第60回(R7)理学療法士国家試験 解説【午後問題41~45】

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41 大腿義足歩行の立脚中期で体幹の義足側への側屈がみられた。
 原因はどれか。2つ選べ。

1.体重荷重線が足部内側にある。
2.義足が非切断肢よりも長すぎる。
3.ソケット初期内転角が大きすぎる。
4.ソケット外壁の高さが不足している。
5.義足側股関節外転筋群に筋力低下がある。

解答4・5

解説
1~2.× 体重荷重線が足部内側にある/義足が非切断肢よりも長すぎる場合、外転歩行がみられる。伸び上がり歩行の代償として起きやすく、伸び上がり歩行の要因として、①義足長が長い、②膝継ぎ手の摩擦が低いなど膝屈曲抵抗が弱いため、逆に屈曲抵抗が強すぎて膝が曲がらない時に起こる、③義足に対する不安により、心理的に膝関節を屈曲しないようにするためなどが考えられる。

3.× ソケット初期内転角が大きすぎる場合、足部外側が床から浮き上がる。なぜなら、ソケットの外壁にゆるみが生じていることになるため。したがって、一般的に5°程度の生理的な内転角をつける。一方、ソケットの初期内転角が不足している場合、ソケットが外側に傾き足底の内側が床面から浮き上がるため外転歩行が生じる可能性がある。ちなみに、外転歩行の原因はほかにも、①陰部の圧痛や不快感からの回避、②股関節の外転拘縮、③義足が長すぎるなどがある。

4.〇 正しい。ソケット外壁の高さが不足している
5.〇 正しい。義足側股関節外転筋群に筋力低下がある
これらは、立脚中期において義足側に体幹側屈が起こる。なぜなら、股関節外転筋力不足(筋発揮不足)により、ソケット外壁の支持が不足し、側方に不安定感が生じ、それを解消するために体幹を義足側に側屈して荷重する必要があるため。原因として、①会陰部に圧痛や不快感がある、②断端の股関節外転筋力の不足、③ソケット外側壁の支持不足、①外側遠位部に圧痛がある場合、⑤義足長が短い、⑥外転歩行などが考えられる。

(※関連問題:「第45回 理学療法士 午後問題18」)

 

 

 

 

 

42 災害リハビリテーション支援で誤っているのはどれか。

1.理学療法士は災害復興期から活動を開始する。
2.被災者自身が廃用症候群を予防できるよう支援する。
3.発災時に迅速な対応ができるように平時から対策する。
4.災害規模によって数か月程度の長期的な支援が必要となる。
5.支援統括組織に日本災害リハビリテーション支援協会[Japan Disaster Rehabilitation Assistance Team(JRAT)]がある。

解答

解説

(※図引用:「JRATパンフレット」日本災害リハビリテーション支援協会様HPより)

1.× 理学療法士は、「災害復興期」ではなく応急修復期から活動を開始する。応急修復期から、避難所の住環境の評価や動きやすい住環境へのアドバイス、避難物資の適切な配置など助言する。

2.〇 正しい。被災者自身が廃用症候群を予防できるよう支援する。なぜなら、長期間にわたる避難生活では、運動不足や日常活動の低下が健康に悪影響を及ぼすため。例えば、軽いストレッチや歩行の促進、日常的な動作を取り入れる。ただし、災害の程度・災害サイクルの時期も考慮して考えなければならない。例えば、災害急性期(発生2~3程度)はライフラインも整っておらず、心の安定も重視される。運動の提供は亜急性期以降(2,3週間以降)が望ましい。

3.〇 正しい。発災時に迅速な対応ができるように平時から対策する。なぜなら、災害後は、適切かつ迅速に対応することができないため。発災前を準備期として、計画・訓練・備蓄などを実施しておく必要がある。

4.〇 正しい。災害規模によって、数か月程度の長期的な支援が必要となる。なぜなら、大規模災害の場合、住居の喪失をしていることが多く、初期の救急対応だけでなく、被災者の生活再建が必要となるため。したがって、機能回復や社会復帰を含めた長期にわたるリハビリテーション支援が必要となる。

5.〇 正しい。支援統括組織に日本災害リハビリテーション支援協会[Japan Disaster Rehabilitation Assistance Team(JRAT)]がある。日本災害リハビリテーション支援協会の基本方針として、平時から加盟団体が相互に連携し、各地域において地域住民とともに災害に立ち向かう仕組みづくりに寄与すると同時に、発災時には災害リハビリテーション支援チームを発足させ、被災者・要配慮者の生活不活性発病や災害関連死等の予防に関する適切な対応を可能とすることで被災者が早期に災害を乗り越え、自立生活を再建、復興できることを目指し、活動することを目的とする(※引用:「JRATとは」日本災害リハビリテーション支援協会様HPより)。

 

 

 

 

 

43 神経伝導検査でF波の潜時延長と出現率減少がみられる疾患はどれか。

1.Guillain-Barré症候群
2.Parkinson病
3.重症筋無力症
4.進行性核上性麻痺
5.多系統萎縮症

解答

解説

筋電図検査

筋電図検査とは、筋肉や神経に異常がないかについて、筋肉が収縮する時や神経を電気で刺激するなどの筋肉や神経の信号の伝わり方を記録する検査である。筋肉を随意的に収縮してもらったり、神経に電気的刺激をしたりすることにより、神経や筋肉に生じる電気的活動を記録する。この記録を評価することにより、神経や筋肉に疾患があるかを調べることができる。

・神経原性変化があると高振幅、長持続、多相性の波形に。
・筋原性変化があると低振幅、短持続、多相性の波形に。

【結果の解釈】
脱髄:伝導速度低下、持続時間延長、振幅低下
軸索変性:持続時間短縮、振幅低下

潜時とは、刺激を与えてからM波が立ち上がるまでの時間のことである。M波とは、神経の遠心性神経(α運動ニューロン)が直接刺激されて筋が興奮するために起こる波である。一方、F波とは、中枢に向かって運動神経が逆行して、脊髄で神経細胞を興奮させて、再度末梢に向かって興奮する波である。

1.〇 正しい。Guillain-Barré症候群は、神経伝導検査でF波の潜時延長と出現率減少がみられる。なぜなら、Guillain-Barré症候群は、急性の末梢神経の脱髄性障害で、脱髄が進行すると、末梢神経の伝導速度が低下し、F波の潜時が延長し、またF波の出現率(持続率)が減少するため。Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)。

2.× Parkinson病は、中枢神経系(中脳の黒質)の変性疾患であるため、末梢神経の異常所見はみられない。ちなみに、パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。

3.× 重症筋無力症は、神経筋接合部の障害であるため、反復刺激試験における漸減現象〈Waning〉がみられる。重症筋無力症とは、末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患のこと。全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴(眼の症状だけの場合は眼筋型、全身の症状があるものを全身型と呼ぶ)。嚥下が上手く出来なくなる場合もある。重症化すると呼吸筋の麻痺をおこし、呼吸困難を来すこともある。日内変動が特徴で、午後に症状が悪化する。クリーゼとは、感染や過労、禁忌薬の投与、手術ストレスなどが誘因となって、急性増悪し急激な筋力低下、呼吸困難を呈する状態のことである。
【診断】テンシロンテスト、反復誘発検査、抗ACh受容体抗体測定などが有用である。
【治療】眼筋型と全身型にわかれ、眼筋型はコリンエステラーゼ阻害 薬で経過を見る場合もあるが、非有効例にはステロイド療法が選択される。胸腺腫の合併は確認し、胸腺腫合併例は、原則、拡大胸腺摘除術を施行する。難治例や急性増悪時には、血液浄化療法や免疫グロブリン大量療法、ステロイド・パルス療法が併用 される(※参考「11 重症筋無力症」厚生労働省HPより)。

4.× 進行性核上性麻痺は、中枢神経系(淡蒼球、視床下核、中脳、小脳にある神経細胞が脱落)の変性疾患であるため、末梢神経の異常所見はみられない。進行性核上性麻痺とは、淡蒼球、視床下核、中脳、小脳にある神経細胞が脱落することに起因する疾患である。中年期以降の男性(特に50~70歳)に多く発症し、易転倒性、注視麻痺、パーキンソニズム、認知症(前頭側頭型認知症)などの特徴的な症状を有する。診断にはパーキンソン病、多系統萎縮症、末梢神経障害、大脳基底核変性症など他疾患の除外が必要である。ちなみに、核上性とは、眼球運動を直接支配する神経細胞群(脳神経核)より上位ということを意味している。

5.× 多系統萎縮症は、中枢神経系の変性疾患(小脳、大脳基底核、自律神経など)であるため、末梢神経の異常所見はみられない。多系統萎縮症は、起立性低血圧が起こり得やすい疾患である。多系統萎縮症とは、神経系の複数の系統(小脳、大脳基底核、自律神経など)がおかされる疾患で、3つのタイプがある。小脳や脳幹が萎縮し、歩行時にふらついたり呂律がまわらなくなる小脳失調型、大脳基底核が主に障害され、パーキンソン病と同じような動作緩慢、歩行障害を呈する大脳基底核型、もうひとつは自律神経が主に障害され起立性低血圧や発汗障害、性機能障害などがみられる自律神経型である。

 

 

 

 

 

44 神経筋疾患と理学療法の組合せで正しいのはどれか。

1.Guillain-Barré症候群:Bohler体操
2.筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉:重錘を装着した歩行練習
3.ジストニア:筋電図バイオフィードバック
4.重症筋無力症:漸増抵抗運動
5.多発性硬化症:交代浴

解答

解説
1.× Bohler体操は、「Guillain-Barré症候群」ではなく脊椎圧迫骨折で行う。
・Bohler体操(ベーラー体操)は、脊椎圧迫骨折患者の背筋強化に使用する。脊椎伸展運動によって背筋の筋力強化を目的とした体操である。

2.× 重錘を装着した歩行練習は、「筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉」ではなく脊髄小脳変性症(小脳失調)で行う。重り負荷法(重錘負荷法)とは、上下肢に重りを着用させることで運動学習を進め、運動・動作の改善を図る方法である。上肢では 200g~400g、下肢では 300g~600g 程度のおもりや重錘バンドを巻く。重錘負荷法の他のアプローチとしては、弾性緊縛帯装着、固有受容性神経筋促通法などもある。

3.〇 正しい。ジストニアに対し、筋電図バイオフィードバックを用いる。なぜなら、ジストニアに伴う異常な筋パターンの修正やコントロールの向上が期待できるため。
・ジストニアとは、筋の不随意収縮による呈舌(舌を出すこと)や四肢・体幹の捻転運動をいう。他にも眼球上転、発生に障害が生じる。抗精神病薬内服開始後、数日以内に起こる副作用である。
・筋電図バイオフィードバックとは、患者自身が筋活動を視覚的に確認し、過剰な筋緊張を調整する訓練が可能となる。

4.× 漸増抵抗運動は、「重症筋無力症」では禁忌である。なぜなら、神経筋接合部の伝達障害により筋力低下易疲労が生じるため。したがって、運動を行う場合があれば低負荷・短時間が推奨される。ちなみに、重症筋無力症とは、末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患のこと。全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴(眼の症状だけの場合は眼筋型、全身の症状があるものを全身型と呼ぶ)。嚥下が上手く出来なくなる場合もある。重症化すると呼吸筋の麻痺をおこし、呼吸困難を来すこともある。日内変動が特徴で、午後に症状が悪化する。クリーゼとは、感染や過労、禁忌薬の投与、手術ストレスなどが誘因となって、急性増悪し急激な筋力低下、呼吸困難を呈する状態のことである。(※参考「11 重症筋無力症」厚生労働省HPより)

5.× 交代浴は、「多発性硬化症」では禁忌である。なぜなら、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)に配慮しなければならないため。ちなみに、多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)。

 

 

 

 

 

45 髄膜刺激徴候を誘発しやすい体位はどれか。

1.側臥位
2.端座位
3.長座位
4.背臥位
5.腹臥位

解答

解説

MEMO

髄膜炎とは、なんらかの理由(主な病原体:髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌)で、髄膜が炎症を起こす病気である。症状は、髄膜炎の3大症状でもある発熱、頭痛、項部硬直で、75%以上の意識障害(傾眠~昏睡と程度は様々)である。他にも、嘔吐や羞明もよくみられる。けいれんは初期症状にみられ、髄膜炎の全経過を通して20~40%に起きる。

1~2.5.× 側臥位/端座位/腹臥位は、髄膜刺激徴候を誘発しやすい体位とはいえない。
なぜなら、これらの体位には、髄膜刺激徴候のテストの体位はなく、髄膜に引っ張りストレスがかかりにくいため。

3.〇 正しい。長座位は、髄膜刺激徴候を誘発しやすい。なぜなら、髄膜に引っ張りストレスがかかるため。例えば、ラセーグ徴候の体位が長座位と合致する。ラセーグ徴候は、髄膜が刺激され陽性となりやすい。ただし、一般的に、坐骨神経麻痺・椎間板ヘルニアの鑑別に用いられる。Lasègue徴候(ラセーグ徴候)とは、背臥位の患者の下肢を伸展させたまま持ち上げた際に、大腿後面に疼痛が出現し、それ以上挙上できなくなる状態を指す。

4.× 背臥位だけでは、髄膜刺激徴候を誘発しやすい体位とはいえない。なぜなら、背臥位は、項部硬直のように頸部を受動的に屈曲させるなどの検査操作が必要であるため。
・項部硬直とは、髄膜刺激症状のひとつで、頸部が前屈に対してのみ抵抗を示すものであるため。仰臥位で後頭部を持ちあげると、項筋が収縮して著しい抵抗を示す現象で、髄膜炎やくも膜下出血などの診断に用いられる。
・Kernig徴候(ケルニッヒ徴候)は、髄膜刺激症状であり髄膜炎などでみられる。方法は、①背臥位にて股・膝関節90°屈曲位に保持する。②他動的に膝関節伸展する。③膝関節に痛みが出たら陽性。膝関節を135°以上伸展できない。

 

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