第60回(R7)作業療法士国家試験 解説【午前問題26~30】

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26 災害時の作業療法士の対応で優先度が低いのはどれか。

1.感染予防対策
2.避難所の状況把握
3.生活不活発病の予防
4.避難先での動線の整備
5.避難者個々への筋力増強訓練

解答

解説

MEMO

作業療法士が提供できる支援は、①作業を通した被災者の心身機能の維持・向上、②被災者の心のケア、③高齢者および障害者の生活環境調整、④高齢者および障害者の日常生活能力の維持・向上、⑤福祉用具の選定と適応などである、中でも、抑圧されている被災者の想いの開放を目的とした作業活動の提供は、心のケアに有効である。(※引用:「災害時における専門職の役割と連携」著:渡邉 忠義様)

1.〇 感染予防対策は、優先度が高い。なぜなら、避難所などで多くの人が集まる環境では、感染症の発生リスクが高まるため。療法士(医療従事者専門職)として、感染予防への専門的な助言が可能である。例えば、手洗いや消毒、マスク着用の徹底、適切な換気の管理などである。

2.〇 避難所の状況把握は、優先度が高い。なぜなら、避難所の状況把握により、適切な支援活動が行うことができるため。例えば、避難所内の環境、人数、利用状況を把握し、必要な暖房器具や食事、遊び道具など助言が行える。

3.〇 生活不活発病(廃用症候群)の予防は、優先度が高い。なぜなら、長期間にわたる避難生活では、運動不足や日常活動の低下が健康に悪影響を及ぼすため。例えば、軽いストレッチや歩行の促進、日常的な動作を取り入れる。ただし、災害の程度・災害サイクルの時期も考慮して考えなければならない。例えば、災害急性期(発生2~3程度)はライフラインも整っておらず、心の安定も重視される。運動の提供は亜急性期以降(2,3週間以降)が望ましい。

4.〇 避難先での動線の整備は、優先度が高い。なぜなら、避難先でも余震が続く場合が多く、安全かつスムーズな移動を支援する必要があるため。
避難所内や避難先での動線が整備されていれば、転倒や事故の防止、避難者間の混乱の軽減につながる。

5.× 避難者個々への筋力増強訓練は、災害時の作業療法士の対応で優先度が最も低い。なぜなら、災害時は、まず安全確保や感染対策、環境整備など、集団全体の健康と安全を守ることが最優先となるため。また、避難者全員に個々への筋力増強訓練が行えるか疑問が残る対応である。

(※図引用:「JRATパンフレット」日本災害リハビリテーション支援協会様HPより)

 

 

 

 

 

27 介護保険の第二号被保険者で要介護認定の対象となる疾病はどれか。

1.脳性麻痺
2.Parkinson病
3.外傷性頸髄損傷
4.ポストポリオ症候群
5.Guillain-Barré症候群

解答

解説

特定疾病(16種)

介護保険制度における被保険者は、65歳以上の「第1号被保険者」と、40~64歳までの「第2号被保険者」とに大別される。第2号被保険者が、介護保険でサービスを利用できるのは、「特定疾病」が原因の場合である。厚生労働省での特定疾病の定義として①心身の病的加齢現象と医学的な関係があると考えられる疾病、②加齢とともに生じる心身の変化が原因で、要介護状態を引き起こすような心身の障害をもたらすと認められる疾病に該当するものとしている。つまり、加齢と関係があって、要介護状態の原因となる病気のことである。

がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)
関節リウマチ
筋萎縮性側索硬化症
後縦靭帯骨化症
骨折を伴う骨粗しょう症
初老期における認知症
進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
脊髄小脳変性症
脊柱管狭窄症
早老症
多系統萎縮症
糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
脳血管疾患
閉塞性動脈硬化症
慢性閉塞性肺疾患
両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

1.× 脳性麻痺は対象とならない。なぜなら、第2号被保険者の対象は、40~64歳までであるため。したがって、脳性麻痺のようなお腹の中にいる間から、生後4週間までの間に発生した脳への損傷によって引き起こされる運動機能の障害は対象外である。

2.〇 正しい。Parkinson病は、介護保険の第二号被保険者で要介護認定の対象となる。パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。

3.× 外傷性頸髄損傷は対象とならない。なぜなら、主に外傷が原因であるため。外傷性頸髄損傷とは、転倒等での頚部(首)への衝撃・怪我により、急激に手足の動きが悪くなった状態(麻痺等)である。

4.× ポストポリオ症候群は対象とならない。なぜなら、ポリオの後遺症としての原因で多くの場合、麻痺は完全に回復するため。ポストポリオ症候群は、ポリオの後遺症として60歳前後で筋力低下や手足のしびれ、疼痛などの症状が現れる障害である。ポリオウイルスによる急性灰白髄炎によって小児麻痺を生じた患者が、罹患後、数十年を経て新たに生じる疲労性疾患の総称であり、急性灰白髄炎後の症状には、筋力低下、筋萎縮、関節痛、呼吸機能障害、嚥下障害などの症状を呈する。筋力低下は急性期の小児麻痺で障害をみられなかった肢にも比較的高頻度で生じる。診断基準は、①ポリオの確実な既往があること、②機能的・神経学的にほぼ完全に回復し、15年以上も安定した期間を過ごせていたにも関わらずその後に疲労や関節痛、筋力低下などの症状が発現した場合である。Halstead(ハルステッド)の診断基準を使用されることもある。

5.× Guillain-Barré症候群は対象とならない。なぜなら、多くの場合は回復する傾向があるため。

”Guillain-Barré症候群とは?”

Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である。

(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

28 Danielsらの徒手筋力テスト(段階2)の検査と検査肢位の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

1.肩甲骨挙上:腹臥位
2.肩屈曲:座位
3.肘伸展:側臥位
4.股外転:背臥位
5.膝伸展:腹臥位

解答1・4

解説
1.〇 正しい。肩甲骨挙上:腹臥位
MMT0~2:腹臥位、3~5:座位である。

2.× 肩屈曲:座位
MMT0~2:側臥位、3~5:座位である。

3.× 肘伸展:側臥位
MMT0~2:座位、3~5:腹臥位である。

4.〇 正しい。股外転:背臥位
MMT0~2:背臥位、3~5:側臥位である。

5.× 膝伸展:腹臥位
MMT0~1:背臥位、2:側臥位、3~5:座位である。

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29 検査と下位項目の組合せで正しいのはどれか。

1.WPPSI:集団参加
2.新版K式発達検査:処理速度
3.田中・ビネー知能検査:ワーキングメモリー
4.S-M社会生活能力検査:自己統制
5.日本版ミラー幼児発達スクリーニング検査:社会性

解答

解説
1.× 集団参加は、「WPPI」ではなくS-M社会生活能力検査に含まれる。
・WPPSI(Wecheler Preschool and Primary Scale of Intelligence)は、ウェクスラー知能検査の幼児版である。6種類(知識、単語、算数、類似、理解、文章:補充問題)の言語性下位検査と5種類(動物の家、絵画完成、迷路、幾何図形、積み木模様)の動作性下位検査で構成されていて、言語性IQと動作性IQおよび全検査IQを測定できる。

2.× 処理速度は、「新版K式発達検査」ではなくWAIS-Ⅲに含まれる
・WAIS-Ⅲ(Wechsler Adult Intelligence Scale:ウェクスラー成人知能検査)とは、成人用のウェクスラー知能検査WAISの改訂第3版のことである。質問やイラスト、積み木などの検査キットを用いて、「言語性IQ」「動作性IQ」に加え、「言語理解」「知覚統合」「作動記憶」「処理速度」の4つの指標が得られる。
・新版K式発達検査とは、1951年に京都市児童院で作られた心理検査である。検査項目として「姿勢・運動領域」「認知・適応領域」「言語・社会領域」の領域から発達状態を調べる。対象年齢は0歳~成人(主に0~7歳未満)である。

3.× ワーキングメモリーは、「田中・ビネー知能検査」ではなくWISC-Ⅳに含まれる。
・WISC-Ⅳ(Wechsler Intelligence Scale for Children-Fourth Edition:児童用ウェクスラー式知能検査第4版)は、知能検査であり、5~16歳11ヵ月までに適応可能で、学習障害の評価にも用いられる。4種類の指標から「言語理解指標」「知覚推理指標」「ワーキングメモリー指標」「処理速度指標」を検査する。
・田中・ビネー式知能検査とは、2歳から成人までの一般知能を測定し、精神遅滞児によく用いられる。精神年齢(MA)と生活年齢(CA)の比によってIQ(知能指数)を算出する。

4.〇 正しい。S-M社会生活能力検査:自己統制
・S-M社会生活能力検査は、子どもの社会生活能力を評価する。乳幼児~中学生を対象とし、保護者や担任教師などから聞き取る。6つの領域(①身辺自立、②移動、③作業、④コミュニケーション、⑤集団参加、⑥自己統制)から測定する。

5.× 日本版ミラー幼児発達スクリーニング検査は、「社会性」は含まれていない
・日本版ミラー幼児発達スクリーニング検査(JMAP:Japanese version of Miller Assessment for Preschoolers)は、ミラー幼児発達スクリーニング検査を日本で再標準化したものである。感覚運動、言語、非言語的認知能力など、発達全般にわたる全26項目の評価項目によりなる就学前幼児を対象とした発達スクリーニング検査である。評価領域は、行動、認知、運動と幅広い分野に広げ、特に体性感覚や平衡感覚の評価など、幼児では始めて標準化された発達領域を数多く含んでいる。

 

 

 

 

 

30 成人健常者の背臥位姿勢で体圧が最も小さい部位はどれか。

1.後頭骨
2.肩甲骨
3.第3腰椎
4.仙骨
5.踵骨

解答

解説

MEMO

仰臥位(背臥位)の褥瘡好発部位は、仙骨部が最も多く、次いで踵骨部、肩甲骨部、後頭部などがある。

1~2.4~5.× 後頭骨/肩甲骨/仙骨/踵骨より背臥位姿勢で体圧がかかる部位がある。なぜなら、骨の突出部位としてあげられるため。
体圧がかかりやすい部位に褥瘡が好発しやすい。これは褥瘡の発生の特徴として、局所の持続的な圧迫により組織に虚血が生じて発生するためである。

3.〇 正しい。第3腰椎は、成人健常者の背臥位姿勢で体圧が最も小さい部位である。なぜなら、第3腰椎は、背臥位では腰椎前弯により、床との接触が少なくなるため。

(※図引用:「脊柱」illustAC様より)

 

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