第45回(H22) 作業療法士国家試験 解説【午後問題26~30】

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26 Duchenne型筋ジストロフィーのステージ2(厚生省筋萎縮症研究班の機能障害度分類による)で正しいのはどれか。

1.階段は手すりを使用せずに昇降可能である。
2.立ち上がり動作では登はん性起立を認める。
3.歩行時の踵接地から爪先離地は正常に保たれる。
4.歩行時は股関節外旋位を取ることによって遊脚相を補助する。
5.立位では矢状面上の重心線が健常児に比べて前方に移動する。

解答

解説

厚生省「筋萎縮症」対策研究会による障害段階分類

ステージ1 歩行可能 介助なく階段昇降可能(手すりも用いない)
ステージ2 階段昇降に介助(手すり、手による膝おさえなど)を必要とする
ステージ3 階段昇降不能 平地歩行可能 通常の高さのイスからの立ち上がり可能
ステージ4 歩行可能 イスからの立ち上がり不能
(A:独歩で5m以上歩行ができる)
(B:一人では歩けないが、モノにつかまれば歩ける。)
ステージ5 歩行不能 四つ這い可能
ステージ6 四つ這い不能だが、いざり移動可能
ステージ7 這うことはできないが、自力で坐位保持可能
ステージ8 ベッドに寝たままで体動不能 全介助

1.× 階段は手すりを使用せずに昇降可能であるのは、ステージ1である。
2.〇 正しい。立ち上がり動作では登はん性起立を認めるのは、ステージ2(~3)である。Gowers(ガワーズ)徴候(登はん性起立)は、床から起立する時、まず床に手をついて、お尻を高くあげ、次にひざに手をあてて、手の力を借りて立ち上がる。
3.× ステージ2の歩行時の踵接地から爪先離地は、「正常」ではなく「尖足」となる。なぜなら、下腿三頭筋および後脛骨筋の短縮するため。
4.× ステージ2の歩行時は、「股関節外旋位」ではなく「股関節内旋位」を取ることによって遊脚相を補助する。動揺性歩行がみられる。
5.× ステージ2の歩行時は、立位では矢状面上の重心線が健常児に比べて「前方」ではなく「後方」に移動する。なぜなら、腰椎前弯によるため。重心線は健常児と比較すると股関節の後方を通る。

Duchenne型筋ジストロフィーの特徴的症状

幼児期から始まる筋力低下
動揺性歩行
ガワーズ徴候
腓腹筋などの仮性肥大

 

 

 

 

 

 

27 箸の操作練習の項目を示す。
   A 箸の開閉訓練
   B 箸で大豆のつまみと離し
   C 箸を持ち、手関節を動かす
   D 箸でスポンジ片のつまみと離し
 順序で最も適切なのはどれか。

1.A→D→B→C
2.C→A→D→B
3.C→D→B→A
4.D→A→B→C
5.D→C→A→B

解答

解説

箸の操作練習の順序は、C(箸を持ち、手関節を動かす)→A(箸の開閉訓練)→D(箸でスポンジ片のつまみと離し)→B(箸で大豆のつまみと離し)である。

C:箸を持つ。
A:箸を操作する。
D→B:難易度が低いものから高いものをつまむ。

したがって、選択肢2.C(箸を持ち、手関節を動かす)→A(箸の開閉訓練)→D(箸でスポンジ片のつまみと離し)→B(箸で大豆のつまみと離し)が箸の操作練習の順序である。

 

 

 

 

 

28 関節リウマチ患者の上肢の筋力と関節運動とで正しいのはどれか。

1.鉄アレイを用いて抵抗をかける。
2、抵抗運動は関節内圧を下降させる。
3.等尺性運動によって筋力を維持する。
4.手関節伸展によって手内筋を強化する。
5.関節運動によって関節内温度は低下する。

解答

解説

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

関節保護の原則とは?

関節リウマチ患者に対する日常生活の指導は、関節保護の原則に基づき行う。関節保護の原則とは、疼痛を増強するものは避けること、安静と活動のバランスを考慮すること、人的・物的な環境を整備することがあげられる。変形の進みやすい向きでの荷重がかからないように手を使う諸動作において、手関節や手指への負担が小さくなるように工夫された自助具が求められる。

1.× 鉄アレイを用いて抵抗をかける優先度は低い。なぜなら、鉄アレイを把持すると手の関節に負担が大きいため。また、関節を保護するために低負荷等尺性運動を行う。
2、× 抵抗運動は、関節内圧を「下降させる」のではなく「上昇させる
3.〇 正しい。等尺性運動によって筋力を維持する。なぜなら、関節運動を伴わずに、筋力の維持向上を図れるため。等尺性運動は、関節運動を伴わない筋収縮である。
4.× 手関節伸展によって手内筋を強化する優先度は低い。なぜなら、小関節(手指関節など)は変形・痛みを伴うため。大関節(手・肘・肩関節など)を利用するよう日常生活の指導を実施する。
5.× 関節運動によって関節内温度は「低下する」のではなく「上昇する」。なぜなら、関節運動によって血行循環がよくなるため。

 

 

 

 

 

 

29 右利きの右上腕切断者への義手の導入方法で適切なのはどれか。

1.義手操作で書字の練習を行う。
2.断端の周径が安定してから行う。
3.手先具の開閉は肘最大屈曲位で行う。
4.肘ロックの訓練は肩関節屈曲90°で行う。
5.手先具の把握訓練の対象物は硬いものから行う。

解答

解説

義手の訓練

①手先具開閉練習:肩関節0°、肘関節90°で肘をロックして実施する。
②把持訓練:握りやすいものから握りにくいものへ把持する。
③利き手交換練習:利き手が切断肢の場合、非利き手で書字練習を行う。

1.× 義手操作で書字の練習を行うことの優先度は低い。なぜなら、書字は難易度が高く利き手交換を行うため。
2.× 義手の訓練は、「断端の周径が安定してから」ではなく「断端の成熟前から」行う。断端の成熟前に仮義手による訓練を行い、断端が成熟したら本義手を処方する。ただし、ソケットの採型は、断端周径が安定してから実施する。
3.× 手先具の開閉は、「肘最大屈曲位」ではなく「肘関節90°」で肘をロックして行う。
4.× 肘ロックの訓練は、「肩関節屈曲90°」ではなく、「肩関節屈曲 0°」で行う。なぜなら、肘ロックの訓練に必要な体の動きは、切断側の肩甲骨下制、肩の前方突出・伸展・外転であるため
5.〇 正しい。手先具の把握訓練の対象物は硬いものから行う。なぜなら、硬いものほど力の調整が不要であるため。力の調整の獲得のため、次第に軟らかくすることで、力の調整具合を把持物の変形で可視化できる。

 

 

 

 

 

 

30 装具と障害されている神経との組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

1.短対立装具:正中神経麻痺
2.長対立装具:橈骨神経麻痺
3.虫様筋カフ:尺骨神経麻痺
4.Thomasスプリント:正中神経麻痺
5.Oppenheimerスプリント:尺骨神経麻痺

解答1・3

解説
1.〇 正しい。正中神経麻痺(猿手)に対し、短対立装具が適応となる。母指とほかの四肢を対立位に保持する。
2.× 長対立装具は、「橈骨神経麻痺」ではなく、正中神経麻痺(猿手)に適応となる。
3.〇 正しい。尺骨神経麻痺に対し、虫様筋カフが適応となる。MP関節の過伸展を防止する装具である。
4.× Thomasスプリントは、「正中神経麻痺」ではなく、橈骨神経麻痺高位型(下垂手)に適応となる。ゴムの弾性を利用して手関節背屈補助をすることで、手関節軽度背屈位としてMP関節と母指の運動を行うものである。
5.× Oppenheimerスプリントは、「尺骨神経麻痺」ではなく、橈骨神経麻痺高位型(下垂手)に適応となる。手関節を背屈位に、母指を外転位に保持する装具である。

 

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