第61回(R8)理学療法士国家試験 解説【午前問題6~10】

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6 58歳の男性。右脳出血による左片麻痺。発症から3か月経過し、Brunnstrom法ステージでは、左下肢Ⅲで中等度の半側空間無視がみられる。ブレーキのかけ忘れが観察されるが、車椅子とベッド、トイレの移乗動作は自力でできる。下衣をあげること、入浴、階段昇降は介助を要する。平地歩行は杖と装具を使用し、介助で30m歩行することができる。車椅子駆動は可能である。排泄コントロールは良好で食事と整容は自立レベルであった。
 Barthel Indexで正しいのはどれか。

1.55点
2.60点
3.65点
4.70点
5.75点

解答3(65点)

解説

本症例のポイント

58歳の男性。右脳出血による左片麻痺。発症から3か月経過し、Brunnstrom法ステージでは、左下肢Ⅲで中等度の半側空間無視がみられる。ブレーキのかけ忘れが観察されるが、車椅子とベッド、トイレの移乗動作は自力でできる移乗15/15点)。下衣をあげること(更衣5/10点トイレ動作5/10点)、入浴(入浴0/5点)、階段昇降(階段昇降0/10点)は介助を要する。平地歩行は杖と装具を使用し、介助で30m歩行することができる。車椅子駆動は可能である(移動5/15点)。排泄コントロールは良好(排尿10/10点排便10/10点)で食事(食事10/10点)と整容(整容5/5点)は自立レベルであった。

・15点+5点+5点+5点+10点+10点+10点+5点=65点

したがって、選択肢3.65点である。

※採点基準
【椅子とベッド間の移乗】
・15点:自立すべての動作が可能(車いすを安全にベッドに近づける。ブレーキをかける。フットレストを持ち上げる。ベッドへ安全に移る。臥位になる。ベッドの縁に腰掛ける。車椅子の位置を変える。以上の動作の逆)。
・10点:最小限の介助上記動作(1つ以上)最小限の介助または安全のための指示や監視が必要。
・5点:移乗の介助自力で臥位から起き上がって腰かけられるが、移乗に介助が必要。
※本症例の場合、「ブレーキのかけ忘れが観察されるが、自力でできている」。この場合、介助者がブレーキを介助したり口頭指示した場合は、10点になるんだと思っています。この辺、私もあいまいですので、お気軽にコメント欄で教えてください。

【移動】
・15点:自立介助や監視なしに45m以上歩ける。義肢・装具や杖、歩行器(車つきを除く)を使用してよい。装具使用の場合には立位や坐位でロック操作が可能なこと。装着と取りはずしが可能なこと。
・10点:部分介助上記事項について、わずかの介助や監視があれば45m以上歩ける。
・5点:車いす使用歩くことはできないが「自力で車いすの操作ができる。角を曲がる、方向転換、テーブル、ベッド、トイレ等への操作等。45m以上移動できる。患者が歩行可能なときは採点しない。

 

 

 

 

 

7 65歳の男性。心不全のため入院した。現在はβ遮断薬を内服している。心電図モニターの波を下に示す。
 所見で正しいのはどれか。

1.心室期外収縮
2.心房細動
3.心房粗動
4.洞性徐脈
5.Ⅲ度房室ブロック

解答

解説


1.× 心室期外収縮とは、本来の洞結節からの興奮より早く、心室で興奮が開始していることをいう。つまり、P波が認められず幅広い変形したQRS波がみられる。

2.× 心房細動とは、心臓がこまかく震えている状態である。血栓ができやすいため脳塞栓の原因となり最多である。心房細動の特徴として、心房の興奮が形・大きさともに不規則であり、基線が揺れている(f波)。心房が正常に収縮しないためにP波が消失し、QRS波が不規則である。

3.× 心房粗動の特徴は、①規則正しいRR間隔、②幅の狭いQRS波、③P波の代わりに規則正しい心房粗動波(F波)が認められる。

4.〇 正しい。洞性徐脈が該当する。なぜなら、洞性徐脈の心電図の特徴である「洞結節由来のP波が各QRSに先行」「PR一定」「RR整」がみられるため。また、心拍数が60/分未満である状態であること、β遮断薬内服中であることから、洞結節の自動能低下や房室伝導抑制により洞性徐脈が起きていると考えられる。
本症例の場合、6マス(1.2秒)に1回の心拍数である。つまり、1分間50回の徐脈であるといえる。
・心電図の記録用紙の紙送り速度は25mm/秒である。つまり、1メモリ0.04秒(5メモリ0.2秒)である。
・洞性徐脈は、洞結節からの興奮が緩徐となっている状態である。

5.× Ⅲ度房室ブロックの特徴は、「P波とQRSが無関係であること」「P波が勝手に進み、QRSは補充調律で別リズム」「PRが一定しない(そもそも対応しない)」である。
・房室ブロックは、心房まで伝わった心臓収縮のための正常な電気刺激が心室にうまく伝わらず、全身に血液を送る心室のリズムが遅くなったり、停止したりする状態である。房室ブロックは、その重症度によってⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度房室ブロックに分けられる。P波の後のQRS波の関連性がなく、両者がそれぞれに独立したリズムで出現している。

房室ブロックとは?

房室ブロックは、心房から心室への伝導障害をいう。第1度〜第3度に分類される。

・1度房室ブロック:心房から心室への伝導時間が延長するが、P波とQRS波の数や形は変わらない。

・2度房室ブロック

①ウェンケンバッハ型(モビッツⅠ型):PR間隔が徐々に延長してQRSが脱落する。

②モビッツⅡ型:心房から心室への伝導が突然途絶える。P波の後のQRSが突然脱落する。

・3度房室ブロック:心房からの刺激が途絶え、P波とQRSが無関係に生じるようになる。

β遮断薬とは?

β遮断薬とは、主に高血圧や狭心症、不整脈(特に、心房細動)の治療に用いられる。交感神経を抑制し、慢性心不全の進行を防ぐ。

 

 

 

 

 

8 70歳の男性。COPD。健康のために家の周りを30分程度、1日2回歩くことを日課にしている。最近、緩やかな上り坂を上るときや平坦な道で早歩きをするときに息切れするようになった。
 この患者のmMRCスケールはどれか。

1.Grade0
2.Grade1
3.Grade2
4.Grade3
5.Grade4

解答

解説

本症例のポイント

・70歳の男性(COPD)。
・健康のために家の周りを30分程度、1日2回歩くことを日課にしている。
・最近、緩やかな上り坂を上るときや平坦な道で早歩きをするときに息切れするようになった。

【修正MRC(mMRC)質問票】
グレード0:激しい運動をしたときだけ息切れがする。
グレード1:平坦な道を早足で歩く,あるいは緩やかな上り坂を歩くときに息切れがある
グレード2:息切れがあるので,同年代の人よりも平坦な道を歩くのが遅い,あるいは平坦な道を自分のペースで歩いているとき,息切れのために立ち止まることがある。
グレード3:平坦な道を約100m,あるいは数分歩くと息切れのために立ち止まる。
グレード4:息切れがひどく家から出られない,あるいは衣服の着替えをするときにも息切れがある。
(動画でわかる呼吸リハビリテーション第4版p137より引用)

1.× Grade0は、激しい運動をしたときだけ息切れがする段階である。

2.〇 正しい。Grade1が該当する。なぜなら、本症例は、緩やかな上り坂を上るときや平坦な道で早歩きをするときに息切れするようになった段階であるため。

3.× Grade2は、息切れがあるので,同年代の人よりも平坦な道を歩くのが遅い,あるいは平坦な道を自分のペースで歩いているとき,息切れのために立ち止まることがある段階である。

4.× Grade3は、平坦な道を約100m,あるいは数分歩くと息切れのために立ち止まる段階である。

5.× Grade4は、息切れがひどく家から出られない,あるいは衣服の着替えをするときにも息切れがある段階である。

 

 

 

 

 

9 80歳の男性。食道癌に対する開胸手術翌日で、経口挿管人工呼吸管理中。鼠径部から高用量の昇圧剤を投与して血圧の安定に努めている。
 理学療法で最も適切なのはどれか。

1.能動的座位練習
2.呼吸筋トレーニング
3.非上肢支持持久性運動
4.股関節伸展の関節可動域運動
5.下肢筋に対する神経筋電気刺激

解答

解説

本症例のポイント

・80歳の男性。
・食道癌に対する開胸手術翌日
・経口挿管人工呼吸管理中。
鼠径部から高用量の昇圧剤を投与して血圧の安定に努めている。
→本症例(術後超急性期)は、循環が不安定で、離床は高リスクである。安全に実施でき、廃用予防・筋力低下予防に有効なものを選択する。

1.× 能動的座位練習は基本的に行わない(危険)。なぜなら、術翌日の挿管管理下や高用量の昇圧剤投与中は、症状悪化のリスクが高いため。循環動態が不安定で、体位変換や座位による静脈還流低下から、血圧低下・末梢循環不全を招きやすい。また、本症例は、鼠径部から昇圧剤(中心静脈カテーテル/大腿ラインが想定)投与中は、抜去リスクも上がる。

2.× 呼吸筋トレーニングより優先されるものが他にある(時期尚早)。なぜなら、本症例は、経口挿管下で人工呼吸管理中であるため。患者の自発呼吸・協力が不十分と考えられ、現在は、術翌日であることから循環状態が優先される。

3.× 非上肢支持持久性運動は基本的に行わない(危険)。なぜなら、挿管下で循環不安定(高用量昇圧剤)な患者に、持久性運動は酸素需要を増やし、血行動態悪化や呼吸仕事量増大を招くため。

4.× 股関節伸展の関節可動域運動は基本的に行わない(危険)。なぜなら、本症例は、鼠径部から昇圧剤(中心静脈カテーテル/大腿ラインが想定)投与中は、抜去リスクが上がるため。特に、昇圧剤は血管収縮が強く、漏出すると皮膚壊死など重篤になり得る。

5.〇 正しい。下肢筋に対する神経筋電気刺激が理学療法で最も優先される。なぜなら、神経筋電気刺激は、ベッド上で安全に実施でき、術後早期の廃用性筋萎縮を抑えることができるため。循環動態が不安定で能動運動や離床が困難な状況でも使用可能である。

MEMO

神経筋電気刺激療法は、主に筋肉や運動神経への電気刺激により筋収縮を起こすことで、筋力増強や筋萎縮の予防、痙縮抑制などを目的に行われる治療法である。神経筋電気刺激療法の目的は、①筋力強化、②代謝改善、③四肢機能の補助などである。

 

 

 

 

 

10 12歳の男児。約2か月来の膝関節痛を主訴に近医を受診した。陸上部に所属しているが、特に外傷の既往はない。下腿近位部の腫脹、圧痛、安静時痛を認めた。膝関節の可動域は疼痛のため、著明に制限されていた。単純Ⅹ線画像およびMRI画像を下に示す。画像所見で異常を指摘され、紹介受診となった。発熱はなく全身状態は良好。血液検査では炎症反応は正常で、ALPの上昇を認めた。
 最も考えられる疾患はどれか。

1.骨挫傷
2.骨髄炎
3.骨肉腫
4.軟骨肉腫
5.疲労骨折

解答

解説

本症例のポイント

12歳の男児(主訴:約2か月来の膝関節痛)。
・陸上部に所属(特に外傷の既往はない)。
下腿近位部の腫脹、圧痛、安静時痛を認めた。
・膝関節の可動域は疼痛のため、著明に制限されていた。
・発熱はなく全身状態:良好。
・血液検査では炎症反応:正常ALP:上昇
→ほかの選択肢が消去できる理由も上げられるようにしよう。

→アルカリフォスファターゼ値(ALP)値は、一般的に肝臓や骨の疾患の診断などに用いられる。骨形成(骨芽細胞)活性が高い腫瘍で上がりやすい。アルカリフォスファターゼとは、リン酸化合物を分解する働きを持つ酵素で、肝臓や小腸、腎臓、骨などの多くの臓器や器官に存在している。これらの組織に異常があるとアルカリフォスファターゼが血液のなかに漏れ出てくる。基準値:38〜113U/L(成人男女)である。

1.× 骨挫傷より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例は、特に外傷の既往はないため。骨挫傷の受傷機転として、多くが外傷(捻挫・打撲)に続発する。
・骨挫傷とは、スポーツによる外傷や交通事故、関節同士がぶつかることなど外部からの衝撃が原因で骨内部に損傷をきたした状態である。不完全骨折までいかず、骨の内出血を起こしている状態である。

2.× 骨髄炎より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例の炎症反応は正常であるため。一般的に、骨髄炎なら、炎症所見(発熱、局所熱感、白血球増多、CRP上昇など)を伴うことが多い。
・骨髄炎とは、通常は細菌、抗酸菌、または真菌によって起こる、骨の感染症である。

3.〇 正しい。骨肉腫が最も考えられる疾患である。なぜなら、本症例の症状と合致するため。
・骨肉腫とは、腫瘍の細胞が骨の材料(類骨)を作って増える悪性腫瘍である。思春期に多く、膝の周り(太ももの骨の下端やすねの骨の上端)にできやすい。腫れや押すと痛い、じっとしていても痛い、関節が動かしにくいことがある。血液で骨を作る指標(ALP)が上がることがある。X線やMRIで骨の壊れや骨の膜の反応、骨の外へ広がるこぶ状のかたまりが見えやすい。

4.× 軟骨肉腫より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例は、12歳の男児であるため。軟骨肉腫は一般に中高年に多い。
・軟骨肉腫とは、骨の中で腫瘍が軟骨を作って増える悪性腫瘍である。中高年に多い。レントゲンでは骨がまだらに抜け、白い点や輪・弧が集まるポップコーン状の石灰化が手がかりである。骨肉腫と違い腫瘍性の骨の材料(類骨)を作らない。育ちが遅めで薬が効きにくく、手術が主な治療である。

5.× 疲労骨折より優先されるものが他にある。なぜなら、腫脹が強く安静時痛が目立ち、可動域が著明に制限されているため。一方、疲労骨折は、局所の圧痛・運動時痛が主体で、休めば軽快する方向が多い。
・疲労骨折とは、1回の大きな外傷でおこる通常の骨折とは異なり、骨の同じ部位に繰り返し加わる小さな力によって、骨にひびがはいったり、ひびが進んで完全な骨折に至った状態をいう。好発部位は、腰椎が半数以上を占める。次に、中足骨35%、脛骨27%、肋骨12%、腓骨9%、尺骨・大腿骨・足関節の内側がそれぞれ3%である。

 

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