第61回(R8)理学療法士国家試験 解説【午前問題31~35】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

31 ICFで「活動と参加」に含まれるのはどれか。

1.態度
2.認知
3.行動様式
4.対人関係
5.支援と関係

解答

解説

(※図引用:「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」厚生労働省様HPより)

1.× 態度は、「環境因子」に含まれる。例えば、家族の態度、親族の態度など、本人の行為そのものではなく環境が本人に与える影響として扱われる(※詳しく選択肢について知りたい場合は、上のリンクから)。

2.× 認知(精神機能)は、「心身機能」に含まれる。例えば、意識機能、情動機能、知覚機能などが該当する。

3.× 行動様式は、「個人因子」に含まれる。個人因子とは,個人の人生や生活の特別な背景であり,健康状態や健康状況以外のその人の特徴からなる。これには性別,人種,年齢,その他の健康状態,体力,ライフスタイル,習慣,生育歴,困難への対処方法,社会的背景,教育歴,職業,過去および現在の経験(過去や現在の人生の出来事),全体的な行動様式,性格,個人の心理的資質,その他の特質などが含まれるであろうし,これらの全部または一部が,どのレベルの障害においても一定の役割をもちうる(※引用:「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」厚生労働省様HPより)。

4.〇 正しい。対人関係は、ICFで「活動と参加」に含まれる。状況に見合った社会的に適切な方法で、人々と対人関係を持つことは、代表的な「活動・参加」に該当するといえる。

5.× 支援と関係は、「環境因子」に含まれる。環境因子分類で、第1レベルの項目は、①生産品障と用具、②自然環境と人間がもたらした環境変化、③支援と関係、④態度、⑤サービス・制度・政策である。

 

 

 

 

 

32 加齢による筋萎縮の理学療法で最も適切なのはどれか。

1.短期間で集中的に実施する。
2.TypeⅠ線維の筋力向上を優先する。
3.抗重力筋の筋力トレーニングを実施する。
4.集団運動は併存疾患のない者を対象とする。
5.レジスタンス運動は最大負荷の90%で実施する。

解答

解説

フレイルとサルコペニア

【フレイルとは?】

フレイルとは、健常な状態と要介護状態(日常生活でサポートが必要な状態)の中間の状態のことをいう。多くは、「健康状態」→「フレイル」→「要介護状態」と経過する。
定義:加齢とともに心身の活動(運動機能や認知機能など)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態である。
診断基準に含まれるのは【①体重減少、②主観的疲労度、③日常生活活動量の低下、④歩行速度の低下、⑤握力の減弱】である。

【サルコペニアとは?】
サルコペニアは、加齢に伴う骨格筋量と骨格筋力の低下によって身体的な障害やQOLの低下を招いている状態のことをいう。サルコペニアの診断には、四肢骨格筋量の低下があることに加えて身体機能(歩行速度)の低下または、筋力(握力)の低下、下腿周径、5回椅子立ち上がりテストがある。

1.× 「短期間で集中的(短期集中)」ではなく長期間で継続的(長期継続)に実施する。なぜなら、筋力は、2〜4週間だけ頑張っても、運動をやめれば落ちるため。具体的メニューとして、「週2〜3回の筋トレ+日常の歩行量増加」を、数か月単位で続けて「立ち上がりが楽になった」「転倒が減った」を狙う。

2.× 「TypeⅠ線維(遅筋)」ではなく、TypeⅡ線維(速筋)の筋力向上を優先する。なぜなら、加齢で落ちやすいのはTypeⅡ線維(速筋)であるため。また、速筋は、立ち直り反応やステップ反応(転倒回避)に必要な筋力である。
【骨格筋の筋線維のタイプ】
タイプⅡB(速筋)は、最も収縮能が高く、収縮速度も速いが疲労速度も速い。
タイプⅡAは、収縮能は中等レベルであり、収縮速度・疲労速度は速い。(人には少ない)
タイプⅠ(遅筋)は、収縮能は低く収縮速度も遅いが、疲労速度が遅い。

3.〇 正しい。抗重力筋の筋力トレーニングを実施する。なぜなら、抗重力筋(大殿筋・大腿四頭筋・下腿三頭筋・脊柱起立筋など)は、立位保持(姿勢保持)と直結し、筋力低下がADL低下と転倒リスク増大を招くため(立位や座位姿勢が、歩行やADL動作の最初の姿勢になることが多いため、最初の姿勢が崩れていると転倒のリスクが高まりやすい)。
・抗重力筋とは、重力に逆らって体を支えるために働く筋肉全体を指す。ただし、その中でも常に持続的に活動する筋と、必要に応じて一時的に働く筋肉がある。

4.× 必ずしも、集団運動は併存疾患のない者を対象とする「必要はない」。なぜなら、集団運動は併存疾患があっても、リスク管理と個別調整を前提に実施することができるため。また、高齢者の集団運動(地域)や病院での集団運動は、併存疾患を有することが一般的である。したがって、重要なのは、安全管理(運動強度調整やバイタル監視など)である。

5.× 必ずしも、レジスタンス運動は、最大負荷の90%で実施する「必要はない」。なぜなら、最大負荷の90%は高負荷であるため。したがって、関節・腱・筋損傷や血圧上昇リスクが高く、サルコペニア高齢者では安全性と継続性が期待できないことが多いため。一般的に、中等度(最大負荷の60~80%)から、体調・疼痛・バイタルを見て運動負荷を調整していく。
・レジスタンストレーニングとは、重りやゴムバンド、自分の体重などの「負荷」に逆らって筋肉を動かす運動である。腕立て伏せやスクワットがその例である。筋肉にほどよい刺激をくり返し与えることで、筋力や体の動かしやすさを高める方法である。

 

 

 

 

 

33 SIASの評価で正しいのはどれか。

1.注視
2.痛覚
3.病的反射
4.膝関節可動域
5.非麻痺側の握力

解答

解説

SIASとは?

SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)は、麻痺側運動機能を評価するためのテストであるが、非麻痺側機能の評価を含む。項目は、9種の機能障害に分類される22項目からなる。各項目とも3あるいは5点満点で評価される。

1.× 「注視」ではなく視空間認知(高次脳)は評価項目である。
19)視空間認知
50cmのテープを眼前約50cmに提示し、中央を健側指で示させる。2回行い、中央よりのずれの大きい値を採用する。
0:15cm以上。
1:5cm以上。
2:3cm以上。
3:3cm未満。

2.× 「痛覚」ではなく触覚や位置覚は評価項目である。
10)上肢触覚 U/E light touch(手掌)
0:強い皮膚刺激もわからない。
1:重度あるいは中等度低下。
2: 軽度低下、あるいは主観的低下、または異常感覚あり。
3:正常。

12)上肢位置覚 U/E position(母指or示指)
指を他動的に運動させる。
0:全可動域の動きもわからない。
1:全可動域の運動なら方向がわかる。
2:ROMの1割以上の動きなら方向がわかる。
3:ROMの1割未満の動きでも方向がわかる。

3.× 「病的反射」ではなく腱反射は評価項目である。
8)上肢腱反射 U/E DTR(biceps or triceps)
0: bicepsあるいはtriceps反射が著明に亢進している。あるいは容易にclonus(肘、手関節)が誘発される。
1:1A: bicepsあるいはtriceps反射が中等度(はっきりと)に亢進している。
1B: bicepsあるいはtriceps反射がほぼ消失している。
2: bicepsあるいはtriceps反射が軽度(わずかに)亢進。
3: bicepsあるいはtriceps反射とも正常。健側と対称的。

4.× 「膝」ではなく足関節可動域は評価項目である。
15)下肢関節可動域 L/E ROM
膝伸展位にて他動域足関節背屈を行う。
0:-10°以下。
1:0°以下。
2:10°以下。
3:10°以上。

5.〇 正しい。非麻痺側の握力は、SIASの評価に含まれる。
健側機
21)握力 grip strength
座位で握力計の握り幅を約5cmにして計測する。健側の具体的kg数を記載すること。参考として。
0:握力0kg。
1:握力10kg以下。
2:握力10~20kg。
3:握力25kg以上。

 

 

 

 

 

34 装具と疾患の組合せで適切なのはどれか。

1.pogo-stick装具:脳性麻痺
2.交互歩行装具〈RGO〉:二分脊椎〈機能残存レベルT10〉
3.コックアップ・スプリント:正中神経麻痺
4.短下肢装具〈足関節底屈制動式〉:脳卒中片麻痺〈下肢Brunnstrom法ステージV〉
5.ハロー・ベスト:腰部脊柱管狭窄症

解答

解説
1.× pogo-stick装具(ポーゴスティック装具)は、「脳性麻痺」ではなくペルテス病である。pogo-stick装具とは、Perthes病の免荷を目的とした装具療法が行われる。股関節免荷装具として利用し、治療期間が2~3年と長期にわたる場合がある。ほかにも、トロント装具、股関節外転装具などが適応となる。

2.△ 交互歩行装具〈RGO〉:二分脊椎〈機能残存レベルT10〉
→適応となる可能性が高い。根拠:(※第46回理学療法士国家試験午後問題46問より)との整合性が合わない。
・交互歩行装具(RGO)とは、腰椎装具と両側長下肢装具を股継手で連結したもので、一方の股関節屈曲が他方の股関節伸展をきたす構造で両下肢を交互に振り出す交互歩行が可能となる装具である。※ただし、RGO(Reciprocating Gait Orthosis:交互歩行装具)は、第10胸髄節以下の完全対麻痺者の交互歩行実現を目的として開発された装具である(※第46回理学療法士国家試験午後問題46問より)。

3.× コックアップ・スプリントは、「正中神経麻痺」ではなく橈骨神経麻痺高位型)である。
・コックアップ・スプリントは、手関節を機能的な位置に保持できないときに適応され、特に橈骨神経麻痺高位型)・中枢弛緩性麻痺の拘縮予防に用いられる。手関節背屈装具のことであり、機能的把持動作を可能とする。

4.〇 正しい。短下肢装具〈足関節底屈制動式〉:脳卒中片麻痺〈下肢Brunnstrom法ステージV〉
なぜなら、短下肢装具〈足関節底屈制動式〉を用いることで、立脚期の膝折れの予防につながるため。とはいえ、Brs:Vは、立位でも足関節背屈ができるため、足関節底屈筋の痙性(Brs:)に対し適応となる可能性が高く、短下肢装具〈足関節底屈制動式〉は不要とも考えられる。※コメント欄で分かる方いらしたら教えてください。

・短下肢装具とは、足首の関節の動きを制限し、固定・動揺・拘縮などの治療を目的とした装具である。

5.× ハロー・ベストは、「腰部脊柱管狭窄症」ではなく頸椎の強固な外固定である。
・ハローベストとは、頸椎の固定性が最も高い装具である。頭蓋骨に直接ピン(ネジ)で固定したハローを胸椎装具と金属支柱で連結したものである。頚椎の前後屈および側屈・回旋を強く制限する。環椎や軸椎の骨折など、手術で固定の困難な重篤な骨折で用いられる。

 

 

 

 

 

35 Down症候群の乳児に対する家族指導で最も優先度が低いのはどれか。

1.関節拘縮の予防法
2.離乳食の摂食指導
3.家族のストレス対処法
4.姿勢の安定を促す抱き方
5.コミュニケーションの取り方

解答

解説

Down症候群とは?

Down症候群とは、染色体異常が原因で知的障害が起こる病気である。常染色体異常疾患の中で最多である。Down症候群になりうる異常核型は、3種に大別される。①標準トリソミー型:21トリソミー(93%)、②転座型(5%)、③モザイク型(2%)である。発症率は、平均1/1000人である。しかし、35歳女性で1/300人、40歳女性1/100人、45歳女性1/30人と、出産年齢が上がるにつれて確率が高くなる。

症状として、①特異な顔貌、②多発奇形、③筋緊張の低下、④成長障害、⑤発達遅滞を特徴とする。また、約半数は、先天性心疾患や消化管疾患などを合併する。特異顔貌として、眼瞼裂斜上・鼻根部平坦・内眼角贅皮・舌の突出などがみられる。

1.× 関節拘縮の予防法が、選択肢の中で最も優先度が低い。なぜなら、Down症候群の乳児の症状として、筋緊張低下(低緊張)関節弛緩が特徴であるため。したがって、関節拘縮は、一般に起こりにくい。むしろ、関節弛緩(関節の過可動)やアライメント不良・不安定性への配慮が重要である。

2.〇 離乳食の摂食指導は重要である。なぜなら、Down症候群の乳児の症状として、特異な顔貌筋緊張の低下(頚部の固定)舌の突出など、摂食(舌運動・嚥下協調)が未熟になりやすいため。

3.〇 家族のストレス対処法は重要である。なぜなら、乳児期の療育は、家族が毎日担うものであるため。ダウン症候群の乳児を育てる家族は、平均すると抑うつ症状・育児ストレス・心理的苦痛がやや高い傾向にある。

4.〇 姿勢の安定を促す抱き方は重要である。なぜなら、Down症候群の乳児の症状として、筋緊張の低下がみられるため。姿勢の安定を促す抱き方や支持の仕方で、運動発達(寝返り・座位・ハンドリング)の促しに寄与する。

5.〇 コミュニケーションの取り方は重要である。なぜなら、Down症候群の乳児の症状として、発達遅滞がみられるため。なぜなら、早期からの相互作用(視線・表情・共同注意・声かけ)は、認知・言語・社会性の発達の促しに寄与する。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)