第47回(H24) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午後問題96~100】

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96 アルコール依存症で正しいのはどれか。

1.女性に多い。
2.病期の進行に伴い、以前よりも少量の飲酒で酔いが回る。
3.振戦せん妄は飲酒中止後12時間以内にみられることが多い。
4.Wernicke 脳症はアルコールの毒性が原因である。
5.集団療法が有効である。

解答5

解説

アルコール依存症とは?

アルコール依存症とは、少量の飲酒でも、自分の意志では止めることができず、連続飲酒状態のことである。常にアルコールに酔った状態でないとすまなくなり、飲み始めると自分の意志で止めることができない状態である。

【合併しやすい病状】
①離脱症状
②アルコール幻覚症
③アルコール性妄想障害(アルコール性嫉妬妄想)
④健忘症候群(Korsakoff症候群)
⑤児遺性・遅発性精神病性障害 など

1.× 「女性」ではなく男性に多い。男性が女性の約5倍である(※データ引用:『アルコール健康障害に係る参考資料』2003年、厚労省調査)。
2.× 病期の進行に伴い以前よりも、「少量」ではなく、大量の飲酒で酔いが回る。なぜなら、病期の進行に伴いアルコールに対する耐性が獲得されるため。次第に、大量飲酒・連続飲酒となっていく。
3.× 振戦せん妄(離脱症状)は、飲酒中止後「12時間以内」ではなく、断酒後1日~数日後にみられることが多い。振戦せん妄とは、日内変動のある意識障害に加え、幻覚などの様々な精神症状がみられる状態である。振戦せん妄(離脱症状)には、主にベンゾジアゼピン系薬剤(向精神薬)を投与する。
4.× Wernicke脳症の原因は、「アルコールの毒性」ではなく、「アルコール連続飲酒により食事が取れなくなってビタミンBが欠乏すること」である。Wernicke脳症の症状として、①意識障害、②眼球運動障害、③小脳失調などが挙げられる。
5.〇 正しい。集団療法が有効である。集団療法とは、通常10人前後の小集団を対象として、参加するメンバーの各々が自分を語ることを通じて実践される心理療法のひとつである。集団精神療法により、飲酒問題を認め、断酒の継続を行うことが治療上きわめて有効である。

 

 

 

 

 

 

97 統合失調症の症状で、薬物療法によって比較的改善しやすいのはどれか。

1.1日中何もしない。
2.喜怒哀楽を表さない。
3.自分の殻に閉じこもる。
4.身だしなみを気にしない。
5.他人の声が自分に呼びかけてくる。

解答5

解説

統合失調症の薬物療法

陽性症状(幻聴、妄想など):改善しやすい。
陰性症状:改善し難い。

1~4.× 1日中何もしない(無為)/喜怒哀楽を表さない(感情鈍麻)/自分の殻に閉じこもる(自閉)/身だしなみを気にしない(無関心)は、陰性症状であるため、薬物療法によって比較的改善しにくい。
5.〇 正しい。他人の声が自分に呼びかけてくる(幻聴)は、陽性症状であるため、薬物療法によって比較的改善しやすい。

 

 

 

 

 

 

98 PTSD(外傷後ストレス障害)について誤っているのはどれか。

1.アンヘドニアがみられる。
2.アルコール乱用の要因となる。
3.小さな物音にも敏感に反応する。
4.症状は外傷後1か月以内に改善する。
5.原因となる出来事は、ほとんど誰にでも大きな苦悩を引き起こす。

解答4

解説

PTSD(外傷後ストレス障害)

実際に死に直面するような体験や、大災害などを体験した人が、その出来事を再体験(フラッシュバック)したり、似たような状況を回避しようとしたり、過覚醒状態などが、1か月以上続いた状態をいう。喜びや楽しみを感じられないことを「アンヘドニア(無快楽症)」という。

1.〇 アンヘドニア(無快楽症)がみられる。アンヘドニア(無快楽症)は、喜びや楽しみを感じられないことをいい、PTSD(外傷後ストレス障害)の特徴である。
2.〇 アルコール乱用の要因となる。なぜなら、外傷的な出来事に関する苦痛な記憶を繰り返し(再体験)、アルコールを乱用することで苦痛を回避しようとするため。心的外傷後ストレス障害(PTSD)の人は、アルコール依存症などの合併症を引き起こす可能性が80~90%という報告もある。
3.〇 小さな物音にも敏感に反応する。なぜなら、心の傷に関わるものを避けるようになることが影響しているといわれているため。感情が麻痺して鈍感になる。
4.× 症状の改善に、1か月以上要す。PTSD(外傷後ストレス障害)は、過覚醒状態などが、1か月以上続いた状態をいう。通常6か月以内に発症し,1か月以上継続する。
5.〇 原因となる出来事は、ほとんど誰にでも大きな苦悩を引き起こす。出来事の主な例として、大きな災害や激しい事故、暴行などの凶悪犯罪などである。

 

 

 

 

 

 

99 学童期に発症することが多いのはどれか。

1.欠神てんかん
2.熱性けいれん
3.側頭葉てんかん
4.West 症候群
5.Lennox-Gastaut 症候群

解答1

解説
1.〇 正しい。欠神てんかんは、学童期に発症することが多い。好発年齢は5~8歳である。ちなみに、女児に多い。
2.× 熱性けいれんの好発年齢は6か月~6歳(特に1~2歳)である。
3.× 側頭葉てんかんの好発年齢は学童期~成人である。
4.× West 症候群の好発年齢は、乳幼児(4~12か月)である。
5.× Lennox-Gastaut 症候群の好発年齢は、幼児期(3~5歳)である。

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100 我が国の自殺の動向や対策について正しいのはどれか。

1.自殺者数は女性の方が男性よりも多い。
2.過去10 年の自殺者数は、年間2万人を下回る。
3.年齢ごとの自殺者数の割合は、20 歳代の方が50歳代よりも高い。
4.自殺予防についての啓発活動は、一次予防に相当する。
5.自死遺族(自殺者の家族)支援は、二次予防に相当する。

解答4

解説

1.× 逆である。自殺者数は、男性の方が女性よりも多い。自殺者の7割は男性である。
2.× 過去10年の自殺者数は、年間2万人を下回るのではなく上回る。平成10年以降3万人を超えている。
3.× 逆である。年齢ごとの自殺者数の割合は、50歳代の方が20歳代よりも高い。男性は55~59歳、女性は80歳以上が最も多い。(データ引用:『平成 30 年の自殺の状況』厚生労働省様HPより)
4.〇 正しい。自殺予防についての啓発活動は、一次予防に相当する。一次予防は、「生活習慣を改善して健康を増進し、生活習慣病等を予防すること」でなる。つまり、自殺予防に関しての一次予防は、「自殺の原因となるような疾病についての正しい知識の普及や啓発活動を行うこと」となる。自殺の原因・動機にはうつ病などを含む健康問題の占める割合が高い。
5.× 自死遺族(自殺者の家族)支援は、二次予防ではなく、三次予防に相当する。二次予防は、「健康診査等による早期発見・早期治療」、三次予防は「疾病が発症した後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図ること」である。つまり、自殺予防に関しての二次予防は、「うつ病などの早期発見・早期治療を行うことで自殺を予防する」こと、三次予防は「自殺や自殺未遂が生じてしまった場合に、家族や職場の同僚等他の人に与える影響を最小限とし、自責の念などを抱いた家族などから新たな自殺者が出る自殺の連鎖を防ぐ」ことといえる。

疾病予防の概念

疾病の進行段階に対応した予防方法を一次予防、二次予防、三次予防と呼ぶ。
一次予防:「生活習慣を改善して健康を増進し、生活習慣病等を予防すること」
二次予防:「健康診査等による早期発見・早期治療」
三次予防:「疾病が発症した後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図ること」と定義している。(※健康日本21において)

 

 

※問題の引用:第47回理学療法士国家試験、第47回作業療法士国家試験の問題および正答について(厚生労働省HP様より)

※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。コメント欄にて誤字・脱字等、ご指摘お待ちしています。よろしくお願いいたします。

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