第61回(R8)理学療法士国家試験 解説【午前問題41~45】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

41 大動脈癌・大動脈解離診療ガイドライン2020年改訂版〈日本循環器学会〉に基づく、大動脈解離のリハビリテーション治療の開始基準において、患者のバイタルサインと管理状態の組合せで基準範囲内にあるのはどれか。

1.RASS:-1
2.体温:38.8℃
3.呼吸数:38回/分
4.酸素飽和度〈SaO2〉:85%
5.吸入酸素濃度〈FiO2〉:0.7

解答

解説

(※引用:「2020年改訂版 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン」日本循環器学会様HP)

1.〇 正しい。RASS:-1は、大動脈解離のリハビリテーション治療の開始基準において、基準範囲内(-2≦RASS≦1)にある。
・RASS〈Richmond Agitation Sedation Scale:鎮静スケール〉とは、鎮静薬を使用中の患者さんの鎮静状態を評価するためのスケールである(※下図参照)。

2.× 体温は、「38.8℃」ではなく38.5℃以下が基準範囲内である。

3.× 呼吸数は、「38回/分」ではなく35回/分以下が基準範囲内である。

4.× 酸素飽和度〈SaO2〉は、「85%」ではなく90%以下が基準範囲内である。

5.× 吸入酸素濃度〈FiO2〉は、「0.7」ではなく0.6以下が基準範囲内である。なぜなら、FiO2が高いことは、呼吸状態が重い可能性が高く、離床で酸素化破綻しやすい(呼吸不全・疲労)状態であるため。

(※図引用:「Richmond Agitation-Sedation Scale日本語版の作成」著:卯野木 健ら)

 

 

 

 

 

42 Danielsらの徒手筋力テスト〈原著第10版〉において、段階2を座位で行う筋で正しいのはどれか。2つ選べ。(※不適切問題:解3つ)

1.棘下筋
2.三角筋後部
3.前鋸筋
4.大腰筋
5.縫工筋

解答1・2・3
採点上の取り扱い:3通りの解答を正解として採点する。
理由:3つの選択肢が正解であるため、3通りの解答を正解として採点する。

解説
1.〇 正しい。棘下筋(肩外旋)の段階2は、座位(肘関節90°屈曲、前腕中間位)で行う。前腕はセラピストの手で支えられるか、パウダーボードあるいは他の方法で、摩擦を最小化して検査する。

2.〇 正しい。三角筋後部(肩水平外転)の段階2は、座位(肩関節90°外転位、肘軽度屈曲位)で行う。前腕遠位で下から支えるか、パウダーボードを用いてもよい。

3.〇 正しい。前鋸筋(肩甲骨外転と上方回旋)の段階2は、座位(肩関節90°以上屈曲位)で行う。肘あたりを下から支える。

4.× 大腰筋(股関節屈曲)の段階2は、側臥位(膝関節軽度屈曲位)で行う。セラピストは膝当たりを支える。摩擦を減らすためにパウダーボードを用いてもよい。

5.× 縫工筋(股関節屈曲、外転、外旋と膝屈曲)の段階2は、背臥位で行う。テストする側の下肢の踵を反対側の下肢の前面(脛あたり)の上において、膝まで滑らせる。

 

 

 

 

 

43 術後廃用症候群と予防の組合せで正しいのはどれか。

1.筋萎縮:ベッド上ポジショニング
2.骨萎縮:弾性ストッキング
3.関節拘縮:下肢外転枕
4.静脈血栓症:ティルトテーブル〈斜面台〉立位
5.起立性低血圧:ヘッドアップ〈ギャッチアップ〉座位

解答

解説

褥瘡とは?

 褥瘡とは、局所の持続的な圧迫により組織に虚血が生じて発生する皮膚・皮下組織の損傷のことである。仙骨部、大転子部、足関節外果、踵部などの骨の突出している場所に好発する。頚髄完全損傷では、自分で除圧できないこと、感覚障害を合併していることより、褥瘡が生じやすい。したがって、仰臥位の褥瘡好発部位は、仙骨部が最も多く、次いで踵骨部、肩甲骨部、後頭部などがある。

側臥位における褥瘡の好発部位は、耳介部、腸骨稜部、大転子部、外顆部、内顆部などに好発する。

1.× ベッド上ポジショニングは、「筋萎縮」ではなく褥瘡・拘縮予防である。
・筋萎縮の予防は、筋収縮を伴う運動が中心である。

2.× 弾性ストッキングは、「骨萎縮」ではなく静脈血栓症予防である。
・深部静脈血栓症とは、長時間の安静や手術などの血流低下により下肢の静脈に血栓が詰まってしまう病気である。下肢の疼痛、圧痛、熱感などの症状がみられる。
・弾性ストッキングとは、弾力性を持った特殊なストッキングである。これを着用して締めつけることにより下肢の静脈還流を改善する。

3.× 下肢外転枕は、「関節拘縮」ではなく脱臼予防(適切な肢位保持)である。なぜなら、下肢外転枕により、股関節内転位を防止できるため。したがって、主に股関節術後(THAなど)の脱臼予防に用いられる。
【人工骨頭置換術の患側脱臼肢位】
①後方アプローチ:股関節内転・内旋・過屈曲
②前方アプローチ:股関節内転・外旋・伸展

4.× ティルトテーブル〈斜面台〉立位は、「静脈血栓症」ではなく主に起立性低血圧の予防である。
【斜面台を用いた運動療法の目的】
①内反尖足の予防(足関節底屈筋群・アキレス腱の持続的伸長)
②立位感覚の向上
③覚醒レベルの向上
④体幹筋筋力の維持
他にも、起立性低血圧に対する漸進的順応・平衡感覚の再教育・血管拡張の保持・下肢(特に足関節)の拘縮予防・骨萎縮の予防・尿路感染の予防などがあげられる。(※参考:「理学療法訓練についての内容」別府重度障害者センター様HPより)

5.〇 正しい。起立性低血圧:ヘッドアップ〈ギャッチアップ〉座位なぜなら、長期臥床では、循環調節(血管収縮反応)や循環血液量が低下し、急な起立で血圧が落ちやすいため。
・ギャッジアップとは、ベッドで、背もたれや膝の角度を電動・手動で調整し、上体を起こしたり、足を上げたりすること(英:Gatch up)。

起立性低血圧とは?

起立性低血圧とは、臥位や坐位から起立した際に、血圧調節機能がうまく働かず血圧が低下し、脳血流が減少して、めまいや立ちくらみなどを起こす症状である。仰臥位・坐位から立位への体位変換後3分以内に、以下のいずれかが認められるとき、起立性低血圧と診断する。①収縮期血圧が20mmHg以上低下、②収縮期血圧の絶対値が90mmHg未満に低下、③拡張期血圧が10mmHg以上低下。

 

 

 

 

 

44 COPD患者で増加するのはどれか。2つ選べ。

1.1秒量
2.機能的残気量
3.全肺気量
4.ピークフロー
5.予備吸気量

解答2・3

解説

COPDとは?

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の最大の原因は喫煙であり、喫煙者の約20%がCOPDを発症する。慢性閉塞性肺疾患とは、以前には慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称である。他の特徴として、肺の過膨張、両側肺野の透過性亢進、横隔膜低位、横隔膜の平低化、滴状心などの特徴が認められる。進行性・不可逆性の閉塞性換気障害による症状が現れる。

増加:残気量・残気率・肺コンプライアンス・全肺気量・PaCO2

減少:一秒率・一秒量・肺活量・肺拡散能・PaO2

1.× 1秒量は、減少する。なぜなら、COPDは閉塞性換気障害に該当し、気道狭窄と弾性収縮力低下により、呼気流量が制限されるため。したがって、1秒間に吐き出せる量が減る。

2.〇 正しい。機能的残気量は、増加する。なぜなら、COPDは閉塞性換気障害に該当し、気道狭窄と弾性収縮力低下により、呼気流量が制限されるため。つまり、息を吐ききれず、呼気終末に空気が肺に残る。
・機能的残気量とは、安静時呼気位の後に残っている空気量のことをいう。機能的残気量は、胸郭の弾性収縮力の障害が大きい疾患(肺線維症、胸郭変形、胸膜肥厚)で減少する。

3.〇 正しい。全肺気量は、増加する。なぜなら、COPDの症状の一つに、肺の過膨張がみられるため。これは、肺胞壁破壊で肺の弾性収縮力が低下し、肺が過膨張を起こす。

4.× ピークフロー(呼気最大流速)は、減少する。なぜなら、COPDは閉塞性換気障害に該当し、気道狭窄と弾性収縮力低下により、呼気流量が制限されるため。
・ピークフローとは、呼気最大流速のことである。

5.× 予備吸気量は、減少(低下)する。なぜなら、機能的残気量が上がって吸気開始点が高くなるため。つまり、最大吸気までの量(余地)が減り、結果として、予備吸気量が減少(低下)する。
・予備吸気量とは、正常1回換気量を超えて吸気可能な最大空気量である。

(※図引用:「呼吸機能検査 フロー・ボリューム曲線」医學事始様HPより)

主な疾患

拘束性換気障害:肺結核、肺線維症など。
閉塞性換気障害:気管支喘息、気管支拡張症など。
混合性障害:肺気腫

 

 

 

 

 

45 呼吸に対する腹臥位の効果で正しいのはどれか。

1.上部胸式呼吸を促進する。
2.左舌区からの排痰を促す。
3.座位に比べて肺活量が増加する。
4.立位に比べて換気は肺尖部に多く分布する。
5.背臥位に比べて肺の腹側に血流が多く分布する。

解答

解説
1.× 上部胸式呼吸を促進する「体位ではない」。なぜなら、腹臥位は、胸郭前面(肋間筋の働き)がベッド面で制限されやすくなるため。
・胸式呼吸とは、肋間筋の働きで胸郭を広げることによって行う呼吸運動である。
・腹式呼吸とは、鼻から息を吸いながらお腹を膨らませ、ゆっくり口から息を吐きながら腹部を凹ませる。胸式呼吸に比べて1回換気量が増加するので、呼吸困難を軽減できる。

2.× 左舌区からの排痰を促すのは、「右を上にした側臥位」である。ちなみに、背臥位は、「上-下葉区、後肺底区」からの排痰を促す。

3.× 座位に比べて肺活量は、「増加」ではなく減少する。なぜなら、腹臥位は、腹部臓器が横隔膜を押し上げやすく、胸郭運動も制限されるため。したがって、肺容量(特にFRCやVC)が低下しやすい。
・肺活量とは、[最大吸気量 + 予備呼気量]のことをいう。つまり、限界まで吸い、限界まで吐いたときの空気の量である。

4.× 立位に比べて換気は、肺尖部に多く分布する「とはいえない」。立位では換気は肺尖部より肺底部に多い。これは、重力の影響により肺底部では胸膜内圧が相対的に高く、肺胞が吸気時により大きく膨らみやすいためである。したがって、腹臥位になっても単純に「肺尖部優位の換気」になるとはいえず、むしろ背腹方向の換気分布がより均一になりやすい。

5.〇 正しい。背臥位に比べて、肺の腹側に血流が多く分布する。なぜなら、血流は重力の影響で、下側(依存部)に増えやすいため。したがって、背臥位では背側が、腹臥位では腹側に血流が増える。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)