第61回(R8)理学療法士国家試験 解説【午前問題36~40】

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36 慢性疼痛で正しいのはどれか。

1.手術療法が勧められる。
2.要因は1つに絞られる。
3.1~2か月間続く疼痛である。
4.多職種の専門家が関わることが望ましい。
5.治療目標は痛みのない状態を達成することである。

解答

解説

慢性疼痛とは?

【慢性疼痛の定義】慢性疼痛は「治癒に要すると予測される時間を超えて持続する痛み、あるいは進行性の非がん性疾患に関連する痛み」と定義される。整形外科疾患や術後に遷延する痛み、帯状疱疹や糖尿病に関連する神経障害性疼痛などがある。

【痛みの特徴と治療の考え方】慢性疼痛は痛みが長期間持続することにより病態が複雑化し、心理社会的要因も痛みの構成要素となることから、治療にあたっては薬物療法や理学療法、神経ブロック、リハビリテーション、心理療法などを組み合わせた集学的治療を行い、痛みの程度の改善にとらわれず、日常生活の改善を目標にすることが重要である。慢性疼痛治療に用いられる薬剤には NSAIDs やオピオイド鎮痛薬、抗不安薬、抗うつ薬、抗けいれん薬、抗不整脈薬、NMDA 受容体桔抗薬、漢方薬、ステロイドなどがあり、効果と副作用のバランスを考えて投与量の調節や併用を行う。

(※引用:「医療用麻薬による慢性疼痛の治療方針」厚生労働省HPより)

1.× 「手術療法」ではなく集学的治療が勧められる。なぜなら、慢性疼痛は、痛みが長期間持続することにより病態が複雑化し、心理社会的要因も痛みの構成要素となるため。治療にあたっては薬物療法理学療法、神経ブロック、リハビリテーション、心理療法などを組み合わせた集学的治療を行い、痛みの程度の改善にとらわれず、日常生活の改善を目標にすることが重要である。

2.× 要因は、「1つ」ではなく複雑化している。なぜなら、慢性疼痛は、痛みが長期間持続することにより病態が複雑化し、心理社会的要因も痛みの構成要素となるため。

3.× 「1~2か月間」ではなく3か月以上続く疼痛である。なぜなら、慢性疼痛は「治癒に要すると予測される時間を超えて持続する痛み、あるいは進行性の非がん性疾患に関連する痛み」と定義される。整形外科疾患や術後に遷延する痛み、帯状疱疹や糖尿病に関連する神経障害性疼痛などがある。

4.〇 正しい。多職種の専門家が関わることが望ましい。なぜなら、治療にあたっては、薬物療法理学療法、神経ブロック、リハビリテーション、心理療法などを組み合わせた集学的治療を行うため。

5.× 治療目標は、「痛みのない状態を達成する」ではなく日常生活の改善することである。なぜなら、慢性疼痛は、完全消失が難しい場合が多いため。疼痛に固執すると、かえって活動制限が増える可能性が高い。

 

 

 

 

 

37 注意障害を評価する検査法はどれか。

1.BIT
2.CAT
3.RBMT
4.SLTA
5.VPTA〈Visual Perception Test for Agnosia〉

解答

解説
1.× BIT(Behavioural inattention test:行動性無視検査)は、半側空間無視のスクリーニング検査である。①通常検査(線分抹消試験・文字抹消試験・星印抹消試験・模写試験・線分二等分試験・描画試験)と②行動検査(写真課題・電話課題・メニュー課題・音読課題・時計課題・硬貨課題・書写課題・地図課題・トランプ課題)がある。カットオフ点は、通常検査で131点/146点、行動検査で68点/点である。

2.〇 正しい。CATは、注意障害を評価する検査法である。
・CAT〈Clinical Assessment for Attention〉とは、標準注意検査で注意機能全般を評価する検査である。7つの下位検査から成り立っている。

3.× RBMT(The Rivermead Behavioral Memory Test:リバーミード行動記憶検査)は、日常生活的な記憶障害の評価法である。その状況で素点、標準プロフィール点(SPS)、スクリーニング点(SS)を算出し年齢別のカットオフ値で評価する。1.氏名、2.持ち物、3.約束、4.絵、5.物語(直後・遅延)、6.顔写真、7.道順(直後・遅延)、8.用件、9.見当識で9つの項目である。特に展望記憶の検査項目が含まれているのが特徴である。

4.× SLTA(Standard Language Test of Aphasia:標準失語症検査)は、成人の失語症の代表的な検査である。26項目の下位検査での構成で、「聴く」「話す」「読む」「書く」「計算」について6段階で評価する。

5.× VPTA〈Visual Perception Test for Agnosia:標準高次視知覚検査〉は、視知覚機能の検査法である。物体・画像の認知・相貌認知・色彩認知・視空間の認知などについて評価する。ちなみに、視知覚障害は後頭葉を中心とした部位の損傷により出現する。

 

 

 

 

 

38 腕神経叢損傷の病態で適切なのはどれか。

1.深部腱反射は亢進することが多い。
2.すべての症例で自然回復が期待できる。
3.下位腕神経叢損傷では、肘屈曲が障害される。
4.上位腕神経叢損傷では、手指の巧級運動が障害される。
5.完全型腕神経叢損傷では、近位から遠位までの運動障害がみられる。

解答

解説

日本整形外科学会様HPより)

腕神経叢麻痺とは?

腕神経叢とは、頚髄から分枝した神経が鎖骨や肋骨の間を通り、腋窩付近を走行する際に形成する神経の束のことである。腕神経叢麻痺は、腕神経叢の過伸展によって引き起こされることが多い。
・上位型:C5~6神経根
・下位型:C8~T1神経根
・全型:C5~T1神経根

1.× 深部腱反射は、「亢進」ではなく低下(または消失)することが多い。なぜなら、腕神経叢損傷は、末梢神経障害(下位運動ニューロン障害)であり、反射弓(求心路・遠心路)が障害されるため。

2.× すべての症例で自然回復が「期待できる」とはいえない。なぜなら、腕神経叢損傷には、牽引損傷で自然回復しやすいものから、神経断裂・神経根引き抜きなど、自然回復が困難な重症型まで幅があるため。
・腕神経叢損傷は、①節前損傷と②節後損傷に大別される。節前損傷は、後根神経節より中枢での損傷で、神経根の引き抜き損傷のことである。したがって、節前損傷の機能回復は期待できない。一方、節後損傷は、後根神経節より末梢に発生した末梢神経障害であり、その損傷および術後の経過はSeddon分類に従う。節後損傷であればある適度の機能回復が期待できる。

3.× 下位腕神経叢損傷(C8~T1神経根)で、肘屈曲「は障害されない」。なぜなら、肘屈曲(上腕二頭筋・上腕筋など)は、C5~6(筋皮神経など)支配が中心であるため。

4.× 上位腕神経叢損傷(C5~6神経根)は、手指の巧級運動「は障害されない」。なぜなら、巧緻運動に重要な手内在筋(骨間筋、虫様筋など)は、C8~T1支配が中心であるため。

5.〇 正しい。完全型腕神経叢損傷(C5~T1神経根)では、近位から遠位までの運動障害がみられる。なぜなら、腕神経叢全体(C5~T1神経根)が障害されると、肩・肘などの近位筋群から手指の遠位筋群まで支配が広範に途絶するため。したがって、上肢全域の運動障害(しばしば感覚障害も)が生じる。

MEMO

分娩麻痺は臨床症状によって、上位型麻痺(Erb麻痺)、全型麻痺、及び下位型麻痺(Klumpke麻痺)に分類されます。分類はおおむね1か月を経過した時点で行います。これらの典型的な症状は下記の通りですが、実際の症状は損傷の程度、自然回復の混在によって修飾され多彩です。

上位型麻痺(「Erb麻痺」とも呼ばれます):C5、C6、時にこれらに加えてC7神経根に損傷を受けた場合に生じる麻痺です。肩の外転・外旋、肘の屈曲が主に侵されます。手をそらすことができていればC7神経根は損傷を免れていると考えられます。
全型麻痺:上位型麻痺に加えてC8、T1神経根にまで損傷が及んだ場合に生じます。典型的には上肢全体が完全麻痺となりますが、T1神経根が損傷を免れている場合は指の屈曲のみ可能で他が完全麻痺となります。
下位型麻痺(「Klumpke麻痺」とも呼ばれます):生下時より下位型を呈する麻痺は非常にまれで、大部分は全型麻痺で出生し上位神経根に回復が認められ下位神経根に強い麻痺が残存したものです。

(引用:大阪母子医療センター様HPより~分娩麻痺について~

 

 

 

 

 

39 運動計画で外的刺激情報を反映した運動の準備に最も関わるのはどれか。

1.小脳
2.運動前野
3.一次運動野
4.大脳基底核
5.補足運動野

解答

解説

1.× 小脳とは、後頭部の下方に位置し、筋緊張や身体の平衡の情報を処理し運動や姿勢の制御(運動系の統合的な調節)を行っている。

2.〇 正しい。運動前野は、運動計画で外的刺激情報を反映した運動の準備に最も関わる。なぜなら、運動前野は、視覚・聴覚など外的刺激(外部手がかり)をもとに、適切な運動プログラムを選択・準備する機能を担うため。(※例:合図で動く、目標物に手を伸ばす、他者の動きに合わせる等の刺激誘導性の運動を行う。)。

3.× 一次運動野とは、随意運動のプログラミングに関わる大脳皮質の高次運動野や頭頂連合野からの入力を統合して最終的な運動指令を形成し、これを下位中枢(脳幹や脊髄)へ出力する。

4.× 大脳基底核とは、①線条体(被殻 + 尾状核)、②淡蒼球、③黒質、④視床下核である。小脳とともにからだの運動をスムーズにする役割がある。

5.× 補足運動野とは、主に内的(自発的)に生成された運動の計画、運動系列、両手協調に関与する役割がある。つまり、補足運動野は、「外部刺激」よりも「内的手がかり(自発的意思)」で行う運動の準備・系列化を担う性質が強い。

 

 

 

 

 

40 Hoehn&Yahrの重症度分類ステージⅡと判断する症状はどれか。

1.四肢の拘縮
2.頻回の転倒
3.起立性低血圧
4.両上肢の固縮
5.Romberg徴候

解答

解説

Hoehn&Yahr の重症度分類ステージ

ステージⅠ:片側のみの症状がみられる。軽症で機能障害はない。
ステージⅡ:両側の症状がみられるが、バランス障害はない。また日常生活・通院にほとんど介助を要さない
ステージⅢ:歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLの一部に介助が必要になる。
ステージⅣ:日常生活・通院に介助を必要とする。立位・歩行はどうにか可能。
ステージⅤ:寝たきりあるいは車いすで、全面的に介助を要する。歩行・起立は不能。

1.× 四肢の拘縮は、パーキンソン病の症状とはいえない。したがって、Hoehn&Yahrの重症度分類ステージを判断する症状ともいえない。

2.× 頻回の転倒がみられる場合、Hoehn&Yahrの重症度分類ステージⅢ以降と判断する。なぜなら、ステージⅡは、「バランス障害はない」との記載があるため。

3.× 起立性低血圧は、パーキンソン病の症状であるものの、Hoehn&Yahrの重症度分類ステージを判断する症状ではない。一般的に、Hoehn&Yahrの重症度分類は、運動や動作、介助量を中心に評価する。

4.〇 正しい。両上肢の固縮は、Hoehn&Yahrの重症度分類ステージⅡと判断する症状である。なぜなら、ステージⅡは、両側の症状がみられるが、バランス障害はない状態のことであるため。

5.× Romberg徴候は、パーキンソン病の症状とはいえない。したがって、Hoehn&Yahrの重症度分類ステージを判断する症状ともいえない。
・Romberg徴候(ロンベルグ徴候)(ロンベルグ徴候)は、被験者に足をそろえ、目を閉じて直立する検査で、陽性(閉眼時)では、脊髄性障害(脊髄癆)では動揺が大きくなる。ちなみに、開眼時・閉眼時ともに動揺がみられる場合は小脳障害を考える。

パーキンソン病とは?

パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。

矛盾性運動(逆説的運動)とは、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。すくみ足の症状があっても、床の上の横棒をまたぐことができること、リズムをとったり、視覚的な目標物を踏み越えさせたりすると、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。ちなみに、階段昇降もこれに含まれ、平地歩行に比べて障害されにくい。階段昇降は、歩行の改善、下肢筋力強化の効果も期待される。

 

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