 

 

 

 

 

 

29 Guillain-Barré症候群で最も頻度が高い症状はどれか。

1.企図振戦
2.聴神経麻痺
3.外眼筋麻痺
4.顔面神経麻痺
5.Babinski徴候陽性

解答

解説

”Guillain-Barré症候群とは?”

Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である。

(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)

1.× 企図振戦(安静時には出現せずに、動作を起こす時に生じる3~6Hzの振戦)は、小脳障害の症状(小脳失調)である。
2.× 聴神経麻痺は起こりにくい。脳神経の中でも聴・視神経が障害されにくい。
3.× 外眼筋麻痺は、選択肢の中で最も頻度が高いとはいえない。まれに動眼神経障害により外眼筋も障害される。
4.〇 正しい。顔面神経麻痺は、Guillain-Barré症候群で最も頻度が高い。脳神経麻痺の症状としては、顔面神経麻痺・球麻痺(構音・嚥下障害)、外眼筋麻痺が起こる。
5.× Babinski徴候陽性は、錐体路(上位運動ニューロン)の障害で起こる。Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。下位運動ニューロンが主に侵され、四肢末梢優位の筋力低下から自覚することが多い。

 

 

 

 

 

 

30 車椅子移動の介助で適切なのはどれか。(※不適切問題:解なし)

1.急な下り坂では前向きのまま下る。
2.急な上り坂ではキャスターを上げる。
3.不整地では平地よりもスピードを上げて押す。
4.片流れ斜面は上側の車輪に重心がかかるように押す。
5.歩道の縁石を降りる場合は前向きでも後ろ向きでもよい。

解答 解なし(採点対象外)
理由:選択肢の表現があいまいで正解を得ることが困難なため。

解説

(※画像引用:公益財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団様HP)

1.× 急な下り坂では、「前向きのまま」ではなく「後ろ向き」に下る。ブレーキをかけながら下る。
2.× 急な上り坂では、キャスターを上げる必要はなく、「車椅子を下側から押す」。
3.× 不整地では、平地よりもスピードを上げて押す必要はなく、「キャスターを挙げてゆっくり押す」。
4.× 片流れ斜面は、上側の車輪に重心がかかるように押す必要はない。上側の車輪(駆動輪)に重心をかける必要はあるが、上側の車輪にはキャスターも含まれるため、あいまいな表現ということで、採点から除外されている。
5.× 歩道の縁石を降りる場合は、「前向きでも後ろ向きでもよい」というわけではなく、「必ず後ろ向き」で降りる。なぜなら、落下防止のため。

 

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