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次の文により15、16問いに答えよ
25歳の女性。対人関係が不安定で、母親に甘えたかと思うと急に怒り出すなど、感情が変わりやすく、時に激しく落ち込むことが多かった。漠然とした不安感を訴え、自傷行為を繰り返すため精神科外来を受診し、入院することとなった。
16 入院後2週経過し作業療法が開始された。
この患者の作業療法導入時の対応で適切でないのはどれか。
1.特定の相談相手を決める。
2.作業療法の目標を話し合う。
3.チームで一貫した対応を行う。
4.集団プログラムへの参加を促す。
5.実施頻度と時間を明確に決める。
解答4
解説
境界性パーソナリティ障害では、感情の不安定性と自己の空虚感が目立つ。こうした空虚感や抑うつを伴う感情・情緒不安定の中で突然の自殺企図、あるいは性的逸脱、薬物乱用、過食といった情動的な行動が出現する。このような衝動的な行動や表出される言動の激しさによって、対人関係が極めて不安定である。見捨てられ不安があり、特定の人物に対して依存的な態度が目立ち、他者との適切な距離が取れないなどといった特徴がある。
【関わり方】
患者が周囲の人を巻き込まないようにするための明確な態度をとる姿勢が重要で、また患者の自傷行為の背景を知るための面接が必要である。
1.〇 特定の相談相手を決める。なぜなら、何人もの相談相手がいると、患者は自分の欲求が通るスタッフを見つけるまで同じ欲求を続けることになるため。
2.5.〇 作業療法の目標を話し合う/実施頻度と時間を明確に決める。なぜなら、作業療法の枠組みをつくり、患者の逸脱行動を防ぐため。患者が周囲の人を巻き込まないようにするための明確な態度をとる姿勢が重要である。
3.〇 チームで一貫した対応を行う。なぜなら、要求を通してしまったスタッフがいると、より要求のエスカレートが考えられるため。
4.× 集団プログラムへの参加を促す優先度は低い。なぜなら、患者が周囲の人を巻き込まないようにするため。境界性パーソナリティ障害は、他者への関心が高く、集団作業を好むが、対人関係でトラブルを起こして長続きしないことが多い。
17 19歳の男性。Asperger症候群。普通高校を中位の成績で卒業し、就職したが、指示どおりに仕事ができない、しつこく同じ話を繰り返して同僚を怒らせるなどの対人トラブルが絶えず解雇され、職を転々としている。
作業療法で工夫する点はどれか。
1.表現活動を促す。
2.競争的作業を取り入れる。
3.集団のリーダー役を担わせる。
4.説明を箇条書きにして手渡す。
5.興味のあることを自由にしてもらう。
解答4
解説
Asperger症候群(アスペルガー症候群)の特徴(小児自閉性障害と異なる点)
①言語発達の遅れはない、②知能は正常であることが多い、③対人接触に無関心というよりはむしろ常軌を逸し一方的に接近しようとする、などのことが挙げられる。
また、興味・関心の幅が狭いので新たな作業の導入には抵抗が強く、その一方で同じ作業を続ける力はもともと(こだわりが)ある。作業や通所が続かなくなる理由には、対人関係技能が低下しているために、困っていても援助を求める方法を知らないため、本人の無理のない範囲でコミュニケーション能力をつけていく作業療法が必要である。
1.× 表現活動を促す優先度は低い。なぜなら、Asperger症候群は、自分の感情をうまく表現することが難しいため。
2.× 競争的作業を取り入れる優先度は低い。なぜなら、競争的作業では、自尊心が傷ついたり、他者への暴言等不適切な行動をとるおそれがあるため。
3.× 集団のリーダー役を担わせる優先度は低い。なぜなら、人の気持ちを汲み取ることが難しいため。
4.〇 正しい。説明を箇条書きにして手渡す。Asperger症候群は、口頭での指示を受けたり、長い説明文を読んでも実際にとるべき行動に移しかえることは苦手である。説明を一動作ごとに、箇条書きにして示すことが必要である。
5.× 興味のあることを自由にしてもらう優先度は低い。なぜなら、他者の迷惑を考えずに勝手に行動してしまう可能性が高いため。興味があっても悪いことはしないようにアプローチする。
18 22歳の男性。統合失調症。作業療法の開始後、しばらくして「周りの人が自分の悪口を言っている気がする」と訴えてきた。
作業療法士の対応として適切なのはどれか。
1.訴えを助長しないよう聞き流す。
2.個室に移動させ、作業を継続させる。
3.休憩を取り入れ、周りの人たちの様子を観察させる。
4.勘違いであることを説明し、気にしないよう説得する。
5.周りの人たちに、悪口を言ったかどうかを1人ずつ確認する。
解答3
解説
22歳の男性(統合失調症)
・「周りの人が自分の悪口を言っている気がする」:被害妄想
1.× 訴えを助長しないよう「聞き流す」のではなく「共感する態度」が重要である。病的体験に対して否定したり、説得しても効果はなく、患者の苦しみに共感することが、患者の不安や恐怖を軽減することになる。
2.× 個室に移動させ、作業を継続させる優先度は低い。「周りの人が自分の悪口を言っている気がする」状態で、個室に移動すると、「悪口を聞かせないように対応した」と思う可能性があり、より被害妄想を助長させてしまう。
3.〇 正しい。休憩を取り入れ、周りの人たちの様子を観察させる。まずは作業を中断して周りの人たちの様子を観察させ、被害妄想との距離がとれるようにする。
4.× 勘違いであることを説明し、気にしないよう説得する優先度は低い。幻覚・妄想などは傾聴・受容・共感的態度をとる。過剰な干渉や遊動は負担となるため避ける必要がある。
5.× 周りの人たちに、悪口を言ったかどうかを1人ずつ確認する優先度は低い。なぜなら、誰も悪口を言っていないことになっても、本人は確信しているため。周囲に対する不信感を強めることにつながる。
次の文により19、20問いに答えよ。
70歳の男性。仕事における意欲と作業能率の低下を主訴に来院した。最近、物をよく置き忘れる、金庫の暗証番号を思い出せない、得意先にたどり着けないといったことが多くなってきた。頭部MRIを下図に示す。
19 この画像で顕著にみられる所見はどれか。
1.後頭葉萎縮
2.小梗塞多発
3.脳幹部萎縮
4.前頭葉萎縮
5.側頭葉内側部萎縮
解答5
解説
・70歳の男性。
・意欲と作業能率の低下。
・記銘力の低下。
・側頭葉内側部萎縮。
→アルツハイマー病と疑える。
1.× 後頭葉萎縮の場合、物体失認・相貌失認・色彩失認・運動視障害などを生じやすくレビー小体型認知症に特徴的な所見である。ちなみに、色彩失認は、色知覚の非言語的課題では正常な成績をあげることができ、色彩失認の患者は色覚は保たれているが、見せられた色の名を言えず、検者が言った色を指示することも出来ない状態である。すなわち色覚が保たれているのに、特有の色を持つ物品の形は思い出せるが、その色が思い出せない。
2.× 小梗塞多発の場合、運動障害や感覚障害、言語障害などを起こすことがある。小梗塞はラクナ梗塞とも呼ばれ、高血圧による血管変性や動脈硬化が原因で細い血管が狭くなり、詰まることによって起きる。
3.× 脳幹部萎縮の場合、主な症状は運動失調で、脊髄小脳変性症でみられやすい。
4.× 前頭葉萎縮は、性格変化、 社交性や自発性の低下がみられ、前頭側頭型認知症などでみられる。
5.〇 正しい。側頭葉内側部萎縮は、本症例の画像で顕著にみられる所見である。アルツハイマー型認知症と疑える。
次の文により19、20問いに答えよ。
70歳の男性。仕事における意欲と作業能率の低下を主訴に来院した。最近、物をよく置き忘れる、金庫の暗証番号を思い出せない、得意先にたどり着けないといったことが多くなってきた。頭部MRIを下図に示す。
20 この患者にみられる可能性が高い症状はどれか。
1.幻覚
2.尿失禁
3.希死念慮
4.症状日内変動
5.地誌的見当識障害
解答5
解説
1.× 幻覚は、レビー小体型認知症に特徴的な所見である。子どもや小動物など具体的な幻視が起こる。
2.× 尿失禁は、水頭症に特徴的な所見である。正常圧水頭症は、①認知症、②尿失禁、③歩行障害の三徴がみられる。脳外科的な手術であるシャント術で改善する。
3.× 希死念慮は、うつ病に特徴的な所見である。「体が動かない。死んでしまいたい」=希死念慮と、客観的に理解できないことで死にたいということである。
4.× 症状日内変動は、主に脳血管性認知症やうつ病に特徴的な症状である。
5.〇 正しい。地誌的見当識障害はこの患者にみられる可能性が高い症状である。設問から「得意先にたどり着けないといったこと」も記載されている。地誌的失見当とは、熟知している場所で道に迷う、新しい道順を覚えられない、熟知した場所の見取り図が描けない、熟知した風景や建物を見ても認知できないなどの症状を呈する。地理的障害、地誌的失見当、地誌的見当識障害、広義の地誌的失認などもほぼ同義である。また、地誌的な障害に合併しやすい症状として、同名半盲、半側空間無視、相貌失認がある。