第60回(R7)作業療法士国家試験 解説【午前問題21~25】

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21 診療報酬の疾患別リハビリテーションで正しいのはどれか。2つ選べ。

1.診療報酬は3年に1度改定される。
2.疾患別リハビリテーション料は療法士のみが算定できる。
3.疾患別リハビリテーション料は15分を1単位で算定する。
4.リハビリテーション実施記録には実施時刻を正確に記載する。
5.疾患別リハビリテーション料には算定日数の上限が定められている。

解答4・5

解説
1.× 診療報酬は、「3年」ではなく2年に1度改定される。診療報酬とは、医師や看護師などから受ける医療行為に対して、保険制度が支払う料金である。ちなみに、介護報酬の改定(介護保険制度改正)は、3年に1度改正される。

2.× 疾患別リハビリテーション料は、「療法士のみ」ではなく「療法士+医師看護師」が算定できる。疾患別リハビリテーション料は、脳血管障害や骨折など特定の疾患に対してリハビリを実施した際に算定可能である。

3.× 疾患別リハビリテーション料は、「15分」ではなく20分を1単位で算定する。これを1日合計6単位に限り算定できる。

4.〇 正しい。リハビリテーション実施記録には、実施時刻を正確に記載する。なぜなら、不正受給の疑いになりかねないため。(とはいえ、調べればたくさん出てくるが、リハビリテーションの計画書を作成しなかったにも関わらず診療報酬を請求するなどの不正な請求は後を絶たない。これらは、一概に、医療従事者のせいとか、病院の体制のせいとか軽々しく言えないが、自分の身や心を守りつつ、うまく生きていってほしい)。

5.〇 正しい。疾患別リハビリテーション料には、算定日数の上限が定められている。心疾患は、治療開始日から150日を限度、脳血管は180日、廃用症候群は120日、運動器は150日、呼吸器は90日である。

 

 

 

 

 

22 ICFの構成要素である「活動と参加」に分類されるのはどれか。2つ選べ。

1.意思決定
2.睡眠の質
3.社会的態度
4.複雑な計算
5.基本的な対人関係

解答1・5

解説ICF

(※図引用:「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」厚生労働省様HPより)

1.〇 正しい。意思決定は、「活動と参加」に分類される。実際、ICFでは知識の応用「d177 意思決定」といった項目がある。

2.× 睡眠の質という項目はないが、(睡眠機能:b134)は、「心身機能」に分類される。

3.× 社会的態度(e460)は、「環境因子」に分類される。

4.× 複雑な計算という項目はないが、計算に関する項目として「心身機能(d172:計算機能)」と「活動と参加(b172:計算」があげられる。

5.〇 正しい。基本的な対人関係は、「活動と参加」に分類される。実際、ICFでは知識の応用「d710 基本的な対人関係」といった項目がある。

 

 

 

 

 

23 推測統計量に含まれるのはどれか。

1.期待値
2.最大値
3.中央値
4.平均値
5.標準偏差

解答

解説

推測統計とは?

推測統計とは、標本データを用いて母集団の特性を推測する方法である。ちなみに、標本データとは、ある集団全体(母集団)から一部だけを取り出して調べたデータのことである。例えば、全国民(母集団)の身長を知りたい場合、一部の人の身長だけを測って集めたデータが標本データとなる。

【例】①確率変数、②確率分布(正規分布、二項分布など)

1.〇 正しい。期待値は、推測統計量に含まれる。期待値とは、「確率変数がとる値を確率によって重みづけした平均値=母集団が持つ理論的な平均」のことを指す。つまり、母集団全体からサンプリングしたときに得られるであろう平均値の理論的な予測(推測)である。簡単に言うと、サンプルから母集団全体を想定して「予測・推測」した理論的な値である。

※選択肢2~5は、すべて「標本(実際に取ったデータ)」から直接計算した値である。

2.× 最大値とは、実数値をとる関数が、その変域内でとる最も大きい値である。

3.× 中央値とは、有限個のデータを小さい順に並べたとき中央に位置する値のことである。つまり、データの数値を小さい順に並べた時にちょうどまんなかの値である。

4.× 平均値とは、複数の数値に対して、個々を全て足し合わせた後、数値の個数で割った値のことである。

5.× 標準偏差とは、分散の正の平方根のことである。平均値を中心に観測された値がどれくらいばらついている示すものである。

 

 

 

 

 

24 エビデンスレベルが最も高いのはどれか。

1.横断研究
2.コホート研究
3.メタアナリシス
4.無作為化比較試験
5.ケースコントロール研究

解答

解説

(※図:Minds診療ガイドライン作成の手引き2014に記載されている「エビデンスのレベル分類」)

1.× 横断研究は、エビデンスレベルⅣbである。横断研究とは、一時点での疾病の頻度と分布をありのままに記述し、疾病の発生要因の仮説を立てる方法である。

2.× コホート研究は、エビデンスレベルⅣaである。コホート研究とは、時間軸:前向き研究で、観察期間は長期間行う。信頼性は高いが費用・労力が大きい。

3.〇 正しい。メタアナリシスは、エビデンスレベル(エビデンスレベルⅠ)が最も高い。メタアナリシスとは、複数の研究結果を定量的に統合し、まとめ上げる解析方法である。

4.× 無作為化比較試験は、エビデンスレベルⅡである。無作為化比較試験(ランダム化比較試験)とは、「ランダムに割り付けた対象群間で前向きに効果の差を比較する試験」である。ある集団の対象者を実験的予防、治療、介入などを受けるか受けないかにより介入群と対照群の2群に無作為に配分した疫学的研究方法である。

5.× ケースコントロール研究は、エビデンスレベルⅣbである。症例対照研究(ケースコントロール研究)は、症例群と対照群に分け、両群の過去の曝露状況を比較する方法である。曝露と疾病発症の関連を明らかにする。欠点としては,選択バイアスや情報バイアスの影響が入りやすいことがあげられる。

コホート研究と症例対照研究の比較

コホート研究とは、時間軸:前向き研究で、観察期間は長期間行う。信頼性は高いが費用・労力が大きい。

症例対照研究とは、時間軸:後ろ向き研究で、観察期間はない。信頼性は低いが費用・労力が小さい。

 

 

 

 

 

25 二次予防はどれか。

1.高齢者の骨折予防指導
2.健康高齢者への運動指導
3.糖尿病患者への食事指導
4.リウマチ患者への生活指導
5.インフルエンザワクチン接種

解答

解説

疾病予防の概念

疾病の進行段階に対応した予防方法を一次予防、二次予防、三次予防と呼ぶ。
一次予防:「生活習慣を改善して健康を増進し、生活習慣病等を予防すること」
二次予防:「健康診査等による早期発見・早期治療」
三次予防:「疾病が発症した後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図ること」と定義している。(※健康日本21において)

1.× 高齢者の骨折予防指導は、一次予防である。なぜなら、高齢者の骨折予防指導は、骨折が起こる前に危険因子(例えば、転倒や骨粗鬆症)に対する指導を行うものであるため。

2.× 健康高齢者への運動指導は、一次予防である。なぜなら、健康な高齢者に対する運動指導は、健康状態を維持し、将来的な疾病発生のリスクを低減する目的で行われるため。

3.〇 正しい。糖尿病患者への食事指導は、二次予防である。なぜなら、糖尿病患者への食事指導は、既に糖尿病と診断された患者に対して、病状の悪化や合併症発生を防ぐために行われるため。早期に介入し、網膜症や腎症などの合併症の進展を防ぐことを目的とする(※引用:「糖尿病の食事」厚生労働省様)。

4.× リウマチ患者への生活指導は、三次予防である。なぜなら、リウマチ患者への生活指導は、既にリウマチと診断された患者の症状の進行や障害を軽減する目的であるため。

5.× インフルエンザワクチン接種は、一次予防である。ワクチンとは、病原性(毒性)を完全になくしたり弱めたりした病原体の一部などを接種することで、免疫システムが次の病原体の侵入に備えられるようにして、重篤な感染症を予防する薬である。

 

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