第46回(H23) 理学療法士国家試験 解説【午後問題16~20】

 

16. 75歳の男性。交通事故による第5頸髄レベルでの損傷による四肢不全麻痺。受傷後6か月経過。端座位、手すり使用で立ち上がり動作、食事は太柄のフォークで自立。トイレ動作は見守り。衣服の着脱は介助。自宅内は手すり歩行で移動、屋外は車椅子移動。
 Frankel分類はどれか。

1.A
2.B
3.C
4.D
5.E

解答4

解説

 Frankel分類とは、脊髄損傷の評価尺度の1つである。運動と知覚機能の回復の程度をA~Eの5段階で評価するものである。Aが最も重症(損傷高位以下の完全運動・知覚麻痺)で、Eが正常(反射の異常はあってもよい)である。本症例は、屋内で手すり歩行が可能なため、実用的な運動機能が残存している。よって、Frankel分類は、選択肢4. Dとなる.

Frankel分類

A 運動・知覚喪失:損傷部以下の運動・知覚機能が失われているもの。
B 運動喪失・知覚残存:損傷部以下の運動機能は完全に失われているが、仙髄域などに知覚が残存するもの。
C 運動残存(非実用的):損傷部以下にわずかな随意運動機能が残存しているが、実用的運動は不能なもの。
D 運動残存(実用的):損傷部以下にかなりの随意運動機能が残されており、下肢を動かしたり、あるいは歩行などもできるもの
E 回復:神経学的症状、すなわち運動・知覚麻痺や膀胱・直腸障害を認めないもの。

 

 

 

 

 

 

17.頸髄損傷者がとる動作で肘伸展筋力を必要とするのはどれか。

1.起き上がり
2.弾性回内装具での駆動
3.身体の後方移動
4.身体の前方移動
5.ベッドへの移乗

解答1

解説

ポイント

「肘伸展筋力が必要」ということは、つまり「C6の機能残存レベル」で行える動作を選択する。
C6機能残存レベルは、【主な動作筋】大胸筋、橈側手根屈筋、【運動機能】肩関節内転、手関節背屈、【移動】車椅子駆動(実用レベル)、【自立度】中等度介助(寝返り、上肢装具などを使って書字可能、更衣は一部介助)である。プッシュアップは行えない。

1.〇 正しい。図のような起き上がりは、肘関節伸展筋力を必要である。ちなみに、C6残存レベルでの起き上がり動作は、紐などを前腕に引っ掛けて、肩・肘関節屈曲、手関節背屈運動で代償して行う。
2.× 弾性回内装具での駆動は、肘関節伸展筋力は不必要である。C6機能残存レベルの車椅子駆動は、実用レベルである。肩・肘関節屈曲筋を用いて車いすを駆動できる。
3.× 身体の後方移動は、肘関節伸展筋力は不必要である。身体の後方移動を含めた車椅子上での位置の修正は、車椅子のフレームに手をかけ(図では握っているように見えるが)、左右に体重を移動しながら回旋し、殿部を移動させることができる。
4.× 身体の前方移動は、肘関節伸展筋力は不必要である。身体の前方移動は、主に車椅子上での除圧に用いられることが多い。腕の振りを利用して、肩関節外旋位で肩関節屈曲・外転させれば、肘を屈曲することなく、上体を反り返ることが可能である。
5.× ベッドへの移乗(前方移動のトランスファー)は、肘関節伸展筋力は不必要である。C6機能残存レベルで可能である。このとき、ハムストリングスの十分な柔軟性が確保してないと、膝関節が完全に伸展せず踵がマットレスに食い込んで移動が十分できなくなる。

 

 

 

 

 

18.筋肉に対する伸張法で誤っているのはどれか。

1.右大殿筋
2.右内転筋
3.右縫工筋
4.右大腿直筋
5.右腰方形筋

解答3

解説
1.〇 正しい。右大殿筋を伸張している。大殿筋の【起始】腸骨翼の外面で後殿筋線の後方、仙骨・尾骨の外側縁、仙結節靭帯、腰背筋膜、【停止】腸脛靭帯、大腿骨の殿筋粗面、【作用】股関節伸展、外旋、外転、上部:内転、下部:骨盤の下制である。したがって、右大殿筋を伸張させるには、右股・膝関節を同時に屈曲する。
2.〇 正しい。右内転筋を伸張している。(大)内転筋の【起始】恥骨下枝、坐骨枝、坐骨結節、【停止】恥骨筋線、大腿骨粗線の内側唇全長、内側上顆、【作用】股関節内転、前部:屈曲、後部:伸展である。したがって、右内転筋を伸張させるには、右股関節外転する。
3.× 右縫工筋ではなく、ハムストリングス(大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋)を伸張している。縫工筋の【起始】上前腸骨棘、【停止】脛骨粗面の内側(鵞足を形成)、【作用】股関節屈曲、外転、外旋、膝関節屈曲、内旋である。したがって、右縫工筋を伸張させるには、右股関節を伸展・内転・内旋させる必要がある。
4.〇 正しい。右大腿直筋を伸張している。大腿直筋の【起始】下前腸骨棘および寛骨臼の上縁、【停止】膝蓋骨、脛骨粗面、【作用】膝関節伸展、股関節屈曲である。したがって、右大腿直筋を伸張させるには、右股関節伸展位のまま右膝関節を屈曲する。
5.〇 正しい。右腰方形筋を伸張している。腰方形筋の【起始】腸骨稜と腸腰靭帯、腰椎肋骨突起、【停止】第12肋骨、腰椎肋骨突起、【作用】腰椎を同側に曲げる。両側が働けば腰椎を後ろへ曲げる(腰を反らす)である。したがって、右腰方形筋を伸張させるには、腰椎を伸展させ、反対側を側屈させる。

参考にどうぞ↓

【暗記用】下肢筋の起始・停止・作用・神経を完璧に覚えよう!

 

 

 

 

 

 

 

19. 38歳の女性。左乳癌にて腋窩リンパ節郭清を伴う乳房温存術を行った。術後2か月経過し、左前腕から手にかけて腫脹がみられた。熱感はみられない。
 患肢への治療として誤っているのはどれか。

1.等尺性運動
2.就寝時の挙上
3.弾性サポーター
4.強擦法マッサージ
5.間欠的空気圧迫法

解答4

解説

乳がんの手術後

乳癌手術は、乳房切除・腋窩リンパ節切除する。したがって、リンパ還流が障害されるため、リンパ浮腫や腋窩周辺の瘢痕化や癒着、神経障害による知覚異常などの症状が起こりうる。リンパ浮腫増悪の原因には、ペットの咬傷・ひっかき傷、蚊などの虫刺されによる感染などがあげられる。血圧測定、採血などの刺激によってもリンパ浮腫が生じることがあるため、これらは健側で行うようにする。リンパ浮腫は、手術直後から生じるとは限らず、時間を経てから出現することもある。

1.〇 等尺性運動は優先度が高い。なぜなら、等尺性運動による筋ポンプ作用で血流やリンパ流が増え、浮腫の改善が期待できるため。
2.〇 就寝時の挙上は優先度が高い。なぜなら、就寝時の挙上により、重力を使って循環改善が見込め、浮腫の改善が期待できるため。
3.〇 弾性サポーターは優先度が高い。なぜなら、就寝時の挙上により、圧をかけることで、うっ滞せず浮腫の改善が期待できるため。
4.× 強擦法マッサージは、患肢への治療として誤っている。なぜなら、負荷が高すぎるため。強擦法マッサージは、親指や人差し指、中指による主に筋肉痛などの痛みに対して行う。マッサージで行われる手技のなかでは、やや強めの刺激を身体に与える手技である。
5.〇 間欠的空気圧迫法は優先度が高い。なぜなら、間欠的空気圧迫法や軽擦法マッサージにより、循環改善が見込め、浮腫の改善が期待できるため。

乳房切除術後の注意事項

①患側上肢での血圧測定、採血、注射などは避ける。
②袖口のきつい服や腋窩を締め付ける服は避ける。
③スキンケア、虫刺されに注意する。
④患側上肢では重いものを持たないようにする。
⑤患側上肢の過度の負荷や外傷を避ける。

 

 

 

 

 

 

20.脳機能に低下のない患者が単純な運動課題を学習する過程を図に示す。
 a、b、cの時間変化とその効果との説明で正しいのはどれか。

1.aを短縮すると課題を理解しやすくなる。
2.bを短縮すると運動感覚を把握しやすくなる。
3.bを延長すると運動イメージを忘却しやすくなる。
4.cを短縮すると誤差修正がしやすくなる。
5.cを延長すると運動プログラムを保持しやすくなる。

解答3

解説

1.× aを「短縮」ではなく「延長」すると課題を理解しやすくなる。なぜなら、課題を理解するには多少の時間がかかるため。
2.× bを「短縮」ではなく「延長」すると運動感覚を把握しやすくなる。なぜなら、1回目の試行後すぐにフィードバックすると、誤差や運動プログラミングの修正が間に合わないため。
3.〇 正しい。bを延長すると運動イメージを忘却しやすくなる。1回目の試行と2回目の試行との間を試行間間隔という。1回目の試行後フィードバックまで時間がかかると、1回目の修正箇所を忘れてしまう。これをKR遅延という。
4.× cを「短縮」ではなく「延長」すると誤差修正がしやすくなる。一方で短縮すると、誤差・運動プログラミングの修正が間に合わない。
5.× cを「延長」ではなく「短縮」すると運動プログラムを保持しやすくなる。一方で延長すると、1回からの修正箇所を忘れてしまう。

 

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