第60回(R7) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午後問題81~85】

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81 Eriksonの心理・社会的発達論で高齢者が克服すべきなのはどれか。

1.統合
2.自発性
3.自律性
4.同一性
5.基本的信頼

解答

解説

エリクソン発達理論

エリクソンとは、人間のライフサイクルを乳児期~老年期の8段階に分け、各段階の発達課題と心理・社会的危機があるとする発達理論を提唱した。

乳児期(0歳~1歳6ヶ月頃):基本的信頼感vs不信感
幼児前期(1歳6ヶ月頃~4歳):自律性vs恥・羞恥心
幼児後期(4歳~6歳):積極性(自発性)vs罪悪感
児童期・学童期(6歳~12歳):勤勉性vs劣等感
青年期(12歳~22歳):同一性(アイデンティティ)vs同一性の拡散
前成人期(就職して結婚するまでの時期):親密性vs孤立
成人期(結婚から子供が生まれる時期):生殖性vs自己没頭
壮年期(子供を産み育てる時期):世代性vs停滞性
老年期(子育てを終え、退職する時期~):自己統合(統合性)vs絶望

1.〇 正しい。統合は、高齢者が克服すべき課題である。
・老年期(子育てを終え、退職する時期~):自己統合(統合性)vs絶望
老年期は、自分の人生を振り返り、達成感と意味を見出す時期である。人生全体を肯定的に統合できるかが問われる。

2.× 自発性は、幼児後期が克服すべき課題である。
・幼児後期(4歳~6歳):積極性(自発性)vs罪悪感
幼児後期は、幼児が遊びや探索活動を通して、自らの行動を始める能力の発達が発揮できるかが問われる。

3.× 自律性は、幼児前期が克服すべき課題である。
・幼児前期(1歳6ヶ月頃~4歳):自律性vs恥・羞恥心
幼児前期は、トイレトレーニングや自己決定を学ぶ過程で自律性を育むことができるかが問われる。

4.× 同一性は、青年期が克服すべき課題である。
・青年期(12歳~22歳):同一性(アイデンティティ)vs同一性の拡散
青年期は、自分の価値観や将来の方向性を模索する過程で同一性を確立できるかが問われる。ちなみに、自己同一性とは、心理学や社会学において、「自分は何者なのか」という概念をさす。

5.× 基本的信頼は、乳児期が克服すべき課題である。
・乳児期(0歳~1歳6ヶ月頃):基本的信頼感vs不信感
乳児期は、十分な愛情とケアを受けることで基本的信頼が形成され、安心して成長できるか問われる。

 

 

 

 

 

82 深部感覚障害で陽性となるのはどれか。

1.Barré徴候
2.Kernig徴候
3.Lasègue徴候
4.Romberg徴候
5.カーテン徴候

解答

解説
1.× Barré徴候(バレー徴候)とは、脳血管障害など(軽度麻痺)によって起こる。上位運動ニューロン障害による片側性の軽い運動麻痺を評価するための方法である。上肢の筋力が低下する(麻痺がある)と、両腕を水平に維持することが困難となるため、麻痺側がゆっくりと回内しながら下降してくる。錐体路の障害を疑う。錐体路とは、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。

2.× Kernig徴候(ケルニッヒ徴候)は、膜刺激症状の検査で陽性の場合みられる。方法は、①背臥位にて股・膝関節90°屈曲位に保持する。②他動的に膝関節伸展する。③膝関節に痛みが出たら陽性。膝関節を135°以上伸展できない。

3.× Lasègue徴候(ラセーグ徴候)とは、坐骨神経麻痺・椎間板ヘルニアの鑑別に用いられる。髄膜が刺激され陽性となりやすい。髄膜が刺激され陽性となりやすい。仰臥位の患者の下肢を伸展させたまま持ち上げた際に、大腿後面に疼痛が出現し、それ以上挙上できなくなる状態を指す。

4.〇 正しい。Romberg徴候は、深部感覚障害で陽性となる。Romberg徴候(ロンベルグ徴候)は、被験者に足をそろえ、目を閉じて直立する検査で、陽性(閉眼時)では、脊髄性障害(脊髄癆)では動揺が大きくなる。ちなみに、開眼時・閉眼時ともに動揺がみられる場合は小脳障害を考える。

5.× カーテン徴候とは、一側の迷走神経麻痺がある場合には口蓋垂が健側に傾くことである。咽頭後壁も健側に牽引される。

(※画像引用:やお歯科クリニック様HPより)

深部感覚の伝導路

【深部感覚(振動覚、位置覚)の伝導路】
後根 ⇒ 後索(下肢からの線維は薄束を通って薄束核に終わり、上肢からの線維は楔状束を通って楔状束核に終わる) ⇒ 延髄(後索核) ⇒ 毛帯交叉 ⇒ 内側毛帯 ⇒ 視床後外側腹側核 ⇒ 感覚野

 

 

 

 

 

83 小脳障害でみられる症候はどれか。2つ選べ。

1.筋緊張低下
2.静止時振戦
3.ジスメトリー
4.深部感覚障害
5.病的反射陽性

解答1・3

解説

小脳とは?

小脳とは、後頭部の下方に位置し、筋緊張や身体の平衡の情報を処理し運動や姿勢の制御(運動系の統合的な調節)を行っている。小脳は、筋トーヌスと運動の調節に関与している。

【小脳運動失調症の構成要素は6つ】
①測定障害:目標物の距離を正確にとらえられない。
②反復拮抗運動障害:拮抗筋の動きの切り替えがスムーズにできない。
③運動分解:運動軌道が円滑ではない。
④協働収縮不能:複雑な動きを段階的かつ協調的に働かせることができない症状のことを指す。例えば、「後ろへ反り返る」という指示があった場合、同時に膝を曲げてバランスをとるという動作が障害され、後方へ転倒しそうになる。また、背臥位で腕を組んだまま起き上がることができない。
⑤企図振戦:随意運動しようとすると粗大な振戦が出現する。
⑥時間測定異常:動作が遅れる。

1.〇 正しい。筋緊張低下は、小脳障害でみられる症候である。なぜなら、小脳は運動の調整や協調運動に関与しているため。小脳の機能障害により、筋肉の適切な緊張が保たれず、筋緊張低下が生じることがあります。

2.× 静止時振戦は、主にパーキンソン病でみられる。パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。

3.〇 正しい。ジスメトリーは、小脳障害でみられる症候である。ジスメトリー(dysmetria)とは、測定障害のことである。測定障害とは、目標物の距離を正確にとらえられないことである。

4.× 深部感覚障害は、(振動覚、位置覚)の伝導路の障害で見られる。
【深部感覚の伝導路】後根 ⇒ 後索(下肢からの線維は薄束を通って薄束核に終わり、上肢からの線維は楔状束を通って楔状束核に終わる) ⇒ 延髄(後索核) ⇒ 毛帯交叉 ⇒ 内側毛帯 ⇒ 視床後外側腹側核 ⇒ 感覚野

5.× 病的反射陽性は、上位運動ニューロンの障害(錐体路障害)でみられる症状である。錐体路とは、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。障害されることで片麻痺などの症状をきたす。

錐体路とは?

錐体路とは、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。障害されることで片麻痺などの症状をきたす。

【錐体路徴候】
・深部腱反射亢進
・病的反射(+)
・表在反射(消失)
・痙性麻痺

【錐体外路症状】
・深部腱反射正常
・表在反射(+)
・病的反射(-)
・不随意運動の出現

 

 

 

 

 

84 嚥下機能で反回神経麻痺により障害される期はどれか。

1.先行期
2.準備期
3.口腔期
4.咽頭期
5.食道期

解答

解説

反回神経とは?

反回神経は、運動神経、知覚神経を含む混合神経で声帯や嚥下機能を司っている。前枝は喉頭粘膜、声帯裂、甲状披裂筋、外側輪状披裂筋に分布する。後枝は後輪状披裂筋、横披裂筋、斜披裂筋に分布する。喉から胸にかけて走行する。

反回神経の枝は喉頭や声帯に分布し、障害により嗄声を生じる。反回神経は、右が鎖骨下動脈を、左が大動脈弓を前方から後方へ回り、この周囲に癌が浸潤することで嗄声が生じる。嗄声とは、声帯を振動させて声を出すとき、声帯に異常が起こり「かすれた声」になっている状態である。嗄声の原因は、①声帯自体に問題がある場合と、②声帯を動かす神経に問題がある場合がある。

1.× 先行期は、飲食物の形や量、質などを認識する期である。

2.× 準備期は、口への取り込み(咀嚼する)期である。

3.× 口腔期は、飲食物を口腔から咽頭に送り込む期である。

4.〇 正しい。咽頭期は、反回神経麻痺により障害される。なぜなら、反回神経は、主に喉頭の運動制御、特に声帯の閉鎖に関与しているため。前枝は喉頭粘膜声帯裂、甲状披裂筋、外側輪状披裂筋に分布する。後枝は後輪状披裂筋、横披裂筋、斜披裂筋に分布する。

5.× 食道期は、飲食物を食道から胃に送り込む期である。

(※図引用:「illustAC様」)

嚥下の過程

①先行期・・・飲食物の形や量、質などを認識する。
②準備期・・・口への取り込み。飲食物を噛み砕き、飲み込みやすい形状にする。
③口腔期・・・飲食物を口腔から咽頭に送り込む。
④咽頭期・・・飲食物を咽頭から食道に送り込む
⑤食道期・・・飲食物を食道から胃に送り込む。

 

 

 

 

 

85 出生後、消失するのが最も遅いのはどれか。

1.吸啜反射
2.Galant反射
3.手掌把握反射
4.足底把握反射
5.交叉性伸展反射

解答

解説
1.× 吸啜反射とは、原始反射のひとつであり、口腔内に指を入れると、舌を動かして吸啜する(吸う)反射のことである。出生時からみられ、生後4~6か月頃には消失する。

2.× Galant反射(ガラント反射、側彎反射、背反射とも)とは、脊柱近位を尖った物でこすることで体幹が刺激側に側屈する反射である。これは出生時からみられ、生後1~2か月頃に消失する。

3.× 手掌把握反射とは、出生時からみられ生後4か月ころに消失する反射である。児が指を開いているときに指で手のひらを刺激すると、指を握りしめようとする反射で、代表的な原始反射のひとつである。

4.〇 正しい。足底把握反射は、出生後、消失するのが最も遅い。足底把握反射は、足趾把握反射ともいい、新生児の母趾球を検者の母指で圧迫すると、全趾が屈曲する。3 ヵ月ごろから弱くなり、9か月ごろには消失する。

5.× 交叉性伸展反射は、背臥位で一側の下肢を屈曲し他側を伸展させ、伸展側の下肢を他動的に屈曲すると非刺激側下肢が屈曲位から伸展する反射である。正常であれば、2ヶ月で消失する

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