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16 30歳の男性。会社員。中学生の頃より人前で話すときに緊張が強くなり、人と会うのを避けるようになった。大学卒業後に就職し、顧客との交渉が多い部署に配属となった。プレゼンテーションの際には動悸、発汗および腹痛が出現し、うまく行えなかった。仕事の業績も落ち込んだため精神科を受診した。
最も考えられるのはどれか。
1.持続性抑うつ症〈気分変調症〉
2.社交不安症〈社交不安障害〉
3.身体症状症
4.全般不安症〈全般性不安障害〉
5.パニック症〈パニック障害〉
解答2
解説
・30歳の男性(会社員)。
・中学生の頃:人前で話すときに緊張が強くなり、人と会うのを避ける。
・大学卒業後:就職、顧客との交渉が多い部署に配属。
・プレゼンテーションの際:動悸、発汗、腹痛が出現。
・仕事の業績も落ち込んだ。
→本症例は、社交不安症〈社交不安障害〉が疑われる。ほかの選択肢の消去理由も分かるようにしよう。
1.× 持続性抑うつ症〈気分変調症〉とは、慢性の抑うつ気分が数年間以上続くが、反復性うつ病性障害ほど重篤ではない疾患である。抗うつ薬と精神療法が主な治療法である。本症例の主訴は、「プレゼンテーションの際の動悸、発汗、腹痛が出現」である。
2.〇 正しい。社交不安症〈社交不安障害〉が最も考えられる。社交不安障害(社会恐怖、社交不安症)は、学童期~思春期の発症が多い。一方、25歳以上での発症はまれといわれている。対人場面において、過剰な不安や緊張が誘発されるあまり、動悸・震え・吐き気・赤面・発汗などの身体症状が強く発現する。
3.× 身体症状症(身体化障害)は、身体的訴えが多発性で繰り返し起こり、しばしば変化する身体症状を主とするものである。多くの医療機関を受診して、身体的症状を説明する原因はないといわれても受診を続け、本人は抑うつや不安が持続し、周囲との人間関係も悪くなる。治療の主体は支持的精神療法と認知行動療法である。抗不安薬などの薬物療法は依存を招く可能性があるため行わないことが多い。本症例は、「動悸、発汗、腹痛」が出現している。
4.× 全般不安症〈全般性不安障害〉とは、日常生活において漠然とした不安を慢性的に感じてしまう病気である。特定の状況に苦手意識を感じる社交不安障害とは異なり、不安を感じる事象が非常に幅広い(漠然とした将来の不安など)ことが特徴である。導入時の作業療法は、軽い運動などで身体的な緊張の軽減を図ることである。治療法として認知行動療法(セルフコントロール)、薬物療法があげられる。本症例は、「プレゼンテーション」が原因で出現している。
ちなみに、全般性不安障害の症状は、①身体症状と②精神症状である。
①身体症状は、頭痛、頭重、頭の圧迫感や緊張感、しびれ感、そわそわ感、もうろうとする感じ、めまい感、頭がゆれる感じ、自分の身体ではないような感じ、身体の悪寒や熱感、手足の冷えや熱感、全身に脈拍を感じる、便秘や頻尿などである。
②精神症状は、些細なことで不安になる、注意散漫な感じ、記憶力が悪くなる感じ、根気がなく疲れやすい、イライラして怒りっぽい、小さなことが気になる、悲観的になり、人に会うのが煩わしい、寝つきが悪く、途中で目が覚めやすいなどである。
5.× パニック症〈パニック障害〉とは、誘因なく突然予期せぬパニック発作(動悸、発汗、頻脈などの自律神経症状、狂乱・死に対する恐怖など)が反復して生じる状態をいう。また発作が起こるのではないかという予期不安を認め、しばしば広場恐怖を伴う。治療として、①SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、②抗不安薬、③認知行動療法などである。本症例は、「プレゼンテーション」が原因で出現している。
・多くの出来事や活動(例えば仕事や学校など)について制御が困難と感じる過度な不安や心配が少なくとも6か月以上持続している。
・以下の6つの症状のうち3つ以上を伴っている(子どもの場合は1つ以上)
①落ち着きのなさ、緊張感、または神経の高ぶり
②疲労しやすいこと
③集中困難、または心が空白になること
④易怒性
⑤筋肉の緊張
⑥睡眠障害
・その不安、心配、または身体症状が臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている(「仕事ができない」など)
・その障害は、物質(カフェイン、アルコール、医薬品など)、または他の医学的疾患(甲状腺機能亢進症など)の生理学的作用によるものではない
・その障害は他の精神疾患(うつ病、そううつ病、統合失調症など)では説明できない
(※参考:「全般性不安障害(全般不安症)」十三メンタルクリニック様より)。
17 11歳の女児。不登校を心配した母親に連れられて来院した。幼少期に人見知りはせず、抱っこをせがむこともなかった。保育園では一人遊びが多かった。現在の成績は上位。運動は苦手だがサッカー観戦は好きで、地元チームの選手の背番号と生年月日を全て記憶している。冗談が通じずクラスで仲間外れになることがある。
この児の障害で正しいのはどれか。
1.偏食はまれである。
2.感覚過敏を伴うことがある。
3.他人の感情の変化を敏感に察知する。
4.日常習慣の変更の受け入れが良好である。
5.4~5歳で「サリーとアン課題」に正解することが多い。
解答2
解説
・11歳の女児(不登校、成績上位)。
・幼少期に人見知りはせず、抱っこをせがまない。
・保育園:一人遊びが多かった。
・運動は苦手だがサッカー観戦は好き。
・選手の背番号と生年月日を全て記憶。
・冗談が通じずクラスで仲間外れになる。
→本症例は、自閉症スペクトラム障害が疑われる。ほかの選択肢の消去理由も上げられるようにしよう。
→自閉症スペクトラム障害とは、正常な社会的関係を構築することができず、言葉の使い方に異常がみられるか、まったく言葉を使おうとせず、強迫的な行動や儀式的な行動がみられる病気である。 自閉スペクトラム症の患者は、他者とコミュニケーションをとったり関係をもったりすることが苦手である特徴を持つ。広汎性発達障害(自閉スペクトラム障害)とは、相互的な社会関係とコミュニケーションのパターンの障害、および限局・常同・反復的な行動パターンがあげられる。生後5年以内に明らかとなる一群の障害である。通常は精神遅滞を伴う。広汎性発達障害、およびその下位分類である自閉症、アスペルガー症候群、高機能自閉症は、「自閉スペクトラム症」とまとめられた。
【診断基準の要点】
①「社会及び感情の相互性の障害」「社会的相互作用で用いられる非言語的コミュニケーションの障害」「発達レベル相応の関係を築き維持することの障害」の3つがすべて込められること。
②行動、興味活動の、限局的で反復的な様式が認められること。
1.× 偏食は、「まれ」ではなく多くみられる。食べ物に対するこだわりや偏った嗜好(偏食)が見られる。
2.〇 正しい。感覚過敏を伴うことがある。聴覚、触覚、視覚などに対する過敏な反応が含まれ、環境の音や光、服の感触などに敏感になることがよくみられる。たとえば、騒がしい場所や特定の素材の服を着ると不快感を示すなど、感覚過敏の傾向が見られる。
3.× 他人の感情の変化を敏感に察知することが困難である。本症例のように、冗談が通じずクラスで仲間外れになるという状況が特徴で、他人の感情や意図を正しく読み取れない。
4.× 日常習慣の変更の受け入れが「良好」ではなく不良である。自閉症スペクトラム障害は、強迫的な行動や儀式的な行動がみられる。 限局・常同・反復的な行動パターンがあげられる。たとえば、家庭や学校での日課が変更されると、不安や混乱を示すことが多く、変化に対して柔軟に対応するのが苦手である。
5.× 4~5歳で「サリーとアン課題」に正解することが多いのは、定型発達の場合である。「サリーとアン課題」は他者の心を推測する能力を測る課題である。同年齢の広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)児では不正解になることが多い。
① サリーとアンの二人が部屋の中で遊んでいます。
② サリーは自分の人形をカゴの中に入れて部屋を出ます。
③ サリーが出ていった後に、アンはカゴの中の人形を自分の箱の中に隠します。
④ 部屋に戻ってきたサリーは、もう一度人形で遊ぶためにどこを探すでしょう?
3歳児(平均3歳6か月):過半数以上が「箱の中を探す」と、自分の見たままで答える。
4歳児(平均4歳6か月):過半数が「カゴの中を探す」と答える。
6歳:95%以上の子が正答できる。
18 50歳の男性。1年前より物忘れのために仕事で失敗が認められるようになった。また、通勤中道に迷うようになったため、3か月前に退職。精神科病院でAlzheimer型認知症の診断を受け、精神科作業療法に通うこととなった。
この患者の症状を評価する尺度で最も適切なのはどれか。
1.NPI
2.PANSS
3.RAS
4.SANS
5.SMSF
解答1
解説
・50歳の男性(Alzheimer型認知症)。
・1年前:物忘れのために仕事で失敗あり。
・通勤中道に迷うようになった。
・3か月前に退職。
→Alzheimer型認知症は、認知症の中で最も多く、病理学的に大脳の全般的な萎縮、組織学的に老人斑・神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である。特徴は、①初期から病識が欠如、②著明な人格崩壊、③性格変化、④記銘力低下、⑤記憶障害、⑥見当識障害、⑦語間代、⑧多幸、⑨抑うつ、⑩徘徊、⑩保続などもみられる。Alzheimer型認知症の患者では、現在でもできる動作を続けられるように支援する。ちなみに、休息をとることや記銘力を試すような質問は意味がない。
1.〇 正しい。NPIは、この患者(Alzheimer型認知症)の症状を評価する尺度である。NPI(Neuropsychiatric Inventory)は、援助者からの聞き取りにより、「認知症の行動・心理症状(BPSD)」を評価する方法である。 「認知症の行動・心理症状(BPSD)」に関連する12項目につき、頻度を0~4の5段階で、重症度を1~3の3段階で評価し、点数が高いほど重症となる。
2.× PANSS(Positive and Negative Syndrome Scale:陽性・陰性症状評価尺度)は、統合失調症を対象に、30項目について陽性尺度、陰性尺度、総合精神病理尺度を医師が評定するものである。幻覚も評価項目に含まれる。
3.× RAS(Recovery Assessment Scale)は、精神疾患を持つ人の回復(リカバリー)の状況を、本人の視点から評価する尺度である。自己肯定感や生活の質を測定する。5項目により構成されており、①目標/成功志向・希望、②他者への信頼、③自信を持つこと、④症状に支配されないこと、④手助けを求めるのをいとわないことがあげられる(※参考:「日本語版24項目版 Recovery Assessment Scale」Kobe University様HPより)。
4.× SANS(Scale for the Assessment of. Negative Symptoms:陰性症状評価尺度)は、感情鈍麻、思考障害など、統合失調症の陰性症状の評価に用いられる。
5.× SMSF(Inventory Scale for Mood and Sense of Fatigue:気分と疲労のチェックリスト)は、統合失調症患者の気分と疲労感に関する13項目からなる自記式尺度である。各尺度について被検者は、「感じない」と「強く感じる」を両端とする線分上のどのあたりに今の状態が当てはまるかをチェックする。
(※図引用:「SOMPO笑顔倶楽部」様HPより)
19 33歳の女性。統合失調症。半年ほど前から「誰かに見張られている」と言い、近隣でのトラブルが続いて再入院となった。入院後、生活リズムの改善を目的に本人が希望した手工芸の活動が開始された。作業療法開始3週で安定して活動に参加できるようになったが、依然として意欲低下があり、活動中に「見張られていて不安だから作業療法をやめたい」と申し出た。
この時の作業療法士の対応で最も適切なのはどれか。
1.作業種目を変更する。
2.妄想の内容を詳細に聞き出す。
3.作業療法の参加を直ちに中止する。
4.手工芸を継続できるような声かけを行う。
5.「見張られている」といった事実がないことを説明する。
解答4
解説
・33歳の女性(統合失調症)。
・半年前「誰かに見張られている」と。
・近隣でのトラブルが続いた。
・入院後:生活リズムの改善を目的に、本人が希望した手工芸の活動が開始。
・開始3週:安定して活動に参加できる。
・依然として意欲低下があり、活動中に「見張られていて不安だから作業療法をやめたい」と。
→本症例は、統合失調症(回復期~維持期)である。本人の希望した手工芸の活動に、妄想がみられているため、増悪しないよう対応を考えよう。患者の安心感と自信を維持しながら活動継続を促すことが望ましい。
1.× 作業種目を変更する優先度は低い。なぜなら、本人が希望し手工芸の活動が開始しているため。作業種目を変更は、患者の自信喪失につながるだけでなく、根本的な対応とはいえない。
2.× 妄想の内容を詳細に聞き出す必要はない。なぜなら、統合失調症の妄想内容を掘り下げると、逆に妄想が気になり、活動中の不安や緊張が増すリスクがあるため。
3.× 作業療法の参加を直ちに中止する必要はない。なぜなら、作業療法の導入・中断は医師の指示のもと医師の判断で行うため。また、作業療法(本人の希望した手工芸の活動)を急に中止すると、リズムの乱れや自信の喪失につながる恐れがある。
4.〇 正しい。手工芸を継続できるような声かけを行う。本症例は、希望した手工芸の活動が開始し、安定して活動に参加しているが、開始3週経ち活動中に「見張られていて不安だから作業療法をやめたい」との訴えがあった。まずは、患者の希望を尊重しつつ、作業療法中に適宜声がけをすることで、患者は安心して活動を続けやすくなる。
5.× 「見張られている」といった事実がないことを説明する必要はない。なぜなら、妄想は統合失調症の症状であり、否定しても症状は改善されないため。また、妄想に対して否定すれば、患者は「自分の感じていることが否定された」と感じ、治療的信頼関係が損なわれる恐れがあるため。
20 37歳の女性。統合失調症。20年間の入退院を繰り返した後、グループホームに入居し、精神科デイケアを利用して生活する方針となった。担当作業療法士は、本人の関心、才能、性格および環境について日常生活を含めた7つの領域に分けて本人と確認し、本人の言葉で退院後の目標を記載した。
本アセスメントの根拠となるのはどれか。
1.CMOP
2.IPSモデル
3.人間作業モデル
4.ストレングスモデル
5.Empowerment approach
解答4
解説
担当作業療法士:本人の関心、才能、性格および環境について日常生活を含めた7つの領域に分けて本人と確認し、本人の言葉で退院後の目標を記載した。
1.× CMOP(Canadian Model of Occupational Performance:カナダ作業遂行モデル)とは、「人は作業欲求をもち、人が作業を行うことを可能にするためには、人と作業療法士の協業的(協働的)アプローチが重要である」とする作業療法理論である。ちなみに、協業的(協働的)アプローチとは、それぞれが別々の役割を持ちながらも、協力して共通の目標を達成するために、それぞれの得意な部分を活かして取り組んでいくというやり方のことである。
2.× IPSモデル<Individual Placement and Support:個別職業紹介とサポート>は、患者への信頼と可能性を信じることをベースとして、症状の安定度や職業準備性よりも就労意欲を重視し、仕事の中で自分を高め(ストレングス)、最終目的を疾患からの回復(リカバリー)とするものである。つまり、精神障害者の就労を支援するものである(※下参照)。
3.× 人間作業モデルは、キールホフナーによって確立された作業療法の実践モデルである。作業を人間性の保持に必要なものや健康が破綻した後の再調整をするものと位置づけている。どの程度作業に適応しているかを考える要素は、その人の行動を決定するものとして「意志」「習慣化」「遂行技能」の3要素の相互作用と、これに加えて作業を促進するための「環境」を4要素目として挙げている。さらに、この4要素はより細かい10の要素から構成されている。
4.〇 正しい。ストレングスモデルが、本アセスメントの根拠となる。ストレングスモデルとは、患者がもつ性格・技能・環境・関心などのよい点(ストロングポイント)に着目して、それを伸ばし、回復に向かわせるような取り組みを行うことをいう。
5.× Empowerment approach(エンパワーメント アプローチ)は、個人の潜在能力に気づき、置かれている状況に対しての対処能力を高めるようなアプローチをいう。ちなみに、エンパワメントとは、対象者が主体的に自身の状態を変えていく方法や自信を獲得できるよう、対象者が本来持っている力を引き出し、その自己決定能力を強化することである。対象は、個人、組織、コミユニテイの3段階がある。過程には、傾聴→対話→行動アプローチがある。
IPSとは、個別の就労活動支援と職場定着支援を中心とした就労支援モデルです。正式名称は「Individual Placement and Support」といい、日本語に訳すと「個別職業紹介とサポート」になります。IPSモデルの理念は、「どんなに重い精神障害を持つ人であっても、本人に働きたいという希望さえあれば、本人の興味、技能、経験に適合する職場で働くことが出来る」「就労そのものが治療的であり、リカバリーの重要な要素となる」という信念に基づいています。
IPSモデルの基本原則
IPSには下記7つの基本原則があります
① 就労支援対象についての除外基準なし
② 短期間、短時間でも企業への就労を目指す
③ 施設内でのトレーニングやアセスメントは最小限とし、迅速に職場開拓(就職活動など)を実施する
④ 就労支援と医療保健の専門家でチームを作る
⑤ 職探しは本人の技能や興味に基づく
⑥ 就労後のサポートは継続的に行う
⑦ 生保や年金など経済的側面の相談、支援も行う
(引用:「IPSモデルとは?」多摩地域IPS就労支援センター様HPより)