第59回(R6) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午前問題56~60】

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56 反回神経で正しいのはどれか。

1.味覚を伝える。
2.交感神経線維を含む。
3.横隔神経から分枝する。
4.輪状甲状筋を支配する。
5.左側の走行は右側よりも長い。

解答

解説

反回神経とは?

反回神経は、運動神経、知覚神経を含む混合神経で声帯や嚥下機能を司っている。前枝は喉頭粘膜、声帯裂、甲状披裂筋、外側輪状披裂筋に分布する。後枝は後輪状披裂筋、横披裂筋、斜披裂筋に分布する。喉から胸にかけて走行する。

反回神経の枝は喉頭や声帯に分布し、障害により嗄声を生じる。反回神経は、右が鎖骨下動脈を、左が大動脈弓を前方から後方へ回り、この周囲に癌が浸潤することで嗄声が生じる。嗄声とは、声帯を振動させて声を出すとき、声帯に異常が起こり「かすれた声」になっている状態である。嗄声の原因は、①声帯自体に問題がある場合と、②声帯を動かす神経に問題がある場合がある。

1.× 「味覚」ではなく喉の運動・感覚を伝える。反回神経は運動神経、知覚神経を含む混合神経で声帯や嚥下機能を司っている。ちなみに、味覚の伝導路は、味蕾(味細胞)→顔面神経(舌前2/3)、舌咽神経(舌後1/3)→延髄孤束核→視床→大脳味覚野である。
2.× 「交感神経線維」ではなく副交感神経線維を含む。なぜなら、反回神経は、迷走神経の枝のひとつであるため。迷走神経とは、感覚神経・運動神経の一つである。嚥下運動や声帯の運動、耳介後方の感覚などに作用する。内臓(胃、小腸、大腸や心臓、血管など)に多く分布し、体内の環境をコントロールしている。刺激すると徐脈、咳、嘔吐などを生じる。強い痛みや精神的ショックなどが原因で、迷走神経が過剰に反応すると、心拍数や血圧の低下、失神などを引き起こす(迷走神経反射)
3.× 「横隔神経」ではなく迷走神経から分枝する。横隔神経とは、頸神経叢の枝で、横隔膜の運動を支配する神経である。
4.× 「輪状甲状筋」ではなく声帯の筋を支配する。反回神経の前枝は、喉頭粘膜、声帯裂、甲状披裂筋、外側輪状披裂筋に分布する。後枝は、後輪状披裂筋、横披裂筋、斜披裂筋に分布する。喉から胸にかけて走行する。ちなみに、輪状甲状筋は声帯ヒダを伸ばして、緊張させ、声を高くする。支配神経は、上喉頭神経の外枝である。内喉頭筋の中で唯一、反回神経支配ではない。
5.〇 正しい。左側の走行は右側よりも長い。なぜなら、左側の反回神経は、心臓と大動脈の間を通って喉に戻るため。一方、右側の反回神経は、右鎖骨下動脈の下を通るため左右比較すると右側のほうが短くなる。

(※画像引用:「嗄声の原因と画像診断」画像診断まとめ様HPより)

 

 

 

 

 

57 左右一対あるのはどれか。2つ選べ。

1.総頸動脈
2.椎骨動脈
3.脳底動脈
4.腕頭動脈
5.前交通動脈

解答1・2

解説

(※画像引用:岡山第一病院様より)

1.〇 正しい。総頸動脈は、左右一対ある。総頚動脈とは、大動脈からの血液を脳に送る太い血管である。左総頸動脈は直接大動脈から分岐し、右総頸動脈は鎖骨上動脈から分岐する。
2.〇 正しい。椎骨動脈は、左右一対ある。椎骨動脈とは、首の椎骨を通って(首の後面に沿って)脳の後部に血液を供給する。
3.× 脳底動脈は、一本しかない。脳底動脈とは、脳の中心を走る動脈で、脳幹・小脳・側頭葉や後頭葉に血液を送る。
4.× 腕頭動脈は、右側しかない。腕頭動脈とは、大動脈弓から右総頚動脈と右鎖骨下動脈へ分岐する動脈である。
5.× 前交通動脈は、一本しかない。前交通動脈とは、左右の前大脳動脈を結び、脳の前部を横切る血管である。

(※図引用:慶應義塾大学医学部 解剖学教室様HPより)

 

 

 

 

58 呼吸器で正しいのはどれか。

1.気管支は下気道に含まれる。
2.輪状軟骨は弾性軟骨である。
3.気管の長さは約20cmである。
4.咽頭の下端はC8の位置にある。
5.気管の延長線に対する分岐角度は左気管支より右気管支の方が大きい。

解答

解説

(※図引用:「illustAC様」)

1.〇 正しい。気管支は下気道に含まれる。上気道とは、鼻腔、副鼻腔、咽頭、喉頭のことで、鼻から声帯までを指す。一方、下気道とは、声帯以下の、気管、気管支、細気管支、肺胞のことを指す。
2.× 輪状軟骨は、「弾性軟骨」ではなく硝子軟骨である。輪状軟骨とは、喉頭の枠組みの土台となるリング状の硝子軟骨である。輪状軟骨後板の上縁は甲状軟骨正中部の中点の高さ、つまり声帯の高さにほぼ一致する。ちなみに、弾性軟骨は、外耳道・耳管・耳介軟骨・喉頭蓋軟骨などを構成する。軟骨基質は弾性線維で構成されているので弾力を持っている。
3.× 気管の長さは、「約20cm」ではなく約10~12cmである。ちなみに、成人の食道の長さは、約25cmである。
4.× 咽頭の下端は、「C8」ではなくC6の位置にある。咽頭とは、扁桃腺とその周りを指し、一般にノドと言われる部分である。空気と食べ物の通り道である。ちなみに、C7〜C8の高さは喉頭である。
5.× 逆である。気管の延長線に対する分岐角度は、「右気管支」より「左気管支」の方が大きい。なぜなら、心臓の傾きがあるため。気管支の分岐角度は、成人で右25°、左45°であり、右の方が太く短い。右の気管支へと誤嚥しやすく、誤嚥性肺炎は右側の方が起こりやすい。

軟骨とは?

軟骨は気質の成分により、主に3種類の①硝子軟骨、②線維軟骨、③弾性軟骨に分類される。
①硝子軟骨:骨端部分を覆う関節や、気管、咽頭などに存在する。
②線維軟骨:脊椎など動きの少ない関節に存在し、骨と骨の間でクッションの役割をする。
③弾性軟骨:耳や鼻などを形づくる軟骨である。

 

 

 

 

 

59 視覚器で誤っているのはどれか。

1.虹彩と水晶体の間を前眼房という。
2.眼房水は毛様体上皮から産生される。
3.眼房水は強膜静脈洞へ吸収される。
4.毛様体筋が収縮すると毛様体小体は弛緩する。
5.毛様体小体が弛緩すると水晶体は厚くなる。

解答

解説

(※図:「看護師イラスト集」看護roo!様HPより)

1.× 虹彩と水晶体の間を「前眼房」ではなく後眼房という。前眼房とは、角膜と虹彩の間にある部分を指す。 一方、後眼房とは、虹彩と水晶体の間の部分を指す。眼内圧の維持に寄与している。
2.〇 正しい。眼房水は毛様体上皮から産生される。眼房水とは、角膜・水晶体・硝子体など血管のない組織に栄養を与える役割をもっており、目の中の毛様体で作られる。毛様体から、瞳孔および隅角にあるフィルター線維柱帯を通って、シュレム管に集まり、静脈へと流れ出す。
3.〇 正しい。眼房水は強膜静脈洞へ吸収される。強膜静脈洞とは、シュレム管ともいい、角膜と強膜の境界部にある輪状に走る管である。
4.〇 正しい。毛様体筋が収縮すると毛様体小体は弛緩する。毛様体筋は、眼の遠近調節を行う筋である。毛様体筋は近くを見るときに収縮する。ちなみに、近くのものを見るときは、毛様体小帯が弛緩し、水晶体が厚くなる。
5.〇 正しい。毛様体小体が弛緩すると水晶体は厚くなる。毛様体小体とは、チン小帯ともいい、毛様体と水晶体の間を結び水晶体を支えたり、水晶体が眼球内に落ちないようにする働きを持つ。近くのものを見るときは、毛様体筋が収縮し、毛様体小帯が弛緩し、水晶体が厚くなる。遠くのものを見るときはその逆である。

 

(※図:「illustAC集」看護roo!様HPより)

類似問題です↓
【共通問題のみ】視覚器についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

60 右上肢を右外側より見た図を下に示す。
 腕橈骨筋のすぐ尺側で矢印部を走行する筋はどれか。

1.示指伸筋
2.小指伸筋
3.総指伸筋
4.長橈側手根伸筋
5.長母指伸筋

解答

解説
1.× 示指伸筋の【起始】尺骨後面下部、前腕骨間膜背面、【停止】第2指の指背腱膜である。
2.× 小指伸筋の【起始】上腕骨の外側上顆、総指伸筋の筋膜の尺側(小指伸筋筋膜)、【停止】第5指の指背腱膜である。
3.× 総指伸筋の【起始】上腕骨の外側上顆、前腕筋膜の内面と肘関節包、【停止】中央は中節骨底、両側は合して末節骨底である。
4.〇 正しい。長橈側手根伸筋は、腕橈骨筋のすぐ尺側で矢印部を走行する。長橈側手根伸筋の【起始】上腕骨外側縁、外側上顆および外側上腕筋間中隔、【停止】第2中手骨底の背面橈側である。
5.× 長母指伸筋の【起始】尺骨体中部背面、前腕骨間膜背面、【停止】母指の末節骨底の背側である。

(※引用:「イラスト素材:手の骨」illustAC様より)

 

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